東京大学とソフトバンクM、携帯電話を使った障がい児学習支援プロジェクト
東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍(なかむらけんりゅう)教授らの研究グループとソフトバンクモバイル(孫正義社長)は6月30日、共同で携帯電話を利用した、障がい児のための学習支援の事例研究プロジェクト「あきちゃんの魔法のポケットプロジェクト」を本日より開始した。
同プロジェクトは、「携帯電話が障がい児の生活や学習に役立つ」という活用事例を広く紹介することで、障がい児の学習機会を増やし、社会参加を促進することを目的として、特に認知やコミュニケーションに困難のある障がい児、読み書き障がいや自閉症、知的障がい、肢体障がいを含む障がい児の学習支援において、携帯電話の活用方法とその有用性について事例研究を行うというもの。
プロジェクト名の「あきちゃん」とは、1995年に中邑教授が出会った、自閉的な発達障害を抱える小学校3年生の男の子のこと。彼は向かい合ってコミュニケーションすることが困難だったが、電子手帳や携帯電話を利用することで、文字で自分の気持ちを伝えることができたという。また、「魔法のポケット」とは、さまざまな機能が詰まっている携帯電話を例えている。
プロジェクトの具体的な活動としては、香川県、和歌山県、山口県、愛媛県、北海道の障がい者施設学校に、iPhoneやWindowsケータイなど、ソフトバンクモバイルの携帯電話34台を貸し出し、携帯電話が学校での学習や生活の助けとなっている事例を収集・分析する。調査実施期間は09年6月-9月末までで、既に各県の学校に携帯電話が配られており、いくつかの事例が上がってきているという。
例えば、自閉症のあるA君は、授業や休憩の残り時間を「あと○○分だよ」と言われても、時間感覚を把握することが苦手なため、いつまで待てばよいのかわからずにパニックを起こしてしまいがちだった。そこで、携帯電話の視覚的に残り時間を表示するアプリケーション「グラフィカルタイマー」を利用したところ、安心して時間を過ごすことができるようになった。
また、知的障がいのあるB君は通学途中、電車を降り忘れ、知らない町で迷子になってしまった。しかし、携帯電話を他人に渡して、どこにいるのかを家族に説明してもらい、無事に迎えに来てもらうことができた。携帯電話があることで本人にも家族にも安心感が生まれ、一人で通学できるようになった、という事例もある。
こうしてまとめた研究結果は、事例集として公開して、教育機関や障がい児の親たちに携帯電話の有用性を訴えるとともに、セミナーなどを開催し、携帯電話の機能が学習支援に結びついた具体的な例を紹介・発表していく予定。
東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍教授は、「現在全国の小中学校で、68万人の発達障がいの子どもたちが学習の支援を必要としている。学習に遅れた子どもたちは、強い不安や絶望を感じており、これが登校拒否や非行の原因ともつながっている。テクノロジーを使えば彼らの能力を補えるにもかかわらず、学校現場ではまだ活用されていない。携帯電話は一番身近な高性能なIT機器。携帯電話の機能を使うことによって、障がいのある子どもたちが学習により参加しやすくなると考えた」と、プロジェクトを立ち上げた背景を語った。
また、「アメリカのワシントン大学では、障がいのある学生が約250人在籍している。彼らが学習できるのは、学校側が録音図書など、携帯電話に入っているような機能を提供しているからだ。また、小・中・高でも技術の利用が当たり前に行われているため、学習の遅れを防いでいる。我々は、携帯電話を活用してすべての子どもが自信を失わず、自己実現できる社会を目指したい」と語った。
続いてソフトバンクモバイル 総務本部 CSR推進部の梅原みどり氏は、「ソフトバンクモバイルの社会貢献の方針は、『ソフトバンクらしい支援をする』ということ。ICT(情報・通信技術)を最大限に生かせるのは、障がい者支援だと考えて、このプロジェクトに出会った。携帯電話は多くの機能を兼ね備えているが、有効に活用しているのは一部のユーザーのみ。プロジェクトを機に、一部の人にしか使われていない機能について広く知ってもらい、子どもからお年よりまですべてのユーザーの生活の質の向上に貢献できることを期待している」と、参加にあたった背景と目的を語った。
なお、東京大学先端科学技術研究センターは、さまざまな研究分野の研究者が集まり、医学、工学、教育学、心理学、社会学など、学際的な観点から「障がい」を取り巻く問題についての研究を行っている。
