旅向けのデジカメが登場、何が一体旅向けなのか徹底的に検証した
いよいよ夏本番。旅行シーズンの到来だ。デジタルカメラにも「旅に行くなら。」というコピーで旅向きの機能をアピールする製品が登場した。カシオのコンパクトデジタルカメラ「EXILIM Hi-ZOOM EX-H10」だ。旅行で活躍するカメラだという。何がどれほど旅向きなのか? 実際に使って確かめた。
光学10倍以上のズームレンズを搭載するコンパクトデジカメは他社からも発売されているが、H10は、そのどれよりも広角側の画角が広く、約24mm(35mmフィルム換算、以下同)を達成している。
例えば広角28mmと24mmでは、わずかな違いのように思うかもしれないが、この差はけっこう大きい。35mmフィルム換算では、28mmレンズの対角画角は75度なのに対し、24mmレンズは84度で、約10度も差がある。そのため写り込む範囲はかなり広い。同じ位置から撮影しても、24mmのほうが広々とした写真が撮れるわけだ。
24mmレンズは、被写体との距離をとれない室内での記念撮影や、巨大建築・建造物を撮影するときに大いに活躍してくれる。H10は、その24mmから、望遠側は約240mmまでを1台でカバーできる。しかも、光学10倍ズームレンズ搭載機としては、世界最薄・最軽量(09年6月11日現在)だという。こうした守備範囲の広さと小ささは旅向きだろう。
H10が、Z400と比較してやや大ぶりになってしまったのは、光学10倍ズームレンズを沈胴式で格納していることに加えて、ケタ違いに長持ちする電池を搭載していることが影響しているのだろう。
H10の電池はとにかく長持ちする。1回の充電で約1000カットの撮影が可能だという。「そこまで一気に大量撮影することはないよ」という方もいるかもしれないが、ちょっと考えてみてほしい。電池が長持ちするということは、それだけ充電回数が減らせるということになる。一般的なコンパクトデジカメで1,000枚撮ろうと思ったら、3回くらいは充電が必要だろう。それが1回の充電ですむのだから、例えば、旅行先にまで充電器を持ってく必要がなくなる。
旅行先では、いつもより撮影枚数が増えるのはもちろんのこと、撮影後に失敗がないかチェックしたり、宿泊先でその日一日を振り返ったりと、撮影画像を液晶モニタで再生する回数も格段に増える。電池はそこでも消耗していくから、撮影枚数がそれほど多くなくても、思いの外、電池は早く減ってしまうものだ。H10の長持ち電池なら、そういう使い方をしても電池切れの心配をしなくてすむ。やっぱり、充電器を持っていく必要はなくなるわけだ。
旅行する際には少しでも手荷物を減らしたい。充電器1個でも、持っていくかどうかは悩ましいところ。それが、安心して家に置いたまま出かけられるのだから、これはとってもうれしい。予備の電池さえ用意しなくて大丈夫だろう。実際、今回試写でけっこう使い続けたのだが、電池残量の目盛りは1つも減らなかった。
専用ボタンを押すだけで「風景メイクアップ」がオンになる。機能としては2種類あって、色彩を際立たせて色鮮やかにする「鮮やか風景」と、霞んだ景色からもやや霞を除去してクリアに写し出す「もや除去」のどちら一方を選んで使う。効果のかかり具合は+1と+2の2段階で強調可能だ。
おすすめは、何と言っても「もや除去」。旅行先で遠くの景色を眺めたとき、晴れているのに霞んで見えることは決して珍しくない。「もや除去」を使って撮影すると、まったくのカメラまかせで、その霞んだ風景がくっきりと見えてくる。単に画像全体の彩度や濃度をアップしているわけではないようで、不自然な感じがしない。大変使いでのある機能だ。とにかく風景を撮影するときは「風景メイクアップ」を使う、ということで良いだろう。それくらい魅力的な機能だ。
また、動くキャラクターを合成した「ダイナミックフォト」は、これまで、カメラの液晶モニタで再生するときは動画として見ることができるものの、PCに保存すると、連続するJPEG画像になってしまっていた。PCで動画として鑑賞するためには、カシオのWebサイトから、動画変換サービスの「ダイナミックフォトマネージャー」をダウンロードしてPCにインストール後、動画変換する手間がかかっていた。しかも、「ダイナミックフォトマネージャー」はWindows専用なので、Macユーザーは、この動画変換サービスを利用することができなかったのである。
