地デジ対応着々、残るは録画の環境のみ? 2011年7月24日まであと3年
地上アナログ放送が終了する2011年7月24日まで、あと3年あまり。地上デジタル放送(地デジ)の普及が加速している。薄型テレビとHDD-DVDレコーダーの地デジ対応率は9割を突破。パソコンでも、デジタルチューナー搭載モデルが目立つようになってきた。対応が遅れていたPC周辺機器のTVキャプチャボードも、近く地デジ対応製品が登場する見通しだ。「BCNランキング」から、主なTV受信機器の地デジ対応状況やこれまでの動きをまとめた。
●選択肢は今やデジタルのみ、PC用の外付けTVキャプチャボードはこれから
地デジをはじめとするデジタル放送の最大の特徴は、16:9のワイド画面、ハイビジョンによる高画質・高音質。さらに電子番組表やデータ放送、字幕表示などの機能も利用でき、ノイズが少ないクリアな映像が楽しめることだ。08年3月に総務省が発表したデータによると、現在、地上デジタル放送を視聴可能なエリアは全国の約93%にのぼり、地デジのインフラは、ほぼ全国に行き渡ったといってもいいだろう。
製品側での対応も急激に進んでいる。製品ジャンル別に、総販売台数に地デジ対応モデルが占める割合を「地デジ対応率」とすると、3月では薄型テレビが最も高く96.8%だった。次世代DVD対応モデルを含むHDD-DVDレコーダーは94.3%、テレビチューナー搭載パソコンでも84.4%と、軒並み8割を超える。テレビチューナー搭載パソコンも、ワンセグ対応モデルを加えれば、地デジ対応率は98.9%。デジタル放送への対応は万全だ。
一方、手持ちのパソコンに取り付けてテレビを見られるようにする、内蔵・外付けタイプのTVキャプチャボードは、「地デジ」対応が遅れていた。しかし、デジタル放送推進協会(Dpa)は4月8日、PC用デジタル放送チューナーのガイドラインの策定を公表。早速アイ・オー・データ機器とピクセラの2社が、パソコン向けの地上デジタル対応TVキャプチャボードを発表した。「発売時期は未定」(アイ・オー・データ機器)というものの、そう遠くないうちに手持ちのパソコンでデジタル放送を受信し、ハイビジョン画質で録画できるようになるだろう。
現状では、テレビチューナー搭載パソコンは、チューナーのデジタル化にともない、減少傾向が続いている。3年前の05年には3割を超えていたテレビチューナー搭載率は、今ではわずか1割前後。同じ地デジ対応機器でも、薄型テレビ、HDD-DVDレコーダーに比べると、販売台数ははるかに少ない。それだけに、パソコン外付けの地デジチューナーの解禁は、パソコンでテレビを見るスタイル復活の起爆剤になりそうだ。
●真の地デジ・ハイビジョン対応機「BDレコ」が主流になるのは年末か?
