CDよりイイ音で録れるリニアPCMレコが人気、中年層のバンドブームも手伝い
ICレコーダーの中でも特に高音質で録音できる「リニアPCMレコーダー」の市場が活気を帯びてきた。6月17日に大手楽器メーカー・ヤマハが参入したほか、既存メーカーは報道関係者向けに都内で録音体験会を開いて音質のよさをアピールするなど、盛り上がりを見せている。「BCNランキング」と家電量販店の売り場担当者の声から最近の動向をまとめた。
●リアルに現場音を収録できるリニアPCMレコーダー
楽器演奏や乗り物の駆動音、鳥のさえずりなど、現場の音を臨場感たっぷりに録音できるリニアPCMレコーダー。その魅力はズバリ音質のよさだ。昨今のバンドブームの再来により、中高年男性の間でも人気が高まっているという。いわば高音質版のICレコーダーだが、大手家電量販店の中には個別にコーナーを設けるところも増え、以前よりも身近なアイテムになってきた。
6月に最も売れたのは、08年4月発売の三洋電機の「ICR-PS182RM(S)」。機種別販売台数トップ10ではシェア23.7%でダントツだ。容量は1GB。本体に収納できるUSB端子を備え、PCに直差しできるのが特徴だ。BCNが7月24日に集計した市場推定価格は1万3600円。2位は、同じく08年4月発売の三洋電機の「ICR-PS185RM(S)」でシェア14.1%。こちらは容量が2GBのモデルで、同価格は1万7300円。いずれもCDの音質と同等の、44.1kHz/16bitのリニアPCM形式で録音することができる。
●CDよりも高音質! 主流は96kHz/24bit
音質でいえば、CDを上回るクオリティーで録音できるモデルも多い。アナログ音声をデジタルに変換する際の「キメ細かさ」を表す「サンプリング周波数」をみると、CDの44.1kHz/16bitよりも高音質な96kHz/24bitで録音できるリニアPCMレコーダーが一般的になってきた。これは、業務用の録音機器の音質と並ぶクオリティー。誰でもCDよりもイイ音で録音できるとあって、人気を集めているようだ。
6月のトップ10に戻ろう。3位はローランドが08年3月に発売した「R-09HR」でシェア9.1%。サイズは定期入れ程度。付属する小型リモコンで、離れた場所からも操作できる。同価格は3万8900円。4位は07年8月発売のズームの「HANDY RECORDER H2」でシェア8.8%。こちらもサイズは定期入れ程度で、やや丸みを帯びたデザインだ。ウィンド・スクリーンやスタンドなどのアイテムを付属する。同価格は2万2200円。2機種ともに96kHz/24bitの高音質録音に対応する。
●ボタンや画面表示がすべて英語のモデルも
「音楽は国境を越える」といわれるが、楽器演奏の録音などに多用されるリニアPCMレコーダーも海外で販売する機会が多い製品だ。そこで、ちょっと注意すべきポイントがある。それは、ボタンや画面表示の言語だ。三洋電機やオリンパスは日本語表示だが、ローランドやズームはすべて英語。ソニーに関しては「ファイル名が日本語であれば表示はされるが、メニューは英語」(広報)というものもある。ケンウッド製は日本語を含む7言語から選択可能だ。リニアPCMレコーダー初心者でかつ英語に自信がない人は、購入する際に希望のアイテムが日本語に対応するかどうかチェックしたほうがいいだろう。
また、店頭でずらっと並ぶ機器をみて気になるのは本体のサイズ。通常のICレコーダーに比べ、サイズもデザインもまちまちだ。
例えば、7位でシェア4.4%のソニーの「PCM-D50」はA6判程度の大きさ。ほかの製品よりも大きくて重い。本体に「角度を変えられるマイクや録音ボリュームを調節できるダイヤルを付けたのに加え、音声をAD変換するための基盤に大型のものを使っている」(大手家電量販店の売り場担当者)ため。機能や音質重視の製品は、こうした大ぶりのサイズになりがちだ。
●低価格路線の三洋がトップ 全体では金額で2割に
メーカー別の販売台数シェアもみておこう。この1年で10%前後の上下はあるものの、トップは三洋電機。08年6月では55%と過半数を占めている。リニアPCM形式の中でも主流の96kHz/24bitではなく、やや音質を下げた44.1kHz/16bitに対応することで価格を下げ、手軽さで支持を集めているようだ。一方、1年前は36.8%を占めていた2位のローランドは08年2月に10%台までシェアを下げ、以後ズーム、ケンウッド、オリンパスを合わせた4社で混戦が続いている。
ICレコーダー全体に占めるリニアPCMレコーダーの割合もみてみよう。ちょうど1年前の07年7月、販売金額の割合は12.3%だった。しかし徐々に拡大し、08年6月には20.5%と、ついに2割を超えた。一方、販売台数シェアも07年7月に5.8%だったのが、1年後の08年6月には11.1%でおよそ1割を占めるまでに成長。金額・台数ともにリニアPCMレコーダーは確実にシェアを拡大しつつある。
ちなみに、リニアPCMレコーダーの税別の平均価格は、先月6月の時点で2万4526円。1年前の07年7月が2万9713円だったので、およそ5000円下がった。とはいうものの、通常のICレコーダーの価格が6月で1万1911円なので、比べるとやはりまだまだ高価。しかし、この価格でCDよりも高音質に録音できる機器が手に入るのならば、決して悪い選択ではないだろう。音楽用途だけでなく、ちょっとした街の音を録るだけでも意外に楽しめるリニアPCMレコーダー。試してみてはいかがだろうか。(BCN・井上真希子)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで121品目を対象としています。
