電子辞書の新標準は「しゃべれ」て「書ける」多機能モデル
これまでの電子辞書といえば、紙の辞書をデジタル化しただけのものだったが、最近は紙の辞書にはないさまざまな機能が盛り込まれ、使いやすくなっている。昨年までは音声機能を搭載した「しゃべる辞書」がホットだったが、今年は「書ける辞書」が話題を呼んでいる。「BCNランキング」で最近の電子辞書のトレンドを探ってみた。
これまでの電子辞書といえば、紙の辞書をデジタル化しただけのものだったが、最近は紙の辞書にはないさまざまな機能が盛り込まれ、使いやすくなっている。昨年までは音声機能を搭載した「しゃべる辞書」がホットだったが、今年は「書ける辞書」が話題を呼んでいる。「BCNランキング」で最近の電子辞書のトレンドを探ってみた。
●「書ける辞書」が人気! 10位中6モデルがランクインした電子辞書市場
カラーバリエーションを合算して集計したシリーズ別販売台数シェアランキングを見てみよう。07年5月では、上位10シリーズ中6シリーズが手書きタッチパネル搭載モデルで「書ける辞書」の人気の高さがわかる。
販売台数シェア15.8%で1位を獲得したのはカシオのビジネス・生活総合モデル「XD-SW6400」だ。07年1月に発売した同モデルは2月にシェア10.0%で初めて1位を獲得し、翌月も首位をキープしていた。4月に2位にランクダウンしてしまったが、今回みごとに1位に返り咲いた。
音声機能のほか、キーボードの手前に手書き入力に対応するタッチパネルを搭載し、読み方がわからない漢字を書いて調べられたり、漢字の書き取り勉強などができたりするのが特徴。
収録コンテンツは「広辞苑 第五版」「ジーニアス英和辞典 第3版」や、「経済新語辞典 2003年版」「全国方言一覧辞典」「英会話とっさのひとこと辞典」など計100種類で、暮らしに役立つコンテンツも収録している。また、英語のネイティブ発音コンテンツ数も充実させ、業界最多の約8万5000語を収録した。
2位にランクインしたのは同じくカシオ製の高校生向けモデル「XD-SW4800」で、シェアは12.9%。ハードウェアそのものの機能は同じで、1位の「XD-SW6400」と同様、音声機能、手書きタッチパネルを搭載した。
収録コンテンツは高校生向けの国語、英語、社会、理科などの辞書、用語集などを56種類を収録。音声機能も搭載し、学習英和辞典に記載されているレベルの英単語を中心に、約8万5000語の英単語ネイティブ音声コンテンツも収録した。
●ワンセグチューナーを搭載した「ワンセグ辞書」も人気
7位には業界で初めてワンセグチューナーを搭載した、シャープの「PW-TC900」がシェア2.8%でランクインした。ワンセグチューナーといえば、PCに接続してワンセグ放送を視聴できるUSBメモリ型のワンセグチューナーの人気が高いが、電子辞書市場でも「ワンセグ」人気が高まっていきそうだ。
液晶パネルは4.3型(480×272ドット)のカラーASV液晶を搭載。電子辞書として初めて液晶画面を水平方向に180度回転できる「回転ヒンジ」を採用し、机の上に置いたり、折りたたんで片手で持つことができる。ワンセグ対応のポータブルテレビとしての機能を盛り込んだ「PW-TC900」だが、残念ながら手書きタッチパネルは搭載していない。
そこで同社は、手書きタッチパネルを搭載したワンセグ対応電子辞書「PW-TC920」を6月末に発売する。また、手書き入力する際、自動ですばやく文字を認識する「自動認識」方式と、認識ボタンを押すことで文字認識を行う「手動認識」方式に切り替えられる「認識切替」機能を搭載した。これにより、入力する文字や状況にあわせて自由に切り替えができる。
「PW-TC900」も「PW-TC920」も、ワンセグ放送を視聴できることが「ウリ」の電子辞書だが、録画機能は搭載していない点は要注意。好きな番組を録画しておいて空き時間に見る、という使い方はできない。
●電子辞書にタッチパネルは必須!? 増えるタッチパネル搭載モデル
電子辞書市場全体を見ても、タッチパネル搭載モデルの割合はどんどん高まっている。販売台数シェアの推移を見ると、07年1月では11.1%と、市場の1割程度しかなかったが、07年4月には57.6%までに急成長。07年5月には56.5%と少し落ち着いたが、それでも全体の過半数を占めていることに変わりはない。
「BCNランキング」で集計している「タッチパネル搭載モデル」は、しばらく前の「手書き入力には対応していないモデル」もカウントしているが、最近の機種のほとんどが手書き入力に対応。急増しているのは手書き対応のモデルだ。