ここで、現在の地デジ対応機器の主役、薄型テレビとHDD-DVDレコーダーについて、過去3年間の地デジ対応率の変化を振り返ってみよう。薄型テレビの地デジ対応率は、05年5月には早くも5割を超え、1年後の06年5月には8割、同年11月には9割に達した。
対して、HDD-DVDレコーダーでは、デジタルチューナーを搭載した地デジ対応モデルへのシフトが本格的に始まったのは05年の年末商戦あたりから。それ以前から地デジ対応モデルは存在していたが価格が高く、05年夏頃は10%前後、同年12月でも27.3%にとどまっていた。しかし、06年に入って以来、一気に伸び始め、同年5月に初めて5割を突破。12月には69%まで上昇し、07年5月以降、薄型テレビ同様、9割を超えるようになった。
しかし、デジタルチューナー搭載のHDD-DVDレコーダーであっても、一部の最新機種を除き、基本的には内蔵HDDにしかハイビジョン画質で録画できない。メディアにもハイビジョン画質で保存できるのは、基本的に新世代レコーダーとも呼ばれる、ソニーや松下などのBlu-ray Disc(BD)対応モデルと、今年2月に撤退を発表した東芝のHD DVD対応モデルのみ。デジタル放送のハイビジョン映像の録画を前提に設計された次世代DVDの規格争いが終息し、BDに一本化されたこれからが、真の地デジ対応移行期といえるだろう。
「HDDだけハイビジョン」の地デジ対応レコーダーの割合が2割から5割を超えるまで6か月、9割に達するまでは18か月かかった。さて、「HDDもメディアにもハイビジョンで残せる」真のハイビジョンレコーダーといえる、BDレコーダーへは、どの程度のスピードで移行が進むだろうか? 08年3月のHDD-DVDレコーダー全体の販売台数に占めるBD対応モデルの割合は26%。参入メーカーも1社増えて計4社になり、すでに普及モードに突入したといえるだろう。以前の動向を参考にすると、今年の夏には5割を超え、年末には9割には届かなくても、BDがかなりのシェアを占めるようになりそうだ。
●人気番組はハイビジョン、キレイに見る・残すならハードの刷新を
編集のしやすさから、現行のアナログ放送を支持する声は根強い。とくにHDD-DVDレコーダーやパソコンで番組を録画し、自由に編集して残したい層には制限の多いデジタル放送は評判が悪い。とはいえ、ドラマをはじめ、今や多くの番組がハイビジョンで放送されている。アナログ環境でも、番組の冒頭の表示に注意していれば、ハイビジョン制作かどうかチェックできるだろう。一部のテレビ雑誌では、ハイビジョン制作の場合に、高画質放送を示す「HV」の略記号を番組名の前に付加しており、番組表を細かく見れば、その多さに驚くはずだ。
好きなタレント・役者が出演している番組やよく見ているジャンルの番組がすでにハイビジョン制作ならば、迷わず地デジ対応テレビに切り替えて損はないはず。レコーダーに関しては現状、価格の安い従来DVD対応モデルとBD対応モデルが併売されているため、録画した番組に求めるクオリティやパッケージソフトの再生を含めて、どちらがよいのか見極めよう。パッケージソフトは、現状、有料で購入・レンタルしたDVDより無料のデジタル放送の方が高画質、という逆転現象が起きており、画質の違いを気にする層が増えれば、一気にDVDからBDに塗り変わるかもしれない。(BCN・嵯峨野芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで119品目を対象としています。
●選択肢は今やデジタルのみ、PC用の外付けTVキャプチャボードはこれから
地デジをはじめとするデジタル放送の最大の特徴は、16:9のワイド画面、ハイビジョンによる高画質・高音質。さらに電子番組表やデータ放送、字幕表示などの機能も利用でき、ノイズが少ないクリアな映像が楽しめることだ。08年3月に総務省が発表したデータによると、現在、地上デジタル放送を視聴可能なエリアは全国の約93%にのぼり、地デジのインフラは、ほぼ全国に行き渡ったといってもいいだろう。
製品側での対応も急激に進んでいる。製品ジャンル別に、総販売台数に地デジ対応モデルが占める割合を「地デジ対応率」とすると、3月では薄型テレビが最も高く96.8%だった。次世代DVD対応モデルを含むHDD-DVDレコーダーは94.3%、テレビチューナー搭載パソコンでも84.4%と、軒並み8割を超える。テレビチューナー搭載パソコンも、ワンセグ対応モデルを加えれば、地デジ対応率は98.9%。デジタル放送への対応は万全だ。
一方、手持ちのパソコンに取り付けてテレビを見られるようにする、内蔵・外付けタイプのTVキャプチャボードは、「地デジ」対応が遅れていた。しかし、デジタル放送推進協会(Dpa)は4月8日、PC用デジタル放送チューナーのガイドラインの策定を公表。早速アイ・オー・データ機器とピクセラの2社が、パソコン向けの地上デジタル対応TVキャプチャボードを発表した。「発売時期は未定」(アイ・オー・データ機器)というものの、そう遠くないうちに手持ちのパソコンでデジタル放送を受信し、ハイビジョン画質で録画できるようになるだろう。
現状では、テレビチューナー搭載パソコンは、チューナーのデジタル化にともない、減少傾向が続いている。3年前の05年には3割を超えていたテレビチューナー搭載率は、今ではわずか1割前後。同じ地デジ対応機器でも、薄型テレビ、HDD-DVDレコーダーに比べると、販売台数ははるかに少ない。それだけに、パソコン外付けの地デジチューナーの解禁は、パソコンでテレビを見るスタイル復活の起爆剤になりそうだ。
●真の地デジ・ハイビジョン対応機「BDレコ」が主流になるのは年末か?
