インテルは優等生でAMDは個性派? CPUの売れ筋ランキング、メーカー比較
今やCPUの2大メーカーと言えばインテルとAMD。この両者の売れ筋CPUを比べてみると、インテルは定番モデル、AMDはマニア受けするCPUに人気が集まっている。09年8月の「BCNランキング」でメーカー別に売れ筋をまとめた。
1位と2位は共にクアッドコアCPUで、1位の「Core 2 Quad Q9550」は、既存ユーザーがクアッドコアCPUへアップグレードしたい場合に、格好の選択肢となる。というのも「Core 2 Quad Q9550」の対応マザーボードは「LGA775」。既存ユーザーがCore i7へアップグレードするとなると、Core i7に対応したマザーボードやメモリも一緒に購入しなければならないので、余分なコストが掛かってしまうからだ。
2位の「Core i7 920」は、他のCore i7シリーズに比べ価格が圧倒的に安い。また、対応マザーボード(LGA1366)も発売当初に比べ、価格がこなれてきており、初めてのクアッドコアCPUとして人気があるようだ。
3位は、Core 2 Duoシリーズの高クロックモデル「Core 2 Duo E8400」がランクイン。デュアルコアなので処理能力はクアッドコアCPUより劣ってしまうが、クロック数が高いので、クアッドコアCPUに比べて極端に性能が落ちるというわけではない。
また、価格も「Core i7 920」や「Core 2 Quad Q9550」に比べて安いので、性能を落としたくはないが価格は抑えたい、というユーザーにとっては魅力的だ。
4位は「Pentium Dual Core E6300」。Pentium Dual CoreシリーズはCore 2 Duoシリーズの廉価版という位置づけだが、「Pentium Dual Core E6300」はCore 2 Duoシリーズの「Core 2 Duo E7400」と性能差がほとんどない。また、価格も「Core 2 Duo E7400」よりも安く、お買い得感が高い。
AMD製のCPUは、似たような名称のモデルが多数あり購入の際に迷ってしまいそうだが、現行モデルをグレードが高い順に並べると「Phenom II X4」→「Phenom II X3」→「Phenom II X2」→「Athlon II X2」→「Athlon X2 」となる。
1位の「Athlon X2 5050e」はグレードとしては下位モデルに当たるが、この製品は上位製品に比べて、消費電力が低いというアドバンテージがある。消費電力が少なければ発熱量が減るため、冷却ファンの回転数を落とせる。このためファンの風切り音が小さくなるので、静音PCを組むユーザーにはありがたいモデルだ。
4位には「Phenom II X4 945」がランクイン。「Phenom II X4 945」は、消費電力が異なるモデルがあり、こちらは消費電力を125Wから95Wに抑えたモデルだ。5位の「Athlon II X2 250」は、動作クロックが3GHzと高いのにもかかわらず、市場推定価格が1万円以下と安く組みたいユーザーに人気。
また、2位と3位の「Phenom II X2 550」「Phenom II X4 955」は、いずれもBlack Editionと呼ばれるモデルで、通常のCPUでは不可能な倍率変更に対応している。
倍率変更とは一般的にオーバークロックとよばれるもので、CPUを規定数値以上のクロック数で動作させることで、より高い処理能力を得られるというもの。例えば、クロック数2.5GHzのCPUを倍率変更すると、3.0GHzにアップできてしまう。
上述「Phenom II X2 550」を例に取ると、このCPUは(ベースクロック)200MHz×(倍率)15.5倍=3100MHz(3.1GHz)で動作している。この倍率を15.5倍から17倍に変更すると、200MHz×17倍=3400MHz(3.4GHz)となり、300MHz分クロックアップしたことになる。
クロック数が上がると、その分CPUの動作が速くなるので、うれしい話ではあるが、オーバークロックにはそれなりのリスクが伴う。
そもそも「Phenom II X2 550」は3.1GHzで安定動作するように設計されているので、これを無理やり3.4GHzで動かすと、発熱量が増えて動作が不安定になったり、故障しやすくなってしまう。また、オーバークロックの際に不具合が生じても、もちろん自己責任。メーカーやショップでは保証をしてくれないので、それなりの覚悟が必要だ。
こうしてみると、インテルはCore2 Duoシリーズなど安定性の高い定番モデル、AMDはBlack Editionなどの遊べるマニア仕様のモデルに人気が集まっている。例えて言うならばインテルは何でもそつなくこなす優等生、AMDは一芸に秀でた個性派と言えそうだ。
