最終兵器は「薄いワンセグ」? 携帯電話の人気を支える2つのキーワード
新規購入や買い替え需要が活発になる春商戦向けに、各携帯電話事業者(キャリア)が打ち出した「ワンセグ」と「薄型」の2つのキーワード。5月下旬から店頭に並び始めた夏モデルでも、薄さを第一のウリにする「スリムケータイ」が花盛りだ。一方、「ワンセグ」は、夏モデル15機種中7機種と積極的に取り入れるau、個性的な4機種をラインアップするソフトバンクモバイルの充実ぶりが目を見張る。07年5月までの「BCNランキング」から、ワンセグケータイと薄型ケータイの浸透度を検証する。
新規購入や買い替え需要が活発になる春商戦向けに、各携帯電話事業者(キャリア)が打ち出した「ワンセグ」と「薄型」の2つのキーワード。5月下旬から店頭に並び始めた夏モデルでも、薄さを第一のウリにする「スリムケータイ」が花盛りだ。一方、「ワンセグ」は、夏モデル15機種中7機種と積極的に取り入れるau、個性的な4機種をラインアップするソフトバンクモバイルの充実ぶりが目を見張る。07年5月までの「BCNランキング」から、ワンセグケータイと薄型ケータイの浸透度を検証する。
●5月のキャリア別ワンセグ対応率 auはほぼ5割、ドコモは前月よりダウン
06年4月のスタートから1年余りの「ワンセグ」放送。従来のアナログ放送に比べ、安定した映像で外出先や家のなかで手軽にテレビが見られるとあって、携帯電話を筆頭に、パソコン、カーナビ、電子辞書、携帯ラジオなど、さまざまな機器に搭載され始めている。字幕表示や電子番組表(EPG)、ワンセグ独自のデータ放送など、デジタルならではの便利なサービスも利用できるのも「ウリ」だ。携帯電話の場合は、2-3インチの大きめの液晶画面を通常のテレビのように横位置にして見るスタイルが多い。
今回は「BCNランキング」の06年8月から07年5月までの10か月間の月次データをもとに、キャリア別に販売台数全体に占めるワンセグ対応端末の販売台数シェアを算出。これを「ワンセグ対応率」と名づけ、その推移を検証した。対象はNTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクモバイルの3キャリアのデータカード型端末を除く、一般的な携帯電話。今回は、PHSのウィルコムやデータ通信専用のイー・モバイルの端末は除外した。
まずキャリア別の動向を見てみよう。07年5月の「ワンセグ対応率」1位はau(49.4%)。2位はソフトバンク(22.6%)、3位はドコモ(8.3%)だった。auは07年2月以降、4か月連続で40%を超え、4月には過去最大の50.3%を記録した。auの場合、カメラ並みにごく一般的に搭載されているためか、ワンセグを目当てに指名買いするユーザーから「(ワンセグ対応と非対応で)価格が同じならワンセグ対応モデルがいい」(量販店の携帯電話売り場のau担当)という「どうせなら」な層まで、購入者層は幅広いという。
ソフトバンクは、06年12月の32.8%をピークにやや低下。月によって10-20%台で上下する状態が続いている。それまで1位だったワンセグ対応率トップの座も1月以降、auに明け渡した。ワンセグ人気の火付け役となった「AQUOSケータイ」の名を冠した端末が他のキャリアからも発売され、独占販売ではなくなったことが響いたようだ。夏モデルでは、パソコン並みの解像度を持つ3インチワイドVGA液晶とオートフォーカス機能付きの320万画素カメラを搭載した「AQUOSケータイ」第3弾「912SH」を含む4機種を投入。6月以降は、再度上昇に転じそうだ。
ドコモは、携帯電話全体の販売台数では相変わらずのトップだが、ワンセグ対応率は3キャリアのなかでもっとも低い。端末数も少なく、今のところ採用には積極的ではないようだ。「AQUOSケータイ」のドコモ版「SH903iTV」の発売直後の3月にそれまでの一ケタから14.1%に急上昇したワンセグ対応率も、5月は2か月ぶりに10%を割った。ドコモのワンセグ対応端末を心待ちにしていたユーザーが発売早々飛びつき、ほぼ需要が一巡。とはいえ、母数となる携帯電話全体の販売台数が多いため、実売台数は少なくない。
3キャリアを合算した携帯電話全体の「ワンセグ対応率」も、06年8月の8.8%からほぼ右肩上がりで伸び、07年3月・4月には28.5、28.6%と3割目前まで迫った。5月はやや下がって23.6%。この間の販売台数の推移を06年8月を1として指数化すると、12月と3月の2回の大きな山があり、それぞれ8月の1.49、1.6倍となった。さらに、ワンセグ対応端末に限れば、12月は2.47倍、3月は5.17倍と携帯電話全体の伸び率を大きく上回った。要因は、端末数の増加だけではないだろう。キャリアによって温度差はあるものの、携帯電話の一機能としてワンセグは急速に広まりつつある。
