写真機の雰囲気を持つフルサイズのデジ一眼、ソニーの「α900」のカタチとは?
10月23日、ソニーは「α」シリーズのフラッグシップ機「α900」を発売した。キヤノン、ニコンに続き、ついにソニーからも35mmフルサイズCMOSセンサー搭載デジタル一眼レフカメラが登場したわけだ。しかも、その有効画素数は、現在発売されている35mm判デジタルカメラの中では最高の2460万画素に達する。
その「α900」と、高級感あふれるカールツァイスの大口径標準ズームレンズ「Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM」をセットでお借りすることができたので、その使用感などをお伝えしよう。今回は前編として「α900」のカタチについて紹介していく。
「α900」が、ソニーのWebサイトに初めて登場した時、「あのデザインはちょっと…」と、カタチに疑問を投げかける声が聞かれた。しかし、筆者の意見はまったく逆で、「ソニーはすごい! 本気で“カメラ”づくりに打ち込んでいる!」と、とても好印象を抱いた。今回、実機を手に取る機会がやってきたので、じっくりカタチについて語りたいと思う。
「α900」の独特のカタチは、正面から見ると三角錐のようなペンタプリズム部分と、指がかりのための窪みが設けられた大きなグリップ部分に象徴される。他社のデジ一眼は、上級機になるほど曲線と曲面を多用したデザインになっていく傾向がうかがえるが、「α900」はそれとは対照的で、直線と平面を印象づけるようなデザインをアクセントとしている。
このカタチは、日本製の35mmフィルム一眼レフカメラが、世界中のプロ・フォトグラファーから「名機」として高い評価を獲得し始めた当時の、カメラのフォルムを思い起こさせる。特に「α900」のペンタプリズム部分は、往年のフィルム一眼レフカメラへのオマージュのようでさえある。
つまり、「写真=作品」を撮るための道具、としての初心に還るカタチを身に纏って、「α900」は登場したように思える。だから筆者は、「α900」をひと目見た瞬間に、「ソニーは、本気でカメラと写真に惚れ込んで一眼レフカメラづくりをやっているんだ」と感じたのだ。
フルサイズのデジ一眼レフは、大きく重く、そして高いと相場が決まっていた。しかし、「α900」はその予想をみごとに覆して、2460万画素もの超高画素機でありながら、電池・付属品を除く重さは約850gと軽量化を実現している。ニコン「D700」が約995gだから、それよりも約140gほど軽く、11月下旬発売予定のキヤノン「EOS 5D Mark II」の約810gに匹敵する。「D700」や「EOS 5D Mark II」はフルサイズの中級機という位置づけだが、「α900」は紛れもなくフラッグシップ機だから、それでこの軽さは正直「すごい!」と思ってしまう。
実際、「α900」を手にとって、撮影ポジションでカメラを構えてみると、しっかり握れるグリップ部分の形状と相まって、実にホールディング性が良く、重さはまったく気にならない。むしろ、気軽に使えるAPS-Cサイズの中堅カメラのような感じさえしてくるのだが、それでいてフルサイズ2460万画素のフラッグシップ機なのだから驚きだ。
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ただ、惜しいことに、「α900」のコンパクトさを生かせるレンズが少ない。カメラ本体に見合った高画質描写を期待するなら、何と言ってもカールツァイスレンズがベストだろうし、望遠系ズームは高級・高性能なGレンズを選びたい。とはいえ、ツァイスレンズもGレンズも、大きく重くなってしまうのが難点だ。
今回、「α900」と共に借りた「Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM」も、レンズ単体で995gの重さがある。金属鏡胴のレンズと付属の金属フードは、どちらも深い藍を含んだようなツヤを抑えた黒色で非常に質感は高いが、単体の「α900」に装着すると、カメラ本体よりもレンズのほうが巨大になってしまう。そのため、「Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM」で撮るときは、「α900」に「縦位置グリップ(VG-C90AM)」を装着したほうが、カメラとレンズのバランスが良くなるようだ。
