まさに写真機そのもののフルサイズデジ一眼、ソニーの「α900」の画質とは?
ソニー「α」シリーズのフラッグシップ機「α900」。現在ある35mm判デジタル一眼レフカメラでは最高の有効約2460万画素で、視野率100%のファインダーを搭載する、名実ともにソニー「α」シリーズのフラッグシップ機を名乗るにふさわしいカメラだ。その「α900」と、カールツァイスレンズ「Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM」をセットでお借りすることができたので、その使用感など画質を中心にお伝えしよう。
→第1弾・写真機の雰囲気を持つフルサイズのデジ一眼、ソニーの「α900」のカタチとは?を読む
「α900」は、35mmフルサイズ機としては初めてボディ内蔵手ブレ補正機能を搭載した。この手ブレ補正ユニットを利用して、撮像素子に付いたゴミやホコリをふるい落とすアンチダスト機能も搭載する。フルサイズ機としては十分にコンパクトなボディで、APS-Cサイズの約2.35倍もの面積を持つフルサイズCMOSセンサーを搭載して、しかも、それを高速で動かすためのメカニズムまで備えているのだから恐れ入る。
ただ、ソニーでは、「α900」の手ブレ補正機能の効果はシャッタースピード換算で約2.5-4段分としているが、これはあまり過信しすぎないほうがいいだろう。今回、すべて手持ちで撮影してみて、たしかに手ブレ補正効果は実感できたのだが、撮影した画像をピクセル等倍でチェックしてみると、どうもシャープさに欠けるように感じられる画像があった。
「α900」のファインダー内下部には、手ブレの度合いを示す「手ブレインジケーター」が表示されるのだが、オートブラケティングで段階的に露出を変えながら、約5コマ/秒で連写していると、そのインジケーターの目盛りが跳ね上がることがあった。これはどうやら、ミラーショックによるものらしい。フルサイズCMOSセンサーに見合う大きなクイックリターンミラーが上下動するときのショックは、決して小さくはないようで、気を抜いてカメラを構えているとそれがブレにつながってしまう。さすがに手ブレ補正機能も、行き過ぎた手ブレまで補正しきれないのは当然のことだろう。
そもそも2460万画素もの超高画素になると、ピクセル等倍で見たときには、ほんのわずかなブレがあるだけでも目立ってしまう。高精細であればあるほど、隅々までしっかり像を結んでいないと、何だか眠たい画像に見えてしまう。ボディ内蔵手ブレ補正機能を搭載するとはいえ、やはり、これだけ画素数の高い「α900」では、できれば頑健な大型の三脚にきっちり固定して、中判カメラで撮影するのと同じ気構えで撮影に臨むべきだろう。
なお、付け加えておくと、「α900」のクイックリターンミラーの動作には、一眼レフカメラで一般的な「スイング方式」ではなく、特殊な「パラレルリンク方式」を採用している。ミラーをほぼ平行移動で持ち上げるというユニークな駆動方式で、ミラーアップによるファインダー像の消失時間を極力短くすることに貢献している。このパラレルリンク方式のミラー動作音なのか、「α900」のシャッター音は、なんとなく一眼レフタイプの中判カメラのシャッター音に近いように感じた。これはもう個人の好みの問題なのだが、「EOS 5D Mark II」よりも「α900」のほうが、筆者的には好みのシャッター音だった。
黒つぶれ・白飛びを抑えて最適な階調再現に自動補正してくれる「Dレンジオプティマイザー」機能は、ソニー「α」シリーズではもうおなじみのものだが、「α900」では、その効果がより自然できめ細かいものになっている。
従来の「Dレンジオプティマイザー」でアドバンスオートに設定して撮影していると、画像のシャドー部がややオーバーなくらい明るく補正されてしまうことがあったが、今回試用した限りでは、そうした不満は感じなかった。
画像の仕上がりをコントロールする「クリエイティブスタイル」機能は、ビビッド、クリア、ポートレート、風景など計13種類を搭載する。好みのスタイルを選ぶだけで、コントラストや明度、彩度などのパラメータが最適に設定される便利な「クリエイティブスタイル」機能だが、マルチセレクターでダイレクトに選択できるのは、スタイルボックスに登録してある6種類が優先される。
登録外のスタイルを選択するには、それをまずスタイルボックスに登録する必要があるが、このとき、すでに登録済みのスタイルのどれかと入れ替えて登録しなければならない。なぜスタイルボックスに6種類しか登録できないようにしてあるのか、少々疑問に思った。13種類すべて登録できるようにしても、情報表示の仕方を工夫すれば、それほど使い勝手は悪くならなのではと思うのだが……。
