経産省など、第1回「キッズデザイン賞」、大賞に子どもの安全への取り組み
「キッズデザイン賞」は、子どもの安全・安心と健やかな成長を考慮して創った製品やシステム、取り組みなどを評価するもので、今回が1回目。部門別の受賞のほか、「大賞」1点、「金賞」が6点、「部門賞」が4点と「審査委員長特別賞」が2点受賞した。受賞作品は「キッズデザインマーク」が使用できる。
「大賞」を受賞したジャクエツは、福井県で保育用品や教具の製造、幼稚園の建築設計などを手がける企業。今回、合計9つの製品やサービス、取り組みで受賞した。「大賞」の「安全な子ども環境への取り組み」は、同社のモニター幼稚園や保育園で生じた子どもの事故や事故一歩手前の危険な事象を整理し、社内外に周知する、というもの。事故にはならないまでも、事故になる可能性があった事例まで詳細に収集し「ヒヤリハット報告書」として情報発信していることが高く評価された。
このほか金賞では、「マタニティデザイン賞」として、ズーム・ティー社の流線型をした哺乳瓶「ドクターヘッタ哺乳びん」が受賞。通常の哺乳瓶を使用した時のように頭を斜めにしなくてよいので、母乳を飲む時と同様、頭を縦にした状態で授乳できる。口と平行に位置する耳管にミルクが流れ込みにくい点や、容器内の空気が瓶の上部に溜まってミルクと一緒に飲み込むのを防ぐ、といった科学的知見が評価された。ラインアップはガラス製とプラスチック製の2種類。キャップや目盛りにはかわいいパステルカラーを採用した。
また、「エコデザイン賞」は、森や川で木の葉や石などの素材を集めて作品を作る、ナック社の子ども向け体験プログラム「フォレストファーム」が受賞。身の回りのものをリ・デザインする点が評価された。好きな石を拾って表面に目・鼻・口を自由に書き込んで動物を描く「石の仲間」や、砂・小石・貝殻などを入れて万華鏡を作る「フィールドスコープ」のほか、オカリナに絵付けして屋外で演奏する「森の音楽界」など、子どもの五感を刺激する遊びを豊富に揃える。高学年が低学年を教えるという活動形式を取り入れ、異学年コミュニケーションの場としても高評を得た。
一方、部門賞における「建築・空間デザイン部門」は、アクトウェア社の保育室とひとつづきになったトイレ「おおわだ保育園 1-2歳児のためのオープントイレ」が受賞。子どもが排泄を肯定的に捉えられるように工夫した空間作りが評価された。カラフルな塗装を施し個々のトイレの扉をなくしたことで、子どもは楽しく積極的に用を足せるようになった。おまると便器を並べて置くので、便器への移行もスムーズ。保育士自身が持っていたの「汚い、狭い」といった大人の排泄観を改めるきっかけとなった。
デジタル製品では、屋外でも使えて簡単に操作できるシンプルなデザインが評価されたセイコーエプソンのフォトプリンタ「E-300/500/700」や、ランドセルの肩のベルトに取り付けることで、片手で握ってすぐに音が鳴らせる松下電器産業の「ランドセル110番ブザー」などが受賞。サービスとしては、オリンパスの社員が自社の技術を活用してボランティアで科学教室を行う「オリンパスわくわくプロジェクト」などが受賞した。
審査委員長の赤池学・ユニバーサルデザイン研究所所長は、記者発表会で、「(第1回にもかかわらず5月7日-28日の3週間で)約300点の応募があったのは意義がある」とした一方で、「今回の受賞作品は子ども向け製品が中心だが、大人が使う製品に対しても(子どもが使うことを想定した)調査・対策が必要」と問題点も指摘した。
なお、「キッズデザイン賞」の全受賞作品を公開するイベント「キッズデザイン博2007」の開会式も同日に開催した。テープカットには、キッズデザイン協議会関係者に加え、甘利明・経済産業大臣や高木美智代・同大臣政務官も参加した。実施期間は8月9日-11日、場所は東京都港区の機械産業記念館(TEPIAプラザ)。また、キッズデザイン協議会では、「第1回 キッズデザイン賞」の発表を記念して、8月8日を「キッズデザインの日」と定めた。
経済産業省=http://www.meti.go.jp/
キッズデザイン協議会=http://www.kidsdesign.jp/