NECと日立、CPUとHDDを一緒に冷やす「第4世代」の水冷PC、年末商戦で投入
水冷システムは、不凍液を混ぜた水をCPUに接した「ジャケット」と呼ぶ専用の金属板に通すことでCPUやHDDの熱を奪って冷却。暖められた水はポンプでラジエーターに送られ、ファンで冷やされ、循環して再びCPUなどを冷やすしくみ。冷却効率が高く、ファンの回転数を低くすることができるため、静音性も優れている。
個人向けでは02年に日立製作所がA4サイズのノートパソコンで初めて実用化した。当初は金属のパイプ型ジャケットを使っていたが、その後、日立ではシステムを改良。続く「第3世代」システムでは細かな溝を掘った金属板に水を通す方法を採用している。
今回、日立とNECが共同開発したのは「第4世代」と呼ばれる水冷システム。ジャケットの溝を0.09mmとヒトの髪の毛程度の細さままで微細化し、CPUなどに水が当たる面積を大きくした。また上から下に水を落とし、CPUの大きさにかたどった部分だけを冷却するなどで冷却効率を高めた。
2社ではHDDとCPUを一緒に冷やすシステムも世界で初めて開発した。専用ケースに入れたHDDを、CPUと同様、細かな溝を掘ったジャケットに接触させて冷却。その後続けて、CPUのジャケットに水を流して冷却する。「CPUの熱量は65W、HDDは15Wで、HDDの方が熱が少ないため、HDDを冷やした後の水でも十分、CPUを冷却できるし、冷却性能も高まった」(源場英明・日立製作所ソリューションビジネス事業部センタ長)という。さらにHDDのケース内部には吸音材と防振材を取り付け静音化。新型ジャケットでCPUの冷却性能も向上し、ファンの回転数を1000rpm以下にしたことで、CPU、HDDがともにフル稼働の騒音を25dbに抑えた。日立がCPU冷却技術と全体の設計を担当。HDDの冷却とシステム設計は2社が協同で行った。生産は日立のマレーシア、クアラルンプール工場。
新水冷システム搭載のパソコンは製造コストが約1割アップする見込みだが、「高速CPUと大容量HDDを搭載した上位機種で採用し、付加価値の高いパソコンとして販売する」(小野寺忠司・NECパーソナルプロダクツPC事業本部商品開発統括マネージャー)する狙い。記録媒体にHDDとフラッシュメモリを組み合わせたタイプの発売も検討する。
また、開発したシステムは体積が大きいため、NECでは自社で持つノートパソコン用の水冷システム技術と組み合わせ、省スペースタイプのデスクトップパソコンにも搭載できるシステムの開発も進める。
NEC=http://www.nec.co.jp/
日立製作所=http://www.hitachi.co.jp/