アプリを入れて真価を発揮、iPhone 3Gの最大の魅力とは?

レビュー

2008/08/08 15:05

 iPhone 3Gの最大の魅力は、世界中の開発者がこの端末のために開発した多数のアプリを、自分のニーズに合わせて選択し、インストールして、使える点にある。そのための窓口として用意されているのが、アップルのiTunes Storeの中にある「App Store(アップストア)」だ。いくつかのアプリを紹介しながら、携帯電話以外の顔を持つiPhone 3Gの魅力に迫った。


●「App Store」には使える無料アプリがいっぱい!

 iPhone 3Gを活用するということは、とりもなおさず「多彩なアプリを活用する」ということではないだろうか。iPhone 3G本体の各種機能も、秀逸なそのユーザーインターフェイスも、それらを利用して動作するアプリがあってはじめて生きてくる。そこで、App Storeの魅力や、iPodとして使ったときのiPhone 3Gの使い勝手などをご紹介していこう。

 まず、App Storeを利用するためには、最新のiTunes(8月5日時点の最新バージョンは7.7.1)をPCにインストールしておく必要がある。iTunesでiPhone 3Gの認証を行い、iTunes Storeのアカウントを有効にしておけば、あとはiPhone 3G単体でもアプリの購入は可能だ。


 App Storeにあるアプリは、iPhone 3Gはもちろん、iPod touchでも利用することができる。有料、無料含めて、国内外のさまざまなアプリがラインアップされていて、その数は8月6日現在全部で1,419本。日本語に対応していないアプリも多いが、もともとiPhone 3G自体の操作が極めて直感的なものなので、中学英語程度の単語知識でも何となく使っているうちに、アプリの使い方がわかってくる。

 実は、日本語の無料アプリだけでもかなりの数があって、便利なものやユニークなものも数多い。また、有料アプリでは、iPhone 3Gが搭載する加速度センサーや、タッチスクリーンの面白さを生かしたゲームが楽しめるアプリなどもそろっている。有料アプリの金額は、115円から2000円を超えるものまでさまざま。しかし、月額利用料がかかるものは少ないので、ケータイのアプリよりもおトクに利用できるものが多い。


 低価格の有料アプリでは、各国語対応の辞書や旅行用語集なども充実していて、このあたりは、国際ローミングに対応した3G携帯のiPhone 3Gならではと言えそうだ。海外でも国内と同じように携帯電話としてiPhone 3Gを使いながら、同時に、旅行用の電子辞書としても活用できるというわけである。

 中には、まったく何の役にも立たない、単なるジョーク(お遊び)でしかないアプリもあるが、そういう面白さも許容してApp Storeへの掲載を認めているところが、アップルらしい遊び心の表れと言えそうだ。


 App Storeであれこれとアプリを見ていると、何となくインターネット黎明期のような情熱と胎動が感じられる。それは、App Storeが、大きな資本や組織がなくても個人のアイデアとちょっとしたスキルがあれば、世界中のiPhone 3Gユーザーに向けて、自分がつくったアプリをアピールできる場になっているからだろう。ユーザーのほうにも、アプリの作者にどしどし要望を伝えて、作者と一緒になってそのアプリを育てていく楽しみがある。インターネットが生まれた当初は、そうした開発者マインドにあふれたコミュニティがいくつも存在した。その中からYahooやGoogleが育っていったことを考えると、iPhone 3GとApp Storeの関係は、新しいネット世界の扉を開く可能性を秘めているのかもしれない。

 もちろん、端末とプラットフォームはアップル1社が提供しているものなので、インターネットのように完全にオープンとはいえない。しかし、少なくともいまの日本の携帯電話市場にはない「開かれた」環境と言えるだろう。iPhone 3Gが日本のケータイにとって脅威なのは、マルチタッチインターフェイスが秀逸だからなのではなく、実は、App Storeのような場が用意されているからなのではないだろうか。

●音質改善には別のヘッドフォンが必要かも!?

 iPhone 3Gが搭載するもう1つのメイン機能。それが「iPod」だ。iPodシリーズを使ったことのある人なら、まったく違和感なく使えるインターフェイスに仕上がっている。さらに、内蔵する傾きセンサーを利用して、iPhone 3Gを縦位置で持てばテキストベースのメニュー表示、横位置で持てばアルバムのアートワークをめくるカバーフロー表示にすばやく切り替わるギミックは、実によくできている。まもなくiPodシリーズがリニューアルされ、touch以外の他のiPodにも横長画面とこの機能が搭載されるという噂があるが、ぜひ期待したいところである。それくらい多くのiPhone 3Gユーザーが気に入っている操作感と言える。


