Vista効果でPC市場復活へ一歩、ショップPCや自作ユーザーも伸び支える

特集

2007/03/05 23:00

 前年同月比で106%――07年2月の「BCNランキング」では、メーカーブランドやショップブランドのPCにマザーボードを含む広義のPC販売台数は1月末に発売されたマイクロソフトの新OS「Windows Vista」が影響し、前年同月比でプラスに転じたことがわかった。前年割れの水準が続いていたメーカーブランドのパソコン販売台数が101.2%と前年並みの水準に戻してきたのに加え、ショップブランドの購入者とデスクトップの自作パソコンユーザーがVistaを購入したと見られ、販売を押し上げた。

 前年同月比で106%――07年2月の「BCNランキング」では、メーカーブランドやショップブランドのPCにマザーボードを含む広義のPC販売台数は1月末に発売されたマイクロソフトの新OS「Windows Vista」が影響し、前年同月比でプラスに転じたことがわかった。前年割れの水準が続いていたメーカーブランドのパソコン販売台数が101.2%と前年並みの水準に戻してきたのに加え、ショップブランドの購入者とデスクトップの自作パソコンユーザーがVistaを購入したと見られ、販売を押し上げた。



●メーカーブランドPCが13か月ぶりに前年並み水準に浮上

 メーカーブランドPC、ショップブランドPC、マザーボードを合計した、広義のPC販売台数は、06年9月以降、年明けの07年1月まで前年割れの水準が続き、年明けの07年1月も前年同月比で89.9%に留まっていた。しかしVista発売後の2月には同106%と、販売台数を大きく伸ばした。とくに、マザーボードショップPCとのPC全体に占める構成比は、1月の25.6%から、2月には27.3%まで拡大。これらのユーザー層がVista需要を支えているようだ。


 また、メーカーブランドPCに限りデスクトップとノートを合計した販売台数の前年同月比は101.2%。Vistaの発売で13か月ぶりに前年割れの水準から脱却した。


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 内訳を見ると、まずデスクトップPCは、1月に比べ16.7%ポイントと大きく伸ばしたものの、依然同86.2%と前年割れが続いている状況。とくに2月については、メーカー製デスクトップの購入需要の多くが、ショップブランドや自作市場に流れたと見られ、メーカー製のデスクトップPCが伸び悩んでいる原因になっているもようだ。

●7割を超えたノートPCが好調で、前年同月比109%に

 一方、ノートPCは2月には109.3%と1月に比べ14.5ポイント上昇した。現在、ノートとデスクトップの販売台数構成比は、07年に入ってノートPCが70%台にまで拡大している。Vista搭載で全体の価格は上がったものの、平均単価ではデスクトップPCとの価格差がほとんどなくなったこともあり、場所をとらないノートPCの需要が引き続き伸びている。

 週次データで見ても販売台数、金額の伸び率で勢いがあるのはノートPC。販売台数ではVista発売の2月第1週以降、前年を上回る水準で推移しているが、週により伸び率にバラツキが見られる。量販店などによればVistaを搭載したパソコンの供給が不安定なことが原因だという。今後、商品の供給体制が整ってくれば、安定して推移しそうだ。


 金額ベースで見ると、ノートPCが前年水準を上回ったのは2月第1週以降だが、2月第4週までの平均は7.5%と台数に比べ伸び率が鈍い。おそらくVistaの普及版エディション「Home Basic」を搭載したモデルを投入するメーカーが多かったことで、1台あたりの価格が安くなったことが影響していると見られる。


 また、旧OSの「Windows XP」搭載PCとVista搭載PCの平均単価の価格差は直近の2月第4週ではノートが4.1万円、デスクトップは5.1万円と開いているが、今後はその差が縮まってくると予想される。


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●注力エディションごとに異なるVista搭載PCのメーカーシェア

 Vista搭載マシンのメーカー別販売台数シェアを見ると、エディションごとの製品構成が、シェアに影響しているようだ。2月のVista搭載のモデルを集計したところ、まず、ノートPCでは、販売台数がトップだったのはソニーで22.9%。続く富士通が22.5%で2位という結果だった。いずれのメーカーとも、普及版の「Home Basic」搭載機の構成比率が40%以上と高いことが特徴で、比較的価格の安い機種をラインアップすることで販売台数を伸ばしたようだ。




 Vista搭載のデスクトップPCでは、富士通がシェア30.6%でトップだった。やはり「Home Basic」搭載機の構成比率が同社デスクトップPCの31.2%と高く、このことがシェア獲得につながったようだ。一方、24.5%のシェアで2位のNECは「Aero(エアロ)」など新しいインターフェイスが使える上位エディションの「Home Premium」の比率が65.9%と高い。「Home Basic」はわずか10%だった。「Home Basic」の比率が52.5%と富士通よりも高いeMachinesは、販売する店舗が少ないながらも、11.1%で3位に位置している。





 このようにWindows Vistaは、発売直後からパソコン市場に一定の効果をもたらしたのは間違いなさそうだ。マイクロソフトのダレン・ヒューストン社長も3月5日、樋口泰行氏の代表執行役兼COO就任会見の席上、「今の時点では、今回の滑り出しはすごく良かったし、非常に満足している」とコメントしている。ただ、製品供給や他社製ソフトの対応で遅れが見られるなど安定していない部分もある。さらに販売動向でも、伸びにまだバラツキがある状況だ。今後のPC市場の方向を見極める1つのポイントは、これから訪れる3-4月の新生活需要の広がりにありそうだ。


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など21社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。