「PRADAを着たケータイ」の正体は? 本格派タッチパネル端末の実力を試した

レビュー

2008/07/01 11:51

 イタリアの高級ブランド、PRADA(プラダ)とのコラボレーションで話題の“PRADAケータイ”こと、韓国のLGエレクトロニクス製3G携帯電話「PRADA Phone by LG(PRADA Phone)」。NTTドコモが販売し、実勢価格は10万円弱という高級端末だ。「PRADA」というブランドに加え、全面タッチパネルのインターフェイスでも注目を集めている。今回、実際に端末を触って、その実力をチェック。「タッチ操作」「ブラウジング」「PRADAの世界観」をポイントに、その魅力に迫った。


●従来ケータイと変わらない心地よいタッチパネル操作

PRADA Phoneと従来のケータイの一番の違いは“操作性”。この端末は、タッチパネルですべての操作を行う。ここが物理的なキーで操作する従来のケータイとは違うところだ。一般的に、平面のディスプレイを触るタッチ操作は、指という「触覚」でキーを確認できる端末よりも操作感がわかりにくいといわれている。しかし、PRADA Phoneはそうした点に十分配慮している。

 PRADA Phoneはタッチに反応して、端末がバイブレーションで“ブルッ”と震えるようになっており、「ボタンを押したこと」が感覚として理解できる。そのため、操作に戸惑うことはない。LGエレクトロニクスは、タッチとバイブレーションを連動する仕組みを、ドコモ向け端末「L704i」などで採用。その技術が生かされた格好だ。

一方で、どれくらいきちんと反応するのか、タッチパネルの精度が気になる人もいるだろう。実際に端末を触ったところでは感度は良好で、指で押した場所を確実に認識した。「誤操作率」は、従来のケータイと同じ程度と考えてよいだろう。

また、PRADAがデザインしたという、ユーザーインターフェイスは非常にシンプルでわかりやすい。待受画面には「電話」「メール」「アドレス帳」などのボタンを配置。触るだけで各機能にすぐアクセスできる。メニューのアイコンは洗練されており、文字を読まなくても、どのような機能か直感的に理解できる。

PRADA Phoneはテンキーを備えておらず、文字入力もタッチパネルで行う。メールの文字入力時などにはテンキーベースのキーボードが現れ、従来のケータイと同じような感覚で文字を打つことができる。

横幅は54mmと従来の機種とそれほど変わらない。そのため、ここにQWERTYキーボードを出すと、キー1つ1つが小さくなり文字が打ちにくい。そのため、PRADA Phoneは、従来端末と同様の文字入力方法をタッチ操作で採用することで、快適な操作性を確保している。ただ、キーが大きい反面、文字表示スペースが狭くなってしまうのが残念。入力の快適さを考えると、仕方ないのかもしれない。


文字や絵をタッチ操作で描ける「スケッチメモ」のように、この端末独自のアプリケーションを用意しているのもうれしい点だ。計算機も、直接画面のキーを打っていくようになっているため、電卓と操作感が変わらず便利だ。

●iPhoneとは全く異なるタッチパネルの“操作思想”

 PRADA Phoneは全面タッチパネルという点で、米アップルの「iPhone(アイフォーン)と比べられることも少なくない。しかし、その操作性はiPhoneとは全く“別物”といえる。PRADA Phoneのタッチパネルは、iPhoneの「Multi Touch(マルチタッチ)」とは異なり、あくまでも“片手操作”に主眼が置かれているからだ。

確かに、iPhoneは、写真や地図を2つの指でグリグリと動かせるため触った時の感動は大きい。かつてない体験をユーザーに与えるといっても過言ではないだろう。一方、PRADA Phoneは、「キーを使って片手で操作する」という、従来のケータイの操作方法をタッチパネルに置き換えた端末だ。iPhoneとは発想がまったく異なっている。

薄型の端末の中には、キーが小さいために非常に押しにくいモデルがある。そうした端末と比べると、PRADA Phoneはタッチ操作でも非常に使いやすい。「タッチ操作だから」という理由で不安に思ったり、敬遠する必要はまったくないだろう。

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●タッチ操作と7.2MbpsのHSDPAで快適なブラウジングが可能