例えばカシオは07年1-3月の3か月間に、19シリーズの電子辞書を発売したが、そのうち18シリーズが手書きタッチパネルを搭載したモデルだった。また、シャープは同期間に3シリーズをリリースしたが、そのうち2シリーズに手書きタッチパネルを搭載している。
メーカー別販売台数シェアでは、手書きタッチパネル搭載モデルを豊富にラインアップしたカシオが、07年1月に44.5%だったシェアを、07年5月には53.2%までに拡大。そのため、業界ナンバーツーのシャープの同月シェアは27.3%で、カシオに倍近い差をつけられている状態だ。
●漢字の「読み」に自信がなかったら、手書きタッチパネルを利用しよう
手書きタッチパネルは漢字や日本語などを手書きで入力し、漢字や語句の意味などを調べることができる。この手書きタッチパネルを搭載した背景についてカシオの広報は「収録漢字数が増え、読みにくい難しい漢字が多数収録されるようになったため」と話す。漢字などの「読み」にちょっと自信のないユーザーでもすばやく検索できるように、と使い勝手を向上させるために搭載されたようだ。
また、最近では学習コンテンツと連動し、漢字などの書き取り勉強ができるものも多い。中でもカシオの07年モデルは、日本語だけではなく、中国語やハングル文字、スペイン語、フランス語、イタリア語、ドイツ語の手書き入力にも対応する。収録コンテンツの中に対応する辞書がなくてもSDメモリーカードなどでコンテンツを追加すれば、中国語やハングル文字の手書き入力にも対応する。
収録コンテンツはSDメモリーカードなどで追加することができるが、タッチパネルはそうもいかない。また、手書きタッチパネル搭載モデルを選ぶなら、日本語のみに対応したモデルと、中国語などにも対応するモデル、今後の使い方と照らし合わせて選択したい。
06年から電子辞書はリスニング力を鍛えることができる音声機能、手書き入力ができるタッチパネル、果てはワンセグチューナーと、さまざまな機能が追加されてきた。今後、どのような機能が追加されるのか、電子辞書の進化が楽しみなところだ。(WebBCNランキング編集部・山下彰子)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など21社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
これまでの電子辞書といえば、紙の辞書をデジタル化しただけのものだったが、最近は紙の辞書にはないさまざまな機能が盛り込まれ、使いやすくなっている。昨年までは音声機能を搭載した「しゃべる辞書」がホットだったが、今年は「書ける辞書」が話題を呼んでいる。「BCNランキング」で最近の電子辞書のトレンドを探ってみた。
●「書ける辞書」が人気! 10位中6モデルがランクインした電子辞書市場
カラーバリエーションを合算して集計したシリーズ別販売台数シェアランキングを見てみよう。07年5月では、上位10シリーズ中6シリーズが手書きタッチパネル搭載モデルで「書ける辞書」の人気の高さがわかる。
販売台数シェア15.8%で1位を獲得したのはカシオのビジネス・生活総合モデル「XD-SW6400」だ。07年1月に発売した同モデルは2月にシェア10.0%で初めて1位を獲得し、翌月も首位をキープしていた。4月に2位にランクダウンしてしまったが、今回みごとに1位に返り咲いた。
音声機能のほか、キーボードの手前に手書き入力に対応するタッチパネルを搭載し、読み方がわからない漢字を書いて調べられたり、漢字の書き取り勉強などができたりするのが特徴。
収録コンテンツは「広辞苑 第五版」「ジーニアス英和辞典 第3版」や、「経済新語辞典 2003年版」「全国方言一覧辞典」「英会話とっさのひとこと辞典」など計100種類で、暮らしに役立つコンテンツも収録している。また、英語のネイティブ発音コンテンツ数も充実させ、業界最多の約8万5000語を収録した。
2位にランクインしたのは同じくカシオ製の高校生向けモデル「XD-SW4800」で、シェアは12.9%。ハードウェアそのものの機能は同じで、1位の「XD-SW6400」と同様、音声機能、手書きタッチパネルを搭載した。
収録コンテンツは高校生向けの国語、英語、社会、理科などの辞書、用語集などを56種類を収録。音声機能も搭載し、学習英和辞典に記載されているレベルの英単語を中心に、約8万5000語の英単語ネイティブ音声コンテンツも収録した。