また、これから特に注目を浴びそうなのがクアッドコアCPU。AMDが8月に「Phenom II X4シリーズ」では最高クロック(3.4GHz)の「Phenom II X4 965」を発売すれば、インテルは9月に「Core i7 870」「Core i7 860」「Corei5 750」と続々とクアッドコアCPUを投入する。
AMDの「Phenom II X4 965」は、Phenom II X4シリーズ中最高クロックモデルで、オーバークロックが可能なBlack Editionモデル。一方、インテルの「Core i7 870」「Core i7 860」「Corei5 750」は、新しいCPUソケット「LGA1156」に対応したメインストリーム向けのCPUだ。
このように両社とも続々とクアッドコアCPUを投入してきており、本格的なクアッドコアの時代がいよいよ到来しそうだ。(BCN・大滝和伸)
*本稿はオーバークロックを推奨するものではありません。オーバークロックによって故障や不具合が生じた場合、メーカーの保証対象外となりますので、あくまでも自己責任でお願いいたします。
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで125品目を対象としています。
*記事中の「市場推定価格」は、記事掲載時点のものです。市場推定価格は、「BCNランキング」のデータをもとに独自に算出した推定値で、消費税込みの金額で表記しています。
Core 2 Duoなど定番モデルが人気のインテル
順位 | 型番 | 品名 | 市場推定価格 |
---|---|---|---|
1 | BX80569Q9550 | Core 2 Quad Q9550(2.83GHz) | 2万3100円 |
2 | BX80601920 | Core i7 920(2.66GHz) | 2万9100円 |
3 | BX80570E8400 | Core 2 Duo E8400(3.0GHz) | 1万7400円 |
4 | BX80571E6300 | Pentium Dual Core E6300(2.8GHz) | 8500円 |
5 | BX80571E7500 | Core 2 Duo E7500(2.93GHz) | 1万3200円 |
「BCNランキング」 09年8月月次 <最大パネル>
1位と2位は共にクアッドコアCPUで、1位の「Core 2 Quad Q9550」は、既存ユーザーがクアッドコアCPUへアップグレードしたい場合に、格好の選択肢となる。というのも「Core 2 Quad Q9550」の対応マザーボードは「LGA775」。既存ユーザーがCore i7へアップグレードするとなると、Core i7に対応したマザーボードやメモリも一緒に購入しなければならないので、余分なコストが掛かってしまうからだ。
2位の「Core i7 920」は、他のCore i7シリーズに比べ価格が圧倒的に安い。また、対応マザーボード(LGA1366)も発売当初に比べ、価格がこなれてきており、初めてのクアッドコアCPUとして人気があるようだ。
インテル「Core i7」
3位は、Core 2 Duoシリーズの高クロックモデル「Core 2 Duo E8400」がランクイン。デュアルコアなので処理能力はクアッドコアCPUより劣ってしまうが、クロック数が高いので、クアッドコアCPUに比べて極端に性能が落ちるというわけではない。
また、価格も「Core i7 920」や「Core 2 Quad Q9550」に比べて安いので、性能を落としたくはないが価格は抑えたい、というユーザーにとっては魅力的だ。
4位は「Pentium Dual Core E6300」。Pentium Dual CoreシリーズはCore 2 Duoシリーズの廉価版という位置づけだが、「Pentium Dual Core E6300」はCore 2 Duoシリーズの「Core 2 Duo E7400」と性能差がほとんどない。また、価格も「Core 2 Duo E7400」よりも安く、お買い得感が高い。
Black Editionモデルが人気のAMD
順位 | 型番 | 品名 | 市場推定価格 |
---|---|---|---|
1 | Athlon X2 5050e | Athlon X2 5050e(2.6GHz) | 6600円 |
2 | Phenom II X2 550 | Phenom II X2 550(3.1GHz) | 1万700円 |
3 | Phenom II X4 955 | Phenom II X4 955(3.2GHz) | 2万1500円 |
