高音質のICレコーダー拡大、リニアPCMレコーダーが販売金額で5割に迫る勢い

特集

2009/10/29 11:30

 ICレコーダーの中で、高音質なリニアPCMレコーダーの割合が広がってきた。「BCNランキング」では、春商戦を迎えた09年3月から構成比を伸ばし、9月には販売台数で26.8%、販売金額では45.2%と全体の半数近くを占めるようになっている。

マニア以外のユーザーもリニアPCMを購入




 08年末から小型で低価格なモデルを各社が投入したこともあり、リニアPCMレコーダーの販売が伸びている。メーカー首位の三洋電機によると、「普及機が登場したことによって、購入者は従来の一部のマニアから一般的なユーザーに広がってきている」(広報)という。こうしたユーザー層の拡大が、リニアPCMレコーダーの構成比を押し上げたようだ。


 メーカーシェアではこの1年、三洋が販売台数50-60%で首位を維持している。2月、それまで2番手を走っていたオリンパスをかわし、2位に浮上してきたのがソニー。同社は春モデルで、従来よりも価格を下げた「SXシリーズ」を投入、これが人気を集めシェアを押し上げた。9月の販売台数シェアを見ると、1位の三洋は54.3%を獲得。2位のソニーは22.4%、3位はオリンパスで14.2%だった。

秋モデルでは各社の販売戦略が明確に



(左から)LS-11、PCM-M10、ICR-PS004M

 ここで、上位3社がこの秋投入した新製品に注目してみよう。オリンパスが9月に発売した「LS-11」はリニアPCMレコーダーの上級機、10月にはソニーが中級機「PCM-M10」、三洋は初級機「ICR-PS004M」をそれぞれ発売した。同じ時期にこのようなクラスの異なる製品を投入しており、各社の販売戦略の違いが読み取れる。


 ちなみに、9月時点でメーカーごとにICレコーダーの中でリニアPCMレコーダーが占める割合を見てみると、三洋は台数で69.4%、金額で82.6%。いずれも半分以上を占めており、同社はリニアPCMレコーダーに主力を移したといっていいだろう。一方、2位のソニーは台数で17.1%、金額で31.1%、オリンパスは台数10.7%、金額25.9%だった。いずれも主力は通常のICレコーダーだ。

高音質モデルは11位にランクイン



 最後に、リニアPCMレコーダーの9月の売れ筋を見てみよう。カラーバリエーションは合算して集計した。1位は三洋電機の「ICR-PS501RM」でシェア28%。2GBのメモリを内蔵するほか、microSD/SDHCカードも使用できる。

(左から)ICR-PS501RM、ICD-SX800、ICR-RS110M

 2位はソニー「ICD-SX800」で15.6%。マイクユニットを本体の外に配置したことで、クリアな音で録音できる。メモリ容量は2GB。3位はAF/AMラジオチューナーを搭載する三洋の「ICR-RS110M」で7.6%だった。メモリは内蔵せず、録音したデータはmicroSD/SDHCカードに保存する。

リニアPCMレコーダー シリーズ別販売台数シェア トップ10
順位 メーカー名 シリーズ名 周波数/
量子化ビット数
発売月 販売台数シェア(%)
1 三洋電機 ICR-PS501RM 44.1kHz/16bit 2009/02 28.0
2 ソニー ICD-SX800 44.1kHz/16bit 2009/02 15.6
3 三洋電機 ICR-RS110M 44.1kHz/16bit 2009/02 7.6
4 三洋電機 ICR-RS110MF 44.1kHz/16bit 2008/11 7.0
5 オリンパス DS-750 48kHz/16bit 2009/09 6.2
6 ソニー ICD-SX900 44.1kHz/16bit 2009/02 6.1
7 三洋電機 ICR-PS503RM 44.1kHz/16bit 2009/02 5.9
8 オリンパス DS-700 48kHz/16bit 2009/09 4.8
9 三洋電機 ICR-PS603RM 48kHz/16bit 2008/11 2.5
10 三洋電機 ICR-PS185RM 44.1kHz/16bit 2008/04 2.1

「BCNランキング」 09年9月月次 <最大パネル>



 トップ10中、サンプリング周波数と量子化ビット数が「48kHz/16bit」のモデルが2つランクインした。そのほかはすべて「44.1kHz/16bit」だった。なお、リニアPCMレコーダーの中でも高音質で録音できる「96kHz/24bit」対応モデルは、トップ10には入らなかった。ただ、11位にズームの「HANDY RECORDER H4N」が登場した。「HANDY RECORDER H4N」は、CDの音質よりもよい音で録れる「96kHz/24bit」のリニアPCM形式に対応する。

 9月現在、リニアPCMレコーダーの税別の平均単価は1万6400円。1年前の08年10月の2万2400円から春商戦期に大きく下落して3月に1万8800円、その後さらに6000円ほど値下がりした状況だ。前述の秋モデルをはじめとした多彩な製品が登場したことで、選択肢は一層広がりそうだ。(BCN・井上真希子)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで125品目を対象としています。