フォトプリンタでも火花、激化するエプソンとキヤノンの首位争い
●拮抗するエプソンとキヤノンで市場の約8割、日本HPの伸びにも注目
パソコン不要で、直接デジタルカメラとUSBケーブルでつないだり、メモリカードをスロットに差し込んだりすれば、すぐに写真が印刷できるフォトプリンタ。一般的なサイズの「L判」以外にも、専用紙を使えば小型シールやラベル、ハガキにも印刷できるのも魅力だ。「BCNランキング」では、印刷方式が「インクジェット」か「サーマル(昇華型熱転写方式)」で、最大用紙サイズがA6/ハガキ、A7、2L判、L判、名刺のものをフォトプリンタと定義し集計している。
メーカー別の販売台数シェアを見ると、エプソンとキヤノンの2社が市場の8割を占めながら激しいつばぜり合いを演じている。この1年間の推移を見ると、06年7月-10月はエプソンが50%台前半、キヤノンが30%台の2強が続いたが、06年11月にはカシオが30%台まで急成長し、12月にはついに1位を奪われた。しかし、その後07年1月からは再びエプソンとキヤノンが40%台でトップを争い、4月にはシェア50.1%でキヤノンが逆転。2か月間はキヤノンがこの状態をキープしたものの、6月には再びエプソンが1位を奪い返した状態だ。
一方、シェアは高くないが、少しずつ伸びてきているのが日本HP。松下電器産業、ソニーとともに一桁台前半で推移していたが、4月から伸びが目立ち始め、6月には7.8%と、頭1つ抜けてきた。
6月の販売台数シェアで、機種別のトップ10を見ると、売れ筋は06年秋に発売したモデル。6月に発売したばかりの新モデルは8-10位に位置している。メーカー別のうちわけは、エプソンが1、3、7位の3機種、キヤノンは2、5、6、8、9、10位の6機種、日本HPは4位の1機種。インクジェットとサーマルはちょうど5機種ずつの比率となった。
●インクジェット方式のエプソンの標準モデルが1位
1位はエプソンのColorio me:(カラリオ ミー)「E-500」で、シェアは28%。同社の取っ手付きフォトプリンタ3機種の中の標準モデルだ。メモリカードを挿入してボタンを押せば簡単に印刷できる。赤外線通信規格「IrSimple」にも対応しており、当該規格に対応するデジカメやカメラ付き携帯電話から写真データを赤外線転送できる。地上デジタル放送のデータ放送画面を印刷できる機能「テレプリパ」も備える。印刷方式はインクジェット。
●インク&用紙が1パックの簡単モデル、本体でデータ保存できるのも
さて、通常フォトプリンタは、かわいいフレームを挿入するなどの画像の装飾機能や、赤目の補正機能など、写真の質を向上させる機能を備えている。しかし、最近はこうした機能のほか、使い勝手を高める便利な機能をもつものも登場している。
例えば、シェア12.0%で2位のキヤノンのSELPHY「ES1」は、用紙とインクをを1セットにしたことで、印刷前の準備の手間を省いたモデル。印刷方式はサーマルで、用紙とインクを1つにした新開発「イージーフォトパック」を使用する。持ち運びができる取っ手付きで、コンパクトな縦型デザインだ。
また、パソコンを使わず、フォトプリンタだけで写真データの「保存」にも対応するタイプもある。ヨドバシカメラとビックカメラの限定モデルだが、日本HPのPhotosmart A716「Q7101A#ABJ」は、容量4GBのHDD内蔵タイプで、最大4000枚の画像データを本体に保存できる。また、エプソンの上位モデル「E-700」は、光学ドライブを搭載し、プリンタ本体でCD-R/RWへの書き込みや、CD・DVDの読み込み・書き込みができる。「E-700」は6月シェア5.9%で、7位にランクインしている。
●標準モデルVS簡単モデルの争いは? 6対4でインクジェットが人気
6月の上位10機種でシェアの足取りを見ると、安定的に強い1位の標準モデル「E-500」に、簡単モデルの2位「ES1」がトップ奪取を狙う構図。「E-500」は06年9月発売以降、一時的に落ち込む時期もあったものの右肩上がりで推移し、20%台後半まで一気にシェアを拡大した。一方、06年11月発売の「ES1」は、07年4月まで一気に右肩上がりで成長した。しかし、5月にはシェアが落ち込み、6月にはピーク時4月のシェア23.2%のおよそ半分になっている。
印刷方式別では、現在、インクジェットとサーマルがおよそ6対4。直近1年間の推移では06年10月-12月に約7対3になったが、売れ筋としてはインクジェットに人気が集まっているようだ。
●印刷方式とコストに加え、手軽に使える便利機能が選択基準に
最後に、フォトプリンタを選ぶポイントを確認しよう。まずは印刷方式。インクジェットがノズルからインクを吹き付けて印刷するのに対し、サーマルは特殊なインクをヘッドの熱で溶かして転写する。これらの印刷方式は仕上がりの写真の雰囲気が異なるので、店頭で実際にプリントされたものを見比べて、好みのものを選ぶようにしよう。
このほか注意したいのは、消耗品のコスト。フォトプリンタを使用する際、「用紙+インク」の費用は無視できない。各メーカーでは、カタログなどで1枚あたりの印刷コストを発表していることが多いので、これはチェックしておこう。一般的には、サーマルよりもインクジェットの方が安く、また、インクのカラー数が多いほどキレイに仕上がるが、その分高くつく、という傾向にある。
写真補正や装飾などの画像加工機能に加え、簡単にインクと用紙がセットできるものや、データ保存がパソコン不要でできるなど、便利な機能が加わってきたフォトプリンタ。デジカメとセットで使えば簡単に写真が楽しめる環境が手に入る。パソコンとプリンタの組み合わせでも同じことはできるが、手軽さという点では断然フォトプリンタの勝ち。パソコン上級者でも購入を検討してみる価値は十分あるだろう。(WebBCNランキング編集部・井上真希子)
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