ここで、現在の地デジ対応機器の主役、薄型テレビとHDD-DVDレコーダーについて、過去3年間の地デジ対応率の変化を振り返ってみよう。薄型テレビの地デジ対応率は、05年5月には早くも5割を超え、1年後の06年5月には8割、同年11月には9割に達した。
対して、HDD-DVDレコーダーでは、デジタルチューナーを搭載した地デジ対応モデルへのシフトが本格的に始まったのは05年の年末商戦あたりから。それ以前から地デジ対応モデルは存在していたが価格が高く、05年夏頃は10%前後、同年12月でも27.3%にとどまっていた。しかし、06年に入って以来、一気に伸び始め、同年5月に初めて5割を突破。12月には69%まで上昇し、07年5月以降、薄型テレビ同様、9割を超えるようになった。
しかし、デジタルチューナー搭載のHDD-DVDレコーダーであっても、一部の最新機種を除き、基本的には内蔵HDDにしかハイビジョン画質で録画できない。メディアにもハイビジョン画質で保存できるのは、基本的に新世代レコーダーとも呼ばれる、ソニーや松下などのBlu-ray Disc(BD)対応モデルと、今年2月に撤退を発表した東芝のHD DVD対応モデルのみ。デジタル放送のハイビジョン映像の録画を前提に設計された次世代DVDの規格争いが終息し、BDに一本化されたこれからが、真の地デジ対応移行期といえるだろう。
「HDDだけハイビジョン」の地デジ対応レコーダーの割合が2割から5割を超えるまで6か月、9割に達するまでは18か月かかった。さて、「HDDもメディアにもハイビジョンで残せる」真のハイビジョンレコーダーといえる、BDレコーダーへは、どの程度のスピードで移行が進むだろうか? 08年3月のHDD-DVDレコーダー全体の販売台数に占めるBD対応モデルの割合は26%。参入メーカーも1社増えて計4社になり、すでに普及モードに突入したといえるだろう。以前の動向を参考にすると、今年の夏には5割を超え、年末には9割には届かなくても、BDがかなりのシェアを占めるようになりそうだ。
●人気番組はハイビジョン、キレイに見る・残すならハードの刷新を
編集のしやすさから、現行のアナログ放送を支持する声は根強い。とくにHDD-DVDレコーダーやパソコンで番組を録画し、自由に編集して残したい層には制限の多いデジタル放送は評判が悪い。とはいえ、ドラマをはじめ、今や多くの番組がハイビジョンで放送されている。アナログ環境でも、番組の冒頭の表示に注意していれば、ハイビジョン制作かどうかチェックできるだろう。一部のテレビ雑誌では、ハイビジョン制作の場合に、高画質放送を示す「HV」の略記号を番組名の前に付加しており、番組表を細かく見れば、その多さに驚くはずだ。
好きなタレント・役者が出演している番組やよく見ているジャンルの番組がすでにハイビジョン制作ならば、迷わず地デジ対応テレビに切り替えて損はないはず。レコーダーに関しては現状、価格の安い従来DVD対応モデルとBD対応モデルが併売されているため、録画した番組に求めるクオリティやパッケージソフトの再生を含めて、どちらがよいのか見極めよう。パッケージソフトは、現状、有料で購入・レンタルしたDVDより無料のデジタル放送の方が高画質、という逆転現象が起きており、画質の違いを気にする層が増えれば、一気にDVDからBDに塗り変わるかもしれない。(BCN・嵯峨野芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで119品目を対象としています。