●ワンセグチューナーを搭載した「ワンセグ辞書」も人気
7位には業界で初めてワンセグチューナーを搭載した、シャープの「PW-TC900」がシェア2.8%でランクインした。ワンセグチューナーといえば、PCに接続してワンセグ放送を視聴できるUSBメモリ型のワンセグチューナーの人気が高いが、電子辞書市場でも「ワンセグ」人気が高まっていきそうだ。
液晶パネルは4.3型(480×272ドット)のカラーASV液晶を搭載。電子辞書として初めて液晶画面を水平方向に180度回転できる「回転ヒンジ」を採用し、机の上に置いたり、折りたたんで片手で持つことができる。ワンセグ対応のポータブルテレビとしての機能を盛り込んだ「PW-TC900」だが、残念ながら手書きタッチパネルは搭載していない。
そこで同社は、手書きタッチパネルを搭載したワンセグ対応電子辞書「PW-TC920」を6月末に発売する。また、手書き入力する際、自動ですばやく文字を認識する「自動認識」方式と、認識ボタンを押すことで文字認識を行う「手動認識」方式に切り替えられる「認識切替」機能を搭載した。これにより、入力する文字や状況にあわせて自由に切り替えができる。
「PW-TC900」も「PW-TC920」も、ワンセグ放送を視聴できることが「ウリ」の電子辞書だが、録画機能は搭載していない点は要注意。好きな番組を録画しておいて空き時間に見る、という使い方はできない。
●電子辞書にタッチパネルは必須!? 増えるタッチパネル搭載モデル
電子辞書市場全体を見ても、タッチパネル搭載モデルの割合はどんどん高まっている。販売台数シェアの推移を見ると、07年1月では11.1%と、市場の1割程度しかなかったが、07年4月には57.6%までに急成長。07年5月には56.5%と少し落ち着いたが、それでも全体の過半数を占めていることに変わりはない。
「BCNランキング」で集計している「タッチパネル搭載モデル」は、しばらく前の「手書き入力には対応していないモデル」もカウントしているが、最近の機種のほとんどが手書き入力に対応。急増しているのは手書き対応のモデルだ。
例えばカシオは07年1-3月の3か月間に、19シリーズの電子辞書を発売したが、そのうち18シリーズが手書きタッチパネルを搭載したモデルだった。また、シャープは同期間に3シリーズをリリースしたが、そのうち2シリーズに手書きタッチパネルを搭載している。
メーカー別販売台数シェアでは、手書きタッチパネル搭載モデルを豊富にラインアップしたカシオが、07年1月に44.5%だったシェアを、07年5月には53.2%までに拡大。そのため、業界ナンバーツーのシャープの同月シェアは27.3%で、カシオに倍近い差をつけられている状態だ。
●漢字の「読み」に自信がなかったら、手書きタッチパネルを利用しよう
手書きタッチパネルは漢字や日本語などを手書きで入力し、漢字や語句の意味などを調べることができる。この手書きタッチパネルを搭載した背景についてカシオの広報は「収録漢字数が増え、読みにくい難しい漢字が多数収録されるようになったため」と話す。漢字などの「読み」にちょっと自信のないユーザーでもすばやく検索できるように、と使い勝手を向上させるために搭載されたようだ。
また、最近では学習コンテンツと連動し、漢字などの書き取り勉強ができるものも多い。中でもカシオの07年モデルは、日本語だけではなく、中国語やハングル文字、スペイン語、フランス語、イタリア語、ドイツ語の手書き入力にも対応する。収録コンテンツの中に対応する辞書がなくてもSDメモリーカードなどでコンテンツを追加すれば、中国語やハングル文字の手書き入力にも対応する。
収録コンテンツはSDメモリーカードなどで追加することができるが、タッチパネルはそうもいかない。また、手書きタッチパネル搭載モデルを選ぶなら、日本語のみに対応したモデルと、中国語などにも対応するモデル、今後の使い方と照らし合わせて選択したい。
06年から電子辞書はリスニング力を鍛えることができる音声機能、手書き入力ができるタッチパネル、果てはワンセグチューナーと、さまざまな機能が追加されてきた。今後、どのような機能が追加されるのか、電子辞書の進化が楽しみなところだ。(WebBCNランキング編集部・山下彰子)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など21社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。