上位4社でシェア9割、寡占化進むHDD-DVDレコーダー
テープの代わりにHDDにテレビ番組を録画し、自分の好きな時間に見られるHDD-DVDレコーダー。売れ筋は、HDD容量250-300GBのエントリーモデル。特にシャープの「DV-AC52」、松下の「DMR-XP11」の2機種に人気が集まっている。その一方で、HDD容量500GB以上も伸びており、デジタル放送を2番組同時に録画できる上位機種では今後、500-600GBがスタンダードになりそうだ。「BCNランキング」でここ半年の動きをまとめた。
●シャープ・松下の2トップ+2社の上位4社でシェア9割の寡占化
「BCNランキング」で、HDD-DVDレコーダーの07年上半期メーカー別販売台数を集計したところ、液晶テレビ「AQUOS」のブランド力をうまく取り込んだシャープが1位を獲得した。シェアは、2位の松下と2.8ポイントの差の29.9%。3月、4月に新製品を発売したばかりの同社だが、8月下旬には早くも次のモデルを発表するなど、このところ力が入っている。特に、同社製テレビとのリンク機能「AQUOSファミリンク」が好評で、トップ争いに絡み始めた昨年末以来の勢いを保っている。
2位の松下も同様のリンク機能「VIERA Link」をウリに、4月、5月に従来DVDの新製品を投入して人気を集めている。続く3位にはシェア16.5%で東芝、4位に16.3%でソニーが入った。4月以降、この上位4社でシェア9割を突破し、寡占化が進展する一方、その他のメーカーは苦戦を強いられている。今年に入って新製品をまったく発売していないメーカーもあり、次世代DVD市場の本格的な立ち上がりやコピーワンスの回数制限見直しを前に、メーカー側も様子を見ているような印象だ。
●HDD容量250GBのエントリーモデルが人気 次世代DVD対応機はまだ低調
直近6月の機種別ランキングでは、シャープの強さが際立った。14%と唯一2ケタのシェアで1位を獲得した「DV-AC52」をはじめ、トップ10に5機種がランクイン。内訳は、地上・BS・110度CSデジタルチューナー各1基の「シングルチューナーモデル」とデジタルチューナーを2基ずつ搭載し、デジタル放送を2番組同時に録画できる「ダブルチューナーモデル」がそれぞれ2機種、1台でVHSテープの再生やダビングもできる「VHS一体型」が1機種で、ダブルチューナーモデルではHDDが500GBと大容量の「DV-ACW55」が250GBと少ない「DV-ACW52」よりも上位に入った。
一方、松下は、シングルチューナーの「DMR-XP11」がシェア9.2%で2位を獲得したほか、トップ10に3機種がランクイン。なかでも、5位の「DMR-XP21V」はVHS一体型で最上位だった。
1位の「DV-AC52」、2位の「DMR-XP11」ともにHDDは250GBと少なく、それぞれ両社の現行ラインアップのなかで最も価格の手頃なエントリーモデル。直近の7月の第4週(07年7月23日-29日)でも、この2機種が1位・2位を独占し、そのほか上位の顔ぶれも変わっていない。ちなみに注目を集める次世代DVD対応モデルは、昨年11月発売の松下の「DMR-BW200」が20位、東芝が6月末に発売した初のHD DVDレコーダー普及機の上位機種「RD-A600」が30位という状況で、まだ上位には食い込んでいない。
●たくさん録るなら「デジタル放送の2番組同時録画」は必須
4年後に控えた2011年7月の地上アナログ放送の停波を前に、この半年でアナログチューナーしか搭載しない機種が店頭からほぼ姿を消した。1月には、まだ22.0%もあった地デジ非対応モデルだが、2月に14.6%、4月に5.6%、6月には2.9%にまで縮小。現在ではごく一部を除き、デジタルチューナー内蔵が標準になった。
その一方で、地上デジタルチューナー内蔵モデルに占めるデジタル放送2番組同時対応モデルの割合は、06年9月の54.3%をピークに減少。06年12月までは辛うじて優勢だったが、07年1月にシングルチューナーモデルに逆転され、07年6月はダブルチューナーが44.3%、シングルチューナーが55.7%と、10ポイント近い差がついている。
ここ半年の売れ筋は確かにシングルチューナーモデルだが、ドラマやアニメ、スポーツなど特定ジャンルの番組をたくさん録りたい、家族で1台のレコーダーを共有する、見たい番組が重なった経験がある、これらに1つでも当てはまるなら、デジタル放送の2番組同時録画に対応した機種をおすすめしたい。
たとえば、関東ローカルの場合、火・木曜日22時から1時間の連続ドラマが重なっている。ドラマに限らず、他のジャンルでも、BSや独立UHF局まで含めれば、見たい番組、気になる番組が重なる確率はかなり高くなるはず。録画機として使い倒すなら、デジタル放送の2番組同時録画は絶対に外せない要素だ。また、一部機種ではデジタル写真や音楽の再生なども可能で、単なる録画機を超えたメディアプレーヤー的な存在になりつつある。
●HDD容量は予算に応じて選択、迷ったら見た目で?