フルサイズ機に対応したαレンズのラインアップには、単焦点レンズもあるが、コンパクトで手軽な価格、それでいて写りのいいズームレンズがない。ぜひ、「α900」の小ささ・軽さを生かせる普及タイプのズームレンズもほしいところだ。
ちなみに、「α900」はけっこう電池食いでもある。カタログスペックでは、撮影可能枚数は約880枚(CIPA規格準拠)となっているが、試用した際には、満充電したバッテリーを装着して、画質はJPEGエクストラファインの設定で、453枚撮ったところでバッテリー残量は0%になってしまった。撮影可能枚数はカメラの設定や撮影条件によっても違ってくるが、1日フルの撮影なら、少なくとも1個は予備のバッテリーを用意しておいたほうが安心だろう。
「縦位置グリップ」にはバッテリーを2個装着することができて、自動的に充電残量の少ないほうから順に消費してくれるので、いちいちバッテリーを取り替える手間もかからず便利。そういう意味でも、「α900」ユーザーなら、「縦位置グリップ」はそろえておきたいマストアイテムと言っていいだろう。
「α900」のファインダーは視野率約100%。つまりファインダーで見たままの範囲が過不足なくきっちり撮れるので、撮影時に厳密な構図設定を行うことができる。
ファインダー視野率が100%より低いと、撮影現場では完璧な構図で撮ったつもりが、あとで確認すると余分なものが写り込んでいた、ということが往々にして起こる。それだけに、プロやハイアマチュアが使うことを想定した一眼レフカメラでは、視野率約100%のファインダーはこだわりどころなのだ。
ただし、ファインダーの視野率を100%に近づけるためには、極めて高度な光学設計やカメラ開発の技術が要求される。それはコストに跳ね返ってくるため、カメラの価格も高額なものにならざるをえない。視野率約100%のファインダーを搭載する一眼レフカメラが、そのメーカーのフラッグシップ機として位置づけられ、高価なのは、そうしたことも要因と言える。
しかも、「α900」の場合は、センサーシフト式のボディ内蔵手ブレ補正機能まで搭載している。つまり、画像を投影する面(フルサイズのCMOSセンサー)が超高速で動くにも関わらず、きちんと約100%の視野率を達成しているということになるわけで、そこに至るまでには、ソニー開発陣の並々ならぬ努力の積み重ねがあったであろうことは想像に難くない。
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ファインダーは明るさとクリアさにおいても、他社のフラッグシップ機にまったく引けを取らない。実は今回、ニコン「D3」も一緒に持ち出してあれこれ撮影してみたのだが、ファインダーのクリアさという点では「α900」のほうがやや上かもしれない。
標準装備のフォーカシングスクリーンには、Gタイプの「スフェリカルアキュートマット」が採用されている。「スフェリカルアキュートマット」は、旧ミノルタ時代のフィルム一眼レフカメラ「α」シリーズにも搭載されていたフォーカシングスクリーンで、明るく、しかもピント合わせがしやすいことにかけては他社を一歩リードしていた。そのアドバンテージはいまも健在のようで、「α900」も実にピントの山がつかみやすく、マニュアルフォーカス(MF)でのピント合わせも楽々だった。
ただ、フォーカシングスクリーン上には、AFポイントの他に、APS-Cサイズの撮影枠と、縦横比16:9の上下枠も常時表示されている。この枠が、気になりだすとどうも目に付く。できれば、APS-Cや16:9のフォーマットを選択して撮影するときだけ、該当する枠が表示されるような仕組みにできなかったのだろうか。
ともあれ、それだけ隅々までよく見えるファインダーでもあるわけで、これだけファインダーが優秀だと、覗いているだけで撮影への集中力が高まってくる。たぶん、ファインダーの善し悪しを突き詰めていくと、「そこから覗く世界を撮ることに、どれだけ没頭させてくれるか」に行き着くのではないかと思うのだが、「α900」のファインダーは、まさにそこまでこだわっているようだ。ここにも、写真を撮る道具としての原点に還ろうとする「α900」の姿勢がうかがえる。