 ただ、気になるのは音質。これは極めて個人的な感想なのだが、iPhone 3Gは、どうも音の分解能があまり高くないようで、中音域のヴォーカルはまずまずの音だが、個々の楽器の音などが際立ってこない印象を受けた。低音域、中音域、高音域を大きくコントロールしている感じで、それぞれの音域をさらに細かくチューニングするところまで行き届いていないように感じられた。筆者がふだん使っている第5世代のiPodと比べても、まだまだ物足りなく感じられる。

 そこでヘッドフォンを変えてみると、案の定、音質はずいぶんよくなる。iPodシリーズでも同様だが、音にこだわるなら、ある程度グレードの高いヘッドフォンを自前で用意したほうがいいだろう。ただし、注意しなければならないのは、電話としての使い勝手だ。

 付属のヘッドフォンなら電話着信時には応答操作ができるが、他社製のヘッドフォンだと音はよくなる代わりに、電話の応答には使えない。このあたりは、何を優先してiPhone 3Gを使うのか考慮して使い分けわけたい。なおアップルでは、iPhone 3Gのバッテリの消耗を少しでも減らしたければ、イコライザー機能をオフにするよう推奨している。

●App Storeの影響? iPod touchの人気もジワリと上昇

 ところで、「BCNランキング」で携帯オーディオの販売台数シェアを見てみると、iPhone 3Gが週末に発売された7月7日の週と翌7月14日の週、iPod touchのシェアが若干上昇していることがわかる。とくに16GBのiPod touchは、6月末時点のシェアは21位だったのが、7月21日の週には14位までランキングを上げた。

 発売の翌週、つまり、iPhone 3Gがどの店でも売り切れで買えなかった週末に、iPod touchの売り上げに勢いが見られることから、iPhone 3Gを買いたくても買えなかった人、あるいは、携帯電話としての機能は必ずしも必要ないが、iPhone 3Gと同じようにアプリが使える携帯オーディオがほしい人が、iPod touchを購入したのではないかと推測できる。

 iPod touchなら、ソフトバンクに月額利用料を払う必要はなく、それでいて、iPhone 3Gと同じデザイン、同じタッチスクリーンでの操作を味わえる上に、iPhone 3Gと同じようにSafariやメール、App Storeのアプリをインストールして利用することができる。

 iPhone 3Gの3つのモデルがどれも潤沢に市場に出回るようになったあとで、iPod touchのシェアがどう動くかを見極める必要はあるだろうが、少なくとも、iPhone 3G発売以前に比べると、iPod touchは確実にシェアを伸ばしていることから、iPhone 3Gに触発されて、同じような使い方ができるiPod touchが再評価されつつあるようだ。

●iPhone 3Gにとってケータイはあくまでおまけ?

 もっとも、iPhone 3Gの便利さは、いつでも、どこでも、インターネットにつながる、という点にある。そのための3G対応なのだ。残念ながら日本では、Wi-Fi接続だけでは使える場所が限られてしまう。Wi-Fiと携帯ネットワークの両方をシームレスに使ってインターネットに接続できるようになったことで、iPhone 3Gは、モバイル・インターネット端末としての使い勝手がいい。

 iPhone 3Gの登場を、日本のマスコミ各社は「携帯電話の黒船来襲」と報じたが、携帯電話としての機能は、実のところ、iPhone 3Gにとってはおまけのようなものなのかもしれない。iPhone 3Gが何より重要視しているのは、モバイル・インターネット端末として、いつどこでにいてもインターネットが利用できること、なのだろうと筆者は見ている。そのために、Wi-Fiが使えないところでは携帯ネットワークを利用するので、ついでに音声通話だってできますよ、ということなのではないか。

 ソフトバンクの決算発表会では、iPhone 3Gの月額利用料が8月分から改訂することも発表された。これによって、iPhone 3Gの月額利用料の最低ベースは2990円になった。仮に8GBモデルを新規契約で、24回払い・新スーパーボーナス特別割引適用で購入したとすると、端末代金は月々960円だから、合計すると月々最低3,950円でiPhone 3Gが使える。16GBの場合だと月々最低4,430円。端末代金を合わせても、これまでの月額利用料7,280円よりはるかに安くてすむ。

 また、ソフトバンクのiPhone 3G向けメールサービスである「Eメール(i)」は、これまで保存期間が30日に限定されていたが、これが無期限に延長されることになった。iPhone 3Gそのものの供給も安定してきたようで、ソフトバンクでは、8月6日から店頭での予約も受け付けるという。品薄で買えなかった人も、月額利用料に二の足を踏んでいた人も、iPhone 3G、そろそろ「買い」なのではないだろうか?(フリーライター・中村光宏)