MNP特需第1幕は液晶効果でシャープに軍配、薄さとワンセグ勝負の春携帯は?
06年秋冬モデルがズラリと並んだ06年12月、3キャリア合計で最も高い販売台数シェアを稼ぎ出したのはシャープだった。端末別でもシャープ製が上位3位を独占。頭1つ抜きん出ている。一方、いずれのキャリアもワンセグ対応端末を強化。じわりじわりと増えはじめ、その比率は1割を突破した。携帯電話番号ポータビリティ(MNP)開始後の「第1ラウンド」を「BCNランキング」でまとめ、キャリア各社の春商戦向けモデルが出揃った「第2ラウンド」の行方を占う。
06年秋冬モデルがズラリと並んだ06年12月、3キャリア合計で最も高い販売台数シェアを稼ぎ出したのはシャープだった。端末別でもシャープ製が上位3位を独占。頭1つ抜きん出ている。一方、いずれのキャリアもワンセグ対応端末を強化。じわりじわりと増えはじめ、その比率は1割を突破した。携帯電話番号ポータビリティ(MNP)開始後の「第1ラウンド」を「BCNランキング」でまとめ、キャリア各社の春商戦向けモデルが出揃った「第2ラウンド」の行方を占う。
●キャリア間の争いが激化した06年
06年は、4月の「ワンセグ」サービス開始に始まり、ソフトバンクによるボーダフォンの買収、MNP制度のスタート、それを契機とした携帯電話事業者(キャリア)間の熾烈な加入者獲得競争など、携帯電話業界が大きく揺れた1年だった。音楽再生などに必要な外部メモリカードは、これまでのminiSDカードに代わってmicroSDカードが標準になり、メモリカード全体の勢力図にまで影響を及ぼした。
「BCNランキング」では、MNP開始にあわせ、一時休止していた携帯電話やPHSの販売データ集計を06年8月から再開した。今回は、そのデータをもとにデータカード型端末を除く、一般的な携帯電話に絞り、それぞれカラーバリエーションは合算して集計した。
●シャープがトップ3を独占 NTTドコモの新旧2機種と「AQUOSケータイ」で
まずは、3キャリアを合計した携帯電話全体の機種別販売台数ランキングから見ていこう。06年12月の月間1位は、NTTドコモの「SH903i」(シャープ)だった。シェアは6.3%で、総合トップは11月に続き2回目。2位のソフトバンク「911SH」、3位のNTTドコモ「SH902iS」も同じくシャープ製だった。全キャリアでのメーカー別販売台数シェアでも、シャープが26.8%とトップ。13.6%で2位のソニー・エリクソンの、ほぼ2倍のシェアを持っている。3位がパナソニック モバイルコミュニケーションズで9.4%、4位がNECで9.1%、5位が東芝で7.0%という結果になった。
ちなみにキャリア別販売台数シェアでは、NTTドコモが48.3%、au(KDDI)が34.5%、ソフトバンク(SoftBank)が17.2%で、相変わらずNTTドコモがダントツ。06年8月から振り返ると、06年10月はauが、06年11月はソフトバンクが躍進。それぞれNTTドコモからシェアを奪ったものの、12月に入ると、どちらもMNP開始前の06年8月の水準に後退した。ソフトバンクはむしろ2.3ポイント下げている。
一方キャリア別の売れ筋端末を見ると、NTTドコモでは総合ランキング同様、1位が「SH903i」、2位は「SH902iS」、3位が「SO903i」(ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ)だった。4位は「N903i」(NEC)が獲得。最新の「903iシリーズ」に挟まれて、06年5月発売の旧モデル「SH902iS」が2位につけている点に注目したい。
シャープの携帯電話は画面がキレイ、といわれている。同社製液晶テレビ「AQUOS」で培った技術を取り入れた独自の液晶パネル「モバイルASV液晶」をほとんど機種で採用しており、なかでもワンセグ対応端末は「AQUOSケータイ」の愛称で、液晶テレビのイメージとリンクさせている。筆者は「SH902iS」のさらに1世代前のモデル「SH902i」を使用しているが、以前の端末に比べて格段に画質が上がったという印象を持った。逆に指紋などの汚れが気になり、液晶保護フィルムを買ってしまったくらいだ。
同じ「モバイルASV液晶」でも、画面サイズは「SH903i」の2.8インチワイドに対し、「SH902iS」は若干小さい2.4インチ。最大輝度も違う。さらに、GPSナビゲーション機能を搭載し、「メガiアプリ」やナップスターの定額音楽配信サービス「Napster To Go」に対応するなど、「SH903i」の方がより高性能・高機能だ。しかし、こうした付加機能は、電話とメール程度のライトユーザーには余り魅力的に映らない。その結果、価格の下がった旧モデルと最新モデルが並ぶ結果となったようだ。同じく1世代前の「902iS」シリーズからは、他に「P902iS」「N902iS」が上位に食い込んでいる。