絞り効果(ボケ具合)やホワイトバランスなどに加え、こうした多彩な画像表現がどのような影響をもたらすか、撮影前に確認できる機能が「α900」には備わっている。それが、「α900」で初めて採用された「インテリジェントプレビュー」機能だ。
「インテリジェントプレビュー」を使うと、例えば、露出補正を加えたり、ホワイトバランスを変更したり、Dレンジオプティマイザーやクリエイティブスタイルを設定し直したりしたときに、「α900」の液晶モニターに、それらの効果を反映した画像をシミュレーション表示することができる。わざわざテスト撮影するまでもなく、簡単に効果の効き具合が確認できるわけで、これはもう、デジタルだからこそ可能になった機能と言えるだろう。
ただし、「インテリジェントプレビュー」で表示した画像は、保存することができない。もし、画像の保存もできれば、いくつかの設定を「インテリジェントプレビュー」で試した上で、それらの画像を比較検討して最適な設定へと絞り込んでいく、といった使い方もできるのではないかと思うので、その点はやや残念ではある。
___page___
さて、最後に「α900」の画質についても言及しておこう。有効約2460万画素の35mmフルサイズの画質は、言うまでもないが、極めて高精細で階調豊かだ。紅葉した葉の一枚一枚まで、みごとに結像しているし、日差しを受けて輝く水面の微細な色模様も、余すところなく再現して見せてくれる。その情報量の多さ、豊穣な色の世界は、これまでのデジタル一眼レフカメラでは表現できていなかったものだ。とりわけ色の豊かさには、目を見張るものがある。2460万画素ともなると、ごくわずかな濃淡の違い、微妙なグラデーションまでも、しっかり描き出すことができた。
「α900」の画像の繊細さと色彩の豊かさには、ニコン「D3」の有効約1210万画素では、さすがに太刀打ちできないようだ。ただ、階調描写やダイナミックレンジの広さでは、「D3」も決して負けてはいない。一方、画像の解像感やディテールのシャープさに関しては、有効約2110万画素のキヤノン「EOS-1Ds Mark III」のほうが勝るかもしれない。「EOS」シリーズは総じてシャープネスが高めで、色合いは割とあっさりした雰囲気だが、その分、とても透明感の高い画像を写し出す。このあたりのいわば“高画質を表現するレシピ”の違いは、各カメラメーカーの個性でもあり、ユーザーの好みが分かれるところでもあるだろう。
気になる高感度撮影での画質だが、これに関しては、「α900」はもう一頑張りしてほしかった。ISO800あたりから、とくにシャドー部で高感度ノイズが目立ち始める。ISO1600になると、それが画像全体に現れる感じだ。「α900」の最高I感度はISO3200(拡張でISO6400まで)だが、さすがにそこまで感度を上げるのはためらわれる。また、高感度ノイズリダクションはISO1600から適用されるが、設定が「弱」だとやや効きが弱い感じだ。通常は、高感度ノイズリダクション「標準」の設定にしておくのがいいだろう。
ところで、2460万画素の画像ともなると、ファイルサイズも巨大だ。今回の試写では、JPEGエクストラファインの設定で、1画像のファイルサイズは約20-30MBほどにもなった。RAW画像であれば、さらにファイルサイズは大きくなるはずだ。
1画像がこれだけのファイルサイズになると、8GBのCFカードでもすぐに容量いっぱいになってしまうし、PCに取り込んだときには、あっという間にHDDを占領してしまう。もちろん、RAW現像や画像補整をストレスなく行うためには、PCにもより高速なCPUと十分なメモリが必要になってくる。
2000万画素以上の画像を扱うには、カメラ本体とレンズへの投資だけでなく、記録メディア、PC、HDD(最終的に画像を保存しておくストレージ)への投資も生半可ではすまなくなるということだけは、覚悟しておいたほうが良さそうだ。
それでも、2460万画素フルサイズの画質を目にしてしまうと、「やっぱりすごくいい!」と物欲を刺激されることは間違いないだろう。
「α900」には、最近のデジタル一眼レフカメラでトレンドとなってきているライブビュー撮影機能も、動画撮影機能も、搭載されていない。その代わり、「写真を撮る道具」としてのカメラ本来のあり方を実感させてくれるフィーリングを持っている。だから「α900」で写真を撮っていると、撮ることに没頭できて実に楽しいのだ。この感覚は、これまでのデジタル一眼レフカメラではなかなか得られなかったもの、と言えるかもしれない。なんとも悩ましく、魅力的なカメラが登場したものだ。(フリー・カメラマン 榎木秋彦)
→第1弾・写真機の雰囲気を持つフルサイズのデジ一眼、ソニーの「α900」のカタチとは?を読む
ボディ内蔵手ブレ補正は有効だが過信は禁物
