拡大続くデジタルフォトフレーム、市場動向と大手メーカー参入の狙いは?
デジタルフォトフレームの人気が続いている。年明け以降、販売台数は増えていたが、大手家電メーカーが参入したことで市場が一気に拡大した。広がるデジタルフォトフレーム市場の最新動向や売れ筋モデルを「BCNランキング」で探るとともに、トップメーカーに取材した。
デジタルフォトフレームは08年の1月以降、販売が増加している。「BCNランキング」で、08年1月の販売台数を基準にした、月の伸び率の指数では、3月が204.1%、6月は413.7%、直近の9月は542.7%と、加速している。
市場が伸びた背景にはソニーの参入がある。ソニーは5月に3機種の新製品を投入。デジタルフォトフレームは、一般の人には馴染みが薄い製品だったが、「ネームバリューのある大手メーカーが入ってきたことで認知度が高まった」と、瀧井靖夫・ビックカメラ有楽町店DPE写真工房主任は説明する。
デジタルフォトフレームは、「BCNランキング」でみると、ソニーをはじめ、テクタイト、トランセンド、ポラロイドなど、32社ものメーカーが製品を販売。市場では価格競争が始まっている。店頭では「3000-5000円単位で値段が下がっている」(瀧井主任)という。
具体的にはどれくらいの価格の製品が売れているのか。「BCNランキング」の月次データで、価格帯別の販売台数の構成比率を調べたところ、9月は「1万以上-2万円未満」が68.2%とトップで、「1万円未満」が20.3%で続く結果となった。
「1万-2万円未満」は年初から60%以上を獲得。「1万円未満」は6月から急速に比率を高めた。一方、2万円以上の高額な製品はあまり売れておらず、デジタルフォトフレームの価格帯は現在、この2つが中心になっているといえるだろう。
ビックカメラ有楽町店では「1万円以下の製品は親などへのプレゼントに購入する人がほとんど。1万-2万円未満の製品は自分で使う人や、店のPOP(店頭広告)など業務用で購入する人が多い。自分が求める表示などの機能面と価格をポイントに製品を選択している」(同)と話す。購入層は30代を中心に4-50代までと広く、男女の比率はほぼ同じで、「デジタル機器に詳しくない購入者が多い」(同)という。
では、店頭ではどんな機種が人気なのだろうか。「BCNランキング」の9月の機種別販売台数シェアのトップ5をチェックしてみよう。
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1位はシェア22.4%で、ソニーの「DPF-D70」。10月21日にBCNが集計した市場推定価格(以下同)では1万8700円だ。次いでトランセンドジャパンの「TS1GPF710C」が、10.9%で2位になった。市場推定価格は1万1600円。3位は8%でテクタイトの「SDP-708MB」で、市場推定価格は1万9000円だ。
メーカー別の販売台数シェアでは、5月からソニーのトップが続いている。9月も32.2%で1位を獲得した。9月のデータで2位になったのは15.8%でテクタイト。5月から台数を増やし、その後は16%前後のシェアを維持している。3位はトランセンドジャパン。6月以降シェアが上昇し、9月は13.6%まで伸ばした。
ソニーは3月にデジタルフォトフレームの新製品を発表後、4月には予約分で23.3%、発売月の5月には54.3%までシェア拡大したが、勢いは鈍化している。一方で、テクタイトなどのメーカーが徐々にシェアを伸ばしており、その差は縮まってきている。
これからは年末商戦が本番を迎える。瀧井主任は「1万円未満の小型タイプはクリスマスの贈答用などで、まだまだ伸びしろがある。1万円以上では機能はもちろん、最近出てきたデザイン性が高い製品やカラーバリエーションのあるモデルが人気になる可能性がある」とみている。
デジタルフォトフレームはスライドショーやカレンダー表示などを各社が搭載しており、機能的には横並びになっている。瀧井主任は「そろそろ機能面での差異化が必要な時期にきている」と指摘する。
こうしたなか、メーカーでは、どんな戦略をデジタルフォトフレーム市場で展開していくか。大手家電メーカーで唯一市場に参入し、トップを走るソニーに聴いた。
