写真合成が作り出す不思議な世界 ジャングル「Photomatix Pro」
カメラで撮影した写真を見ると、撮影時に自分が感じたイメージと違っていてなんだかがっかり――そんな経験をしたことはないだろうか。そんな少し残念な気持ちを解消してくれそうなソフトがある。ジャングルが発売した、複数の写真を合成して、目で見たままの映像に近い写真を作り出してくれる「HDRsoft Photomatix Pro 3.0(Photomatix Pro)」だ。
「Photomatix Pro」は、明るさの異なる複数の写真を合成し、ハイダイナミックレンジ(HDR)画像を生成するソフト。写真を合成することで、被写体の明暗を細部まで再現できるのだという。では、このHDR画像とはなんだろう?
まず、写真にはダイナミックレンジという要素がある。これは簡単に言うと、写真の最も明るい部分と最も暗い部分の幅のこと。このダイナミックレンジの幅が違う同じ構図の写真を合成することで、ダイナミックレンジが非常に広い1枚の画像=HDR画像ができるのだ。
ダイナミックレンジが広いということは、表現できる明暗の幅が広いということなので、写真の明るい部分は明るく、暗い部分は暗いまま表示でき、より人間の目が捉えた映像に近い表現ができるのだ。ただし、HDR画像のダイナミックレンジは、通常のディスプレイで表示できる幅を大きく超えているため、ディスプレイ表示に適した画像に調整するトーンマッピングという作業が必要になる。文章だけではわかりにくいと思うので、下のサンプルイメージを見てほしい。
左の小さな3枚の画像が、同じ構図で露出を変えた写真で、それを合成してHDR画像にしてトーンマッピングを施したのが右の図だ。ご覧のように、もとの写真からは想像もできない非常にきれいな画像だ。この一連の作業を行えるのが「Photomatix Pro」なのだ。
なにはともあれ、実際に使ってみよう。まず、明るさの異なる複数の画像を撮影するには、同じ構図で露出を変える必要があるが、これは露出を少しずつ変えながら複数のカットを撮影できるオートブラケティングという機能が便利だ。
そこで、今回は3段階のオートブラケティング機能を搭載したニコンのデジタル一眼レフカメラ「D90」を使用。これに、広角レンズ「AF-S DX Zoom-Nikkor ED 12-24mm F4G(IF)」と魚眼レンズ「AF DX Fisheye-Nikkor ED 10.5mm F2.8G」、さらにマクロレンズ「Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8D」を組み合わせて撮影することにした。三脚もあればベストだったが、「Photomatix Pro」には画像同士のわずかなズレを修正する機能があるため、今回の撮影では使用していない。
まずは写真の定番といえる夜景を撮影しに出かける。ビルの展望台からの夜景を「Photomatix Pro」で合成し、トーンマッピングを施したのがこちらの画像だ。
素人が普通に撮影しただけでは表現できないような画像が出来上がった。色とりどりの光があり、どことなく不思議な感じを受ける。また、実際にソフトを使ってみて感じたことだが、画像の合成自体は非常に簡単。ソフトを立ち上げて、合成したい写真を選択すれば、後は自動でHDR画像を生成してくれる。それよりも、画質調整のために行うトーンマッピングが面白い。
トーンマッピングには「細部強調」と「トーン圧縮」の2種類があり、コントラストや鮮やかさを調整しながら、好みの画像に仕上げられる。「細部強調」では暗部のディテールを強調することで、絵画的なイメージや非現実的なイメージを作り出すことができ、「トーン圧縮」はより自然で写真的な画像を作るのに適しているという。
ここに掲載した写真のトーンマッピングは、より細かな設定が可能な「細部強調」を使っている。とはいっても、操作はいたってシンプルで、「トーン」や「カラー」といった項目ごとに別けられた要素を、スライダーを使って動かしていくだけ。作業中の画像はリアルタイムで確認できるので、出来上がりを確認しながら進められる。
今回、街をうろうろして撮影した写真を様々に加工したものを以下に並べてみる。
