セキュリティソフト三つ巴状態が鮮明に、シェア僅差で3社の大接戦
コンシューマ向けセキュリティソフト市場で、上位3社のトップ争いが例年以上に熾烈だ。BCNランキングの販売データでは1位と3位間のシェア差はわずか4ポイントまで縮まっている。ベンダーの順位変動も激しく、4月にはトレンドマイクロがシマンテックを抜きトップに。5月はトレンドが首位を守ったほか、3位だったソースネクストが2位に浮上した。上位3社の販売戦略、シェア争いにかける意気込みを聞いた。
●勢力地図に異変! 常勝シマンテックが3位に
2002年、BCNランキングに「セキュリティソフト部門」が新設されて以来、年間販売本数No.1を達成してきたシマンテックだが、2007年後半からは苦しい状況が続く。シェアは下降線をたどり、4月の月次データでは3位に甘んじる結果となった。
07年10月に発売した主力商品の新版「Norton Internet Security(NIS) 2008」では、同社としては初のイメージキャラクターを採用したPR活動を行い、同年後半には組織を再編。サポート、マーケティング、営業の各担当者が連携を取りやすくした。さらに、今年3月下旬には、オールインワン型セキュリティサービスの新版「Norton 360 Version 2.0」をリリース。立て続けに策を講じたが、かつてのような圧倒的シェアを獲得するまでには至っていない。
ロジャー・ヨーダー・コンシューママーケティング部部長は、今後の販売戦略についてこう語る。「日本のセキュリティソフトのインストール率は60%程度で他国に比べて低い。それだけ、新規マーケットがある証拠。現在、セキュリティに対する意識が不十分な初心者ユーザーを掘り起こすためにシンプルで分かりやすいプロモーション施策を練っているところだ」。
これまでの実績でいえば他社を圧倒する同社。このまま3位に甘んじて引き下がるとは考えにくい。新しくマーケティング部長に就任したヨーダー氏の手腕がカギを握る。
●新しい販促戦略が奏功、トレンドが1位に躍り出る
一方で、4、5月と2か月連続首位を獲得し好調なのがトレンドマイクロ。昨年から今年前半にかけて組織・人事再編があり、3月にはマーケティングプランを変更し、多額のPR費用を投じて広告展開。この施策が奏功した。シマンテック同様に、トレンドマイクロが重視するのも分かりやすさ。難解な表現を排除して「軽快・簡単・安心」というキャッチフレーズを多用し始めた。宍倉豊・リテール・OEMセールスグループディレクターが推進する戦略で、やはり、初心者層の獲得を意識している。
宍倉ディレクターは「シェア33%でNo.1を獲る」と宣言。具体的な数値をあげて年間トップシェアを目標に掲げるのは同社としても初めて。今年前半の好調さを背景に、積極的な販促展開に打って出る構えだ。
●追随を許さぬ低価格戦略、年間1位狙うソースネクスト
1980円という低価格や、更新料金0円という斬新な発想をセキュリティソフトに持ち込み、台風の目になったソースネクストも、08年通年のトップシェア獲得に照準を合わせた。「現状はNo.1を獲るほどの位置にいない」と控えめだった07年に比べ、今年は「トップシェアが視野に入るポジションになった。No.1奪取を目指す」と青谷征夫・取締役プロデュースグループ担当執行役員は明言する。
ソースネクストの強みはウイルス定義ファイルなどの更新料金が無料という意表をつく戦術で新規ユーザーを獲得することにある。他社も追随する意向を見せないことから大きな差別化につながっている。青谷取締役は「知らぬ間にソフトの有効期限が切れてウイルス被害にあったり、更新料金を支払うことに抵抗をもっているユーザーを確実に取り込んでいる」と自社の戦略に自信を示す。更新料金0円という点を今後も最重要メッセージとしてPR展開し、No.1獲りを目指す。
セキュリティソフト市場は、コンピュータウイルス被害が減少していることから、最近は縮小傾向。成長は鈍化している。各社ともに残された未導入ユーザーの獲得に照準を合わせてマーケティング・営業プランを思案している。
ただ、新規ユーザーの獲得だけが、シェアを押し上げる要因とは言い切れないデータもある。ソースネクストの独自ユーザーアンケートによれば、同社製品を購入前にセキュリティ対策を施していたユーザーが全体の90%に達しているという。同社のシェアを押し上げている要因として買い替えニーズの取り込みが貢献していることがわかる。
