シマンテック7か月ぶりトップ奪還、激化するセキュリティソフト首位攻防戦

特集

2008/10/07 20:45

 セキュリティソフト上位3社のシェア争いが白熱している。9月の販売本数シェアでシマンテックが30.3%を獲得。7か月ぶりに首位に返り咲いた。これまでトップを走っていたトレンドマイクロは29.5%にとどまり、わずか0.8%差で2位に後退。3位はソースネクストで24.8%だった。2強のシマンテック、トレンドマイクロは、今秋の新製品でプロモーションを強化、認知度の拡大に力を入れる一方、ソースネクストは、USBメモリタイプの製品を投入、新機軸を打ち出している。BCNランキングをもとにセキュリティソフトの最新動向を分析した。

●今後の勢力図占う秋の新製品

 9月の販売本数シェアトップ5をみると、1位はシマンテックが今秋発売の新製品「Norton Internet Security 2009」で17.1%。2位は今年2月発売のソースネクスト「ウイルスセキュリティZERO 3台まで使える新パッケージ版」で16.0%だった。3位は同じくソースネクストで今秋発売した「ウイルスセキュリティZERO(3台まで使える新パッケージ)USBメモリ版」。続く4?5位はトレンドマイクロが占める。4位に今年3月発売の「ウイルスバスター2008 1年版 SP1対応」、5位に今秋の新製品「ウイルスバスター2009 1年版」がランクインした。

 シマンテック、トレンドマイクロの新製品は、旧バージョンと比べてメモリ使用量の削減や速度などを強化したほか、プロモーション展開の強化が目立つ。シマンテックは、キャラクターや「しょこたん」こと中川翔子を起用し、知名度の拡大に力を入れている。またトレンドマイクロは、旧バージョンでは地方都市を中心に行っていたテレビCMを、今回の新製品では、東京エリアにも展開している。

 2強が知名度アップに力を入れる一方、追随するソースネクストは、USBメモリタイプの製品を投入。パソコンソフトの新機軸を打ち出した。CD-ROM版に比べて4分の1程度の小さなパッケージを用意し、パソコン売り場に置くなど、売り場を拡大している。USBメモリタイプのソフトは、CD/DVDドライブを搭載していないパソコンでもインストールできることから、ミニノートPCユーザーの需要も睨んだ製品だ。ミニノートPCは、インターネットを主するユーザーが想定されるため、セキュリティソフトの需要も見込める。

●ミニノートPCとネット販売が市場をけん引か

 しかし、ミニノートPCにセキュリティソフトをインストールする際に懸念される点は、HDD容量が少ないことだ。その一方で、もはや主流となったセキュリティソフトの複数ライセンスが、市場拡大に寄与する可能性を秘めている。現在、同市場では、3ライセンス版の販売本数が9割近くを占めている。つまり、セキュリティソフトを買うと当たり前のように3つのライセンスが付いてくる。例えば、ミニノートPCを機にセキュリティソフトを購入したユーザーは、1ライセンスをミニノートPC用に、残りをデスクトップなどの既存のパソコンに利用できるなど、「乗り換え」を促す起爆剤になるという見方ができる。


 セキュリティソフトは、店頭市場では本数・金額ともに前年を下回っているものの、ネット通販での需要は旺盛。今年6月以降は本数ベースで1.6?1.8倍、金額ベースで1.5?1.7倍と大幅に拡大している。この時期は、ミニノートPCとイーモバイルの通信カードのセット売りが本格化した時期と重なる。ネットの利用を前提としながらも、ほとんどのミニノートPCにはセキュリティソフトがインストールされていない。ミニノートPCの拡大がセキュリティソフト需要を押し上げる効果も生んでいるようだ。(BCN・田沢理恵)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで121品目を対象としています。