低価格か次世代か……人気が大きく二分するHDD-DVDレコーダー
内蔵HDDにも次世代DVDにもデジタル放送のハイビジョン映像を録画できる「次世代DVD対応レコーダー」がいよいよ動き出した。07年10月まで1ケタ台にとどまっていた次世代DVD対応機の構成比は、11-12月は全体の2割前後を占めるほどに拡大している。残りの8割は従来DVD対応機だが、HDD容量の少ないエントリーモデルが中心。ここにきて「低価格」と「次世代」の2つの流れが明確になってきた。「BCNランキング」をもとに、最新動向をまとめた。
●ランキング上位は松下とシャープが独占、低価格機が人気の傾向は変わらず
12月に販売された薄型テレビでは、地上デジタル放送(地デジ)対応モデルが97.2%とほとんどを占めており、HDD-DVDレコーダーも、地デジチューナー搭載率は9割を超えている。店頭では地デジ対応モデルへの入れ替えは完了したと見ていいだろう。そこで今回は、地デジチューナー搭載モデルに絞り、売れ筋を集計した。
07年12月のHDD-DVDレコーダー機種別販売台数シェア1位は、松下の「DMR-XP11」が獲得。5月発売のやや古い機種だが、実勢価格5万円台前半と手頃な価格で人気を集めた。店舗によっては5万円以下で販売しているところもあった。シェアは12%。2位には、シャープの9月発売の「DV-AC72」が1位と0.5ポイント差で入った。1位、2位はともに、HDD容量250GBのエントリーモデル。上位機種とは違い、デジタル放送の2番組同時録画はできないが、頻繁に録画しない層や買い増しユーザーには十分と受け取られているようだ。
3位は松下の「DMR-XW100-K」、4位はシャープの「DV-ACW72」、5位は松下の「DMR-XW300-K」、6位はシャープの「DV-ACW75」、7位はシャープのVHS一体型「DV-ACV52」が獲得。ここまではすべて従来DVD対応モデルが占め、松下とシャープで上位を独占している。3位から6位まではいずれもデジタル放送の2番組同時録画に対応し、HDD容量は5位・6位のみ500GB、その他は250GB。同一メーカーの場合、基本的に価格はHDD容量によって異なり、同じ場合はデジタル放送の2番組同時録画対応モデルの方が高い。
●ソニーのBDレコーダー「BDZ-T70」が次世代DVD対応機で唯一トップ10入り
次世代DVD対応モデルでは、ソニーのBlu-ray Disc(BD)レコーダー「BDZ-T70」が8位で唯一トップ10入りを果たした。シェアは4.4%。1位、2位クラスのモデルとはシェアに差があるが、5位あたりのモデルと比べるとその差はほとんどない状態だ。11-20位までを見ると、ソニーの「BDZ-T50」が11位、「BDZ-X90」「BDZ-L90」が16・17位、松下の「DMR-BW700」「DMR-BW800」が15位・19位と、次世代DVD対応モデルが目立ち始める。
これまでの一般的なデジタルチューナー内蔵レコーダーは、デジタル放送のハイビジョン番組をそのままの画質(HD画質)でHDDには録画できても、DVDには画質を落とさなければ保存できなかった。しかし次世代DVD対応モデルでは、次世代のメディアにもハイビジョンで残せる、というのが最大の特徴だ。
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トップ20圏内に入ったのは、いずれも07年11月発売のHDD内蔵BDレコーダー。「BDZ-T50」を除き、すべてデジタル放送の2番組同時録画に対応し、HDD容量は「BDZ-T50」「BDZ-T70」「BDZ-L70」「DMR-BW700」は250-320GBと少なめ。「BDZ-X90」「DMR-BW800」は500GB。ソニーは11月に発売したBDレコーダーの新製品4機種を「番組を楽しむ T」「思い出を残す L」「シアターを堪能する X」の3つのグループに分け、違いを明確にした。とくに売れているのは、実勢価格10万円台前半の「T」の2製品だ。
また松下では、MPEG-4 AVCエンコーダーを搭載し、HDDに従来より長時間録画できる機能を「ハイビジョン4倍録り」と名づけ、従来DVD対応モデルを含む11月発売の新製品6機種に搭載。次世代DVDへのさらなる長時間録画と、従来のDVDにもハイビジョン画質で保存を可能にした。
もう1つの次世代DVD規格、HD DVD陣営からは、東芝が12月中旬に発売したHD DVDレコーダー「RD-A301」が24位にランクイン。2週間程度の販売期間でこの順位ということを考えると、まずますの結果といえるだろう。「RD-A301」は、DVDフォーラムの公式規格で、従来のDVDにハイビジョン記録が可能な「HD Rec」機能に対応するのが大きな特徴。HDD容量は300GB。