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ソニーは「S-Frame」で、08年5月にデジタルフォトフレーム市場に本格参入した。実はソニーは99年に一度、デジタルフォトフレームを発売している。しかし、当時は今ほどデジカメの普及が進んでおらずニーズが少なかったことと、価格も約10万円と高価だったため、ヒットするまでには至らなかった。
今回、“再参入”を決めた狙いについて販売を担当する、川野浩一・ソニー・マーケティング デジタルイメージングマーケティング部パーソナルイメージングMK課統括課長は次のように説明する。
「この10年でデジカメが普及し、ケータイもカメラ付きが当たり前になったことで、以前に比べ写真を撮ることが、より身近になった。同時に、欧米では一般的な写真を飾るという文化が、日本でも広がってきた。ソニーでは写真を撮るだけでなく、撮った後の楽しみも提案することをデジタルイメージング戦略に掲げており、こうした状況の中、国内未開拓で、ポテンシャルがあるマーケットと判断して、今年、参入を決めた」
「S-Frame」は3機種を展開。画面サイズが9インチの「DPF-V900」(市場推定価格:3万2300円)、7インチの「DPF-V700」(同:2万3100円)の上位モデルと、普及モデルで7インチの「DPF-D70」(同:1万8700円)を販売する。全モデルともに総ドット数が115万の液晶をディスプレイに採用。「V900」「V700」は512MB、「D70」では256MBのメモリを内蔵した。製品戦略では画質を重視したと、川野統括課長は強調する。
「とにかく『画質』にはこだわった。上位2モデルには当社のデジタル一眼レフ『α(アルファ)』の画像処理回路を搭載し、高画質表示やスムーズなスライドショーを表示できるようにした。普及モデルでも画質や処理速度は他社よりも優れていると自負している。我々の言う『画質』とはキレイなだけではなく、写真をどれだけ楽しめるかも含まれる。そのため、時計やカレンダーなどと一緒に表示するなどスライドショーのパターンも豊富に揃えたほか、フレームを縦位置にすると自動で写真が回転したり、撮影した写真の日時を表示するなど機能面での充実も図っている」
「デジタルフォトフレームでは付加価値戦略を進める。上位2モデルにHDMI端子を搭載したのも薄型テレビなどで写真を表示するという新たな価値を消費者に訴求するためだ。一方で、2万円以下の製品も普及という点では必要だと思っており、この価格帯の製品も発売することにした」
ソニーではデジタルフォトフレームの購入者について自分で使う人が50%、ギフト用が30%、業務用が20%と分析している。08年の年末商戦ではクリスマスをターゲットにギフト用の販売に力を入れていく考えだ。
「秋からは店頭を強化し、年末商戦ではクリスマスのプレゼントニーズを狙う。製品の箱はギフト用を意識し、白を基調にしたシンプルなデザインにしてある。また、写真を入れてプレゼントしたい場合には、製品を取り出しても買った時と同じ状態に戻すことができる、再梱包しやすい設計にした。その点をアピールしながら、例えば、ギフトラッピング用のロゴ入り袋を用意するといった販促プロモーションを店頭で展開する」
製品発売から5か月。市場参入以降、「BCNランキング」のメーカー別販売台数ではトップを維持しているが、シェアは下降している。今後はどんな展開を図っていくのか。
「機能面では、さらに画質の向上を目指す。デジタルフォトフレームは価格競争が激しくなってきているが、それでは各社の叩き合いになるだけ。だから、付加価値もより一層追求していく。付加価値タイプ2モデル、普及タイプ1モデルという現在のラインアップはバランスが良いので、今のところ維持していく考えだ。また、デザイン面も強化していく。具体的にはカラーバリエーションのニーズが高まっており、対応していくつもりだ」(BCN・米山淳)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで121品目を対象としています。
大手家電量販店のデジタルフォトフレーム売り場にはさまざまなメーカーの製品が並ぶ
(写真はビックカメラ有楽町店)
(写真はビックカメラ有楽町店)
年明けから販売台数は急増、大手メーカー参入で認知度も高まる