4 | Phenom II X4 945(WF/95W) | Phenom II X4 945(3.0GHz/WF/95W) | 2万円 |
5 | Athlon II X2 250 | Athlon II X2 250(3.0GHz) | 8300円 |
「BCNランキング」 09年8月月次 <最大パネル>
AMD製のCPUは、似たような名称のモデルが多数あり購入の際に迷ってしまいそうだが、現行モデルをグレードが高い順に並べると「Phenom II X4」→「Phenom II X3」→「Phenom II X2」→「Athlon II X2」→「Athlon X2 」となる。
1位の「Athlon X2 5050e」はグレードとしては下位モデルに当たるが、この製品は上位製品に比べて、消費電力が低いというアドバンテージがある。消費電力が少なければ発熱量が減るため、冷却ファンの回転数を落とせる。このためファンの風切り音が小さくなるので、静音PCを組むユーザーにはありがたいモデルだ。
AMD「Athlon X2」
4位には「Phenom II X4 945」がランクイン。「Phenom II X4 945」は、消費電力が異なるモデルがあり、こちらは消費電力を125Wから95Wに抑えたモデルだ。5位の「Athlon II X2 250」は、動作クロックが3GHzと高いのにもかかわらず、市場推定価格が1万円以下と安く組みたいユーザーに人気。
また、2位と3位の「Phenom II X2 550」「Phenom II X4 955」は、いずれもBlack Editionと呼ばれるモデルで、通常のCPUでは不可能な倍率変更に対応している。
倍率変更とは一般的にオーバークロックとよばれるもので、CPUを規定数値以上のクロック数で動作させることで、より高い処理能力を得られるというもの。例えば、クロック数2.5GHzのCPUを倍率変更すると、3.0GHzにアップできてしまう。
上述「Phenom II X2 550」を例に取ると、このCPUは(ベースクロック)200MHz×(倍率)15.5倍=3100MHz(3.1GHz)で動作している。この倍率を15.5倍から17倍に変更すると、200MHz×17倍=3400MHz(3.4GHz)となり、300MHz分クロックアップしたことになる。
クロック数が上がると、その分CPUの動作が速くなるので、うれしい話ではあるが、オーバークロックにはそれなりのリスクが伴う。
そもそも「Phenom II X2 550」は3.1GHzで安定動作するように設計されているので、これを無理やり3.4GHzで動かすと、発熱量が増えて動作が不安定になったり、故障しやすくなってしまう。また、オーバークロックの際に不具合が生じても、もちろん自己責任。メーカーやショップでは保証をしてくれないので、それなりの覚悟が必要だ。
優等生のインテル、個性派のAMD
こうしてみると、インテルはCore2 Duoシリーズなど安定性の高い定番モデル、AMDはBlack Editionなどの遊べるマニア仕様のモデルに人気が集まっている。例えて言うならばインテルは何でもそつなくこなす優等生、AMDは一芸に秀でた個性派と言えそうだ。
また、これから特に注目を浴びそうなのがクアッドコアCPU。AMDが8月に「Phenom II X4シリーズ」では最高クロック(3.4GHz)の「Phenom II X4 965」を発売すれば、インテルは9月に「Core i7 870」「Core i7 860」「Corei5 750」と続々とクアッドコアCPUを投入する。
AMD「Phenom II X4」
AMDの「Phenom II X4 965」は、Phenom II X4シリーズ中最高クロックモデルで、オーバークロックが可能なBlack Editionモデル。一方、インテルの「Core i7 870」「Core i7 860」「Corei5 750」は、新しいCPUソケット「LGA1156」に対応したメインストリーム向けのCPUだ。
このように両社とも続々とクアッドコアCPUを投入してきており、本格的なクアッドコアの時代がいよいよ到来しそうだ。(BCN・大滝和伸)
*本稿はオーバークロックを推奨するものではありません。オーバークロックによって故障や不具合が生じた場合、メーカーの保証対象外となりますので、あくまでも自己責任でお願いいたします。
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで125品目を対象としています。
*記事中の「市場推定価格」は、記事掲載時点のものです。市場推定価格は、「BCNランキング」のデータをもとに独自に算出した推定値で、消費税込みの金額で表記しています。