魚眼レンズは初めて使用したため、正直使い方がよくわからなかったのだが、葉の色のコントラストが鮮やかだったため、ここで一枚撮影。「ハイライトの彩度」をいじり、コントラストを強調するような調整にしてみた。
こちらの写真では、意図的に真ん中の被写体と芝生だけ浮いた感じを作りたいと思い、いろいろいじってみた。すると「シャドウの彩度」という項目を下げると、イメージに近い処理ができることを発見した。
とある交差点での一枚。夕方ということもあり全体的に暗かったのだが、陰になった部分と、手前の工事中の柵やネオンの色がコントラストを作り、非常にまがまがしいイメージになった。雲の立ち込めているような感じは「マイクロスムージング」の調節で表現できるようだ。
家に帰ってから、ふとカラフルな被写体ならなんでもいいのかと思い、床にビー玉をばら撒いて撮影してみる。しかし、今回は変化が出たのは陰の強弱だけで、そのほかはあまり合成前と変わらない写真が出来た。写真の明暗の差を利用するソフトなだけに、蛍光灯のみで光のコントラストが少ない屋内の撮影にはあまり向いていないのかもしれない。
また、自分で画質を調節するのが面倒だという人には、途中でHDRイメージを作成せずに、直接合成画像を生成してくれる「露出合成」という機能もある。この機能を使って先ほどの夜景の写真を作成してみたのが下の画像だ。
ご覧の通り非常にきれいに仕上がりはするのだが、画質の調整の幅がトーンマッピングよりも制限されるため、自由度は低くなってしまう。個人的にはトーンマッピングであれこれいじる方が好みだった。
実際に「Photomatix Pro」を使ってみた感想として、非常に操作が簡単だということが挙げられる。実はHDR画像の作成自体は目新しいものではなく、海外などではかなりメジャーらしいのだが、誰でも手軽に使えるという意味で写真撮影の楽しみを非常に広げてくれるソフトだと思う。ジャングルのホームページでは、体験版を無料で配布しているようなので、興味をもたれた方は、一度使ってみてはどうだろう(BCN・山田五大)
HDR画像を作り出す「Photomatix Pro」とは?
「Photomatix Pro」は、明るさの異なる複数の写真を合成し、ハイダイナミックレンジ(HDR)画像を生成するソフト。写真を合成することで、被写体の明暗を細部まで再現できるのだという。では、このHDR画像とはなんだろう?
まず、写真にはダイナミックレンジという要素がある。これは簡単に言うと、写真の最も明るい部分と最も暗い部分の幅のこと。このダイナミックレンジの幅が違う同じ構図の写真を合成することで、ダイナミックレンジが非常に広い1枚の画像=HDR画像ができるのだ。
ダイナミックレンジが広いということは、表現できる明暗の幅が広いということなので、写真の明るい部分は明るく、暗い部分は暗いまま表示でき、より人間の目が捉えた映像に近い表現ができるのだ。ただし、HDR画像のダイナミックレンジは、通常のディスプレイで表示できる幅を大きく超えているため、ディスプレイ表示に適した画像に調整するトーンマッピングという作業が必要になる。文章だけではわかりにくいと思うので、下のサンプルイメージを見てほしい。
左の小さな3枚の画像が、同じ構図で露出を変えた写真で、それを合成してHDR画像にしてトーンマッピングを施したのが右の図だ。ご覧のように、もとの写真からは想像もできない非常にきれいな画像だ。この一連の作業を行えるのが「Photomatix Pro」なのだ。
なにはともあれ、実際に使ってみよう。まず、明るさの異なる複数の画像を撮影するには、同じ構図で露出を変える必要があるが、これは露出を少しずつ変えながら複数のカットを撮影できるオートブラケティングという機能が便利だ。
撮影に使用した「D90」と3本のレンズ
そこで、今回は3段階のオートブラケティング機能を搭載したニコンのデジタル一眼レフカメラ「D90」を使用。これに、広角レンズ「AF-S DX Zoom-Nikkor ED 12-24mm F4G(IF)」と魚眼レンズ「AF DX Fisheye-Nikkor ED 10.5mm F2.8G」、さらにマクロレンズ「Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8D」を組み合わせて撮影することにした。三脚もあればベストだったが、「Photomatix Pro」には画像同士のわずかなズレを修正する機能があるため、今回の撮影では使用していない。
