市民メディアサミット'07、情報発信を通して地域との関わり方を模索
ワークショップの1つ、北海道西部の沙流郡平取町・二風谷(にぶたに)では、アイヌ語で放送するミニFMラジオ放送局「FMピパウシ」を訪れた。「FMピパウシ」は、アイヌ民族初の国会議員として活躍しアイヌ文化研究者としても著名な故・萱野茂さんが01年4月に私費で開設した放送局。現在でも毎月第2日曜日の午前11-12時に放送している。現在は息子の志朗さんが編成局長を務めており、番組はアイヌ語ワンポイントレッスンや、座談会「わぃわぃがやがや」、アイヌ文化を紹介する「季節のお話」、アイヌ語による朗読などがある。
志朗さんはFMピパウシについて、「お金には代えられない地域に対する影響力がある」とし、「将来はコミュニティFMにしたい」と今後の目標を語った。また、パーソナリティーを務める関元子さんは、開局当初から関わったメンバーの1人。もともと二風谷にいたのではなく、他地域から移り住んできた。「地域の人にアイヌ語を届けたい」と活動に参加し始め、「ラジオに関わることは生涯学習」になると話す。
2・3日目の両日、札幌市生涯学習センター ちえりあで行われた分科会の1つ「市民がつくるデジタルアーカイブは、究極の市民メディアだ!」では、アーカーブとして収集された史料をどのように活用するかを議論した。函館市の古い写真や絵はがき、地図、文書などをデジタル化する、函館マルチメディア推進協議会の渡辺保史幹事が登場。「アーカイブは、街の出来事が他人事ではなく『自分事』として捉えるようになるためのツール」と説明した上で、「集めた史料をどう公開していくかが重要」と、史料の活用方法に対する課題も提示した。
また、横浜市の地域情報を発信するポートサイド・ステーションのヒロスケ・グローマン情報担当役員は、「DVDを作る、ウェブサイトに載せることがアーカイブではない。市民の施策の中で(史料を)生かすべき」と、単にコンテンツを蓄積するだけではアーカイブとして有効ではないことを強調した。さらに、「横浜市民は(都心に働きに出ている人が多く)地域アイデンティティがない」ので、アーカイブするという行為そのものが地域に関心をもつきっかけになると、市民と地域の関係を新たに構築できるアーカイブの可能性も語った。
一方、「災害と市民メディア」では、00年3月に噴火した有珠山による災害を支援するために立ち上げられた、FMラジオ局「FMレイクトピア」やメーリングリスト(ML)、ウェブサイトを事例に、災害時における市民メディアのあり方を議論した。時事通信社「防災リスクマネジメントWeb」の中川和之編集長は、「(有珠山の)災害のサイズと地域の人口を考慮すると、MLとウェブサイトで情報交換をしたのは適切だった」とし、有珠山噴火における両メディアの有益性を示した。
また、北海道大学の隈本邦彦特任教授は「普段よく聴いている言葉(方言)で、ラジオ局で、いざという時の情報が得られるのは(被災者が)安心する」とし、市民メディアが日頃から視聴される番組作りを心がける必要があるのに加え、災害時における当該媒体の使い方を議論しておくべき、と述べた。
市民メディア全国交流協議会=http://alternative-media.jp/
「市民メディアサミット'07」=http://07hokkaido.alternative-media.jp/
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