リコー、コンパクトデジカメ「GR」に後継機、パーティーで坂崎幸之助も祝辞
●GRらしさを追求した正統進化こそが後継機
銀塩フィルムカメラで伝説をつくった「GRシリーズ」のデジタル版として05年10月に発売し、今年10月、惜しまれつつ生産を終了した「GR DIGITAL」。35mmフィルムカメラ換算で28mmの単焦点レンズを搭載し、その極めて高画質な描写とスリムでコンパクトなボディで、多くのファンを獲得した。通常、半年から長くても1年で世代交代するのが当たり前になりつつあるコンパクトデジカメ市場にあって、実に2年間も販売が続けられるという孤高の存在を確立していた。その後継機が「GR DIGITAL II」だ。
まず、冒頭、プロジェクトの総責任者であるパーソナルマルチメディアカンパニーの湯浅一弘プレジデントが挨拶に立ち、「GR DIGITAL II」開発の経緯を紹介した。前モデル「GR DIGITAL」は、コンパクトデジカメとしては珍しく数多くの賞を受けるとともに、ブログでの盛り上がりや写真集の発行など、「お客さまに愛された幸せなカメラ」であったと語る。その後継機を検討する上で、「まったく新しい基軸を盛り込むべきか?」が社内でもおおいに議論になったという。
しかし、「何がGRらしいのか」「GRで実現しようとしたものは何か」を考えたとき、開発思想やコンセプトを変えることなく、「正統進化」を図ることこそが「GR DIGITAL」後継機の目指すべき方向であると結論づけるに至った。そうして誕生した「GR DIGITAL II」には、大きく3つの進化のポイントがある。
●「GR DIGITAL II」進化の3つのポイントとは?
「GR DIGITAL II」進化のポイントその1は、高画素化と新画像処理エンジンの搭載による高画質追求である。「GR DIGITAL II」では、撮像素子に1/1.75型CCDを採用、画素数は1001万画素にアップした。また、LSIだけでなく、基盤やアルゴリズムまで見直した新画像処理エンジン「GR ENGINE II」を搭載。これによって、高感度撮影時のノイズが極めて少なくなった。また、RAW撮影での書き込み速度アップや、低消費電力を実現した。
「GR DIGITAL II」進化のポイントその2は、使いやすさへのこだわり。例えば、液晶モニタに表示して確認できる「電子水準器」や「被写界深度表示」の搭載、Fn(ファンクション)ボタンの装備、外部ファインダーを使用する際に便利な「情報表示モード」の採用などが挙げられる。ちなみに、背面の液晶モニタは2.7型(23万画素)に大型化した。
「GR DIGITAL II」進化のポイントその3は、撮影領域・表現領域の拡大だ。これには、「Caplio GX100」で大変好評のアスペクト比1:1での撮影が可能になった点(「GR DIGITAL II」はRAWでの1:1モードも備える)や、多彩なモノクローム表現を可能とする「白黒(TE)機能」の搭載、40mmテレコンや外付けミニファインダーなどのオプションの充実などがある。
なお、こうした「GR DIGITAL II」の新機能のいくつかは、「GR DIGITAL」にも、ファームウエアのアップデートを通じて提供される。「GR DIGITAL」は、この2年間で都合4回のファームウエアのアップデートが行われ、さまざまな機能拡張が追加されてきた。
他のデジカメの場合、ファームウエアのアップデートは不具合解消などのために行われることが多い。しかし、発売後でも「進化し続けるカメラ」であることがひとつのコンセプトの「GR DIGITAL」では、機能の追加や使いやすさを向上させるようなファームウエアのアップデートが、繰り返し行われてきた。そして、次の5回目のファームウエアのアップデートが、「GR DIGITAL」に提供される最後のアップデートになる。
___page___●耐ノイズ性は「GR DIGITAL」より約2段アップ
続いて、壇上にはパーソナルマルチメディアカンパニー ICS事業部設計室の北郷隆室長が登場。とくに「GR DIGITAL II」の高画質追求について、技術的要素も交えながら解説を行った。北郷室長によると、「GR DIGITAL II」の高感度ノイズは、「GR DIGITAL」より約2段分相当向上しているという。
つまり、「GR DIGITAL II」で撮ったISO400の画像のノイズは、「GR DIGITAL」のISO100で撮った画像と同じ程度、というのである。「GR DIGITAL」の唯一の泣き所ともいうべきものが高感度撮影時のノイズの多さだったので、画素数をアップしながらも、徹底した耐ノイズ性の向上が図られたようだ。
