HDD記録型が4割を突破、フルHD化進むデジタルビデオカメラ市場に大きな変化

特集

2007/09/19 23:45

 デジタルビデオカメラで、HDDに記録するモデルが販売台数の4割を超え、DVDやMiniDVテープに記録するモデルを抜いてトップに立った。急激にフルHD(ハイビジョン)化が進むなか、交換の手間がなく、より大容量の記録媒体が求められているようだ。秋の需要期を目前に、大きく変わりつつあるデジタルビデオカメラの現状を「BCNランキング」で探った。

●記録媒体はついにHDDが4割、ビデオカメラ周辺環境の充実も後押し

 このところ、デジタルビデオカメラの記録媒体が大きく変化している。なかでも著しく伸びているのがHDDだ。記録媒体別で販売台数シェアの推移を見ると、しばらく主流を占めていたDVDやMiniDVテープをHDDが6月に逆転。以降シェアを伸ばし、8月には40.7%を占めるまでに至っている。

 ちょうど1年前の06年9月に主流だったのはDVDで、シェアは30%台後半。一方、HDDは07年3月まで20%半ばで推移していた。しかし、4月以降に伸び始め、6月にはついにDVDを上回っている。また、従来主流だったMiniDVテープは縮小傾向。07年2月までは30%前後で推移していたが、その後は下降し、8月には15%までシェアを下げた。



 HDDがここまで急激に伸びた理由の1つとして、デジタルビデオカメラでトップシェアを占るソニーの動きがある。2-3月に同社が発売した春モデルではMiniDVテープやDVDタイプも含まれていたが、6-7月に発売した秋モデルでの対応メディアはHDDかメモリースティックの2種類だけ。いずれもフルHD対応モデルだ。

 ソニーでは、あえて秋にHDDタイプを発売した理由は「特にない」(広報)としつつも、「メディアの交換の必要がなく長時間録画できるので、秋の運動会に向いている」と説明。また、「PCの高機能化やDVDライターなど周辺機器の充実によって、(HDDが)使いやすい環境になった」こともHDDモデル充実の理由として挙げた。

 一方、9月以降の動きで注目したいメディアがSDカードだ。06年12月以降一桁台後半のシェアで推移していたのが、07年8月後半から勢いがつき、9月上旬にはついに13.7%と1割を超えるところまで伸びてきた。これはHDD/DVDのハイブリッドタイプやMiniDVテープを追い越した状態で、SDカードは今や、HDD、DVDに次ぐ第3のメディアに成長した。

●9月第2週トップ10でもHDDモデルが人気 日立のBD対応モデルも7位で健闘

 直近の9月第2週(9月3-9日)のシリーズ別販売台数シェアトップ10を見ても、こうした記録媒体の変化は明らか。10モデル中4モデルがHDDを採用、このほか、DVDが3モデル、HDD/DVDが2モデル、SDカードが1モデルという構成になった。なお、上位3モデルと7位のモデルに秋の新製品がランクインしている。



 フルHD対応で記録媒体に容量60GBのHDDを採用する、ソニーの「HDR-SR7」はシェア12.2%で1位。LPモードで約22時間50分の長時間撮影ができる。また、8月後半から急激に伸びているSDカード対応モデルは、松下電器産業の「HDC-SD5」でシェア10.8%の2位。SDカードにフルHD画質の映像を録画でき、重さ約340gと軽量なのが特徴。そのほか、世界で初めて次世代DVDのブルーレイディスク(BD)を採用した07年8月発売の日立製作所の「DZ-BD7H」は、シェア3.4%で7位と、まずまずのスタート。BDのほか、容量30GBのHDDも搭載し上位を狙う。



●メーカーごとに記録媒体で差異化、ソニーはいずれもトップを占める

 ところで、記録媒体別にメーカーの強みはあるのだろうか。記録媒体で売れ筋のHDDとDVDについて、6月第4週-9月第2週のメーカー別販売台数シェアをチェックしてみよう。まずHDDは、ソニーとビクターの2強で、ソニーが50-60%台、ビクターが30-40%台で推移している。6月中旬の時点では両者のシェアの開きは10%程度だったが、徐々にハの字型に差が広がり、9月上旬ではソニーが65.4%、ビクターが31.2%という状況だ。



 一方DVDでは、ソニーが50%前後で推移。7月上旬に一時的には2位キヤノンの差が縮まったものの、再び差が開き、キヤノンと松下の2社が20%台で2位を争っている。HDDやDVD以外では、HDD/DVDが日立、SDカードが松下と、1社でそれぞれの記録媒体を独占する動きもあり、他社との差異化を図ろうとする狙いが読み取れる。



 なお、同じ期間の6月第4週-9月第2週で、デジタルビデオカメラ全体のメーカー別販売台数シェア推移では、ソニーが40%台で推移してトップ。ビクターが20%前後で動いていたが緩やかに下降を続け、9月上旬には8月に伸び始めた松下に2位の座を奪われた。しかし、ソニーに次ぐ特出したメーカーは見られず、10%台で松下、ビクター、日立、キヤノンの4社が競り合う混戦模様だ。



●フルHD画質とSD画質がそれぞれ4割 いよいよフルハイビジョンが主流に

 最後に、フルHD対応について見てみよう。6月第4週-9月第2週で、画質別販売台数シェア推移を算出した。8月中旬まではSD画質(標準画質)が50%台で推移。しかし、8月下旬からは、今まで20%台で推移していたフルHD画質が右肩上がりで成長し、ついに9月上旬にはSD画質を追い越し、双方がおよそ4割を占める状態となった。なお、HD画質は20%前後で推移しているが、やや下降気味。いよいよフルHD画質が主流になってきた。



 さらに、画質別の税抜きの平均価格を見ると、フルHD画質が12万円前後、HD画質が9万円前後、SD画質が6万円前後が相場。6月第3週-9月第1週の平均価格の推移では、各画質ともにわずかながら低下傾向にある。例えば、6月中旬の値を100%とすると、フルHDは9月上旬には7.3%下がった。また、同時期にHD画質は7.7%、SD画質も2.6%とわずかながら下がっている。



 フルHD対応の薄型テレビが普及するにつれ、デジタルビデオカメラもフルHD化が急だ。さらに、高画質データを長時間記録するための大容量HDD搭載モデルも急拡大している。デジタルビデオカメラは今後、フルHD画質で大容量HDDを搭載するモデルが主流になりそうだ。(BCN・井上真希子)

*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など23社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。


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