デジタルフォトフレームは08年の1月以降、販売が増加している。「BCNランキング」で、08年1月の販売台数を基準にした、月の伸び率の指数では、3月が204.1%、6月は413.7%、直近の9月は542.7%と、加速している。
市場が伸びた背景にはソニーの参入がある。ソニーは5月に3機種の新製品を投入。デジタルフォトフレームは、一般の人には馴染みが薄い製品だったが、「ネームバリューのある大手メーカーが入ってきたことで認知度が高まった」と、瀧井靖夫・ビックカメラ有楽町店DPE写真工房主任は説明する。
デジタルフォトフレームは、「BCNランキング」でみると、ソニーをはじめ、テクタイト、トランセンド、ポラロイドなど、32社ものメーカーが製品を販売。市場では価格競争が始まっている。店頭では「3000-5000円単位で値段が下がっている」(瀧井主任)という。
「1万以上-2万円未満」と「1万円未満」の価格帯が人気
具体的にはどれくらいの価格の製品が売れているのか。「BCNランキング」の月次データで、価格帯別の販売台数の構成比率を調べたところ、9月は「1万以上-2万円未満」が68.2%とトップで、「1万円未満」が20.3%で続く結果となった。
「1万-2万円未満」は年初から60%以上を獲得。「1万円未満」は6月から急速に比率を高めた。一方、2万円以上の高額な製品はあまり売れておらず、デジタルフォトフレームの価格帯は現在、この2つが中心になっているといえるだろう。
ビックカメラ有楽町店では「1万円以下の製品は親などへのプレゼントに購入する人がほとんど。1万-2万円未満の製品は自分で使う人や、店のPOP(店頭広告)など業務用で購入する人が多い。自分が求める表示などの機能面と価格をポイントに製品を選択している」(同)と話す。購入層は30代を中心に4-50代までと広く、男女の比率はほぼ同じで、「デジタル機器に詳しくない購入者が多い」(同)という。
08年9月はソニー、トランセンド、テクタイトが機種別販売のトップ3
では、店頭ではどんな機種が人気なのだろうか。「BCNランキング」の9月の機種別販売台数シェアのトップ5をチェックしてみよう。
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1位はシェア22.4%で、ソニーの「DPF-D70」。10月21日にBCNが集計した市場推定価格(以下同)では1万8700円だ。次いでトランセンドジャパンの「TS1GPF710C」が、10.9%で2位になった。市場推定価格は1万1600円。3位は8%でテクタイトの「SDP-708MB」で、市場推定価格は1万9000円だ。
(左から)ソニーの「DPF-D70」、トランセンドジャパンの「TS1GPF710C」、テクタイトの「SDP-708MB」
メーカー別はソニーがトップ、しかし他社との差は縮まる傾向に
メーカー別の販売台数シェアでは、5月からソニーのトップが続いている。9月も32.2%で1位を獲得した。9月のデータで2位になったのは15.8%でテクタイト。5月から台数を増やし、その後は16%前後のシェアを維持している。3位はトランセンドジャパン。6月以降シェアが上昇し、9月は13.6%まで伸ばした。
ソニーは3月にデジタルフォトフレームの新製品を発表後、4月には予約分で23.3%、発売月の5月には54.3%までシェア拡大したが、勢いは鈍化している。一方で、テクタイトなどのメーカーが徐々にシェアを伸ばしており、その差は縮まってきている。
これからは年末商戦が本番を迎える。瀧井主任は「1万円未満の小型タイプはクリスマスの贈答用などで、まだまだ伸びしろがある。1万円以上では機能はもちろん、最近出てきたデザイン性が高い製品やカラーバリエーションのあるモデルが人気になる可能性がある」とみている。
デジタルフォトフレームはスライドショーやカレンダー表示などを各社が搭載しており、機能的には横並びになっている。瀧井主任は「そろそろ機能面での差異化が必要な時期にきている」と指摘する。
こうしたなか、メーカーでは、どんな戦略をデジタルフォトフレーム市場で展開していくか。大手家電メーカーで唯一市場に参入し、トップを走るソニーに聴いた。
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カメラ付きケータイ、デジカメの普及をにらんで市場に“再参入”