●auとソフトバンクは薄型タイプとワンセグ対応端末が人気
続いてMNPで1人勝ちしたといわれる、auではどうだろう。1位はわずか15mmの薄型ボディが特徴の「W44K」(京セラ)が獲得。2位は「W43H」(日立製作所)で、3位と4位には、同じソニー・エリクソン製の「W43S」「W44S」が続いた。いずれも06年秋冬モデルで、旧モデルは8位の「W42S」まで登場せず、端末の新旧交代がうまくいっているようだ。
一方、ソフトバンクでは、ヒットした「AQUOSケータイ」の第2世代モデル「911SH」をはじめ、上位3位まで、すべてシャープ製端末が占めるという結果になった。2位の「910SH」は、デジタルカメラに匹敵する有効500万画素のCCDカメラと高解像度のVGA液晶を搭載。3位の「705SH」は旧ボーダフォン時代に発売された薄さ約17mmのモデルで、06年8月・9月は携帯電話全体でもトップだった。4位の「705P」(パナソニック モバイルコミュニケーションズ)も約14.8mmと、薄さがキーワードだ。
また、auの「W43H」「W44S」、ソフトバンクの「911SH」は、ワンセグに対応。06年12月時点で、ワンセグに対応する携帯電話はわずか9機種だったにも拘わらず、それぞれ上位に入った。携帯電話全体に占めるワンセグ対応率も、06年8月の8.8%から、12月には14.6%にまで上昇。NTTドコモは1機種のみのため、事実上、auとソフトバンクの2キャリアだけで1割を突破した。
なお、「W43H」は、その後継機種「W43H II」が1月にすでに発売されている。「W44S」は、携帯電話を横向きに開く「モバイルシアタースタイル」を、「911SH」は、液晶画面を90度回転することで横位置にできる「サイクロイドスタイル」を採用。ワンセグの視聴を前提に、各メーカーとも工夫を凝らしている。
ワンセグ対応端末で出遅れていたNTTドコモからも、いよいよ2月に「SH903iTV」「SO903iTV」「P903iTV」の3機種が発売される。さらに、auは07年春モデルとして計8機種、ソフトバンクは計2機種のワンセグ対応端末を発売すると発表した。この春の携帯電話のトレンドはいよいよ選択肢が増えた「ワンセグ」と、デザイン面で新鮮な「薄さ」の2つに集約されそうだ。(WebBCNランキング編集部・嵯峨野芙美)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販など22社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
06年秋冬モデルがズラリと並んだ06年12月、3キャリア合計で最も高い販売台数シェアを稼ぎ出したのはシャープだった。端末別でもシャープ製が上位3位を独占。頭1つ抜きん出ている。一方、いずれのキャリアもワンセグ対応端末を強化。じわりじわりと増えはじめ、その比率は1割を突破した。携帯電話番号ポータビリティ(MNP)開始後の「第1ラウンド」を「BCNランキング」でまとめ、キャリア各社の春商戦向けモデルが出揃った「第2ラウンド」の行方を占う。
●キャリア間の争いが激化した06年
06年は、4月の「ワンセグ」サービス開始に始まり、ソフトバンクによるボーダフォンの買収、MNP制度のスタート、それを契機とした携帯電話事業者(キャリア)間の熾烈な加入者獲得競争など、携帯電話業界が大きく揺れた1年だった。音楽再生などに必要な外部メモリカードは、これまでのminiSDカードに代わってmicroSDカードが標準になり、メモリカード全体の勢力図にまで影響を及ぼした。
「BCNランキング」では、MNP開始にあわせ、一時休止していた携帯電話やPHSの販売データ集計を06年8月から再開した。今回は、そのデータをもとにデータカード型端末を除く、一般的な携帯電話に絞り、それぞれカラーバリエーションは合算して集計した。
●シャープがトップ3を独占 NTTドコモの新旧2機種と「AQUOSケータイ」で
まずは、3キャリアを合計した携帯電話全体の機種別販売台数ランキングから見ていこう。06年12月の月間1位は、NTTドコモの「SH903i」(シャープ)だった。シェアは6.3%で、総合トップは11月に続き2回目。2位のソフトバンク「911SH」、3位のNTTドコモ「SH902iS」も同じくシャープ製だった。全キャリアでのメーカー別販売台数シェアでも、シャープが26.8%とトップ。13.6%で2位のソニー・エリクソンの、ほぼ2倍のシェアを持っている。3位がパナソニック モバイルコミュニケーションズで9.4%、4位がNECで9.1%、5位が東芝で7.0%という結果になった。
