イー・モバイル渾身のスマートフォン「EMONSTER S11HT」を試した
イー・モバイルから3月に発売されたスマートフォン「イーモンスター」こと「S11HT」。新規参入キャリアの音声通話対応端末でもあり、注目を集めている。そこで、端末の性能と価格、さらには毎月のランニングコストまで、実際に使って徹底チェックした。
まだ耳慣れないかもしれないが、イー・モバイルは07年3月末に新規参入を果たしたれっきとしたケータイキャリア。当初はデータ通信のみのだったが、この3月末から音声通話サービスを開始。NTTドコモやau、ソフトバンクと並ぶサービスを展開することになった。もちろん電話番号を変えずにキャリアを変更するMNP(モバイルナンバーポータビリティ)にも対応する。
今回取り上げる「S11HT」は、音声通話に対応するスマートフォンで3月28日に発売したばかり。台湾メーカー、HTC製の端末だ。海外では「HTC TyTN II(タイタン・ツー)」として販売されている。OSはWindows Mobile 6 Professional Editionを搭載。他のスマートフォン同様、ホームページの閲覧、メールの送受信、オフィス文書の閲覧・編集、画像・音楽・動画の再生、スケジュール管理などができる。ケータイというよりも、「機能限定版のパソコン」といったほうがいいだろう。
●液晶の解像度はやや不満だがあとは文句のない装備
本体の大きさは幅59×長さ112×暑さ19mm、重さは190g。ディスプレイ部をスライドさせると、フルキーボードが現れる。配列はQWERTY配列。記号や数字はFnキーを押しながら入力する。WindowsキーやShiftキーは用意されているが、Ctrlキーはない。キートップが丸みを帯びているので、押し間違いも少なく快適に操作できる。キーボードは適度なクリック感があり、慣れればケータイの数字キーよりははるかに早く文字入力ができるだろう。
ディスプレイは2.8型のTFT液晶。ディスプレイ部を見やすい角度に調節できるのは大きな特徴だ。液晶はタッチパネル式で、付属のスタイラスペンのほか、指先でも操作可能。背面にはケータイカメラも備えており、300万画素で写真が撮影できる。音声通話はもちろん、HSDPA(最大3.6Mbps)のデータ通信にも対応。さらに、無線LANとBluetooth 2.0も備えるなど、ワイヤレス通信機能は万全だ。ただしディスプレイは、240×320ドットのQVGAと解像度が低い。最近では一般的なケータイでも480×640ドット、VGA程度の解像度を持つ端末も増えており、この部分では若干見劣りがする。
内蔵のGPS機能を使い、「モバイルGoogleマップ」や「NAVITIME」で現在位置を表示できるのも便利。空が見えている場所なら、高精度の位置検索ができる。地図データの読み込み時に2?3秒のタイムラグが生じるが、スクロールはスムーズでストレスなく操作できる。もちろん、建物の形どころか駐車場に止まっている車の車種がわかるほど拡大して表示することも可能だ。オンラインソフトを使えば、内蔵カメラで撮影した写真に位置情報を付与することもできる。ただし、GPSはケータイの電波と違って、衛星からの信号が届かない屋内ではほとんど動作しない。ほかのGPSデバイスよりも早く通信が切れてしまうように感じた。
●リーズナブルな料金体系も魅力、PCにつないでも同一データ料
後発キャリアだけあり、イー・モバイルは価格体系を工夫している。まずは電話料金を比較してみよう。月々1000円からのデータ通信利用料はかかるものの、通話部分に関する基本料は無料。通話料のみに課金される。通話料は30秒18.9円の一律で、月額980円の「定額パック24」契約なら通話料は半額。さらにイー・モバイル端末同士なら24時間通話料がかからない。携帯電話・PHS宛が30秒9.45円、固定電話が30秒5.25円という通話料金は、NTTドコモ・au・ソフトバンクはもちろん、ウィルコムを含めても最安クラスだ。