障がい児の生活を支える携帯電話
同プロジェクトは、「携帯電話が障がい児の生活や学習に役立つ」という活用事例を広く紹介することで、障がい児の学習機会を増やし、社会参加を促進することを目的として、特に認知やコミュニケーションに困難のある障がい児、読み書き障がいや自閉症、知的障がい、肢体障がいを含む障がい児の学習支援において、携帯電話の活用方法とその有用性について事例研究を行うというもの。
プロジェクト名の「あきちゃん」とは、1995年に中邑教授が出会った、自閉的な発達障害を抱える小学校3年生の男の子のこと。彼は向かい合ってコミュニケーションすることが困難だったが、電子手帳や携帯電話を利用することで、文字で自分の気持ちを伝えることができたという。また、「魔法のポケット」とは、さまざまな機能が詰まっている携帯電話を例えている。
プロジェクトの具体的な活動としては、香川県、和歌山県、山口県、愛媛県、北海道の障がい者施設学校に、iPhoneやWindowsケータイなど、ソフトバンクモバイルの携帯電話34台を貸し出し、携帯電話が学校での学習や生活の助けとなっている事例を収集・分析する。調査実施期間は09年6月-9月末までで、既に各県の学校に携帯電話が配られており、いくつかの事例が上がってきているという。
例えば、自閉症のあるA君は、授業や休憩の残り時間を「あと○○分だよ」と言われても、時間感覚を把握することが苦手なため、いつまで待てばよいのかわからずにパニックを起こしてしまいがちだった。そこで、携帯電話の視覚的に残り時間を表示するアプリケーション「グラフィカルタイマー」を利用したところ、安心して時間を過ごすことができるようになった。
iPhoneのアプリケーション「グラフィカルタイマー」
また、知的障がいのあるB君は通学途中、電車を降り忘れ、知らない町で迷子になってしまった。しかし、携帯電話を他人に渡して、どこにいるのかを家族に説明してもらい、無事に迎えに来てもらうことができた。携帯電話があることで本人にも家族にも安心感が生まれ、一人で通学できるようになった、という事例もある。
こうしてまとめた研究結果は、事例集として公開して、教育機関や障がい児の親たちに携帯電話の有用性を訴えるとともに、セミナーなどを開催し、携帯電話の機能が学習支援に結びついた具体的な例を紹介・発表していく予定。
学習の遅れを防ぎ、子どもの不安を取り除く
東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍教授は、「現在全国の小中学校で、68万人の発達障がいの子どもたちが学習の支援を必要としている。学習に遅れた子どもたちは、強い不安や絶望を感じており、これが登校拒否や非行の原因ともつながっている。テクノロジーを使えば彼らの能力を補えるにもかかわらず、学校現場ではまだ活用されていない。携帯電話は一番身近な高性能なIT機器。携帯電話の機能を使うことによって、障がいのある子どもたちが学習により参加しやすくなると考えた」と、プロジェクトを立ち上げた背景を語った。
東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍教授
また、「アメリカのワシントン大学では、障がいのある学生が約250人在籍している。彼らが学習できるのは、学校側が録音図書など、携帯電話に入っているような機能を提供しているからだ。また、小・中・高でも技術の利用が当たり前に行われているため、学習の遅れを防いでいる。我々は、携帯電話を活用してすべての子どもが自信を失わず、自己実現できる社会を目指したい」と語った。
続いてソフトバンクモバイル 総務本部 CSR推進部の梅原みどり氏は、「ソフトバンクモバイルの社会貢献の方針は、『ソフトバンクらしい支援をする』ということ。ICT(情報・通信技術)を最大限に生かせるのは、障がい者支援だと考えて、このプロジェクトに出会った。携帯電話は多くの機能を兼ね備えているが、有効に活用しているのは一部のユーザーのみ。プロジェクトを機に、一部の人にしか使われていない機能について広く知ってもらい、子どもからお年よりまですべてのユーザーの生活の質の向上に貢献できることを期待している」と、参加にあたった背景と目的を語った。
ソフトバンクモバイル 総務本部 CSR推進部の梅原みどり氏
なお、東京大学先端科学技術研究センターは、さまざまな研究分野の研究者が集まり、医学、工学、教育学、心理学、社会学など、学際的な観点から「障がい」を取り巻く問題についての研究を行っている。