簡単かつ自由に使えるトーンマッピング
まずは写真の定番といえる夜景を撮影しに出かける。ビルの展望台からの夜景を「Photomatix Pro」で合成し、トーンマッピングを施したのがこちらの画像だ。
広角レンズ「AF-S DX Zoom-Nikkor ED 12-24mm F4G(IF)」で撮影
素人が普通に撮影しただけでは表現できないような画像が出来上がった。色とりどりの光があり、どことなく不思議な感じを受ける。また、実際にソフトを使ってみて感じたことだが、画像の合成自体は非常に簡単。ソフトを立ち上げて、合成したい写真を選択すれば、後は自動でHDR画像を生成してくれる。それよりも、画質調整のために行うトーンマッピングが面白い。
トーンマッピングには「細部強調」と「トーン圧縮」の2種類があり、コントラストや鮮やかさを調整しながら、好みの画像に仕上げられる。「細部強調」では暗部のディテールを強調することで、絵画的なイメージや非現実的なイメージを作り出すことができ、「トーン圧縮」はより自然で写真的な画像を作るのに適しているという。
操作画面(Mac版)。左のスライダーで画質を調整する
ここに掲載した写真のトーンマッピングは、より細かな設定が可能な「細部強調」を使っている。とはいっても、操作はいたってシンプルで、「トーン」や「カラー」といった項目ごとに別けられた要素を、スライダーを使って動かしていくだけ。作業中の画像はリアルタイムで確認できるので、出来上がりを確認しながら進められる。
今回、街をうろうろして撮影した写真を様々に加工したものを以下に並べてみる。
魚眼レンズ「AF DX Fisheye-Nikkor ED 10.5mm F2.8G」で撮影
魚眼レンズは初めて使用したため、正直使い方がよくわからなかったのだが、葉の色のコントラストが鮮やかだったため、ここで一枚撮影。「ハイライトの彩度」をいじり、コントラストを強調するような調整にしてみた。
広角レンズ「AF-S DX Zoom-Nikkor ED 12-24mm F4G(IF)」で撮影
こちらの写真では、意図的に真ん中の被写体と芝生だけ浮いた感じを作りたいと思い、いろいろいじってみた。すると「シャドウの彩度」という項目を下げると、イメージに近い処理ができることを発見した。
魚眼レンズ「AF DX Fisheye-Nikkor ED 10.5mm F2.8G」で撮影
とある交差点での一枚。夕方ということもあり全体的に暗かったのだが、陰になった部分と、手前の工事中の柵やネオンの色がコントラストを作り、非常にまがまがしいイメージになった。雲の立ち込めているような感じは「マイクロスムージング」の調節で表現できるようだ。
マクロレンズ「Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8D」で撮影
家に帰ってから、ふとカラフルな被写体ならなんでもいいのかと思い、床にビー玉をばら撒いて撮影してみる。しかし、今回は変化が出たのは陰の強弱だけで、そのほかはあまり合成前と変わらない写真が出来た。写真の明暗の差を利用するソフトなだけに、蛍光灯のみで光のコントラストが少ない屋内の撮影にはあまり向いていないのかもしれない。
また、自分で画質を調節するのが面倒だという人には、途中でHDRイメージを作成せずに、直接合成画像を生成してくれる「露出合成」という機能もある。この機能を使って先ほどの夜景の写真を作成してみたのが下の画像だ。
実際に「Photomatix Pro」を使ってみた感想として、非常に操作が簡単だということが挙げられる。実はHDR画像の作成自体は目新しいものではなく、海外などではかなりメジャーらしいのだが、誰でも手軽に使えるという意味で写真撮影の楽しみを非常に広げてくれるソフトだと思う。ジャングルのホームページでは、体験版を無料で配布しているようなので、興味をもたれた方は、一度使ってみてはどうだろう(BCN・山田五大)