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ウェブやメールを使い倒すならデータ通信料も要チェック。イー・モバイルのケータイプランは、データ通信料が1000-4980円。一方、NTTドコモのスマートフォンに対応するパケット通信使い放題コース「Biz・ホーダイ」は月額5985円、ソフトバンクの「PCサイトダイレクト」は1029-9800円かかる。一方、ウィルコムの「データ定額」は1050-3800円と安いが、スマートフォンの4×パケット方式では最大256kbpsと遅いのがネック。画像が豊富なウェブページや大容量のメールを送受信するには厳しい速度だ。
こうしたリーズナブルな料金設定のほかに注目したいのが、PC接続時の料金。S11HTをPCにつないでモデム代わりに利用する場合も、データ通信料は1000-4980円と同じで済む。モバイルでノートPCにつなぐのはもちろん、自宅のネット回線として利用することもできるのだ。ちなみに、NTTドコモとソフトバンクの場合、PC接続時には定額料金が反映されない。使っただけ、青天井で課金されてしまうのだ。ウィルコムはPC接続用のプランも用意しているが、上限額が6300円にアップしてしまう。2×接続のみの「リアルインターネットプラス」なら月額2100円で済むが、回線速度は最大128kbpsと遅い。4×の512kbps接続ができるデータ通信専用の「新つなぎ放題」で契約すれば、PCにつないでも月額3880円で済むものの、音声通話発信ができなくなってしまうデメリットがある。
すでにイー・モバイルのデータ通信カードやEM・ONEを利用しており、2台目としてS11HTを購入するケースもあるだろう。例えば、S11HTと同じく、最大3.6Mbps通信が可能なPCカードタイプの「D01NE」は、実効通信速度が1.98MbpsとUSB接続時よりも速い。バッテリー切れの心配もないので、PCカードスロットのあるパソコンで使うならカードタイプのほうが便利だ。そんな人のために、「ケータイプランデータセット」が用意されている。両方の端末を同一名義で請求統合すると月額料金が1000円安くなるというものだ。
また裏技ではあるが、データ通信カードやEM・ONEのSIMカードをS11HTに入れ替えて利用することもできる。当然、音声通話はできないが、データ通信は利用できる。S11HTのSIMを使わなければ、「ケータイプランデータセット」の割引により、月額は0円になる。すでに利用している端末のコストだけで、両方の機種を利用できるというわけだ。ただし、サポートセンターに確認したところ、この方法はサポートしていないとのこと。利用は自己責任で行ってほしい。
●弱点に妥協できれば大満足の端末
S11HTの最大の弱点は、対応エリアが狭いこと。東京を中心に関東地方で利用する分には、まったく不自由は感じないものの、ほかの地方では大都市を中心としたエリアに限られてしまう。しかも、対応エリアとなっている場所でも利用できないことが多い。試しに名古屋で持ち歩いていたところ、駅ナカはともかく、外に出ると圏外になりがちだった。駅近くにはビックカメラがあり、入り口でイー・モバイル製品を売っていたため、チェックしてみると、そこでは電波がバリ3で入った。おそらく、地域全体のアンテナ数が足りていないのだろう。購入する前には、普段生活している地域が、対応エリアに入っていることを確実にチェックしておきたい。
iモードやEZweb、Yahoo!ケータイのように、イー・モバイル端末にもEMnetという機能が搭載されている。しかし、ほとんどサービスが出そろっていない状況。おサイフケータイにも対応していない。また現状では、音声端末のラインアップが、S11HTのほかはH11Tだけで、一般ユーザーが手を出しにくい状況。「定額パック24」によるイー・モバイル端末同士の無料通話やショートメッセージを便利に使えるようになるには、しばらく時間がかかりそうだ。とはいえ、これらの弱点が気にならないならイチオシの端末だ。
端末価格は6万7980円だが、2年契約の「新にねん」プランなら4万3980円になる。そのうちの2万4000円を分割して支払う「ご加入アシストにねん」を使えば、契約時に必要なのは1万9980円。ランニングコストが下がることを考えれば、購入しやすい金額だ。支払いの合計金額を抑えたいなら、量販店で「新にねん」プランを契約すればいい。4万3980円に対応するポイント還元が受けられ、大容量メモリーカード代金分くらいは浮かせられるだろう。