「α900」は、35mmフルサイズ機としては初めてボディ内蔵手ブレ補正機能を搭載した。この手ブレ補正ユニットを利用して、撮像素子に付いたゴミやホコリをふるい落とすアンチダスト機能も搭載する。フルサイズ機としては十分にコンパクトなボディで、APS-Cサイズの約2.35倍もの面積を持つフルサイズCMOSセンサーを搭載して、しかも、それを高速で動かすためのメカニズムまで備えているのだから恐れ入る。
ただ、ソニーでは、「α900」の手ブレ補正機能の効果はシャッタースピード換算で約2.5-4段分としているが、これはあまり過信しすぎないほうがいいだろう。今回、すべて手持ちで撮影してみて、たしかに手ブレ補正効果は実感できたのだが、撮影した画像をピクセル等倍でチェックしてみると、どうもシャープさに欠けるように感じられる画像があった。
「α900」のファインダー内下部には、手ブレの度合いを示す「手ブレインジケーター」が表示されるのだが、オートブラケティングで段階的に露出を変えながら、約5コマ/秒で連写していると、そのインジケーターの目盛りが跳ね上がることがあった。これはどうやら、ミラーショックによるものらしい。フルサイズCMOSセンサーに見合う大きなクイックリターンミラーが上下動するときのショックは、決して小さくはないようで、気を抜いてカメラを構えているとそれがブレにつながってしまう。さすがに手ブレ補正機能も、行き過ぎた手ブレまで補正しきれないのは当然のことだろう。
要三脚! 中判カメラで撮るつもりで撮ろう
そもそも2460万画素もの超高画素になると、ピクセル等倍で見たときには、ほんのわずかなブレがあるだけでも目立ってしまう。高精細であればあるほど、隅々までしっかり像を結んでいないと、何だか眠たい画像に見えてしまう。ボディ内蔵手ブレ補正機能を搭載するとはいえ、やはり、これだけ画素数の高い「α900」では、できれば頑健な大型の三脚にきっちり固定して、中判カメラで撮影するのと同じ気構えで撮影に臨むべきだろう。
中判カメラ並の描写力
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]
なお、付け加えておくと、「α900」のクイックリターンミラーの動作には、一眼レフカメラで一般的な「スイング方式」ではなく、特殊な「パラレルリンク方式」を採用している。ミラーをほぼ平行移動で持ち上げるというユニークな駆動方式で、ミラーアップによるファインダー像の消失時間を極力短くすることに貢献している。このパラレルリンク方式のミラー動作音なのか、「α900」のシャッター音は、なんとなく一眼レフタイプの中判カメラのシャッター音に近いように感じた。これはもう個人の好みの問題なのだが、「EOS 5D Mark II」よりも「α900」のほうが、筆者的には好みのシャッター音だった。
クリエイティブな表現を可能にするαシリーズならではの機能
黒つぶれ・白飛びを抑えて最適な階調再現に自動補正してくれる「Dレンジオプティマイザー」機能は、ソニー「α」シリーズではもうおなじみのものだが、「α900」では、その効果がより自然できめ細かいものになっている。
従来の「Dレンジオプティマイザー」でアドバンスオートに設定して撮影していると、画像のシャドー部がややオーバーなくらい明るく補正されてしまうことがあったが、今回試用した限りでは、そうした不満は感じなかった。
Dレンジオプティマイザーの操作画面
画像の仕上がりをコントロールする「クリエイティブスタイル」機能は、ビビッド、クリア、ポートレート、風景など計13種類を搭載する。好みのスタイルを選ぶだけで、コントラストや明度、彩度などのパラメータが最適に設定される便利な「クリエイティブスタイル」機能だが、マルチセレクターでダイレクトに選択できるのは、スタイルボックスに登録してある6種類が優先される。
登録外のスタイルを選択するには、それをまずスタイルボックスに登録する必要があるが、このとき、すでに登録済みのスタイルのどれかと入れ替えて登録しなければならない。なぜスタイルボックスに6種類しか登録できないようにしてあるのか、少々疑問に思った。13種類すべて登録できるようにしても、情報表示の仕方を工夫すれば、それほど使い勝手は悪くならなのではと思うのだが……。
初搭載の「インテリジェントプレビュー」は試行錯誤のツール
絞り効果(ボケ具合)やホワイトバランスなどに加え、こうした多彩な画像表現がどのような影響をもたらすか、撮影前に確認できる機能が「α900」には備わっている。それが、「α900」で初めて採用された「インテリジェントプレビュー」機能だ。
「インテリジェントプレビュー」を使うと、例えば、露出補正を加えたり、ホワイトバランスを変更したり、Dレンジオプティマイザーやクリエイティブスタイルを設定し直したりしたときに、「α900」の液晶モニターに、それらの効果を反映した画像をシミュレーション表示することができる。わざわざテスト撮影するまでもなく、簡単に効果の効き具合が確認できるわけで、これはもう、デジタルだからこそ可能になった機能と言えるだろう。
