「録って持ち出す」に注目、PC用ワンセグチューナー第3世代へ
PC用の「ワンセグチューナー」が国内で初めて発売されたのが昨年10月。パソコンで手軽にテレビが視聴ができ、さらに録画もできるとあって、年末年始には品切れ店が続出するほどの大ヒットを記録した。その後多くの周辺機器メーカーも参戦。製品ラッシュが続いた。この夏以降は需要も一巡。メーカー各社は新たな戦略でユーザー獲得に動き始めている。「BCNランキング」で最新動向をまとめた。
●多くのメーカーが参入するも、バッファローとI・Oデータの2社の争いに
ワンセグチューナーのブームに火をつけたのはバッファローの「ちょいテレ」。当時はまだワンセグが視聴できる機器が少なく珍しかったことと、業界初の録画もできる製品だったことで人気が集中した。06年10月の「ちょいテレ」初代モデル「DH-ONE/U2」の発売後、短期間に多くのメーカーが同様の製品を発表。「突然」ともいえる速いスピードで市場が立ち上がった。
バッファローはじめ、数社しか参入していなかった06年11月の販売台数を1として指数化すると、07年1月の時点で2.2倍の販売台数を記録するなど、市場はいきなりピークを迎えた。しかし、その後は当初の勢いを失い、5月-7月には06年11月と同等の市場規模に収束。8月-10月ではそれさえも下回り、「一山超えた」格好になった。
この1年のメーカー各社の動きを振り返ると、販売台数シェアで当初優勢だったのはバッファロー。07年4月までは5割を超えるシェアを維持する独壇場が続いていた。急激に追い上げたのがアイ・オー・データ機器(I・Oデータ)。もともとキャプチャボードなど、映像関連のPC周辺機器で高いシェアを持っていた同社は06年12月末、満を持して第1弾モデル「SEG CLIP(GV-1SG/USB)」を発売すると、07年2月にはシェア15.9%でメーカー別販売台数シェア2位へと一気に浮上した。
その後、電波を増幅する「ブースター回路」や帯域外の不要なノイズを除去する「ダブルノイズフィルター」を搭載し、受信感度を高めた「SEG CLIP」の第2弾モデル「GV-SC200」を投入。以降さらにシェアを伸ばし、07年6月・7月では、ついにバッファローを追い抜きトップを獲得した。
バッファローとI・Oデータを合算した上位2社の販売台数シェアは、両社の製品が揃った06年12月以降、常に6割を超える水準で推移。そこで両社は抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げている。07年8月・9月は僅差でバッファローが再びトップを奪還。10月はバッファローの46.7%に対し、I・Oデータは30.7%と、再び差が開いた。
この1年間で1製品以上ワンセグチューナーを販売したメーカーは24社。その多くは第1弾以降、音沙汰なく、「次」が続かなかった。一方、バッファローやI・Oデータは、受信感度や視聴ソフトの機能を強化した新モデルやMac対応モデル、付属品を省き価格を抑えたモバイルモデルなどを追加発売し、製品ラインアップを拡充。こうした取り組みの違いが、結果的に2社の寡占化につながったようだ。
●録画した番組をパソコン以外でも見られるムーブ対応モデルが近々登場
機種別のランキングはどう推移したのか? 10月は、I・Oデータの5月発売の「GV-SC200」がシェア22.2%で1位を獲得。続いて2?4位には、それぞれ付属品や受信感度が異なるバッファローの「ちょいテレ」シリーズがランクインした。
___page___
「GV-SC200」は、6月から10月まで5か月連続でトップを獲得している人気モデルだが、11月末には、通常の2倍の毎秒30コマで映像を表示する「なめらかモーション」や、録画データの「ムーブ機能」を新たに搭載した後継モデル「GV-SC300」が発売される予定。アイ・オー・データの広報によると、両製品は併売せず、「GV-SC200」は在庫限りで販売を終了するという。
ちなみにバッファローも、「GV-SC300」同様、録画データのムーブに対応した「ちょいテレ」シリーズの最新モデル「DH-KONE/U2V」を12月中旬に発売する予定。両製品とも、著作権保護機能に対応したカードリーダー経由でパソコンからメモリカードに録画データをムーブし、対応する携帯電話で見られるのが最大のウリ。メモリースティック PRO デュオなどに録画データを移し、携帯ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」で見ることもできる。
