ノートPC市場を席巻したミニノートPC、08年を振り返ってみると……
今年、とにかく注目を集めた10.2型以下のモバイルノートPC「ミニノートPC」。「5万円ノートPC」「ミニPC」「UMPC」とも呼ばれ、さまざまなメディアに取り上げられ、08年を象徴するデジタル製品でもある。そこで「BCNランキング」で、ミニノートPCの1年間の動きを追ってみた。
ミニノートPC市場の火付け役であるASUSTeK Computer(ASUS)の「Eee PC 4G-X」が今年の始めに発売。08年1月を基準にした販売台数の指数推移では、1月-6月の08年前半は約150%前後で推移していた。その後7月に427.4%と大きく販売台数を伸ばし、その後は右肩上がりで推移。08年11月には588.2%にまで成長した。(関連記事:「Eee PC」が大人気、発売から3日で1万台を完売、次の入荷は2月中旬か?)
7月に大きく伸びているのは、家電量販店と通信会社イー・モバイルは、「100円PC」を販売するキャンペーンを実施したことによる。これは「Eee PC」と通信端末をセットで購入し、さらにキャリアとの契約を同時に行ったユーザーに、「Eee PC」を100円で販売するというもの。
この「100円PC」キャンペーンは、100円玉をかたどったPOPを使い店先で大々的に告知され、ミニノートPC市場拡大の大きな要因となった。特にこのキャンペーンで、主婦や学生などの心を掴まえることに成功し、ユーザー層が広がった。6月に145.8%だったミニノートPC市場は7月に一気に427.4%までに跳ね上がった。
さらに8月には日本エイサーが「Aspire one」を引っさげ、ミニノートPC市場に参入。「Aspire one」は、記録媒体にSSDを搭載した「Eee PC」シリーズとは別路線のHDD採用モデルで、「Eee PC」シリーズでは記録容量が足りないと不満を感じていたユーザー層を取り込むことができた。(関連記事:ダントツ「Aspire one」、ミニPCランキングで発売直後にシェア51.1%を記録)
また、「Eee PC 4G-X」に比べ、液晶サイズが8.9型と大きく、また、周辺光の乱反射を低減するテクノロジーを採用しているため、屋外でも見やすい。デザインやスペック面で好評で、エイサーは8月のメーカー別販売台数シェアで29.9%を獲得した。ミニノートPC市場の底上げにも貢献しており、販売台数指数は427.4%まで伸張した。
ミニノートPC市場は10月にやや停滞したものの、順調な右肩上がりで推移している。12月には1月に比べ、8倍程度の市場規模になりそうだ。
ノートPC市場全体の中でミニノートPCが占める割合も増えている。08年1月では4.4%しかなかったが、7月には17.3%、エイサーが市場参入した8月は2割を超えた。夏以降も25%前後のシェアをキープしており、ノートPC市場全体でも、ミニノートPCの影響力の大きさが伺える。
少し気が早いが、08年年間ランキングをチェックしてみよう。データは08年1月1日から12月15日までのデータを使用し、暫定的な年間ランキングとする。まずはメーカーランキングから。
1位は、今年1年間ミニノートPC市場をけん引し続けたASUS。販売台数シェアは48.5%。ASUSはこの1年間に「Eee PC」を6シリーズ市場に投入している。SSD搭載モデルだけではなく、HDD搭載モデルも用意したり、液晶ディスプレイのサイズも7型から10.2型まで幅広くカバーするなど、ユーザーのニーズに合った製品を定期的に発売することで高いシェアを獲得した。
次のページ:カラーバリエーションを合算したシリーズ別ランキング
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2位は8月に参入したエイサーで、シェアは24.9%。ミニノートPCのラインアップは「Aspire one」1モデルのみ。エイサーは「Aspire one」のHDD容量を増やしたり、統合ソフトを搭載したり、また値下げを実施するなどして、ユーザーニーズに応えてきた。つまり、エイサーは効率よくシェアを獲得した、といえそうだ。
3位は08年以前から低価格なモバイルノートPCを発売してきた工人舎で、シェアは13.0%。工人舎のミニノートPCは、統合ソフトやワンセグチューナーを搭載したモデルなど、ラインアップは豊富。また、液晶ディスプレイが180度回転し、折りたためるコンバーチブル型なので、電車の中など、立ちながらデータを確認することができる。ビジネスマンを中心に根強いファンがいるようだ。(関連記事:工人舎」が大健闘し1位獲得、「小型ノートPC」メーカー別台数シェアで)
最後にカラーバリエーションを合算したシリーズ別の販売台数シェアランキングを見ていこう。