それが、H10ではカメラ内で動画変換が可能になった。動画変換すると.movファイルとして新規保存されるので、Macユーザーであっても、PCにコピーしたあとで動画として鑑賞することができる。ちなみに、7月22日に発表された最新のファームウエアでは、Z400、Z270、S12でも、H10と同様にカメラ内での動画変換などが可能になったようだ。
実際に、筆者も「ダイナミックフォト」を合成して試してみたが、これが意外と簡単にできて楽しい。家族や仲の良い友人との旅行では、格好の話題づくりツールとして活躍しそうだ。
優れた点の多いH10だが、あえて注文をつけるとすれば、もう少しボディサイズがコンパクトになれば……ということと、ホールディング性の改善だろうか。右手でH10を構えたときに、ボディ前面には指がかりの突起が設けられているが、ボディ背面には、右手親指を置くスペースがあまりない。いちおう動画撮影ボタンの横にそのスペースが用意されているのだが、手の大きい筆者の場合は、少々せますぎる感じだ。右手でしっかりホールディングできるボタン類のレイアウトの工夫に期待したい。
また、メニュー画面や取扱説明書はややわかりにくい印象を持った。デジカメ初心者が旅行を機にH10を購入したときに、メニューの深い階層まで入っていって設定を変更したり、やりたい操作がすぐに呼び出せるか、少々不安に思う。もちろん、初期設定のままカメラまかせ、でも十分なのかもしれないが、液晶モニタ上で参照できるヘルプ画面を用意するなど、取扱説明書なしでも扱える工夫は何かしら必要だろう。せっかく充電器を持ち歩かなくてすむのだから、できることなら、取扱説明書も家において出かけられるとありがたい。
とはいえ、Z400で使い勝手の良さを実感させてくれた「押すだけ」は、もちろんH10にもしっかり受け継がれている。ほとんど何も考えずにシャッターを押すだけで、逆光でも夜景でもかなり満足のいく写真が撮れた。
実を言うと、筆者はH10を手にしてすぐ、カスタム設定で露出補正(EVシフト)を左右キーでダイレクトに操作できる設定に変えたのだが、結局、露出補正を操作することは一度もなかった。他のコンパクトデジカメでは、間違いなくプラスまたはマイナスの補正が必要となるような場面でも、H10では、まったくその必要性を感じずに、気づいたらすべてカメラまかせで撮っていた。いやはや賢いカメラである。
広角24mmからの光学10倍ズームレンズ、超長持ちの電池、「風景メイクアップ」機能、そして遊べる「ダイナミックフォト」と、旅行に持っていくコンパクトデジカメとして「看板に偽りなし」の優れたカメラだと感じた。(フリー・カメラマン 榎木秋彦)
EXILIM Hi-ZOOM EX-H10
広角24mmは広々写る! だから10倍ズームが生きる!!
「EXILIM Hi-ZOOM EX-H10」は、カシオのEXILIMシリーズの中で、機種名に「H」が付く初めての製品だ。「H」は「Hi-Zoom」の頭文字で、「H10」は文字どおり「10倍ズーム」を表している。光学10倍、デジタルズーム併用で最大40倍まで対応する高倍率ズームレンズを搭載する。光学10倍以上のズームレンズを搭載するコンパクトデジカメは他社からも発売されているが、H10は、そのどれよりも広角側の画角が広く、約24mm(35mmフィルム換算、以下同)を達成している。
例えば広角28mmと24mmでは、わずかな違いのように思うかもしれないが、この差はけっこう大きい。35mmフィルム換算では、28mmレンズの対角画角は75度なのに対し、24mmレンズは84度で、約10度も差がある。そのため写り込む範囲はかなり広い。同じ位置から撮影しても、24mmのほうが広々とした写真が撮れるわけだ。
24mmレンズは、被写体との距離をとれない室内での記念撮影や、巨大建築・建造物を撮影するときに大いに活躍してくれる。H10は、その24mmから、望遠側は約240mmまでを1台でカバーできる。しかも、光学10倍ズームレンズ搭載機としては、世界最薄・最軽量(09年6月11日現在)だという。こうした守備範囲の広さと小ささは旅向きだろう。
広角24mmだとここまで広々とした写真が撮れる
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もっとも望遠側の240mm。手ブレ補正機能で手持ちでもけっこう撮れる
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液晶モニタは3.0型で約23万ドット。晴天下の野外でも視認性は良い
3倍長持ちの長寿命電池で、充電器を持ち歩く必要なし!