価格も人気を左右する大きな要素だ。10月のワンセグチューナー機種別販売台数シェアトップ10には、価格の下がった昨年発売の旧機種が4機種ランクインした。バッファロー製品のなかでも、一番人気は2月発売の「DH-ONE/U2P」で、6月発売の高感度モデル「DH-KONE/U2」の13.6%を上回る、21.1%の高いシェアを獲得した。「DH-KONE/U2」のBCNが11月28日時点算出した市場推定価格は1万400円、対して「DH-ONE/U2P」は同6900円と、この価格差が影響しているようだ。ワンセグチューナーの場合、使いたい場所で正常に受信できなかった場合でも、返品することはできない。試しに買うならできるだけ安いものを、というのは自然な流れだろう。
●1年間で平均単価は3割下落、1万円以下が主流に
ワンセグチューナーの税別平均単価は、ピーク時の07年1月の1万円弱から、10月には7000円台前半まで下がった。旧機種を中心に、量販店のチラシの目玉商品になっているケースも少なくない。平均価格帯別の販売台数構成比では、平均単価を含む「5000円-1万円未満」に集中。06年12月以降、同価格帯が常に85%以上を占め、価格面ではどの製品もほぼ横並びの状態になっている。
接続方式や対応OSは、この1年で大きく変わらず。USB接続タイプが95%以上を占めている。対応OS別では、Mac専用か、MacとWindows、どちらでも使えるMac対応モデルが8月を境に5-6%台に上昇した。大きく変わったのは、付属品の種類と数。アンテナ周りの付属品を同梱する製品が増えた。家庭のアンテナ線に接続できる「F型コネクタ変換アダプタ」や、通常のアンテナと取り替えられる「高感度アンテナ」、あるいはそれらに類するものが付属し、使用シーンに応じてアンテナを選べるモデルが目立つ。とくに「F型コネクタ変換アダプタ」は、新しい製品ではほぼ標準添付になり、06年12月時点ではわずか7.3%に過ぎなかった同アダプタ付属モデルの割合は、7月には55%に拡大した。以降、49.5-56.5%と5割前後で推移している。
ワンセグチューナーでは、本体の大きさや受信感度はもちろん、付属ソフトの機能や使い勝手が他社との重要な差別化ポイント。I・Oデータとバッファローの新製品では、奇しくも、録画データを外に持ち出して見る、という同じ新機能がウリだ。いずれも第3世代モデルといっていいだろう。軍配はどちらに上がるのか? この年末商戦で趨勢が決まる。(BCN・嵯峨野芙美)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など23社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
●多くのメーカーが参入するも、バッファローとI・Oデータの2社の争いに
ワンセグチューナーのブームに火をつけたのはバッファローの「ちょいテレ」。当時はまだワンセグが視聴できる機器が少なく珍しかったことと、業界初の録画もできる製品だったことで人気が集中した。06年10月の「ちょいテレ」初代モデル「DH-ONE/U2」の発売後、短期間に多くのメーカーが同様の製品を発表。「突然」ともいえる速いスピードで市場が立ち上がった。
バッファローはじめ、数社しか参入していなかった06年11月の販売台数を1として指数化すると、07年1月の時点で2.2倍の販売台数を記録するなど、市場はいきなりピークを迎えた。しかし、その後は当初の勢いを失い、5月-7月には06年11月と同等の市場規模に収束。8月-10月ではそれさえも下回り、「一山超えた」格好になった。
この1年のメーカー各社の動きを振り返ると、販売台数シェアで当初優勢だったのはバッファロー。07年4月までは5割を超えるシェアを維持する独壇場が続いていた。急激に追い上げたのがアイ・オー・データ機器(I・Oデータ)。もともとキャプチャボードなど、映像関連のPC周辺機器で高いシェアを持っていた同社は06年12月末、満を持して第1弾モデル「SEG CLIP(GV-1SG/USB)」を発売すると、07年2月にはシェア15.9%でメーカー別販売台数シェア2位へと一気に浮上した。
その後、電波を増幅する「ブースター回路」や帯域外の不要なノイズを除去する「ダブルノイズフィルター」を搭載し、受信感度を高めた「SEG CLIP」の第2弾モデル「GV-SC200」を投入。以降さらにシェアを伸ばし、07年6月・7月では、ついにバッファローを追い抜きトップを獲得した。
バッファローとI・Oデータを合算した上位2社の販売台数シェアは、両社の製品が揃った06年12月以降、常に6割を超える水準で推移。そこで両社は抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げている。07年8月・9月は僅差でバッファローが再びトップを奪還。10月はバッファローの46.7%に対し、I・Oデータは30.7%と、再び差が開いた。