次いで、湯浅氏と北郷室長による質疑応答の時間。カメラ各社がコンパクトデジカメの最高機種に1200万画素機を投入している中で、今回、「GR DIGITAL II」を1001万画素にした点について問われと、湯浅氏は「その時点で、GRを名乗るにふさわしい最適なものを選んでいる。それが今回は1001万画素だったということ」と答えた。また、ボディデザインなどを含め、外観上に一切変更が加えられなかった点については、「携帯性、レンズ、デザイン、高画質を守ること、そのどれが欠けてもGRではない。そう考えたときに、外観上で加えるべき変更は何もなかった」という。
また、アスペクト比1:1での撮影は、ファームウエアのアップデートを通じて「GR DIGITAL」オーナーへも提供できないのか? との質問に答えた北郷室長は、「『GR DIGITAL II』が備えるRAWでの1:1モードは、新画像処理エンジン『GR ENGINE II』によって実現できたもので、残念ながら『GR DIGITAL』では不可能」と語った。
さらに、初代「GR DIGITAL」発表時に、「将来、もっと高画質を実現できるCCDが登場すれば、例えばCCDユニットの交換など、ハードのアップグレードも検討したい」と語っていたことについては、「CCD交換は不可能ではない。しかし、デジカメの部材の中でも、もっとも単価の高い部分であり、かつ交換を行うとなると、それだけの作業コストもかかってくる。それらをユーザーにご負担いただくとなると、かなり高額なものになってしまう。それは現実的ではないと判断して、『GR DIGITAL II』をリリースすることになった」と湯浅氏は説明した。
●「GR DIGITAL II」はポケットに入るブローニーカメラ
そのあとは、写真家の望月宏信氏、現代美術アーティストの奈良美智氏が相次いで登場し、自身の作品をスクリーンに投影しながら、写真との関わりや「GR DIGITAL II」の印象などについて語った。
とくに望月氏は、今年初め、乗っていたヘリコプターが30mくらいの上空から海に墜落し、九死に一生を得た体験を通して、「自分にとって、人生の足跡を残していくものは写真なのだということを強く感じた」と語り、自身の人生を写す鏡としての写真への思いを新たにしたという。「心が動いたらシャッターを切ること」の大切さを改めて実感したそうだ。
そうした写真行為に、新しい「GR DIGITAL II」はまさにぴったりだと望月氏はいう。「これほどしっかり撮れるコンパクトはない。いわば、ポケットに入るブローニーカメラだといってもいい。『GR DIGITAL II』は、写真というものを表現しようとしているデジカメなのだ」と語っていた。そして、「日々ストレスを抱えている人にとっても、シャッターを押す行為がリフレッシュになるはず」と、写真の効用を説いた。
●会場には坂崎幸之助氏も登場、まるで「GR文化」を支えるオフ会
ひととおり発表会が終わって、実機に触れるハンズオンタイムが設けられ、さらにその後、飲み物と軽食がふるまわれてパーティータイムになった。何しろコアなファンが多い「GR DIGITAL」の後継機が発表される場とあって、会場にはTHE ALFEEの坂崎幸之助氏ほか、蒼々たるメンバーが集合。その様子は、まるでコアなGRユーザーによるオフ会のようでもあった。
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初代「GR DIGITAL」発表の直前にスタートした「GR BLOG」という、ユーザーが集うブログがある。リコー社員による社内レポートなどもあり、当初は「GR DIGITAL」発売に向けた盛り上がりを醸成する役割を担っていた。「GR DIGITAL」発表時には、2?3か月後には終了するとアナウンスされていたのだが、2年経ったいまでも盛況で、「GR DIGITALカレンダーコンテスト」など、さまざまなイベントが展開されてきた。リコーの企画担当者に聞いたところ、「ここまでの盛り上がりは、正直予想もしていなかった」そうである。パーティー会場で歓談する面々を見るにつけ、カメラ・写真を愛する人たちの中に、いわば「GR文化」とでも呼ぶべきものが根付きつつあるのを感じた。
なお横浜美術館では、「GR DIGITAL」の発売2周年を記念した感謝イベント、「photoGRaph 100」が11月3日?4日の2日間にわたって開催される。このイベントでは、プロカメラマンをはじめ各界の第一線で活躍する著名人100人が、リコー「GR DIGITAL」「Caplio GX100」で撮影した写真を一堂に展示。併せて、カメラの使い方や撮影の仕方などが学べるワークショップも開く。料金は無料だが、美術館の観覧料が必要。一般500円、大学、高校生300円、中学生100円。小学生以下は無料。
同じく「GR DIGITAL」発売2周年を記念して、100人のクリエイターが「GR DIGITAL」「Caplio GX100」で撮影した写真を1人1点ずつ掲載した写真集『GR SNAPS』を、リコーとシー・エム・エスが共同制作、11月22日に発売する。価格は3990円。(フリーカメラマン・榎木秋彦)