PRADA Phoneは国内では最速となる通信速度が最大7.2Mbps(メガビット/秒)の3・5GサービスのHSDPAに対応しているのも特徴だ。

 筆者は普段から3.6MbpsのHSDPA端末を利用しているが、それと比べると、最高速度は2倍。実際に、iモードにアクセスすると、わずかではあるがページの読み込みが速い。カタログの性能どおりに2倍速いわけではなく、「少し速いかな」と感じられる程度だが、ネット閲覧のストレスが減るという意味では大いに評価できる。

ブラウザの操作性もタッチスクリーン用に最適化してあり、画面をなぞる勢いに応じてスクロールで画面が動く量が変わる。最近はNEC製端末の「ニューロポインタ」、シャープ製端末の「TOUCH CRUISER(タッチクルーザー)」のように、ポインティングデバイスを備えた機種も増えている。しかし、画面を直接触るタッチパネルの特性上、PRADA Phoneの方が、より直感的に操作できる。

一方でFlash Lite(フラッシュライト)を多用したサイトへのアクセスでは、まだまだ改善の余地がある。Flashのページを操作するには、キーを表示させて操作しなければならず、画面が非常に見づらくなってしまうからだ。

 また、単にメニューをFlashにしただけのサイトならよいが、Flashで作られたゲームではお手上げだ。今回、携帯向けのポータルサイト「モバゲータウン」で、ミニゲームを遊んでみたが、キーとゲーム画面がかぶってしまい、思ったように操作することができなかった。

ブラウザ機能はiモード用のブラウザが快適にアクセスや操作ができるが、フルブラウザでは今ひとつといった印象だった。横表示に非対応だったり、重いページを表示すると動作がもたついたりと、PC向けの本格的なウェブ閲覧には少々力不足と感じたからだ。

せっかく縦横の切り替えが簡単なスタイルを採用しているのだから、せめて横表示には対応してもらいたかったというのが素直な感想。ディスプレイもワイドQVGAのため、ドコモの「905i」や「906i」シリーズの端末などと比べると解像度が低い。一方で、高速通信ができるので、ニュースサイトを確認するなど、ちょっとした情報収集には向いているかもしれない。

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●PRADAの世界観が盛り込まれた端末・パッケージが最大の魅力

ここまでは使い勝手や機能を試してきたが、それだけがPRADA Phoneのすべてではない。この端末の真骨頂は、PRADAとのコラボレーションによって醸し出された端末やパッケージの高級感にある。機能面ではドコモの最新端末「906i」シリーズと比べて、やや劣るところがあるが、それを忘れさせるほどの魅力がある。


端末は黒を基調に、PRADAの小物アクセサリーを彷彿させるようなムダのないシンプルな洗練されたデザインを採用。PRADAのバッグとコーディネートしても、まったく違和感が全くないほどだ。端末のパッケージもオリジナル。表面が革の風合いを再現した立方体のボックスで、フタにはPRADAのロゴをあしらっている。ハイファッションの世界をリードする、PRADAのこうしたこだわりが至るところに盛り込まれている。

付属品も豪華絢爛だ。ストラップにもなる伸縮型のスタイラスペンは、本体とカラーと揃えてることで大人の雰囲気を演出。PRADAは革製品から出発したブランドということもあって、付属のオリジナル革ケースもしっかりとした作りになっている。ディスプレイを拭く布の液晶クリーナーは、PRADAのロゴ入りケースに入っており、PRADAのギャランティーカード(ブランドが発行した保証書)のようだ。


ナイロン製のリュックで一時は大ブームを起こしたPRADAだが、最近は“大人のブランド”として、男女を問わず高い支持を得ている。ブームの頃よりも、洗練されたファンが多い印象すらある。PRADA Phoneはそうした大人のユーザーの端末といえるだろう。

10万円という価格は一般的なケータイよりも確かに高い。しかし、「PRADA」というブランドに魅力を感じている人ならば、決して受け入れられない値段ではないだろう。また、これからPRADAの製品を買おうとしている人ならばバックや財布ではなく、PRADA Phoneを“最初のPRADA”として買ってみるのも悪くないだろう。(ケータイジャーナリスト・石野純也)