この1年間で1製品以上ワンセグチューナーを販売したメーカーは24社。その多くは第1弾以降、音沙汰なく、「次」が続かなかった。一方、バッファローやI・Oデータは、受信感度や視聴ソフトの機能を強化した新モデルやMac対応モデル、付属品を省き価格を抑えたモバイルモデルなどを追加発売し、製品ラインアップを拡充。こうした取り組みの違いが、結果的に2社の寡占化につながったようだ。
●録画した番組をパソコン以外でも見られるムーブ対応モデルが近々登場
機種別のランキングはどう推移したのか? 10月は、I・Oデータの5月発売の「GV-SC200」がシェア22.2%で1位を獲得。続いて2?4位には、それぞれ付属品や受信感度が異なるバッファローの「ちょいテレ」シリーズがランクインした。
___page___
「GV-SC200」は、6月から10月まで5か月連続でトップを獲得している人気モデルだが、11月末には、通常の2倍の毎秒30コマで映像を表示する「なめらかモーション」や、録画データの「ムーブ機能」を新たに搭載した後継モデル「GV-SC300」が発売される予定。アイ・オー・データの広報によると、両製品は併売せず、「GV-SC200」は在庫限りで販売を終了するという。
ちなみにバッファローも、「GV-SC300」同様、録画データのムーブに対応した「ちょいテレ」シリーズの最新モデル「DH-KONE/U2V」を12月中旬に発売する予定。両製品とも、著作権保護機能に対応したカードリーダー経由でパソコンからメモリカードに録画データをムーブし、対応する携帯電話で見られるのが最大のウリ。メモリースティック PRO デュオなどに録画データを移し、携帯ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」で見ることもできる。
価格も人気を左右する大きな要素だ。10月のワンセグチューナー機種別販売台数シェアトップ10には、価格の下がった昨年発売の旧機種が4機種ランクインした。バッファロー製品のなかでも、一番人気は2月発売の「DH-ONE/U2P」で、6月発売の高感度モデル「DH-KONE/U2」の13.6%を上回る、21.1%の高いシェアを獲得した。「DH-KONE/U2」のBCNが11月28日時点算出した市場推定価格は1万400円、対して「DH-ONE/U2P」は同6900円と、この価格差が影響しているようだ。ワンセグチューナーの場合、使いたい場所で正常に受信できなかった場合でも、返品することはできない。試しに買うならできるだけ安いものを、というのは自然な流れだろう。
●1年間で平均単価は3割下落、1万円以下が主流に
ワンセグチューナーの税別平均単価は、ピーク時の07年1月の1万円弱から、10月には7000円台前半まで下がった。旧機種を中心に、量販店のチラシの目玉商品になっているケースも少なくない。平均価格帯別の販売台数構成比では、平均単価を含む「5000円-1万円未満」に集中。06年12月以降、同価格帯が常に85%以上を占め、価格面ではどの製品もほぼ横並びの状態になっている。
接続方式や対応OSは、この1年で大きく変わらず。USB接続タイプが95%以上を占めている。対応OS別では、Mac専用か、MacとWindows、どちらでも使えるMac対応モデルが8月を境に5-6%台に上昇した。大きく変わったのは、付属品の種類と数。アンテナ周りの付属品を同梱する製品が増えた。家庭のアンテナ線に接続できる「F型コネクタ変換アダプタ」や、通常のアンテナと取り替えられる「高感度アンテナ」、あるいはそれらに類するものが付属し、使用シーンに応じてアンテナを選べるモデルが目立つ。とくに「F型コネクタ変換アダプタ」は、新しい製品ではほぼ標準添付になり、06年12月時点ではわずか7.3%に過ぎなかった同アダプタ付属モデルの割合は、7月には55%に拡大した。以降、49.5-56.5%と5割前後で推移している。
ワンセグチューナーでは、本体の大きさや受信感度はもちろん、付属ソフトの機能や使い勝手が他社との重要な差別化ポイント。I・Oデータとバッファローの新製品では、奇しくも、録画データを外に持ち出して見る、という同じ新機能がウリだ。いずれも第3世代モデルといっていいだろう。軍配はどちらに上がるのか? この年末商戦で趨勢が決まる。(BCN・嵯峨野芙美)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など23社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。