チューナー以外のもう1つのポイントがHDD容量。地上デジタルチューナー内蔵モデルの場合、160GBから最大1TBまで出回っているが、500GBで二分すると、07年3月以降、500GB以上が急激に伸び、ここ3か月は20%台後半から30%台で推移している。
HDD容量別に細かく見ると500GB以上では「500GB」のみが伸びており、最大容量の1TBは1%台でほとんど変わっていない。6月のランキングで3位の松下「DMR-XW31」、6位のシャープ「DV-AC55」、7位の「DV-ACW55」の好調が要因だろう。「DV-ACW55」と「DMR-XW31」はどちらもデジタル放送の2番組同時に録画に対応した上位機種。録画機能を重視している層には、500GBが適当と判断されているようだ。
HDD容量は大きいに越したことはないが、その分価格が高くなり、万が一、壊れた際の修理費(HDD交換費用)も高くつく。価格重視のエントリーモデルがシェアを拡大する一方で、新しい流れも生まれつつある。ちなみに「DMR-XW31」はDVDレコーダーでは珍しくカラーバリエーションがあり、シルバーとブラックの2色から好きな色を選べる。置き場所によっては、レコーダーは案外、部屋のなかで目立つ。迷ったら「顔」で選ぶというのもアリかもしれない。(BCN・嵯峨野芙美)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など21社・ 2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
●シャープ・松下の2トップ+2社の上位4社でシェア9割の寡占化
「BCNランキング」で、HDD-DVDレコーダーの07年上半期メーカー別販売台数を集計したところ、液晶テレビ「AQUOS」のブランド力をうまく取り込んだシャープが1位を獲得した。シェアは、2位の松下と2.8ポイントの差の29.9%。3月、4月に新製品を発売したばかりの同社だが、8月下旬には早くも次のモデルを発表するなど、このところ力が入っている。特に、同社製テレビとのリンク機能「AQUOSファミリンク」が好評で、トップ争いに絡み始めた昨年末以来の勢いを保っている。
2位の松下も同様のリンク機能「VIERA Link」をウリに、4月、5月に従来DVDの新製品を投入して人気を集めている。続く3位にはシェア16.5%で東芝、4位に16.3%でソニーが入った。4月以降、この上位4社でシェア9割を突破し、寡占化が進展する一方、その他のメーカーは苦戦を強いられている。今年に入って新製品をまったく発売していないメーカーもあり、次世代DVD市場の本格的な立ち上がりやコピーワンスの回数制限見直しを前に、メーカー側も様子を見ているような印象だ。
●HDD容量250GBのエントリーモデルが人気 次世代DVD対応機はまだ低調
直近6月の機種別ランキングでは、シャープの強さが際立った。14%と唯一2ケタのシェアで1位を獲得した「DV-AC52」をはじめ、トップ10に5機種がランクイン。内訳は、地上・BS・110度CSデジタルチューナー各1基の「シングルチューナーモデル」とデジタルチューナーを2基ずつ搭載し、デジタル放送を2番組同時に録画できる「ダブルチューナーモデル」がそれぞれ2機種、1台でVHSテープの再生やダビングもできる「VHS一体型」が1機種で、ダブルチューナーモデルではHDDが500GBと大容量の「DV-ACW55」が250GBと少ない「DV-ACW52」よりも上位に入った。
一方、松下は、シングルチューナーの「DMR-XP11」がシェア9.2%で2位を獲得したほか、トップ10に3機種がランクイン。なかでも、5位の「DMR-XP21V」はVHS一体型で最上位だった。
