ソニーに迫る強豪2社とは? HDDモデルが6割超えたデジタルビデオカメラ
デジタルビデオカメラの記録媒体でHDD対応がおよそ6割を占めるようになった。DVDやMiniDVテープと異なりメディアを頻繁に交換する必要がなく、しかも長時間録画できる便利さが人気を集めている。この影響もあり、メーカーの勢力図が大きく塗り変わりつつあるようだ。卒業・入学シーズンで春商戦を迎えたビデオカメラの最新動向を「BCNランキング」でまとめた。
●記録媒体でHDD対応がついに6割 「ハイブリッド」の活用法
1年前、07年3月の時点ではHDD対応モデルはおよそ4割だった。その後ぐんぐんとシェアを拡大し、07年7月には5割、そして08年2月にはついに6割を超え、デジタルビデオカメラの主流な記録媒体となった。HDDモデルの人気が上昇していることについて大手家電量販店の店員は「(一般的なユーザーは)1回の撮影で7時間ほど録画するので、その長時間録画をカバーするのがHDD対応モデル」だと分析する。因みに、2月のシリーズ別販売台数シェアトップ10では、HDD対応機が7モデルランクインした。
また、最近増えているのは、HDDとDVD、メモリカードなどを組み合わせた複数の記録媒体を備える、いわゆる「ハイブリッド」タイプ。06年8月に日立が初のHDD・DVD対応モデル「DZ-HS303」を発売したのを皮切りに、各社次々と参戦してきた。ハイブリッドタイプは主にHDDとメモリカードの組み合わせが多いが、HDDと比較して容量の少ないメモリカードの使い道は本当にあるのだろうか。実際は「動画よりも静止画の記録に使っているのでは」(同)と使い分けされているようだ。このほか、好きなシーンだけ選んでコピーしたり、サブのメディアとして、といった用途も考えられる。現在、大容量の32GBのメモリカードはおよそ4万円台半ばと非常に高額。今後メモリカードの価格が下がれば、活用方法も変わってくるだろう。
記録媒体といえば、今のところ日立が唯一対応する「Blu-ray Disc(BD)」モデルも気になるところ。記録媒体別の販売台数シェア推移では07年9月から全体の約3%で推移し、足踏み状態。しかし、次世代規格が事実上BDに一本化したことを受け、これから拡大も予想される。
●AVCHD対応は6モデル この春は「顔認識機能」がトレンド
それでは2月によく売れたの人気モデルを見ていこう。販売台数シェアで1位を獲得したのは松下電器産業の「HDC-HS9」でシェア10.2%。記録媒体に60GBのHDDのほかSDカードにも対応するハイブリッドタイプ。水平1920×垂直1080画素のフルハイビジョンと5.1chによる撮影が行え、HEモードならHDDに最長約23時間録画できる。顔を検出して画質補正しながら撮影する機能「おまかせ顔認識」も備える。
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3位はソニーの「HDR-SR12」でシェア7.3%。120GBのHDDとメモリースティック デュオなどに対応するハイブリッドタイプ。LPモードでHDDに最長48時間撮影できる。水平1920×垂直1080画素のフルハイビジョンに対応。顔部分の画質を調節する「顔検出機能」も採用する。4位はビクターの「GZ-MG330」で6.9%。コスメをイメージしたカラー、ルージュレッド、ロイヤルブルー、プレシャスシルバーの3色を揃えるエレガントな女性向けモデル。30GBのHDDとmicroSDHCカードに対応する。エコノミー撮影時でHDDに最長約37時間30分録画できる。
なお、高い圧縮率でハイビジョンを記録できる規格・AVCHD対応モデルは、10シリーズ中6モデル。デジタルビデオカメラのハイビジョン対応率は07年9月以降、およそ6割で推移しおおよそ浸透してきた。最近では、同規格に対応するビデオ編集ソフトも登場しており、ハイビジョンの映像をPCで編集できる環境は整いつつある。
●ソニーの王座を奪えるか、松下・ビクターが僅差で拮抗
メーカーの勢力図には大きな変化が見える。長い間デジタルビデオカメラ市場をリードしてきたソニー。しかし、メーカー別販売台数シェア推移を見ると、1年前から30-40%で推移してきたが、08年1月からは他社の激しい追い上げで、1位は維持するものの2月には28.5%までシェアを下げている。逆にここにきて急激に伸びているのが松下とビクターだ。07年12月以降右肩上がりで、2月には松下が2位で27.5%、ビクターが3位で26.2%となり、この3社が接線でトップを争う様相だ。
ソニーがシェアを下げた要因は、同社の強みであったはずの記録媒体別ラインアップの多さが裏目に出ているとも考えられる。ソニーのHDD対応比率は07年9月以降およそ6割。一方、ビクターは年間を通じて約8割、松下は08年2月に約4割まで増加してきた。HDD対応モデルのみの3社の販売台数シェアでは、2月にビクターが44.2%で35%のソニーを抜きトップに立っている。ソニーが今後どの程度巻き返しを図れるかは、2月に発売した新製品の動向にかかっている。
最後に、重さについて見ておこう。この1年間の平均重量の推移は、ゆるやかに軽量化が進んだ。07年12月までは470-480gを保っていたが、08年1月から急激に下がり、2月にはおよそ40g減って442g。ピーマン1個が約30gなので、ピーマン1と3分の1個分軽くなったといえる。メーカー毎の重さ・サイズの特徴として、「画質を優先するソニーは(そのための機構を装備するので)重め」(大手家電量販店店員)だが、一方で「松下はマイクやライトなどを外付けする上部のコネクタを省いて小型化した」(同)という動きもある。重さやサイズは画質や機能、撮影時の手ブレと密接に関わっているので、優先順位を見極めた上で選択しよう。(BCN・井上真希子)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など24社・約2300店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで119品目を対象としています。