S11HTは、圧倒的な高コストパフォーマンスと、充実のワイヤレス通信機能を備えたハイスペックなモデルだ。スマートフォンの購入を検討しているなら、見逃す手はない。(アバンギャルド・柳谷智宣)
まだ耳慣れないかもしれないが、イー・モバイルは07年3月末に新規参入を果たしたれっきとしたケータイキャリア。当初はデータ通信のみのだったが、この3月末から音声通話サービスを開始。NTTドコモやau、ソフトバンクと並ぶサービスを展開することになった。もちろん電話番号を変えずにキャリアを変更するMNP(モバイルナンバーポータビリティ)にも対応する。
今回取り上げる「S11HT」は、音声通話に対応するスマートフォンで3月28日に発売したばかり。台湾メーカー、HTC製の端末だ。海外では「HTC TyTN II(タイタン・ツー)」として販売されている。OSはWindows Mobile 6 Professional Editionを搭載。他のスマートフォン同様、ホームページの閲覧、メールの送受信、オフィス文書の閲覧・編集、画像・音楽・動画の再生、スケジュール管理などができる。ケータイというよりも、「機能限定版のパソコン」といったほうがいいだろう。
●液晶の解像度はやや不満だがあとは文句のない装備
本体の大きさは幅59×長さ112×暑さ19mm、重さは190g。ディスプレイ部をスライドさせると、フルキーボードが現れる。配列はQWERTY配列。記号や数字はFnキーを押しながら入力する。WindowsキーやShiftキーは用意されているが、Ctrlキーはない。キートップが丸みを帯びているので、押し間違いも少なく快適に操作できる。キーボードは適度なクリック感があり、慣れればケータイの数字キーよりははるかに早く文字入力ができるだろう。
ディスプレイは2.8型のTFT液晶。ディスプレイ部を見やすい角度に調節できるのは大きな特徴だ。液晶はタッチパネル式で、付属のスタイラスペンのほか、指先でも操作可能。背面にはケータイカメラも備えており、300万画素で写真が撮影できる。音声通話はもちろん、HSDPA(最大3.6Mbps)のデータ通信にも対応。さらに、無線LANとBluetooth 2.0も備えるなど、ワイヤレス通信機能は万全だ。ただしディスプレイは、240×320ドットのQVGAと解像度が低い。最近では一般的なケータイでも480×640ドット、VGA程度の解像度を持つ端末も増えており、この部分では若干見劣りがする。
内蔵のGPS機能を使い、「モバイルGoogleマップ」や「NAVITIME」で現在位置を表示できるのも便利。空が見えている場所なら、高精度の位置検索ができる。地図データの読み込み時に2?3秒のタイムラグが生じるが、スクロールはスムーズでストレスなく操作できる。もちろん、建物の形どころか駐車場に止まっている車の車種がわかるほど拡大して表示することも可能だ。オンラインソフトを使えば、内蔵カメラで撮影した写真に位置情報を付与することもできる。ただし、GPSはケータイの電波と違って、衛星からの信号が届かない屋内ではほとんど動作しない。ほかのGPSデバイスよりも早く通信が切れてしまうように感じた。
●リーズナブルな料金体系も魅力、PCにつないでも同一データ料
後発キャリアだけあり、イー・モバイルは価格体系を工夫している。まずは電話料金を比較してみよう。月々1000円からのデータ通信利用料はかかるものの、通話部分に関する基本料は無料。通話料のみに課金される。通話料は30秒18.9円の一律で、月額980円の「定額パック24」契約なら通話料は半額。さらにイー・モバイル端末同士なら24時間通話料がかからない。携帯電話・PHS宛が30秒9.45円、固定電話が30秒5.25円という通話料金は、NTTドコモ・au・ソフトバンクはもちろん、ウィルコムを含めても最安クラスだ。
___page___
ウェブやメールを使い倒すならデータ通信料も要チェック。イー・モバイルのケータイプランは、データ通信料が1000-4980円。一方、NTTドコモのスマートフォンに対応するパケット通信使い放題コース「Biz・ホーダイ」は月額5985円、ソフトバンクの「PCサイトダイレクト」は1029-9800円かかる。一方、ウィルコムの「データ定額」は1050-3800円と安いが、スマートフォンの4×パケット方式では最大256kbpsと遅いのがネック。画像が豊富なウェブページや大容量のメールを送受信するには厳しい速度だ。