筆者が通勤で使用する電車内でも、今年に入って会社員とおぼしき男性を中心に、イヤホンを耳に装着し、携帯電話でワンセグを見ている乗客が目立ち始めた。ワンセグの受信感度は端末の性能や使用する環境に左右されるが、車内ウォッチングで様子をうかがった限り、映像はクリアで実用には問題なさそうだった。見られている番組は、朝の通勤時間帯はニュースや情報系バラエティのリアルタイム視聴が多く、夜もほぼ同じ傾向。一方、同僚の女性は、通勤中にワンセグケータイでもっぱらドラマを見ているという。簡単に録画できるので、以前に比べて「見るドラマの本数が増えた」とも漏らした。
●端末がけん引するワンセグ人気 3台に1台が「AQUOSケータイ」に
07年5月の携帯電話全体の販売台数1位は、前月4位から3ランクアップしたNTTドコモの「FOMA らくらくホンIII」(富士通)。「らくらくホン」に代表される機能を絞ったシニア向けモデル、いわゆる「カンタンケータイ」は、母の日など記念日にあわせ、子どもが親にプレゼントする場合が多いとの評判だったが、それがデータで実証される格好となった。
2位は前月1位から後退したドコモの「SH903i」(シャープ)、3位はauの「W51S」(ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ)が獲得。ワンセグ対応端末では、auの「W51CA」(カシオ計算機)が5位に、ドコモの「SH903iTV」が9位に入った。「SH903iTV」は前月は2位だったが、5月は大きく順位を下げた。すでに5月下旬から夏モデルの販売が始まっており、6月のランキングの顔ぶれはガラっと入れ変わるだろう。
ワンセグ対応端末に限ったランキングトップ10では、2位から4位まで、ドコモ、au、ソフトバンクの順で同じシャープ製の「AQUOSケータイ」が占めた。シェアは2位の「SH903iTV」が10.4%、3位の「W51SH」が9.2%、4位の「911SH」が9.0%で、合算すると、1位の「W51CA」の16.3%を上回る28.6%。5月は、ワンセグ対応携帯電話の約3台に1台が「AQUOSケータイ」だったという計算になる。
auとドコモのワンセグ対応率が一気に跳ね上がった2、3月は、「W51CA」「W51SH」「SH903iTV」などの発売時期と重なる。ワンセグ対応率の上昇は、これらの端末の人気に引っ張られたものという見方もできなくない。異例の3キャリア共通端末となった「AQUOSケータイ」に続く魅力的な端末の開発とラインアップ拡充が、今後のワンセグ対応率の推移を左右する鍵となりそうだ。夏モデルでは、防水仕様の「W52」やスライド式の「FULLFACE 913SH」などが受け入れられるかどうかに注目したい。
●薄さは人気と比例しない? デザインや機能など総合力で勝負
もう一つのキーワード「薄型」はどうだろう? 本体の厚さが「15mm未満」の端末を「薄型ケータイ」と定義し、07年5月の「BCNランキング」から薄型ケータイ率をキャリア別に算出すると、ドコモ(17.6%)、ソフトバンク(13.5%)、au(5.7%)の順になった。携帯電話全体では13%。意外に薄型ケータイの割合は高くない。また、厚さ別の販売台数構成比では、ドコモは17.5-20mm未満、auは20-22.5mm未満が多く、ソフトバンクは15-17.5mmと20-22.5mm未満がほぼ同程度と、キャリアによる違いが大きく出た。
携帯電話全体の販売台数ランキングトップ10を見ても、「15mm未満」の条件に当てはまるのは、6位の「N703iμ(ミュー)」(NEC)と8位の「P703iμ」(パナソニック モバイルコミュニケーションズ)のドコモの2機種だけ。このランキングを見る限り、現時点では必ずしも「薄さ」が人気端末の条件にはなっていないようだ。
カタログ上の数値と、実際に手に持った時に受ける印象は違う。手持ちの携帯電話との比較や、ワンセグ機能の有無、折りたたみ式かスライド式かなど形状によっても判断基準は変わってくるだろう。たとえ同じ厚さでも、折りたたみ式場合、ディスプレイ側が厚く本体側が薄いものと、その逆の2タイプがあり、画面を開いた時の厚みは違う。15mm未満でなくても、17mm、18mm程度ならスリムな印象を持つだろう。携帯電話は、端末のデザインや機能だけではなく、対応するサービスやキャリアの料金プランなど、いわば総合力の勝負。薄型、ワンセグとも、勝負は夏モデル以降にかかってきそうだ。(WebBCNランキング編集部・嵯峨野芙美)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など21社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