●リアルに現場音を収録できるリニアPCMレコーダー
楽器演奏や乗り物の駆動音、鳥のさえずりなど、現場の音を臨場感たっぷりに録音できるリニアPCMレコーダー。その魅力はズバリ音質のよさだ。昨今のバンドブームの再来により、中高年男性の間でも人気が高まっているという。いわば高音質版のICレコーダーだが、大手家電量販店の中には個別にコーナーを設けるところも増え、以前よりも身近なアイテムになってきた。
6月に最も売れたのは、08年4月発売の三洋電機の「ICR-PS182RM(S)」。機種別販売台数トップ10ではシェア23.7%でダントツだ。容量は1GB。本体に収納できるUSB端子を備え、PCに直差しできるのが特徴だ。BCNが7月24日に集計した市場推定価格は1万3600円。2位は、同じく08年4月発売の三洋電機の「ICR-PS185RM(S)」でシェア14.1%。こちらは容量が2GBのモデルで、同価格は1万7300円。いずれもCDの音質と同等の、44.1kHz/16bitのリニアPCM形式で録音することができる。
●CDよりも高音質! 主流は96kHz/24bit
音質でいえば、CDを上回るクオリティーで録音できるモデルも多い。アナログ音声をデジタルに変換する際の「キメ細かさ」を表す「サンプリング周波数」をみると、CDの44.1kHz/16bitよりも高音質な96kHz/24bitで録音できるリニアPCMレコーダーが一般的になってきた。これは、業務用の録音機器の音質と並ぶクオリティー。誰でもCDよりもイイ音で録音できるとあって、人気を集めているようだ。
6月のトップ10に戻ろう。3位はローランドが08年3月に発売した「R-09HR」でシェア9.1%。サイズは定期入れ程度。付属する小型リモコンで、離れた場所からも操作できる。同価格は3万8900円。4位は07年8月発売のズームの「HANDY RECORDER H2」でシェア8.8%。こちらもサイズは定期入れ程度で、やや丸みを帯びたデザインだ。ウィンド・スクリーンやスタンドなどのアイテムを付属する。同価格は2万2200円。2機種ともに96kHz/24bitの高音質録音に対応する。
●ボタンや画面表示がすべて英語のモデルも
「音楽は国境を越える」といわれるが、楽器演奏の録音などに多用されるリニアPCMレコーダーも海外で販売する機会が多い製品だ。そこで、ちょっと注意すべきポイントがある。それは、ボタンや画面表示の言語だ。三洋電機やオリンパスは日本語表示だが、ローランドやズームはすべて英語。ソニーに関しては「ファイル名が日本語であれば表示はされるが、メニューは英語」(広報)というものもある。ケンウッド製は日本語を含む7言語から選択可能だ。リニアPCMレコーダー初心者でかつ英語に自信がない人は、購入する際に希望のアイテムが日本語に対応するかどうかチェックしたほうがいいだろう。
また、店頭でずらっと並ぶ機器をみて気になるのは本体のサイズ。通常のICレコーダーに比べ、サイズもデザインもまちまちだ。
例えば、7位でシェア4.4%のソニーの「PCM-D50」はA6判程度の大きさ。ほかの製品よりも大きくて重い。本体に「角度を変えられるマイクや録音ボリュームを調節できるダイヤルを付けたのに加え、音声をAD変換するための基盤に大型のものを使っている」(大手家電量販店の売り場担当者)ため。機能や音質重視の製品は、こうした大ぶりのサイズになりがちだ。
●低価格路線の三洋がトップ 全体では金額で2割に
メーカー別の販売台数シェアもみておこう。この1年で10%前後の上下はあるものの、トップは三洋電機。08年6月では55%と過半数を占めている。リニアPCM形式の中でも主流の96kHz/24bitではなく、やや音質を下げた44.1kHz/16bitに対応することで価格を下げ、手軽さで支持を集めているようだ。一方、1年前は36.8%を占めていた2位のローランドは08年2月に10%台までシェアを下げ、以後ズーム、ケンウッド、オリンパスを合わせた4社で混戦が続いている。
ICレコーダー全体に占めるリニアPCMレコーダーの割合もみてみよう。ちょうど1年前の07年7月、販売金額の割合は12.3%だった。しかし徐々に拡大し、08年6月には20.5%と、ついに2割を超えた。一方、販売台数シェアも07年7月に5.8%だったのが、1年後の08年6月には11.1%でおよそ1割を占めるまでに成長。金額・台数ともにリニアPCMレコーダーは確実にシェアを拡大しつつある。
ちなみに、リニアPCMレコーダーの税別の平均価格は、先月6月の時点で2万4526円。1年前の07年7月が2万9713円だったので、およそ5000円下がった。とはいうものの、通常のICレコーダーの価格が6月で1万1911円なので、比べるとやはりまだまだ高価。しかし、この価格でCDよりも高音質に録音できる機器が手に入るのならば、決して悪い選択ではないだろう。音楽用途だけでなく、ちょっとした街の音を録るだけでも意外に楽しめるリニアPCMレコーダー。試してみてはいかがだろうか。(BCN・井上真希子)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで121品目を対象としています。