こうしたリーズナブルな料金設定のほかに注目したいのが、PC接続時の料金。S11HTをPCにつないでモデム代わりに利用する場合も、データ通信料は1000-4980円と同じで済む。モバイルでノートPCにつなぐのはもちろん、自宅のネット回線として利用することもできるのだ。ちなみに、NTTドコモとソフトバンクの場合、PC接続時には定額料金が反映されない。使っただけ、青天井で課金されてしまうのだ。ウィルコムはPC接続用のプランも用意しているが、上限額が6300円にアップしてしまう。2×接続のみの「リアルインターネットプラス」なら月額2100円で済むが、回線速度は最大128kbpsと遅い。4×の512kbps接続ができるデータ通信専用の「新つなぎ放題」で契約すれば、PCにつないでも月額3880円で済むものの、音声通話発信ができなくなってしまうデメリットがある。
すでにイー・モバイルのデータ通信カードやEM・ONEを利用しており、2台目としてS11HTを購入するケースもあるだろう。例えば、S11HTと同じく、最大3.6Mbps通信が可能なPCカードタイプの「D01NE」は、実効通信速度が1.98MbpsとUSB接続時よりも速い。バッテリー切れの心配もないので、PCカードスロットのあるパソコンで使うならカードタイプのほうが便利だ。そんな人のために、「ケータイプランデータセット」が用意されている。両方の端末を同一名義で請求統合すると月額料金が1000円安くなるというものだ。
また裏技ではあるが、データ通信カードやEM・ONEのSIMカードをS11HTに入れ替えて利用することもできる。当然、音声通話はできないが、データ通信は利用できる。S11HTのSIMを使わなければ、「ケータイプランデータセット」の割引により、月額は0円になる。すでに利用している端末のコストだけで、両方の機種を利用できるというわけだ。ただし、サポートセンターに確認したところ、この方法はサポートしていないとのこと。利用は自己責任で行ってほしい。
●弱点に妥協できれば大満足の端末
S11HTの最大の弱点は、対応エリアが狭いこと。東京を中心に関東地方で利用する分には、まったく不自由は感じないものの、ほかの地方では大都市を中心としたエリアに限られてしまう。しかも、対応エリアとなっている場所でも利用できないことが多い。試しに名古屋で持ち歩いていたところ、駅ナカはともかく、外に出ると圏外になりがちだった。駅近くにはビックカメラがあり、入り口でイー・モバイル製品を売っていたため、チェックしてみると、そこでは電波がバリ3で入った。おそらく、地域全体のアンテナ数が足りていないのだろう。購入する前には、普段生活している地域が、対応エリアに入っていることを確実にチェックしておきたい。
iモードやEZweb、Yahoo!ケータイのように、イー・モバイル端末にもEMnetという機能が搭載されている。しかし、ほとんどサービスが出そろっていない状況。おサイフケータイにも対応していない。また現状では、音声端末のラインアップが、S11HTのほかはH11Tだけで、一般ユーザーが手を出しにくい状況。「定額パック24」によるイー・モバイル端末同士の無料通話やショートメッセージを便利に使えるようになるには、しばらく時間がかかりそうだ。とはいえ、これらの弱点が気にならないならイチオシの端末だ。
端末価格は6万7980円だが、2年契約の「新にねん」プランなら4万3980円になる。そのうちの2万4000円を分割して支払う「ご加入アシストにねん」を使えば、契約時に必要なのは1万9980円。ランニングコストが下がることを考えれば、購入しやすい金額だ。支払いの合計金額を抑えたいなら、量販店で「新にねん」プランを契約すればいい。4万3980円に対応するポイント還元が受けられ、大容量メモリーカード代金分くらいは浮かせられるだろう。
S11HTは、圧倒的な高コストパフォーマンスと、充実のワイヤレス通信機能を備えたハイスペックなモデルだ。スマートフォンの購入を検討しているなら、見逃す手はない。(アバンギャルド・柳谷智宣)