1位の「DV-AC52」、2位の「DMR-XP11」ともにHDDは250GBと少なく、それぞれ両社の現行ラインアップのなかで最も価格の手頃なエントリーモデル。直近の7月の第4週(07年7月23日-29日)でも、この2機種が1位・2位を独占し、そのほか上位の顔ぶれも変わっていない。ちなみに注目を集める次世代DVD対応モデルは、昨年11月発売の松下の「DMR-BW200」が20位、東芝が6月末に発売した初のHD DVDレコーダー普及機の上位機種「RD-A600」が30位という状況で、まだ上位には食い込んでいない。
●たくさん録るなら「デジタル放送の2番組同時録画」は必須
4年後に控えた2011年7月の地上アナログ放送の停波を前に、この半年でアナログチューナーしか搭載しない機種が店頭からほぼ姿を消した。1月には、まだ22.0%もあった地デジ非対応モデルだが、2月に14.6%、4月に5.6%、6月には2.9%にまで縮小。現在ではごく一部を除き、デジタルチューナー内蔵が標準になった。
その一方で、地上デジタルチューナー内蔵モデルに占めるデジタル放送2番組同時対応モデルの割合は、06年9月の54.3%をピークに減少。06年12月までは辛うじて優勢だったが、07年1月にシングルチューナーモデルに逆転され、07年6月はダブルチューナーが44.3%、シングルチューナーが55.7%と、10ポイント近い差がついている。
ここ半年の売れ筋は確かにシングルチューナーモデルだが、ドラマやアニメ、スポーツなど特定ジャンルの番組をたくさん録りたい、家族で1台のレコーダーを共有する、見たい番組が重なった経験がある、これらに1つでも当てはまるなら、デジタル放送の2番組同時録画に対応した機種をおすすめしたい。
たとえば、関東ローカルの場合、火・木曜日22時から1時間の連続ドラマが重なっている。ドラマに限らず、他のジャンルでも、BSや独立UHF局まで含めれば、見たい番組、気になる番組が重なる確率はかなり高くなるはず。録画機として使い倒すなら、デジタル放送の2番組同時録画は絶対に外せない要素だ。また、一部機種ではデジタル写真や音楽の再生なども可能で、単なる録画機を超えたメディアプレーヤー的な存在になりつつある。
●HDD容量は予算に応じて選択、迷ったら見た目で?
チューナー以外のもう1つのポイントがHDD容量。地上デジタルチューナー内蔵モデルの場合、160GBから最大1TBまで出回っているが、500GBで二分すると、07年3月以降、500GB以上が急激に伸び、ここ3か月は20%台後半から30%台で推移している。
HDD容量別に細かく見ると500GB以上では「500GB」のみが伸びており、最大容量の1TBは1%台でほとんど変わっていない。6月のランキングで3位の松下「DMR-XW31」、6位のシャープ「DV-AC55」、7位の「DV-ACW55」の好調が要因だろう。「DV-ACW55」と「DMR-XW31」はどちらもデジタル放送の2番組同時に録画に対応した上位機種。録画機能を重視している層には、500GBが適当と判断されているようだ。
HDD容量は大きいに越したことはないが、その分価格が高くなり、万が一、壊れた際の修理費(HDD交換費用)も高くつく。価格重視のエントリーモデルがシェアを拡大する一方で、新しい流れも生まれつつある。ちなみに「DMR-XW31」はDVDレコーダーでは珍しくカラーバリエーションがあり、シルバーとブラックの2色から好きな色を選べる。置き場所によっては、レコーダーは案外、部屋のなかで目立つ。迷ったら「顔」で選ぶというのもアリかもしれない。(BCN・嵯峨野芙美)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など21社・ 2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。