こだわりのファインダーを搭載する「α900」だが、反面、オートフォーカス(AF)機能は少々物足りない感じだ。「α900」のAFは、「9点+10点アシスト」というものだが、10点のアシストAFポイントは表示もされなければ、ユーザーが任意に選択することもできない。カメラが、被写体を検出したり、追尾したりするために利用するものなので、ユーザーが任意にピンポイントでフォーカスを合わせたい場合には、10点アシストのない9点AFを使うことになる。
しかも、今回試用してみた限りでは、AFの合焦精度にもややムラがあるような印象を受けた。最も合焦精度が高いはずの中央部のAFポイントでも、ピントを追い込みきれずに迷うケースが何度かあって、とくに近距離でその傾向が強いように感じられた。ただ、「α900」はMFでのピント合わせがやりやすいので、AFでピントが合わないときは「AF/MFボタン」を押して即座にMFに切り替え、MFでピントを合わせることで対応できた。
撮影の基本は、絞りとシャッタースピードを決めて、ピントを合わせ、構図を考えながら、瞬間をとらえてシャッターを切ること。そういう意味では、露出もピントもカメラまかせは確かに楽チンではあるが、試行錯誤する楽しさは半減してしまう。
その点、「α900」は、カメラまかせでもOKだし、MFでぎりぎりまでピントを追い込んだり、ファインダー上で構図を突き詰めたりすることもOK、というカメラだ。デジタルならではの画像表現も試行錯誤できるように、「インテリジェントプレビュー」という機能も搭載されている。(フリー・カメラマン 榎木秋彦)
その「α900」と、高級感あふれるカールツァイスの大口径標準ズームレンズ「Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM」をセットでお借りすることができたので、その使用感などをお伝えしよう。今回は前編として「α900」のカタチについて紹介していく。
写真を撮る道具、その初心に還るカタチが「α900」
「α900」が、ソニーのWebサイトに初めて登場した時、「あのデザインはちょっと…」と、カタチに疑問を投げかける声が聞かれた。しかし、筆者の意見はまったく逆で、「ソニーはすごい! 本気で“カメラ”づくりに打ち込んでいる!」と、とても好印象を抱いた。今回、実機を手に取る機会がやってきたので、じっくりカタチについて語りたいと思う。
「α900」の独特のカタチは、正面から見ると三角錐のようなペンタプリズム部分と、指がかりのための窪みが設けられた大きなグリップ部分に象徴される。他社のデジ一眼は、上級機になるほど曲線と曲面を多用したデザインになっていく傾向がうかがえるが、「α900」はそれとは対照的で、直線と平面を印象づけるようなデザインをアクセントとしている。
曲面ではなく、平面を組み合わせて頂点を作るデザイン(左) 右はグリップ部
このカタチは、日本製の35mmフィルム一眼レフカメラが、世界中のプロ・フォトグラファーから「名機」として高い評価を獲得し始めた当時の、カメラのフォルムを思い起こさせる。特に「α900」のペンタプリズム部分は、往年のフィルム一眼レフカメラへのオマージュのようでさえある。
つまり、「写真=作品」を撮るための道具、としての初心に還るカタチを身に纏って、「α900」は登場したように思える。だから筆者は、「α900」をひと目見た瞬間に、「ソニーは、本気でカメラと写真に惚れ込んで一眼レフカメラづくりをやっているんだ」と感じたのだ。
フルサイズのフラッグシップ機、なのにコンパクト
フルサイズのデジ一眼レフは、大きく重く、そして高いと相場が決まっていた。しかし、「α900」はその予想をみごとに覆して、2460万画素もの超高画素機でありながら、電池・付属品を除く重さは約850gと軽量化を実現している。ニコン「D700」が約995gだから、それよりも約140gほど軽く、11月下旬発売予定のキヤノン「EOS 5D Mark II」の約810gに匹敵する。「D700」や「EOS 5D Mark II」はフルサイズの中級機という位置づけだが、「α900」は紛れもなくフラッグシップ機だから、それでこの軽さは正直「すごい!」と思ってしまう。
ニコンの「D3」と比較。ボディ単体だととてもコンパクト
