ソニーマーケティング、デジタル一眼レフカメラ「α」で市場拡大を目指す

特集

2008/09/09 11:27

<strong>――北村勝司 デジタルイメージングマーケティング部 α CAT課 統括課長</strong><br />
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 「モノ軸とコト軸」。聞き慣れない言葉だが、ソニーマーケティングのデジタル一眼レフカメラ部門では、当たり前のように社内で飛び交う。ニコンとキヤノンの上位2社で約8割のシェアがあるデジタル一眼市場で、コンスタントに10%前後のシェアを維持できるようになったソニーの隠された社内用語。PRポイントをどこに置くかを整理するために重要なキーワードだ。

●市場拡大あってこそのシェア獲りだ

北村勝司 デジタルイメージングマーケティング部 α CAT課 統括課長

 「モノ」とは、機能やスペックなどのカメラ(モノ)自体が持つ魅力を指し、「コト」とは撮影する(コト)楽しみを表す。高スペックな上位機種ではカメラそのものの優位点を伝える「モノ軸」でPRプランを練り、値ごろ感があるエントリーモデルでは簡単操作や楽しそうな撮影イメージを訴える「コト軸」で戦略を考える。

 統括課長の北村勝司はいま「コト軸」を重視している。エントリーモデルの拡販だ。潜在需要が見込まれる主婦やミドルなどの初心者層を開拓するのが、シェアアップに必要とみる。ライバルの2強を意識しないわけではない。ただ、いまは他社の戦略ではなく、デジタル一眼未経験ユーザーの開拓のほうへの関心が強い。

 「市場規模が100万台そこそこしかない現状で、ライバルメーカーからシェアを奪う戦略が正しいとは思わない。まだ一眼レフを使ったことがないたくさんの人に、その魅力を知ってもらうのが先決。そのうえで、その人たちにソニーを選んでもらいたい。市場規模の拡大あってこそのシェア獲りだ」

 北村は、初心者のデジタル一眼に対するイメージと意見の収集にかなりの時間と労力を費やした。苦労したが、地道な活動を通じて、実勢価格とユーザーがイメージする価格帯の乖離、何を選んでよいか分からないユーザーの悩みに気づく。「コト軸モデル」では、詳細な機能やスペックの説明は一切排除した。ピント合わせ時間の速さや、液晶モニタの角度が変えられる点、モニタを見ながら撮影できる「クイックAFライブビュー液晶」機能といったソニーらしさにPRポイントを絞る。店頭では写真撮影会や撮った写真を額に入れてプレゼントするイベントなど、ハイエンド機種の販促ではやらないことにもトライする。

 今年3月に実施した約4万人を対象としたインターネットアンケートによると、全体の約20%がデジタル一眼購入を検討しているという。確かに潜在需要は強そうだ。(文中敬称略)(取材/田中繁廣 文/木村剛士)


週刊BCN 2008年9月8日付 Vol.1250より転載