●記録媒体でHDD対応がついに6割 「ハイブリッド」の活用法
1年前、07年3月の時点ではHDD対応モデルはおよそ4割だった。その後ぐんぐんとシェアを拡大し、07年7月には5割、そして08年2月にはついに6割を超え、デジタルビデオカメラの主流な記録媒体となった。HDDモデルの人気が上昇していることについて大手家電量販店の店員は「(一般的なユーザーは)1回の撮影で7時間ほど録画するので、その長時間録画をカバーするのがHDD対応モデル」だと分析する。因みに、2月のシリーズ別販売台数シェアトップ10では、HDD対応機が7モデルランクインした。
また、最近増えているのは、HDDとDVD、メモリカードなどを組み合わせた複数の記録媒体を備える、いわゆる「ハイブリッド」タイプ。06年8月に日立が初のHDD・DVD対応モデル「DZ-HS303」を発売したのを皮切りに、各社次々と参戦してきた。ハイブリッドタイプは主にHDDとメモリカードの組み合わせが多いが、HDDと比較して容量の少ないメモリカードの使い道は本当にあるのだろうか。実際は「動画よりも静止画の記録に使っているのでは」(同)と使い分けされているようだ。このほか、好きなシーンだけ選んでコピーしたり、サブのメディアとして、といった用途も考えられる。現在、大容量の32GBのメモリカードはおよそ4万円台半ばと非常に高額。今後メモリカードの価格が下がれば、活用方法も変わってくるだろう。
記録媒体といえば、今のところ日立が唯一対応する「Blu-ray Disc(BD)」モデルも気になるところ。記録媒体別の販売台数シェア推移では07年9月から全体の約3%で推移し、足踏み状態。しかし、次世代規格が事実上BDに一本化したことを受け、これから拡大も予想される。
●AVCHD対応は6モデル この春は「顔認識機能」がトレンド
それでは2月によく売れたの人気モデルを見ていこう。販売台数シェアで1位を獲得したのは松下電器産業の「HDC-HS9」でシェア10.2%。記録媒体に60GBのHDDのほかSDカードにも対応するハイブリッドタイプ。水平1920×垂直1080画素のフルハイビジョンと5.1chによる撮影が行え、HEモードならHDDに最長約23時間録画できる。顔を検出して画質補正しながら撮影する機能「おまかせ顔認識」も備える。
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3位はソニーの「HDR-SR12」でシェア7.3%。120GBのHDDとメモリースティック デュオなどに対応するハイブリッドタイプ。LPモードでHDDに最長48時間撮影できる。水平1920×垂直1080画素のフルハイビジョンに対応。顔部分の画質を調節する「顔検出機能」も採用する。4位はビクターの「GZ-MG330」で6.9%。コスメをイメージしたカラー、ルージュレッド、ロイヤルブルー、プレシャスシルバーの3色を揃えるエレガントな女性向けモデル。30GBのHDDとmicroSDHCカードに対応する。エコノミー撮影時でHDDに最長約37時間30分録画できる。
なお、高い圧縮率でハイビジョンを記録できる規格・AVCHD対応モデルは、10シリーズ中6モデル。デジタルビデオカメラのハイビジョン対応率は07年9月以降、およそ6割で推移しおおよそ浸透してきた。最近では、同規格に対応するビデオ編集ソフトも登場しており、ハイビジョンの映像をPCで編集できる環境は整いつつある。
●ソニーの王座を奪えるか、松下・ビクターが僅差で拮抗
メーカーの勢力図には大きな変化が見える。長い間デジタルビデオカメラ市場をリードしてきたソニー。しかし、メーカー別販売台数シェア推移を見ると、1年前から30-40%で推移してきたが、08年1月からは他社の激しい追い上げで、1位は維持するものの2月には28.5%までシェアを下げている。逆にここにきて急激に伸びているのが松下とビクターだ。07年12月以降右肩上がりで、2月には松下が2位で27.5%、ビクターが3位で26.2%となり、この3社が接線でトップを争う様相だ。
ソニーがシェアを下げた要因は、同社の強みであったはずの記録媒体別ラインアップの多さが裏目に出ているとも考えられる。ソニーのHDD対応比率は07年9月以降およそ6割。一方、ビクターは年間を通じて約8割、松下は08年2月に約4割まで増加してきた。HDD対応モデルのみの3社の販売台数シェアでは、2月にビクターが44.2%で35%のソニーを抜きトップに立っている。ソニーが今後どの程度巻き返しを図れるかは、2月に発売した新製品の動向にかかっている。
最後に、重さについて見ておこう。この1年間の平均重量の推移は、ゆるやかに軽量化が進んだ。07年12月までは470-480gを保っていたが、08年1月から急激に下がり、2月にはおよそ40g減って442g。ピーマン1個が約30gなので、ピーマン1と3分の1個分軽くなったといえる。メーカー毎の重さ・サイズの特徴として、「画質を優先するソニーは(そのための機構を装備するので)重め」(大手家電量販店店員)だが、一方で「松下はマイクやライトなどを外付けする上部のコネクタを省いて小型化した」(同)という動きもある。重さやサイズは画質や機能、撮影時の手ブレと密接に関わっているので、優先順位を見極めた上で選択しよう。(BCN・井上真希子)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など24社・約2300店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで119品目を対象としています。