世界最薄・最軽量とはいっても、4倍ズームの弟分「EX-Z400」に比べてH10は大きく重い。最新の光学3倍~5倍ズームのコンパクトデジカメはどれも薄く、小さく、軽くなってきているが、それらと比べてしまうと、H10はどうしても大ぶりで、少々重たく感じてしまう。また、ポップ、エレガント、スマートなコンパクトデジカメが多い中、H10のデザインはやや無骨な印象だ。シルバーとピンクのカラーバリエーションが用意されているが、Z400のピンクに比べて、H10のそれはかなり派手めのピンクなので、女性でも好き嫌いが分かれるかもしれない。H10が、Z400と比較してやや大ぶりになってしまったのは、光学10倍ズームレンズを沈胴式で格納していることに加えて、ケタ違いに長持ちする電池を搭載していることが影響しているのだろう。
H10の電池はとにかく長持ちする。1回の充電で約1000カットの撮影が可能だという。「そこまで一気に大量撮影することはないよ」という方もいるかもしれないが、ちょっと考えてみてほしい。電池が長持ちするということは、それだけ充電回数が減らせるということになる。一般的なコンパクトデジカメで1,000枚撮ろうと思ったら、3回くらいは充電が必要だろう。それが1回の充電ですむのだから、例えば、旅行先にまで充電器を持ってく必要がなくなる。
旅行先では、いつもより撮影枚数が増えるのはもちろんのこと、撮影後に失敗がないかチェックしたり、宿泊先でその日一日を振り返ったりと、撮影画像を液晶モニタで再生する回数も格段に増える。電池はそこでも消耗していくから、撮影枚数がそれほど多くなくても、思いの外、電池は早く減ってしまうものだ。H10の長持ち電池なら、そういう使い方をしても電池切れの心配をしなくてすむ。やっぱり、充電器を持っていく必要はなくなるわけだ。
旅行する際には少しでも手荷物を減らしたい。充電器1個でも、持っていくかどうかは悩ましいところ。それが、安心して家に置いたまま出かけられるのだから、これはとってもうれしい。予備の電池さえ用意しなくて大丈夫だろう。実際、今回試写でけっこう使い続けたのだが、電池残量の目盛りは1つも減らなかった。
オート AWB F4.6 1/320 ISO64 76mm相当
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オート AWB F4.2 1/60 ISO64 55mm相当
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オート AWB F3.6 1/499 ISO64 34mm相当
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オート AWB F3.2 1/640 ISO64 24mm相当
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もやがかかった風景が、ボタン1つで澄んだ景色に!
旅用のカメラとして考えると、便利なのが「風景メイクアップ」機能だ。Z400などに搭載されて好評の「メイクアップモード」は、人物の肌の質感をなめらかに若々しく再現する機能だが、この風景版だ。風景写真を色鮮やかに、印象的に再現してくれる。ボディ上部の左肩に設けられた「風景メイクアップ」(左)と「人物メイクアップ」の専用ボタン
専用ボタンを押すだけで「風景メイクアップ」がオンになる。機能としては2種類あって、色彩を際立たせて色鮮やかにする「鮮やか風景」と、霞んだ景色からもやや霞を除去してクリアに写し出す「もや除去」のどちら一方を選んで使う。効果のかかり具合は+1と+2の2段階で強調可能だ。
「風景メイクアップ」ボタンを押して撮影状態になったら、背面の「SET」ボタンを押して、「鮮やか風景」か「もや除去」かを選択
おすすめは、何と言っても「もや除去」。旅行先で遠くの景色を眺めたとき、晴れているのに霞んで見えることは決して珍しくない。「もや除去」を使って撮影すると、まったくのカメラまかせで、その霞んだ風景がくっきりと見えてくる。単に画像全体の彩度や濃度をアップしているわけではないようで、不自然な感じがしない。大変使いでのある機能だ。とにかく風景を撮影するときは「風景メイクアップ」を使う、ということで良いだろう。それくらい魅力的な機能だ。
通常のオートで撮影。曇天下で、遠くの岬が霞んで見える
オート AWB F5.2 1/499 ISO64 123mm相当
オート AWB F5.2 1/499 ISO64 123mm相当
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「風景メイクアップ」オン、「もや除去」を+2の設定で撮影。
