高級化進む電子辞書、3万円以上のモデルが人気、第2外国語は中国語が6割に

特集

2007/11/02 02:30

 読書、学問、芸術――。新しいことに挑戦したくなるこの時季にあると便利なのが、電子辞書。日本語や英語に加え、ビジネス・健康・生活などジャンルを問わずさまざまな言葉を1台で調べられるスグレモノだ。年末商戦を間近に控えた電子辞書について、「BCNランキング」で探った。

●春が商戦期の電子辞書、第2のピークは年末商戦

 電子辞書が最も売れる季節は、学生や社会人が新生活を始める春。06年10月から07年9月の1年間で月ごとのシェアを算出した月別販売台数シェア推移では、14.3%を占めた07年4月がピークだった。他にも小さなピークがある、いわゆる年末商戦期だ。前回は06年12月、07年1月と続けて8%程度で推移した。今年も間もなく迎える年末商戦を前に、電子辞書のトレンドをチェックしてみた。



●総合・シンプルタイプが人気、タッチパネルと音声発音は標準搭載に

 カラーバリエーションを合算した、10月第3週(10月15-21日)のシリーズ別販売台数シェアトップ10では、日本語・英語のほか、ビジネス・健康・生活などオールラウンドに辞書を搭載する、いわゆる「総合タイプ」が5モデル、初心者でも操作がしやすくコンテンツの数も抑えた「シンプルタイプ」が3モデルランクインした。



 1位は、07年6月発売のシャープの「PW-AT760」でシェア13.6%。専用ペンで文字を書いて調べられる「手書きパッド」をキーボードの手前に搭載するのが特徴。英和辞典や旅行会話集など13コンテンツは、ネイティブ発音にも対応する。コンテンツ数は100。カラーはシルバーとブラックのほか、レッド、ベージュ、ブラウンの3色をこの9月に新色として追加した。



 2位は、カシオ計算機の「XD-SW6500」でシェア12.5%。07年8月発売で、こちらもキーボードの手前に「手書きパネル」を搭載する。従来モデルよりも音声発音機能を強化し、英単語約10万語がネイティブ発音に対応する。カラーはシャンパンゴールド、レッド、ブラック、ピンク、ベージュの5色を揃える。9位はシェア1.8%でシチズンの「ED1600」。日本語、漢字、英和・和英のみを収録したシンプルなモデルで、文字キーとは独立して数字キーを備え、電卓としても利用できる。



 なお、収録する辞書の数・種類以外で、電子辞書の使い勝手を向上する便利な機能として、ペンで文字を書いて意味を調べられるタッチパネルと、音声発音機能がある。現在、タッチパネルは全体のおよそ6割、音声発音機能はネイティブ・合成含めておよそ7割が対応。これらは07年4月以降、シェアをほぼ維持しており、これら2つの機能を搭載する電子辞書は主流になりつつあるようだ。

●全体のおよそ1割を占める第2外国語対応モデル

 ところで、英語以外の外国語、例えば中国語、韓国語、フランス語、ドイツ語などの辞書を収録する「第2外国語対応モデル」は、電子辞書の市場全体でおよそ1割を占める。市場規模は小さいものの、大手家電量販店によっては専用コーナー設けているところもあり、電子辞書を分類するタイプの1つになっている。

 ただ、一口に「第2外国語」といっても言語の種類はさまざま。9月の第2外国語対応モデルのうちわけを見てみると、中国語がおよそ6割でトップ。次いで、韓国語とフランス語が1割程度、その後ドイツ語、スペイン語などが続いている。



 第2外国語対応モデルすべての月次の販売台数シェア推移を見ると、不思議なことに、07年3月が溝になったV字型をしている。前述の通り、電子辞書は春が商戦期であり、この動きには何か理由がありそうだ。

 第2外国語の中でも中国語対応モデルだけを販売するキヤノンマーケティングジャパン広報によると、10月に入ってからも販売台数は伸びているという。その理由は3つ。同社が販売する07年の中国語対応モデルで、ピークは5、6、7月だったが、これは「9月から学校が始まる海外留学が背景にある」という。また、「大学の後期授業で、第2外国語で中国語を履修する学生が増えている」ことも挙げている。また、社会人については「ビジネスで中国語を使う機会が増えている」ことも後押ししていると考えられる。第2外国語対応モデルは、一般的な電子辞書とは異なり、秋がピークであることは確かなようだ。



●カシオとシャープが不動の2強 3万円以上が伸びて高級化

 メーカーでは、カシオ計算機とシャープがほかを引き離して1位、2位を占有する。月次のメーカー別販売台数シェア推移でも、カシオは40%台、シャープは30%台で推移している。3、4位には、10%前後でキヤノンマーケティングジャパンとセイコーインスツルが競り合っている。ただ、収録するコンテンツによって各社で強みが異なり、大手家電量販店の電子辞書コーナーの店員によると、「総合タイプはカシオとシャープ、プロ向けの英語専門モデルはセイコーインスツル、第2外国語対応モデルの中でも中国語はキヤノン」となっている。こうしたメーカーで異なる得意分野を考慮した上で、自分が購入したいタイプを選ぼう。



 最後に、売れ筋の価格帯もチェックしておこう。月次の税別の価格帯別販売台数シェア推移を見ると、1万円以上2万円未満の安価なモデルは、06年10月には30%台半ばだったのが、07年9月には10%程度まで減少した。人気は2万円以上3万円未満のモデルで、4月の商戦期には約6割まで上昇し、平均でおよそ4割を占める。その一方で、3万円以上4万円未満の高価なモデルがゆるやかに成長しており、9月にはおよそ3割まで伸びた。より高額な4万円以上5万円未満モデルも、06年10月に1%程度だったのが、07年9月には5%まで微増しており、電子辞書全体として、徐々に高級化が進んでいるようだ。(BCN・井上真希子)



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