「1本で3台」が当たり前のセキュリティソフト、トレンドマイクロが1位獲得
セキュリティソフトは1本で3台まで使えるのが当たり前……そんな実態が明らかになった。3月の「BCNランキング」では、1本で3台のPCまでインストールできる「3ライセンス版」が販売本数の85.5%を占めている。その流れを生んだのはトレンドマイクロ。ここにきてメーカーシェアも大きく伸ばし、ついに王者シマンテックを抜いて1位に躍り出た。
●メインもサブも守ってくれる「3ライセンス版」が主流に
以前から、1本のソフトに3台分のライセンスをつけたパッケージは販売されていた。しかし、06年9月にトレンドマイクロが発売した「ウイルスバスター 2007」で、3台までのPCにインストールすることを可能にしながら、同時に価格も下げた。これで一気に3ライセンス版が拡大した。旧版の「ウイルスバスター 2006」では1ライセンスで8925円。続く「ウイルスバスター 2007」では3ラインセンスで6594円(実勢価格)としたのだ。逆に更新料は3150円から4725円に値上げ。販売本数でのシェア拡大を狙い、ユーザーの初期負担を抑え、更新料で収益をカバーするというビジネスモデルに切り換えたわけだ。
この戦略についてトレンドマイクロは、「PCの所有世帯の増加に加え、3台まで保有している数が全体の9割を超えていることが自社調査でわかった。しかし、3台全てにセキュリティソフトを搭載している世帯は数割程度しかなかった」とし、「メインPCだけでなく、サブPCも含めたセキュリティを提供したいと思いラインアップの変更に踏み切った」と説明した。
これに他社も追随。シマンテックは07年3月の「ノートン360」から、ソースネクストが08年2月の「ウイルスセキュリティ ZERO」から3ライセンス版に絞った展開を始めた。このため3ライセンス版は、07年9月に販売本数シェアで5割を突破、直近の3月では、8割を超えるまでに拡大した。一方、1ライセンスのみの製品は、06年6月では85.3%あったが、08年3月では12.5%に縮小している。
3月の製品別販売本数シェアでも、トップ10に登場する全ての製品が3ライセンス版だった。1位は、ソースネクストの「ウイルスセキュリティZERO 3台まで使える新パッケージ版」でシェア22.3%。2月の第4週(2月25日?3月4日)から3月第4週(3月31日?4月6日)まで7週連続でトップの座を守り続けている。更新料が0円というのが最大の特徴で、Windowsの公式サポート期間中は毎年の費用がかからない。2位はシマンテックの「Norton Internet Security 2008」。3位から6位は、トレンドマイクロの「ウイルスバスター2008」シリーズが占めた。
もはやセキュリティソフトは「3ライセンス版が当たり前」の時代に突入した、といってもいいだろう。家族で複数のPCを使っていても、セキュリティソフトの負担はずいぶん軽くなった。しかし、PCが1台しかないなら、あまり関係ない話だ。そこで最近では、バックアップ機能やオンラインストレージサービスなど、新たな付加機能を提供する製品も多くなってきた。さらに、製品別でも先ほど紹介した更新料無料のソースネクストや、5・6位にランクインしているトレンドマイクロの「3年版」など、今後は「更新」時の負担の少なさをウリにする製品も増えそうだ。
●トレンドマイクロがメーカー別で1位を獲得、波乱の幕開けか
ライセンス数の変化は、メーカー別の販売本数シェアにも大きく影響している。これまでセキュリティソフトで不動の1位を保ってきたシマンテックの牙城が崩れ、3月、トレンドマイクロが販売本数シェア32.1%で1位を獲得したのだ。05年3月から3年間のBCNのデータでも、月次集計で1位を獲得したのは今回が初めて。一方のシマンテックは、07年の10月以降急激にシェアを落とし、26.2%で2位に甘んじている。しかも3位のソースネクストは24.2%ですぐ背後に迫っている。
トレンドマイクロが1位を獲得した背景には、「ウイルスバスター2008」で販売促進策を大幅に見直したこともあるようだ。パッケージデザインのリニューアルや首都圏の山手線や京浜東北線の中吊り広告、テレビCMなど大規模な広告展開を3月中旬に実施。また、「軽快」「簡単」「安心」をキーワードに従来の「守る」というセキュリティの概念とは違ったメッセージで販促活動をおこなった。これらの策も功を奏し、メーカーシェアの拡大を後押ししたとみられる。
99年以降9年連続で年間の販売台数トップを獲得し続けているシマンテックが、1か月とはいえ1位の座を明け渡した衝撃は大きい。しかし、同社は昨年秋「ノートン・ファイター」を起用したキャンペーンでシェアを急激に伸ばした実績がある。3月6日に発売した「NORTON 360」では、新たな「ノートン・ファイター」キャンペーンを開始しており、その効果次第ではトップシェア奪還も十分考えられる。そこに、製品別で1位をキープするソースネクストも僅差で接近。セキュリティソフトは、上位3社による三つ巴の様相がますます濃くなってきた。(BCN・津江昭宏)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで119品目を対象としています。