新規購入や買い替え需要が活発になる春商戦向けに、各携帯電話事業者(キャリア)が打ち出した「ワンセグ」と「薄型」の2つのキーワード。5月下旬から店頭に並び始めた夏モデルでも、薄さを第一のウリにする「スリムケータイ」が花盛りだ。一方、「ワンセグ」は、夏モデル15機種中7機種と積極的に取り入れるau、個性的な4機種をラインアップするソフトバンクモバイルの充実ぶりが目を見張る。07年5月までの「BCNランキング」から、ワンセグケータイと薄型ケータイの浸透度を検証する。
●5月のキャリア別ワンセグ対応率 auはほぼ5割、ドコモは前月よりダウン
06年4月のスタートから1年余りの「ワンセグ」放送。従来のアナログ放送に比べ、安定した映像で外出先や家のなかで手軽にテレビが見られるとあって、携帯電話を筆頭に、パソコン、カーナビ、電子辞書、携帯ラジオなど、さまざまな機器に搭載され始めている。字幕表示や電子番組表(EPG)、ワンセグ独自のデータ放送など、デジタルならではの便利なサービスも利用できるのも「ウリ」だ。携帯電話の場合は、2-3インチの大きめの液晶画面を通常のテレビのように横位置にして見るスタイルが多い。
今回は「BCNランキング」の06年8月から07年5月までの10か月間の月次データをもとに、キャリア別に販売台数全体に占めるワンセグ対応端末の販売台数シェアを算出。これを「ワンセグ対応率」と名づけ、その推移を検証した。対象はNTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクモバイルの3キャリアのデータカード型端末を除く、一般的な携帯電話。今回は、PHSのウィルコムやデータ通信専用のイー・モバイルの端末は除外した。
まずキャリア別の動向を見てみよう。07年5月の「ワンセグ対応率」1位はau(49.4%)。2位はソフトバンク(22.6%)、3位はドコモ(8.3%)だった。auは07年2月以降、4か月連続で40%を超え、4月には過去最大の50.3%を記録した。auの場合、カメラ並みにごく一般的に搭載されているためか、ワンセグを目当てに指名買いするユーザーから「(ワンセグ対応と非対応で)価格が同じならワンセグ対応モデルがいい」(量販店の携帯電話売り場のau担当)という「どうせなら」な層まで、購入者層は幅広いという。
ソフトバンクは、06年12月の32.8%をピークにやや低下。月によって10-20%台で上下する状態が続いている。それまで1位だったワンセグ対応率トップの座も1月以降、auに明け渡した。ワンセグ人気の火付け役となった「AQUOSケータイ」の名を冠した端末が他のキャリアからも発売され、独占販売ではなくなったことが響いたようだ。夏モデルでは、パソコン並みの解像度を持つ3インチワイドVGA液晶とオートフォーカス機能付きの320万画素カメラを搭載した「AQUOSケータイ」第3弾「912SH」を含む4機種を投入。6月以降は、再度上昇に転じそうだ。
ドコモは、携帯電話全体の販売台数では相変わらずのトップだが、ワンセグ対応率は3キャリアのなかでもっとも低い。端末数も少なく、今のところ採用には積極的ではないようだ。「AQUOSケータイ」のドコモ版「SH903iTV」の発売直後の3月にそれまでの一ケタから14.1%に急上昇したワンセグ対応率も、5月は2か月ぶりに10%を割った。ドコモのワンセグ対応端末を心待ちにしていたユーザーが発売早々飛びつき、ほぼ需要が一巡。とはいえ、母数となる携帯電話全体の販売台数が多いため、実売台数は少なくない。
3キャリアを合算した携帯電話全体の「ワンセグ対応率」も、06年8月の8.8%からほぼ右肩上がりで伸び、07年3月・4月には28.5、28.6%と3割目前まで迫った。5月はやや下がって23.6%。この間の販売台数の推移を06年8月を1として指数化すると、12月と3月の2回の大きな山があり、それぞれ8月の1.49、1.6倍となった。さらに、ワンセグ対応端末に限れば、12月は2.47倍、3月は5.17倍と携帯電話全体の伸び率を大きく上回った。要因は、端末数の増加だけではないだろう。キャリアによって温度差はあるものの、携帯電話の一機能としてワンセグは急速に広まりつつある。