全体に色彩が濃く鮮明に。遠くの岬もくっきり
オート AWB F5.2 1/640 ISO64 123mm相当
全体に色彩が濃く鮮明に。遠くの岬もくっきり
オート AWB F5.2 1/640 ISO64 123mm相当
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カメラ内動画変換で遊べる「ダイナミックフォト」
H10では、カシオが力を入れている「ダイナミックフォト」が、より簡単に扱えるようになった。「ダイナミックフォト」は、静止画の背景に、動画(動くキャラクター)や静止画の切り抜きを合成したりする、写真の新しい楽しみ方だ。これまでは、動くキャラクターを貼りつける位置のみ調整できて、キャラクターの大きさは変えられなかったが、H10では、キャラクターの大きさも拡大・縮小が可能になった。また、動くキャラクターを合成した「ダイナミックフォト」は、これまで、カメラの液晶モニタで再生するときは動画として見ることができるものの、PCに保存すると、連続するJPEG画像になってしまっていた。PCで動画として鑑賞するためには、カシオのWebサイトから、動画変換サービスの「ダイナミックフォトマネージャー」をダウンロードしてPCにインストール後、動画変換する手間がかかっていた。しかも、「ダイナミックフォトマネージャー」はWindows専用なので、Macユーザーは、この動画変換サービスを利用することができなかったのである。
それが、H10ではカメラ内で動画変換が可能になった。動画変換すると.movファイルとして新規保存されるので、Macユーザーであっても、PCにコピーしたあとで動画として鑑賞することができる。ちなみに、7月22日に発表された最新のファームウエアでは、Z400、Z270、S12でも、H10と同様にカメラ内での動画変換などが可能になったようだ。
実際に、筆者も「ダイナミックフォト」を合成して試してみたが、これが意外と簡単にできて楽しい。家族や仲の良い友人との旅行では、格好の話題づくりツールとして活躍しそうだ。
押すだけでキレイ! あえて注文を付けるとすると……
優れた点の多いH10だが、あえて注文をつけるとすれば、もう少しボディサイズがコンパクトになれば……ということと、ホールディング性の改善だろうか。右手でH10を構えたときに、ボディ前面には指がかりの突起が設けられているが、ボディ背面には、右手親指を置くスペースがあまりない。いちおう動画撮影ボタンの横にそのスペースが用意されているのだが、手の大きい筆者の場合は、少々せますぎる感じだ。右手でしっかりホールディングできるボタン類のレイアウトの工夫に期待したい。
また、メニュー画面や取扱説明書はややわかりにくい印象を持った。デジカメ初心者が旅行を機にH10を購入したときに、メニューの深い階層まで入っていって設定を変更したり、やりたい操作がすぐに呼び出せるか、少々不安に思う。もちろん、初期設定のままカメラまかせ、でも十分なのかもしれないが、液晶モニタ上で参照できるヘルプ画面を用意するなど、取扱説明書なしでも扱える工夫は何かしら必要だろう。せっかく充電器を持ち歩かなくてすむのだから、できることなら、取扱説明書も家において出かけられるとありがたい。
とはいえ、Z400で使い勝手の良さを実感させてくれた「押すだけ」は、もちろんH10にもしっかり受け継がれている。ほとんど何も考えずにシャッターを押すだけで、逆光でも夜景でもかなり満足のいく写真が撮れた。
実を言うと、筆者はH10を手にしてすぐ、カスタム設定で露出補正(EVシフト)を左右キーでダイレクトに操作できる設定に変えたのだが、結局、露出補正を操作することは一度もなかった。他のコンパクトデジカメでは、間違いなくプラスまたはマイナスの補正が必要となるような場面でも、H10では、まったくその必要性を感じずに、気づいたらすべてカメラまかせで撮っていた。いやはや賢いカメラである。
広角24mmからの光学10倍ズームレンズ、超長持ちの電池、「風景メイクアップ」機能、そして遊べる「ダイナミックフォト」と、旅行に持っていくコンパクトデジカメとして「看板に偽りなし」の優れたカメラだと感じた。(フリー・カメラマン 榎木秋彦)
「風景メイクアップ」オン、「鮮やか風景」を+2の設定で撮影。
全体的に明るく鮮やかさの増した夕日の港が撮れた
オート AWB F4.2 2/5 ISO100 55mm相当
全体的に明るく鮮やかさの増した夕日の港が撮れた
オート AWB F4.2 2/5 ISO100 55mm相当
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]