1位はASUSの初代「Eee PC」、「Eee PC4G」でシェアは20.9%。1月に発売したモデル「Eee PC 4G-X」と、5月に発売したパステルカラーモデル「Eee PC 4G-XU」が含まれる。
ディスプレイは、800×480ドット(WVGA)の7型液晶で、OSは、Windows XP Home Edition。記録媒体としてHDDの代わりに4GBのSSD(ソリッド・ステート・ディスク)を搭載する。メモリは512MB。(レビュー:5万円切るモバイル端末「Eee PC」はどれだけ「使える」のか実際に試した)
2位はエイサーの「Aspire one(AOA150-B)」で、シェアは19.5%。エイサーが初めて発売したミニノートPCで、1024×600ドット(WVGA)の8.9型液晶を搭載。HDD容量は120GBで、メモリは1GB。OSはWindows XP Home Edition。なお、4位の「Aspire one(AOA150-B_1)」は、HDD容量を120GBから160GBに増量したモデル。(レビュー:旅行のおともに低価格ミニノートPC、「Aspire One」を連れまわしてみた)
3位もASUSの「Eee PC」、「Eee PC901-X」で、シェアは16.8%。1024×600ドット(WVGA)の8.9型液晶を搭載するほか、液晶ディスプレイの上部に130万画素のWebカメラを搭載する。メモリ容量は1GBで、12GBのSSDを搭載する。(レビュー:「Eee PC」の最上位モデル「901-X」の実力は? その使い勝手を確かめた)
夏以降、液晶サイズの大型化、記録媒体の増量化が進んでいるミニノートPC市場。秋頃には海外メーカーだけではなく、国内メーカーも参入し、ますます勢いづいている。
また、ASUSが11月にラメの入った光沢の天板を採用した「Eee PC S101」を発売したほか、11月に日本HPが深紅のボディーに芍薬(シャクヤク)の花をあしらった天板を採用した「HP Mini 100 Vivienne Tam Edition」を発表するなど、早くもデザインにこだわったモデルも出始めている。09年は液晶のサイズ、記録媒体の容量、そしてデザインがポイントとなりそうだ。(BCN・山下彰子)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで123品目を対象としています。
ミニノートPCの軌跡 ターニングポイントは熱い夏!!
ミニノートPC市場の火付け役であるASUSTeK Computer(ASUS)の「Eee PC 4G-X」が今年の始めに発売。08年1月を基準にした販売台数の指数推移では、1月-6月の08年前半は約150%前後で推移していた。その後7月に427.4%と大きく販売台数を伸ばし、その後は右肩上がりで推移。08年11月には588.2%にまで成長した。(関連記事:「Eee PC」が大人気、発売から3日で1万台を完売、次の入荷は2月中旬か?)
7月に大きく伸びているのは、家電量販店と通信会社イー・モバイルは、「100円PC」を販売するキャンペーンを実施したことによる。これは「Eee PC」と通信端末をセットで購入し、さらにキャリアとの契約を同時に行ったユーザーに、「Eee PC」を100円で販売するというもの。
この「100円PC」キャンペーンは、100円玉をかたどったPOPを使い店先で大々的に告知され、ミニノートPC市場拡大の大きな要因となった。特にこのキャンペーンで、主婦や学生などの心を掴まえることに成功し、ユーザー層が広がった。6月に145.8%だったミニノートPC市場は7月に一気に427.4%までに跳ね上がった。
さらに8月には日本エイサーが「Aspire one」を引っさげ、ミニノートPC市場に参入。「Aspire one」は、記録媒体にSSDを搭載した「Eee PC」シリーズとは別路線のHDD採用モデルで、「Eee PC」シリーズでは記録容量が足りないと不満を感じていたユーザー層を取り込むことができた。(関連記事:ダントツ「Aspire one」、ミニPCランキングで発売直後にシェア51.1%を記録)
また、「Eee PC 4G-X」に比べ、液晶サイズが8.9型と大きく、また、周辺光の乱反射を低減するテクノロジーを採用しているため、屋外でも見やすい。デザインやスペック面で好評で、エイサーは8月のメーカー別販売台数シェアで29.9%を獲得した。ミニノートPC市場の底上げにも貢献しており、販売台数指数は427.4%まで伸張した。
ミニノートPC市場は10月にやや停滞したものの、順調な右肩上がりで推移している。12月には1月に比べ、8倍程度の市場規模になりそうだ。