ソニーは「S-Frame」で、08年5月にデジタルフォトフレーム市場に本格参入した。実はソニーは99年に一度、デジタルフォトフレームを発売している。しかし、当時は今ほどデジカメの普及が進んでおらずニーズが少なかったことと、価格も約10万円と高価だったため、ヒットするまでには至らなかった。
「この10年でデジカメが普及し、ケータイもカメラ付きが当たり前になったことで、以前に比べ写真を撮ることが、より身近になった。同時に、欧米では一般的な写真を飾るという文化が、日本でも広がってきた。ソニーでは写真を撮るだけでなく、撮った後の楽しみも提案することをデジタルイメージング戦略に掲げており、こうした状況の中、国内未開拓で、ポテンシャルがあるマーケットと判断して、今年、参入を決めた」
「S-Frame」は3機種を展開。画面サイズが9インチの「DPF-V900」(市場推定価格:3万2300円)、7インチの「DPF-V700」(同:2万3100円)の上位モデルと、普及モデルで7インチの「DPF-D70」(同:1万8700円)を販売する。全モデルともに総ドット数が115万の液晶をディスプレイに採用。「V900」「V700」は512MB、「D70」では256MBのメモリを内蔵した。製品戦略では画質を重視したと、川野統括課長は強調する。
「とにかく『画質』にはこだわった。上位2モデルには当社のデジタル一眼レフ『α(アルファ)』の画像処理回路を搭載し、高画質表示やスムーズなスライドショーを表示できるようにした。普及モデルでも画質や処理速度は他社よりも優れていると自負している。我々の言う『画質』とはキレイなだけではなく、写真をどれだけ楽しめるかも含まれる。そのため、時計やカレンダーなどと一緒に表示するなどスライドショーのパターンも豊富に揃えたほか、フレームを縦位置にすると自動で写真が回転したり、撮影した写真の日時を表示するなど機能面での充実も図っている」
ソニーが販売するデジタルフォトフレーム「S-Frame(エスフレーム)」の3モデル。
左から「DPF-D70」、「DPF-V700」、「DPF-V900」
左から「DPF-D70」、「DPF-V700」、「DPF-V900」
「デジタルフォトフレームでは付加価値戦略を進める。上位2モデルにHDMI端子を搭載したのも薄型テレビなどで写真を表示するという新たな価値を消費者に訴求するためだ。一方で、2万円以下の製品も普及という点では必要だと思っており、この価格帯の製品も発売することにした」
08年年末商戦ではクリスマスギフト需要を狙う
ソニーではデジタルフォトフレームの購入者について自分で使う人が50%、ギフト用が30%、業務用が20%と分析している。08年の年末商戦ではクリスマスをターゲットにギフト用の販売に力を入れていく考えだ。
「秋からは店頭を強化し、年末商戦ではクリスマスのプレゼントニーズを狙う。製品の箱はギフト用を意識し、白を基調にしたシンプルなデザインにしてある。また、写真を入れてプレゼントしたい場合には、製品を取り出しても買った時と同じ状態に戻すことができる、再梱包しやすい設計にした。その点をアピールしながら、例えば、ギフトラッピング用のロゴ入り袋を用意するといった販促プロモーションを店頭で展開する」
「DPF-V900」(写真左)と「DPF-V700」には、
デジタル一眼レフカメラ「α(アルファ)」の画像処理回路「BIONZ(ビオンズ)」を搭載した
デジタル一眼レフカメラ「α(アルファ)」の画像処理回路「BIONZ(ビオンズ)」を搭載した
今後はデザイン面の強化も進める
製品発売から5か月。市場参入以降、「BCNランキング」のメーカー別販売台数ではトップを維持しているが、シェアは下降している。今後はどんな展開を図っていくのか。
「機能面では、さらに画質の向上を目指す。デジタルフォトフレームは価格競争が激しくなってきているが、それでは各社の叩き合いになるだけ。だから、付加価値もより一層追求していく。付加価値タイプ2モデル、普及タイプ1モデルという現在のラインアップはバランスが良いので、今のところ維持していく考えだ。また、デザイン面も強化していく。具体的にはカラーバリエーションのニーズが高まっており、対応していくつもりだ」(BCN・米山淳)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで121品目を対象としています。