セキュリティソフト、更新料不要の「ウイルスセキュリティZERO」がトップに

特集

2007/02/18 21:00

 セキュリティソフトは1年に一度更新するもの、という常識を覆し、「年間更新料不要」を打ち出したソースネクストの「ウイルスセキュリティZERO」。06年7月の発売から約7か月後の2月第2週、ついに「BCNランキング」の週次データの製品別ランキングで、初めてトップに立った。無期限版の登場にとどまらず、ライセンス形態の見直しや販売形態の多様化、OSメーカーのマイクロソフトの新規参入など、セキュリティソフトを取り巻く環境は変わりつつある。「BCNランキング」から、最新動向をまとめた。

●約4か月ぶりのトップ交代 Windows Vistaへの対応で明暗

  セキュリティソフトの現在の主流は、1本でウイルス対策、スパイウェア対策、迷惑メール対策、不正侵入の防止(ファイアウォール)などが可能な総合タイプ。ソフトによってはフィッシング対策、有害サイトのアクセス規制、データバックアップなどの付加機能も備える。ランキング上位はすべて、こうした総合セキュリティソフトだ。

 07年2月第2週(07年2月5日-11日)の「BCNランキング」セキュリティソフト製品別販売本数1位は、ソースネクストの「ウイルスセキュリティZERO」が初めて獲得。販売本数シェアは16.5%で、2位だった前週の15.7%からややシェアを伸ばし、06年10月第1週(06年10月2日-10月8日)以降、17週連続トップのシマンテックの「Symantec Norton Internet Security 2007(ノートン インターネットセキュリティ 2007)」をかわし、1位に浮上した。


 シマンテックやトレンドマイクロなど多くのメーカーは、新OS「Windows Vista」の発売にあわせ、「Vista対応版」を新たに投入。一方、「ウイルスセキュリティZERO」は無償バージョンアップでVistaに対応し、同一製品として販売を続けたことも、ランキングに有利に働いたようだ。

 実際、3位のシマンテックの「ノートン インターネットセキュリティ 2007」と、4位の「同 Vista対応版」を合算するとシェアは23.4%となり、2位のトレンドマイクロ「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ Vista対応版」や「ウイルスセキュリティZERO」を上回る。「ノートン 2007」のVista対応版は2月10日発売で、今回の集計期間では2日間のデータしかカウントされなかったので無理はない。

 メーカー別の販売本数シェアを見ると、シマンテックが33.0%で1位。2位はトレンドマイクロで26.9%、ソースネクストは25.2%で僅差ながら3位にとどまる。各社のシェアも前週と大きな変化はなく、今回の1位交代劇は、「偶然」という側面もありそうだ。それでも、04年2月以降、過去3年間の「BCNランキング」の週次データで、製品別1位の座をソースネクストが射止めたのは今回が初めて。メーカー別シェアではトレンドマイクロを交わして2位に浮上する週もあり、シマンテックとの差は確実に詰まりつつあるのもまた確かだ。


●セキュリティソフトの常識に反逆する更新料不要の「ゼロ」

 ソースネクストの「ウイルスセキュリティZERO」は、1台1年1980円の従来ソフト「ウイルスセキュリティ」から更新期限をなくしたもの。対応OSの公式サポート終了までの条件付きだが、現在、家庭内での利用者が最も多いと見られる「Windows XP Home Edition」の場合、2012年1月30日まで使い続けられるという。「Windows Vista Home Premium」ならば、今から約8年後の2015年4月11日まで使える見込み。PCとソフトを長く使えば使うほど、1年あたりの費用が安くなる計算だ。

 「ウイルスセキュリティZERO」の成功に続けとばかり、イーフロンティアも同様の更新方式を採用した「ウイルスキラーZERO」を3月2日に発売する。一方キングソフトの「キングソフトインターネットセキュリティ2007」は、ダウンロード販売専用のため「BCNランキング」には登場しないが、通常版とは別に、更新料がいらない「無期限版」をラインアップに追加した。

 こうしたOS対応型ソフト以外は、通常、1年に一度、更新手続きが必要。費用の面だけで判断すると、年間課金のセキュリティソフトには勝ち目はないが、トップ10圏内には、従来タイプのシマンテックやトレンドマイクロの製品も並び、安全性や信頼性、ブランド力といった価格以外の要素を重視するユーザーも少なくないことがうかがえる。

 最近のトレンドとして、あらかじめ2年間、3年間の更新料を含めた「複数年パック」や、1つのインストールCDに複数のライセンス番号を付与した「複数台パック」にも注目しておこう。どちらも単体で通常価格で購入するよりリーズナブルで、手間も省ける。2月第2週では、6位の「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ Vista対応版 優待3年版 」をはじめ、10位に「複数年パック」が、5位と9位に「複数台パック」がランクインした。

 一方、トレンドマイクロの「ウイルスバスター2007」や、Windows Vistaと同時に1月30日に発売されたマイクロソフトのウイルス対策・PCメンテナンスソフト「Windows Live OneCare」のように、1つのライセンスで最大3台のPCにインストールできるライセンス体系を採用する製品も目立ち始めた。ただし、規定の台数分だけ自由にインストールできる「複数台パック」とは違い、個人や同一家庭内に限るといった制約があるので注意しよう。

 セキュリティソフト選びは、安全性や機能の違いはもちろん、手持ちのPCの数や今後の購入計画も見越して選ぶ時代に突入したようだ。(WebBCNランキング編集部・嵯峨野芙美)



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