地デジチューナーを搭載するHDD-DVDレコーダー全体のメーカー別シェアは、12月時点で、松下が38.1%、シャープが34%、やや離れてソニーが14.9%、東芝が11.3%という結果になった。次世代DVD対応モデルに限ると、ソニーが61.2%でトップ。以下、松下23.7%、シャープ10%、東芝5.1%と続く。レコーダー全体では圧倒的な強さを見せる松下とシャープだが、次世代モデルではまだこれからといった状況だろう。
とくにシャープは、HDD内蔵BDレコーダー「BD-HDW15」「BD-HDW20」の発売が当初予定していた12月から1月下旬に延期され、HDDのないBDレコーダー「BD-AV10」「BD-AV1」だけでは満足に戦えなかったようだ。全体でのメーカー別シェアも9月・10月の30%台後半から11月・12月は前半にやや落ち込み、松下がシャープに代わって1位に浮上した。
●次世代DVD、本格的な立ち上がりへ
次世代DVDレコーダーが売れ始めたのは、07年11月から。注目度の高さの割に、地デジチューナー内蔵HDD-DVDレコーダー全体の販売台数に占める次世代DVD対応モデルの割合は06年11月から07年9月までは0.9-1.8%と低調だった。それが翌10月に6.7%、11月には23.2%と、大きく上昇。12月も19.1%と前月並みの水準を維持した。さらに5万円ごとに区切った税別平均単価の価格帯別構成比を集計すると、同じタイミングで次世代DVD対応機がほとんどと見られる、10万円以上の割合がやはり1ケタから急上昇している。
例年、12月は年間で最もHDD-DVDレコーダーが売れる月で、全体の販売台数は前月比1.9倍、次世代DVD対応モデルに限ると同1.6倍を記録した。07年9月の販売台数を1として指数化すると、12月は実に22.2倍を記録。レコーダー全体に占める構成比は微減したものの、台数は以前に比べて大幅に伸びており、レコーダーに限れば、次世代DVD市場は完全に立ち上がったといえるだろう。規格別で見ると、次世代DVDレコーダーのうち、BDが94.9%、HD DVDが5.1%とBD優勢の状況に変化はない。
今年6月には、現状の「コピーワンス」の制限が緩和される。地上デジタル放送でDVDメディアなどへの9回のコピーと1回のムーブ(移動)を認める、新しい録画のルール「ダビング10(テン)」の運用開始が予定されているからだ。そのタイミングにあわせて各社とも次なる製品をぶつけてきそう。08年の夏のボーナス商戦あたりで次世代DVD商戦が本格化しそうだ。(BCN・嵯峨野芙美)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など24社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
●ランキング上位は松下とシャープが独占、低価格機が人気の傾向は変わらず
12月に販売された薄型テレビでは、地上デジタル放送(地デジ)対応モデルが97.2%とほとんどを占めており、HDD-DVDレコーダーも、地デジチューナー搭載率は9割を超えている。店頭では地デジ対応モデルへの入れ替えは完了したと見ていいだろう。そこで今回は、地デジチューナー搭載モデルに絞り、売れ筋を集計した。
07年12月のHDD-DVDレコーダー機種別販売台数シェア1位は、松下の「DMR-XP11」が獲得。5月発売のやや古い機種だが、実勢価格5万円台前半と手頃な価格で人気を集めた。店舗によっては5万円以下で販売しているところもあった。シェアは12%。2位には、シャープの9月発売の「DV-AC72」が1位と0.5ポイント差で入った。1位、2位はともに、HDD容量250GBのエントリーモデル。上位機種とは違い、デジタル放送の2番組同時録画はできないが、頻繁に録画しない層や買い増しユーザーには十分と受け取られているようだ。
3位は松下の「DMR-XW100-K」、4位はシャープの「DV-ACW72」、5位は松下の「DMR-XW300-K」、6位はシャープの「DV-ACW75」、7位はシャープのVHS一体型「DV-ACV52」が獲得。ここまではすべて従来DVD対応モデルが占め、松下とシャープで上位を独占している。3位から6位まではいずれもデジタル放送の2番組同時録画に対応し、HDD容量は5位・6位のみ500GB、その他は250GB。同一メーカーの場合、基本的に価格はHDD容量によって異なり、同じ場合はデジタル放送の2番組同時録画対応モデルの方が高い。
●ソニーのBDレコーダー「BDZ-T70」が次世代DVD対応機で唯一トップ10入り
次世代DVD対応モデルでは、ソニーのBlu-ray Disc(BD)レコーダー「BDZ-T70」が8位で唯一トップ10入りを果たした。シェアは4.4%。1位、2位クラスのモデルとはシェアに差があるが、5位あたりのモデルと比べるとその差はほとんどない状態だ。11-20位までを見ると、ソニーの「BDZ-T50」が11位、「BDZ-X90」「BDZ-L90」が16・17位、松下の「DMR-BW700」「DMR-BW800」が15位・19位と、次世代DVD対応モデルが目立ち始める。