ただし、「インテリジェントプレビュー」で表示した画像は、保存することができない。もし、画像の保存もできれば、いくつかの設定を「インテリジェントプレビュー」で試した上で、それらの画像を比較検討して最適な設定へと絞り込んでいく、といった使い方もできるのではないかと思うので、その点はやや残念ではある。
___page___
2460万画素フルサイズはさすがに圧巻! ただ高感度は…
さて、最後に「α900」の画質についても言及しておこう。有効約2460万画素の35mmフルサイズの画質は、言うまでもないが、極めて高精細で階調豊かだ。紅葉した葉の一枚一枚まで、みごとに結像しているし、日差しを受けて輝く水面の微細な色模様も、余すところなく再現して見せてくれる。その情報量の多さ、豊穣な色の世界は、これまでのデジタル一眼レフカメラでは表現できていなかったものだ。とりわけ色の豊かさには、目を見張るものがある。2460万画素ともなると、ごくわずかな濃淡の違い、微妙なグラデーションまでも、しっかり描き出すことができた。
微妙なグラデーションもしっかり再現
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]
「α900」の画像の繊細さと色彩の豊かさには、ニコン「D3」の有効約1210万画素では、さすがに太刀打ちできないようだ。ただ、階調描写やダイナミックレンジの広さでは、「D3」も決して負けてはいない。一方、画像の解像感やディテールのシャープさに関しては、有効約2110万画素のキヤノン「EOS-1Ds Mark III」のほうが勝るかもしれない。「EOS」シリーズは総じてシャープネスが高めで、色合いは割とあっさりした雰囲気だが、その分、とても透明感の高い画像を写し出す。このあたりのいわば“高画質を表現するレシピ”の違いは、各カメラメーカーの個性でもあり、ユーザーの好みが分かれるところでもあるだろう。
「α900」(上)とニコン「D3」(下)と比較
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]
気になる高感度撮影での画質だが、これに関しては、「α900」はもう一頑張りしてほしかった。ISO800あたりから、とくにシャドー部で高感度ノイズが目立ち始める。ISO1600になると、それが画像全体に現れる感じだ。「α900」の最高I感度はISO3200(拡張でISO6400まで)だが、さすがにそこまで感度を上げるのはためらわれる。また、高感度ノイズリダクションはISO1600から適用されるが、設定が「弱」だとやや効きが弱い感じだ。通常は、高感度ノイズリダクション「標準」の設定にしておくのがいいだろう。
暗い被写体では、RAWで撮影して現像するほうが、ノイズを少なくできるかもしれない
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]
画像サイズは半端じゃない! 追加投資覚悟でイッちゃいますか?
ところで、2460万画素の画像ともなると、ファイルサイズも巨大だ。今回の試写では、JPEGエクストラファインの設定で、1画像のファイルサイズは約20-30MBほどにもなった。RAW画像であれば、さらにファイルサイズは大きくなるはずだ。
1画像がこれだけのファイルサイズになると、8GBのCFカードでもすぐに容量いっぱいになってしまうし、PCに取り込んだときには、あっという間にHDDを占領してしまう。もちろん、RAW現像や画像補整をストレスなく行うためには、PCにもより高速なCPUと十分なメモリが必要になってくる。
2000万画素以上の画像を扱うには、カメラ本体とレンズへの投資だけでなく、記録メディア、PC、HDD(最終的に画像を保存しておくストレージ)への投資も生半可ではすまなくなるということだけは、覚悟しておいたほうが良さそうだ。
それでも、2460万画素フルサイズの画質を目にしてしまうと、「やっぱりすごくいい!」と物欲を刺激されることは間違いないだろう。
「α900」には、最近のデジタル一眼レフカメラでトレンドとなってきているライブビュー撮影機能も、動画撮影機能も、搭載されていない。その代わり、「写真を撮る道具」としてのカメラ本来のあり方を実感させてくれるフィーリングを持っている。だから「α900」で写真を撮っていると、撮ることに没頭できて実に楽しいのだ。この感覚は、これまでのデジタル一眼レフカメラではなかなか得られなかったもの、と言えるかもしれない。なんとも悩ましく、魅力的なカメラが登場したものだ。(フリー・カメラマン 榎木秋彦)