開拓しにくい初心者へのアプローチとともに、ユーザーの買い替え意欲を掻き立てるようなメリットの提供。No.1を求める3社には、両方のマーケティング戦略が求められそうだ。
●勢力地図に異変! 常勝シマンテックが3位に
2002年、BCNランキングに「セキュリティソフト部門」が新設されて以来、年間販売本数No.1を達成してきたシマンテックだが、2007年後半からは苦しい状況が続く。シェアは下降線をたどり、4月の月次データでは3位に甘んじる結果となった。
07年10月に発売した主力商品の新版「Norton Internet Security(NIS) 2008」では、同社としては初のイメージキャラクターを採用したPR活動を行い、同年後半には組織を再編。サポート、マーケティング、営業の各担当者が連携を取りやすくした。さらに、今年3月下旬には、オールインワン型セキュリティサービスの新版「Norton 360 Version 2.0」をリリース。立て続けに策を講じたが、かつてのような圧倒的シェアを獲得するまでには至っていない。
ロジャー・ヨーダー・コンシューママーケティング部部長は、今後の販売戦略についてこう語る。「日本のセキュリティソフトのインストール率は60%程度で他国に比べて低い。それだけ、新規マーケットがある証拠。現在、セキュリティに対する意識が不十分な初心者ユーザーを掘り起こすためにシンプルで分かりやすいプロモーション施策を練っているところだ」。
これまでの実績でいえば他社を圧倒する同社。このまま3位に甘んじて引き下がるとは考えにくい。新しくマーケティング部長に就任したヨーダー氏の手腕がカギを握る。
●新しい販促戦略が奏功、トレンドが1位に躍り出る
一方で、4、5月と2か月連続首位を獲得し好調なのがトレンドマイクロ。昨年から今年前半にかけて組織・人事再編があり、3月にはマーケティングプランを変更し、多額のPR費用を投じて広告展開。この施策が奏功した。シマンテック同様に、トレンドマイクロが重視するのも分かりやすさ。難解な表現を排除して「軽快・簡単・安心」というキャッチフレーズを多用し始めた。宍倉豊・リテール・OEMセールスグループディレクターが推進する戦略で、やはり、初心者層の獲得を意識している。
宍倉ディレクターは「シェア33%でNo.1を獲る」と宣言。具体的な数値をあげて年間トップシェアを目標に掲げるのは同社としても初めて。今年前半の好調さを背景に、積極的な販促展開に打って出る構えだ。
●追随を許さぬ低価格戦略、年間1位狙うソースネクスト
1980円という低価格や、更新料金0円という斬新な発想をセキュリティソフトに持ち込み、台風の目になったソースネクストも、08年通年のトップシェア獲得に照準を合わせた。「現状はNo.1を獲るほどの位置にいない」と控えめだった07年に比べ、今年は「トップシェアが視野に入るポジションになった。No.1奪取を目指す」と青谷征夫・取締役プロデュースグループ担当執行役員は明言する。
ソースネクストの強みはウイルス定義ファイルなどの更新料金が無料という意表をつく戦術で新規ユーザーを獲得することにある。他社も追随する意向を見せないことから大きな差別化につながっている。青谷取締役は「知らぬ間にソフトの有効期限が切れてウイルス被害にあったり、更新料金を支払うことに抵抗をもっているユーザーを確実に取り込んでいる」と自社の戦略に自信を示す。更新料金0円という点を今後も最重要メッセージとしてPR展開し、No.1獲りを目指す。
セキュリティソフト市場は、コンピュータウイルス被害が減少していることから、最近は縮小傾向。成長は鈍化している。各社ともに残された未導入ユーザーの獲得に照準を合わせてマーケティング・営業プランを思案している。
ただ、新規ユーザーの獲得だけが、シェアを押し上げる要因とは言い切れないデータもある。ソースネクストの独自ユーザーアンケートによれば、同社製品を購入前にセキュリティ対策を施していたユーザーが全体の90%に達しているという。同社のシェアを押し上げている要因として買い替えニーズの取り込みが貢献していることがわかる。
開拓しにくい初心者へのアプローチとともに、ユーザーの買い替え意欲を掻き立てるようなメリットの提供。No.1を求める3社には、両方のマーケティング戦略が求められそうだ。
※週刊BCN 2008年5月26日付 Vol.1236より転載