これまでの一般的なデジタルチューナー内蔵レコーダーは、デジタル放送のハイビジョン番組をそのままの画質(HD画質)でHDDには録画できても、DVDには画質を落とさなければ保存できなかった。しかし次世代DVD対応モデルでは、次世代のメディアにもハイビジョンで残せる、というのが最大の特徴だ。
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トップ20圏内に入ったのは、いずれも07年11月発売のHDD内蔵BDレコーダー。「BDZ-T50」を除き、すべてデジタル放送の2番組同時録画に対応し、HDD容量は「BDZ-T50」「BDZ-T70」「BDZ-L70」「DMR-BW700」は250-320GBと少なめ。「BDZ-X90」「DMR-BW800」は500GB。ソニーは11月に発売したBDレコーダーの新製品4機種を「番組を楽しむ T」「思い出を残す L」「シアターを堪能する X」の3つのグループに分け、違いを明確にした。とくに売れているのは、実勢価格10万円台前半の「T」の2製品だ。
また松下では、MPEG-4 AVCエンコーダーを搭載し、HDDに従来より長時間録画できる機能を「ハイビジョン4倍録り」と名づけ、従来DVD対応モデルを含む11月発売の新製品6機種に搭載。次世代DVDへのさらなる長時間録画と、従来のDVDにもハイビジョン画質で保存を可能にした。
もう1つの次世代DVD規格、HD DVD陣営からは、東芝が12月中旬に発売したHD DVDレコーダー「RD-A301」が24位にランクイン。2週間程度の販売期間でこの順位ということを考えると、まずますの結果といえるだろう。「RD-A301」は、DVDフォーラムの公式規格で、従来のDVDにハイビジョン記録が可能な「HD Rec」機能に対応するのが大きな特徴。HDD容量は300GB。
地デジチューナーを搭載するHDD-DVDレコーダー全体のメーカー別シェアは、12月時点で、松下が38.1%、シャープが34%、やや離れてソニーが14.9%、東芝が11.3%という結果になった。次世代DVD対応モデルに限ると、ソニーが61.2%でトップ。以下、松下23.7%、シャープ10%、東芝5.1%と続く。レコーダー全体では圧倒的な強さを見せる松下とシャープだが、次世代モデルではまだこれからといった状況だろう。
とくにシャープは、HDD内蔵BDレコーダー「BD-HDW15」「BD-HDW20」の発売が当初予定していた12月から1月下旬に延期され、HDDのないBDレコーダー「BD-AV10」「BD-AV1」だけでは満足に戦えなかったようだ。全体でのメーカー別シェアも9月・10月の30%台後半から11月・12月は前半にやや落ち込み、松下がシャープに代わって1位に浮上した。
●次世代DVD、本格的な立ち上がりへ
次世代DVDレコーダーが売れ始めたのは、07年11月から。注目度の高さの割に、地デジチューナー内蔵HDD-DVDレコーダー全体の販売台数に占める次世代DVD対応モデルの割合は06年11月から07年9月までは0.9-1.8%と低調だった。それが翌10月に6.7%、11月には23.2%と、大きく上昇。12月も19.1%と前月並みの水準を維持した。さらに5万円ごとに区切った税別平均単価の価格帯別構成比を集計すると、同じタイミングで次世代DVD対応機がほとんどと見られる、10万円以上の割合がやはり1ケタから急上昇している。
例年、12月は年間で最もHDD-DVDレコーダーが売れる月で、全体の販売台数は前月比1.9倍、次世代DVD対応モデルに限ると同1.6倍を記録した。07年9月の販売台数を1として指数化すると、12月は実に22.2倍を記録。レコーダー全体に占める構成比は微減したものの、台数は以前に比べて大幅に伸びており、レコーダーに限れば、次世代DVD市場は完全に立ち上がったといえるだろう。規格別で見ると、次世代DVDレコーダーのうち、BDが94.9%、HD DVDが5.1%とBD優勢の状況に変化はない。
今年6月には、現状の「コピーワンス」の制限が緩和される。地上デジタル放送でDVDメディアなどへの9回のコピーと1回のムーブ(移動)を認める、新しい録画のルール「ダビング10(テン)」の運用開始が予定されているからだ。そのタイミングにあわせて各社とも次なる製品をぶつけてきそう。08年の夏のボーナス商戦あたりで次世代DVD商戦が本格化しそうだ。(BCN・嵯峨野芙美)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など24社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。