デスクトップPC、低価格攻勢でソニーのシェア急伸

特集

2009/10/19 13:54

 デスクトップPC市場は引き続き需要停滞期にあるが、覇権争いは一段と激しさを増している。10万円を割った低価格モデルの販売増でソニーが急伸、9月のベンダーシェアではトップのNECに約2ポイント差と迫ってきた。ブランド力を背景に高価格帯を維持してきたソニーの戦略転換で、勢力図は大きく塗り替わる可能性がある。

 デスクトップPC市場は停滞基調を脱し切れず、ここ数か月の販売台数は前年比2割減、金額は3割減と厳しい状況が続いている。ベンダー各社とも消費者が求めやすい価格帯を重視してか、斬新なスペックを搭載したモデルが少ないことが盛り上がりを欠く要因のひとつとなっている。

 例えば搭載されるCPUは「Core 2 Duo」が依然として主流で、最新版となる「Core i7」は高額のためか搭載率はごくわずか。このためハイスペックを希求するパワーユーザーは自作またはショップが独自展開するハウスブランドPCへと流れる傾向にあることも見逃せない。


 市場が停滞を続けるなか、シェア争いは激しさを増している。昨年10月以降、台数ベースでNECがトップシェアを持続、富士通とゲートウェイ、ソニーの3社が追い上げる展開にあるが、直近の9月ではソニーがトップシェアを射程圏内にとらえる急伸ぶりとなった。ソニーのシェアは8月が11.8%、9月は17.7%で、20.0%とやや伸びを欠いたNECに2.3ポイント差に迫ってきた(図表1)。


 ソニーの躍進要因を探る前に、デスクトップPC全体の価格帯別台数分布(図表2)をみていこう。ここからも分かるように、1年前の08年9月では「10-13万円未満」が25.0%を占めて最大のボリュームゾーンとなっていたが、直近の9月では「7万円未満」の比率が32.7%と上昇、一気に低価格帯へと中軸ゾーンはシフトした。同時に13万円以上の価格帯も軒並み比率を下げており、急速に低価格化がすすんだことを示している。


 こうした市場動向のなかで、9月にシェア1、2位を占めたNECとソニーの価格帯別台数分布(図表3)をみると、両社は対照的な分布曲線が現れていることが分かる。NEC(図表3下)は、1年前と直近9月の曲線に大きな変化はなく、いずれも「13-16万円未満」が中軸ゾーンを占めてほぼ左右対称の分布。一方、ソニー(図表3上)は、1年前の「13-16万円未満」から「7-10万円未満」へと中軸ゾーンはシフト、左右対称は崩れ低価格帯となる左サイドに重心が偏る動きとなっている。


 図表4では、NECとソニーの平均単価の推移を「デスクトップPC全体」と地デジチューナーを搭載した「地デジ対応PC」、チューナーを搭載していない「通常PC」に分けて示した。まずデスクトップ全体では、両社とも平均単価を下げる傾向あるが、9月はソニーが一気に11万8000円と8月に比べて1万円以上の大幅下落となった。この単価推移が示すように割安感が消費者の購買意欲を刺激、結果的にシェアを押し上げる要因となったようだ。一方、「地デジ対応PC」と「通常PC」でみると、やや開きがある。9月の「地デジ対応PC」ではソニーはNECに比べて小幅高だが、「通常PC」ではNECが11万円でソニーは9万6000円と価格差は大きい。

 Windows 7登場前の端境期におけるシェア変動は、一過性現象とみることもできるが、高価格帯を維持してきたソニーの価格戦略が徐々に変化しつつあるのも事実で、年末商戦に向けての動向が注目されそうだ。


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで125品目を対象としています。

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