筆者が通勤で使用する電車内でも、今年に入って会社員とおぼしき男性を中心に、イヤホンを耳に装着し、携帯電話でワンセグを見ている乗客が目立ち始めた。ワンセグの受信感度は端末の性能や使用する環境に左右されるが、車内ウォッチングで様子をうかがった限り、映像はクリアで実用には問題なさそうだった。見られている番組は、朝の通勤時間帯はニュースや情報系バラエティのリアルタイム視聴が多く、夜もほぼ同じ傾向。一方、同僚の女性は、通勤中にワンセグケータイでもっぱらドラマを見ているという。簡単に録画できるので、以前に比べて「見るドラマの本数が増えた」とも漏らした。
●端末がけん引するワンセグ人気 3台に1台が「AQUOSケータイ」に
07年5月の携帯電話全体の販売台数1位は、前月4位から3ランクアップしたNTTドコモの「FOMA らくらくホンIII」(富士通)。「らくらくホン」に代表される機能を絞ったシニア向けモデル、いわゆる「カンタンケータイ」は、母の日など記念日にあわせ、子どもが親にプレゼントする場合が多いとの評判だったが、それがデータで実証される格好となった。
2位は前月1位から後退したドコモの「SH903i」(シャープ)、3位はauの「W51S」(ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ)が獲得。ワンセグ対応端末では、auの「W51CA」(カシオ計算機)が5位に、ドコモの「SH903iTV」が9位に入った。「SH903iTV」は前月は2位だったが、5月は大きく順位を下げた。すでに5月下旬から夏モデルの販売が始まっており、6月のランキングの顔ぶれはガラっと入れ変わるだろう。
ワンセグ対応端末に限ったランキングトップ10では、2位から4位まで、ドコモ、au、ソフトバンクの順で同じシャープ製の「AQUOSケータイ」が占めた。シェアは2位の「SH903iTV」が10.4%、3位の「W51SH」が9.2%、4位の「911SH」が9.0%で、合算すると、1位の「W51CA」の16.3%を上回る28.6%。5月は、ワンセグ対応携帯電話の約3台に1台が「AQUOSケータイ」だったという計算になる。
auとドコモのワンセグ対応率が一気に跳ね上がった2、3月は、「W51CA」「W51SH」「SH903iTV」などの発売時期と重なる。ワンセグ対応率の上昇は、これらの端末の人気に引っ張られたものという見方もできなくない。異例の3キャリア共通端末となった「AQUOSケータイ」に続く魅力的な端末の開発とラインアップ拡充が、今後のワンセグ対応率の推移を左右する鍵となりそうだ。夏モデルでは、防水仕様の「W52」やスライド式の「FULLFACE 913SH」などが受け入れられるかどうかに注目したい。
●薄さは人気と比例しない? デザインや機能など総合力で勝負
もう一つのキーワード「薄型」はどうだろう? 本体の厚さが「15mm未満」の端末を「薄型ケータイ」と定義し、07年5月の「BCNランキング」から薄型ケータイ率をキャリア別に算出すると、ドコモ(17.6%)、ソフトバンク(13.5%)、au(5.7%)の順になった。携帯電話全体では13%。意外に薄型ケータイの割合は高くない。また、厚さ別の販売台数構成比では、ドコモは17.5-20mm未満、auは20-22.5mm未満が多く、ソフトバンクは15-17.5mmと20-22.5mm未満がほぼ同程度と、キャリアによる違いが大きく出た。
携帯電話全体の販売台数ランキングトップ10を見ても、「15mm未満」の条件に当てはまるのは、6位の「N703iμ(ミュー)」(NEC)と8位の「P703iμ」(パナソニック モバイルコミュニケーションズ)のドコモの2機種だけ。このランキングを見る限り、現時点では必ずしも「薄さ」が人気端末の条件にはなっていないようだ。
カタログ上の数値と、実際に手に持った時に受ける印象は違う。手持ちの携帯電話との比較や、ワンセグ機能の有無、折りたたみ式かスライド式かなど形状によっても判断基準は変わってくるだろう。たとえ同じ厚さでも、折りたたみ式場合、ディスプレイ側が厚く本体側が薄いものと、その逆の2タイプがあり、画面を開いた時の厚みは違う。15mm未満でなくても、17mm、18mm程度ならスリムな印象を持つだろう。携帯電話は、端末のデザインや機能だけではなく、対応するサービスやキャリアの料金プランなど、いわば総合力の勝負。薄型、ワンセグとも、勝負は夏モデル以降にかかってきそうだ。(WebBCNランキング編集部・嵯峨野芙美)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など21社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。