実際、「α900」を手にとって、撮影ポジションでカメラを構えてみると、しっかり握れるグリップ部分の形状と相まって、実にホールディング性が良く、重さはまったく気にならない。むしろ、気軽に使えるAPS-Cサイズの中堅カメラのような感じさえしてくるのだが、それでいてフルサイズ2460万画素のフラッグシップ機なのだから驚きだ。
「縦位置グリップ」を装着すると、「α900」は「D3」よりも大きくなる
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カールツァイスレンズの描写は確かに一級品だが…
ただ、惜しいことに、「α900」のコンパクトさを生かせるレンズが少ない。カメラ本体に見合った高画質描写を期待するなら、何と言ってもカールツァイスレンズがベストだろうし、望遠系ズームは高級・高性能なGレンズを選びたい。とはいえ、ツァイスレンズもGレンズも、大きく重くなってしまうのが難点だ。
今回、「α900」と共に借りた「Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM」も、レンズ単体で995gの重さがある。金属鏡胴のレンズと付属の金属フードは、どちらも深い藍を含んだようなツヤを抑えた黒色で非常に質感は高いが、単体の「α900」に装着すると、カメラ本体よりもレンズのほうが巨大になってしまう。そのため、「Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM」で撮るときは、「α900」に「縦位置グリップ(VG-C90AM)」を装着したほうが、カメラとレンズのバランスが良くなるようだ。
「Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM」を望遠側70mmにした時。
本体よりもレンズのほうが重たくなる
本体よりもレンズのほうが重たくなる
フルサイズ機に対応したαレンズのラインアップには、単焦点レンズもあるが、コンパクトで手軽な価格、それでいて写りのいいズームレンズがない。ぜひ、「α900」の小ささ・軽さを生かせる普及タイプのズームレンズもほしいところだ。
「縦位置グリップ」はα900ユーザー必携のアイテム
ちなみに、「α900」はけっこう電池食いでもある。カタログスペックでは、撮影可能枚数は約880枚(CIPA規格準拠)となっているが、試用した際には、満充電したバッテリーを装着して、画質はJPEGエクストラファインの設定で、453枚撮ったところでバッテリー残量は0%になってしまった。撮影可能枚数はカメラの設定や撮影条件によっても違ってくるが、1日フルの撮影なら、少なくとも1個は予備のバッテリーを用意しておいたほうが安心だろう。
「縦位置グリップ」にはバッテリーを2個装着することができて、自動的に充電残量の少ないほうから順に消費してくれるので、いちいちバッテリーを取り替える手間もかからず便利。そういう意味でも、「α900」ユーザーなら、「縦位置グリップ」はそろえておきたいマストアイテムと言っていいだろう。
「縦位置グリップ」は、本体側のバッテリーカバーを開いた状態にして装着する
ボディ内蔵手ブレ補正搭載で視野率100%はスゴイ!
「α900」のファインダーは視野率約100%。つまりファインダーで見たままの範囲が過不足なくきっちり撮れるので、撮影時に厳密な構図設定を行うことができる。
ファインダー視野率が100%より低いと、撮影現場では完璧な構図で撮ったつもりが、あとで確認すると余分なものが写り込んでいた、ということが往々にして起こる。それだけに、プロやハイアマチュアが使うことを想定した一眼レフカメラでは、視野率約100%のファインダーはこだわりどころなのだ。
ただし、ファインダーの視野率を100%に近づけるためには、極めて高度な光学設計やカメラ開発の技術が要求される。それはコストに跳ね返ってくるため、カメラの価格も高額なものにならざるをえない。視野率約100%のファインダーを搭載する一眼レフカメラが、そのメーカーのフラッグシップ機として位置づけられ、高価なのは、そうしたことも要因と言える。
しかも、「α900」の場合は、センサーシフト式のボディ内蔵手ブレ補正機能まで搭載している。つまり、画像を投影する面(フルサイズのCMOSセンサー)が超高速で動くにも関わらず、きちんと約100%の視野率を達成しているということになるわけで、そこに至るまでには、ソニー開発陣の並々ならぬ努力の積み重ねがあったであろうことは想像に難くない。