ノートPC市場全体の中でミニノートPCが占める割合も増えている。08年1月では4.4%しかなかったが、7月には17.3%、エイサーが市場参入した8月は2割を超えた。夏以降も25%前後のシェアをキープしており、ノートPC市場全体でも、ミニノートPCの影響力の大きさが伺える。
メーカー別年間ランキング 今年ミニノートPC市場をけん引したのは……
少し気が早いが、08年年間ランキングをチェックしてみよう。データは08年1月1日から12月15日までのデータを使用し、暫定的な年間ランキングとする。まずはメーカーランキングから。
1位は、今年1年間ミニノートPC市場をけん引し続けたASUS。販売台数シェアは48.5%。ASUSはこの1年間に「Eee PC」を6シリーズ市場に投入している。SSD搭載モデルだけではなく、HDD搭載モデルも用意したり、液晶ディスプレイのサイズも7型から10.2型まで幅広くカバーするなど、ユーザーのニーズに合った製品を定期的に発売することで高いシェアを獲得した。
次のページ:カラーバリエーションを合算したシリーズ別ランキング
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2位は8月に参入したエイサーで、シェアは24.9%。ミニノートPCのラインアップは「Aspire one」1モデルのみ。エイサーは「Aspire one」のHDD容量を増やしたり、統合ソフトを搭載したり、また値下げを実施するなどして、ユーザーニーズに応えてきた。つまり、エイサーは効率よくシェアを獲得した、といえそうだ。
3位は08年以前から低価格なモバイルノートPCを発売してきた工人舎で、シェアは13.0%。工人舎のミニノートPCは、統合ソフトやワンセグチューナーを搭載したモデルなど、ラインアップは豊富。また、液晶ディスプレイが180度回転し、折りたためるコンバーチブル型なので、電車の中など、立ちながらデータを確認することができる。ビジネスマンを中心に根強いファンがいるようだ。(関連記事:工人舎」が大健闘し1位獲得、「小型ノートPC」メーカー別台数シェアで)
カラバリ合算のシリーズ別ランキング 08年の顔は……
最後にカラーバリエーションを合算したシリーズ別の販売台数シェアランキングを見ていこう。
1位はASUSの初代「Eee PC」、「Eee PC4G」でシェアは20.9%。1月に発売したモデル「Eee PC 4G-X」と、5月に発売したパステルカラーモデル「Eee PC 4G-XU」が含まれる。
ディスプレイは、800×480ドット(WVGA)の7型液晶で、OSは、Windows XP Home Edition。記録媒体としてHDDの代わりに4GBのSSD(ソリッド・ステート・ディスク)を搭載する。メモリは512MB。(レビュー:5万円切るモバイル端末「Eee PC」はどれだけ「使える」のか実際に試した)
Eee PC4G
2位はエイサーの「Aspire one(AOA150-B)」で、シェアは19.5%。エイサーが初めて発売したミニノートPCで、1024×600ドット(WVGA)の8.9型液晶を搭載。HDD容量は120GBで、メモリは1GB。OSはWindows XP Home Edition。なお、4位の「Aspire one(AOA150-B_1)」は、HDD容量を120GBから160GBに増量したモデル。(レビュー:旅行のおともに低価格ミニノートPC、「Aspire One」を連れまわしてみた)
Aspire one
3位もASUSの「Eee PC」、「Eee PC901-X」で、シェアは16.8%。1024×600ドット(WVGA)の8.9型液晶を搭載するほか、液晶ディスプレイの上部に130万画素のWebカメラを搭載する。メモリ容量は1GBで、12GBのSSDを搭載する。(レビュー:「Eee PC」の最上位モデル「901-X」の実力は? その使い勝手を確かめた)
Eee PC901-X
液晶の大型化が進むミニノートPC市場、次は記録媒体の大容量化か!?
夏以降、液晶サイズの大型化、記録媒体の増量化が進んでいるミニノートPC市場。秋頃には海外メーカーだけではなく、国内メーカーも参入し、ますます勢いづいている。
また、ASUSが11月にラメの入った光沢の天板を採用した「Eee PC S101」を発売したほか、11月に日本HPが深紅のボディーに芍薬(シャクヤク)の花をあしらった天板を採用した「HP Mini 100 Vivienne Tam Edition」を発表するなど、早くもデザインにこだわったモデルも出始めている。09年は液晶のサイズ、記録媒体の容量、そしてデザインがポイントとなりそうだ。(BCN・山下彰子)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで123品目を対象としています。