●メインもサブも守ってくれる「3ライセンス版」が主流に
以前から、1本のソフトに3台分のライセンスをつけたパッケージは販売されていた。しかし、06年9月にトレンドマイクロが発売した「ウイルスバスター 2007」で、3台までのPCにインストールすることを可能にしながら、同時に価格も下げた。これで一気に3ライセンス版が拡大した。旧版の「ウイルスバスター 2006」では1ライセンスで8925円。続く「ウイルスバスター 2007」では3ラインセンスで6594円(実勢価格)としたのだ。逆に更新料は3150円から4725円に値上げ。販売本数でのシェア拡大を狙い、ユーザーの初期負担を抑え、更新料で収益をカバーするというビジネスモデルに切り換えたわけだ。
この戦略についてトレンドマイクロは、「PCの所有世帯の増加に加え、3台まで保有している数が全体の9割を超えていることが自社調査でわかった。しかし、3台全てにセキュリティソフトを搭載している世帯は数割程度しかなかった」とし、「メインPCだけでなく、サブPCも含めたセキュリティを提供したいと思いラインアップの変更に踏み切った」と説明した。
これに他社も追随。シマンテックは07年3月の「ノートン360」から、ソースネクストが08年2月の「ウイルスセキュリティ ZERO」から3ライセンス版に絞った展開を始めた。このため3ライセンス版は、07年9月に販売本数シェアで5割を突破、直近の3月では、8割を超えるまでに拡大した。一方、1ライセンスのみの製品は、06年6月では85.3%あったが、08年3月では12.5%に縮小している。
3月の製品別販売本数シェアでも、トップ10に登場する全ての製品が3ライセンス版だった。1位は、ソースネクストの「ウイルスセキュリティZERO 3台まで使える新パッケージ版」でシェア22.3%。2月の第4週(2月25日?3月4日)から3月第4週(3月31日?4月6日)まで7週連続でトップの座を守り続けている。更新料が0円というのが最大の特徴で、Windowsの公式サポート期間中は毎年の費用がかからない。2位はシマンテックの「Norton Internet Security 2008」。3位から6位は、トレンドマイクロの「ウイルスバスター2008」シリーズが占めた。
もはやセキュリティソフトは「3ライセンス版が当たり前」の時代に突入した、といってもいいだろう。家族で複数のPCを使っていても、セキュリティソフトの負担はずいぶん軽くなった。しかし、PCが1台しかないなら、あまり関係ない話だ。そこで最近では、バックアップ機能やオンラインストレージサービスなど、新たな付加機能を提供する製品も多くなってきた。さらに、製品別でも先ほど紹介した更新料無料のソースネクストや、5・6位にランクインしているトレンドマイクロの「3年版」など、今後は「更新」時の負担の少なさをウリにする製品も増えそうだ。
●トレンドマイクロがメーカー別で1位を獲得、波乱の幕開けか
ライセンス数の変化は、メーカー別の販売本数シェアにも大きく影響している。これまでセキュリティソフトで不動の1位を保ってきたシマンテックの牙城が崩れ、3月、トレンドマイクロが販売本数シェア32.1%で1位を獲得したのだ。05年3月から3年間のBCNのデータでも、月次集計で1位を獲得したのは今回が初めて。一方のシマンテックは、07年の10月以降急激にシェアを落とし、26.2%で2位に甘んじている。しかも3位のソースネクストは24.2%ですぐ背後に迫っている。
トレンドマイクロが1位を獲得した背景には、「ウイルスバスター2008」で販売促進策を大幅に見直したこともあるようだ。パッケージデザインのリニューアルや首都圏の山手線や京浜東北線の中吊り広告、テレビCMなど大規模な広告展開を3月中旬に実施。また、「軽快」「簡単」「安心」をキーワードに従来の「守る」というセキュリティの概念とは違ったメッセージで販促活動をおこなった。これらの策も功を奏し、メーカーシェアの拡大を後押ししたとみられる。
99年以降9年連続で年間の販売台数トップを獲得し続けているシマンテックが、1か月とはいえ1位の座を明け渡した衝撃は大きい。しかし、同社は昨年秋「ノートン・ファイター」を起用したキャンペーンでシェアを急激に伸ばした実績がある。3月6日に発売した「NORTON 360」では、新たな「ノートン・ファイター」キャンペーンを開始しており、その効果次第ではトップシェア奪還も十分考えられる。そこに、製品別で1位をキープするソースネクストも僅差で接近。セキュリティソフトは、上位3社による三つ巴の様相がますます濃くなってきた。(BCN・津江昭宏)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで119品目を対象としています。