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明るくクリアなファインダーだから撮影に没頭できる
ファインダーは明るさとクリアさにおいても、他社のフラッグシップ機にまったく引けを取らない。実は今回、ニコン「D3」も一緒に持ち出してあれこれ撮影してみたのだが、ファインダーのクリアさという点では「α900」のほうがやや上かもしれない。
標準装備のフォーカシングスクリーンには、Gタイプの「スフェリカルアキュートマット」が採用されている。「スフェリカルアキュートマット」は、旧ミノルタ時代のフィルム一眼レフカメラ「α」シリーズにも搭載されていたフォーカシングスクリーンで、明るく、しかもピント合わせがしやすいことにかけては他社を一歩リードしていた。そのアドバンテージはいまも健在のようで、「α900」も実にピントの山がつかみやすく、マニュアルフォーカス(MF)でのピント合わせも楽々だった。
ただ、フォーカシングスクリーン上には、AFポイントの他に、APS-Cサイズの撮影枠と、縦横比16:9の上下枠も常時表示されている。この枠が、気になりだすとどうも目に付く。できれば、APS-Cや16:9のフォーマットを選択して撮影するときだけ、該当する枠が表示されるような仕組みにできなかったのだろうか。
ともあれ、それだけ隅々までよく見えるファインダーでもあるわけで、これだけファインダーが優秀だと、覗いているだけで撮影への集中力が高まってくる。たぶん、ファインダーの善し悪しを突き詰めていくと、「そこから覗く世界を撮ることに、どれだけ没頭させてくれるか」に行き着くのではないかと思うのだが、「α900」のファインダーは、まさにそこまでこだわっているようだ。ここにも、写真を撮る道具としての原点に還ろうとする「α900」の姿勢がうかがえる。
クリアで明るいファインダー。アイスタートAF機能の搭載は見送られたが、
よりファイダー越しの世界に陶酔しやすくなった
よりファイダー越しの世界に陶酔しやすくなった
AFの合焦精度にやや難あり!? 迷ったら即MFに
こだわりのファインダーを搭載する「α900」だが、反面、オートフォーカス(AF)機能は少々物足りない感じだ。「α900」のAFは、「9点+10点アシスト」というものだが、10点のアシストAFポイントは表示もされなければ、ユーザーが任意に選択することもできない。カメラが、被写体を検出したり、追尾したりするために利用するものなので、ユーザーが任意にピンポイントでフォーカスを合わせたい場合には、10点アシストのない9点AFを使うことになる。
ボディ上面に、「α」シリーズで初めて液晶表示パネルが搭載された
しかも、今回試用してみた限りでは、AFの合焦精度にもややムラがあるような印象を受けた。最も合焦精度が高いはずの中央部のAFポイントでも、ピントを追い込みきれずに迷うケースが何度かあって、とくに近距離でその傾向が強いように感じられた。ただ、「α900」はMFでのピント合わせがやりやすいので、AFでピントが合わないときは「AF/MFボタン」を押して即座にMFに切り替え、MFでピントを合わせることで対応できた。
産卵期を迎えているジョロウグモのメス(大きくカラフルなほう)とオス。
2mくらいの距離から望遠側70mmで狙ったのだが、
AFではどうしてもクモにピントが合ってくれずMFに切り替えて撮影した。
2mくらいの距離から望遠側70mmで狙ったのだが、
AFではどうしてもクモにピントが合ってくれずMFに切り替えて撮影した。
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撮影の基本は、絞りとシャッタースピードを決めて、ピントを合わせ、構図を考えながら、瞬間をとらえてシャッターを切ること。そういう意味では、露出もピントもカメラまかせは確かに楽チンではあるが、試行錯誤する楽しさは半減してしまう。
その点、「α900」は、カメラまかせでもOKだし、MFでぎりぎりまでピントを追い込んだり、ファインダー上で構図を突き詰めたりすることもOK、というカメラだ。デジタルならではの画像表現も試行錯誤できるように、「インテリジェントプレビュー」という機能も搭載されている。(フリー・カメラマン 榎木秋彦)