ちなみにキャリア別販売台数シェアでは、NTTドコモが48.3%、au(KDDI)が34.5%、ソフトバンク(SoftBank)が17.2%で、相変わらずNTTドコモがダントツ。06年8月から振り返ると、06年10月はauが、06年11月はソフトバンクが躍進。それぞれNTTドコモからシェアを奪ったものの、12月に入ると、どちらもMNP開始前の06年8月の水準に後退した。ソフトバンクはむしろ2.3ポイント下げている。
一方キャリア別の売れ筋端末を見ると、NTTドコモでは総合ランキング同様、1位が「SH903i」、2位は「SH902iS」、3位が「SO903i」(ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ)だった。4位は「N903i」(NEC)が獲得。最新の「903iシリーズ」に挟まれて、06年5月発売の旧モデル「SH902iS」が2位につけている点に注目したい。
シャープの携帯電話は画面がキレイ、といわれている。同社製液晶テレビ「AQUOS」で培った技術を取り入れた独自の液晶パネル「モバイルASV液晶」をほとんど機種で採用しており、なかでもワンセグ対応端末は「AQUOSケータイ」の愛称で、液晶テレビのイメージとリンクさせている。筆者は「SH902iS」のさらに1世代前のモデル「SH902i」を使用しているが、以前の端末に比べて格段に画質が上がったという印象を持った。逆に指紋などの汚れが気になり、液晶保護フィルムを買ってしまったくらいだ。
同じ「モバイルASV液晶」でも、画面サイズは「SH903i」の2.8インチワイドに対し、「SH902iS」は若干小さい2.4インチ。最大輝度も違う。さらに、GPSナビゲーション機能を搭載し、「メガiアプリ」やナップスターの定額音楽配信サービス「Napster To Go」に対応するなど、「SH903i」の方がより高性能・高機能だ。しかし、こうした付加機能は、電話とメール程度のライトユーザーには余り魅力的に映らない。その結果、価格の下がった旧モデルと最新モデルが並ぶ結果となったようだ。同じく1世代前の「902iS」シリーズからは、他に「P902iS」「N902iS」が上位に食い込んでいる。
●auとソフトバンクは薄型タイプとワンセグ対応端末が人気
続いてMNPで1人勝ちしたといわれる、auではどうだろう。1位はわずか15mmの薄型ボディが特徴の「W44K」(京セラ)が獲得。2位は「W43H」(日立製作所)で、3位と4位には、同じソニー・エリクソン製の「W43S」「W44S」が続いた。いずれも06年秋冬モデルで、旧モデルは8位の「W42S」まで登場せず、端末の新旧交代がうまくいっているようだ。
一方、ソフトバンクでは、ヒットした「AQUOSケータイ」の第2世代モデル「911SH」をはじめ、上位3位まで、すべてシャープ製端末が占めるという結果になった。2位の「910SH」は、デジタルカメラに匹敵する有効500万画素のCCDカメラと高解像度のVGA液晶を搭載。3位の「705SH」は旧ボーダフォン時代に発売された薄さ約17mmのモデルで、06年8月・9月は携帯電話全体でもトップだった。4位の「705P」(パナソニック モバイルコミュニケーションズ)も約14.8mmと、薄さがキーワードだ。
また、auの「W43H」「W44S」、ソフトバンクの「911SH」は、ワンセグに対応。06年12月時点で、ワンセグに対応する携帯電話はわずか9機種だったにも拘わらず、それぞれ上位に入った。携帯電話全体に占めるワンセグ対応率も、06年8月の8.8%から、12月には14.6%にまで上昇。NTTドコモは1機種のみのため、事実上、auとソフトバンクの2キャリアだけで1割を突破した。
なお、「W43H」は、その後継機種「W43H II」が1月にすでに発売されている。「W44S」は、携帯電話を横向きに開く「モバイルシアタースタイル」を、「911SH」は、液晶画面を90度回転することで横位置にできる「サイクロイドスタイル」を採用。ワンセグの視聴を前提に、各メーカーとも工夫を凝らしている。
ワンセグ対応端末で出遅れていたNTTドコモからも、いよいよ2月に「SH903iTV」「SO903iTV」「P903iTV」の3機種が発売される。さらに、auは07年春モデルとして計8機種、ソフトバンクは計2機種のワンセグ対応端末を発売すると発表した。この春の携帯電話のトレンドはいよいよ選択肢が増えた「ワンセグ」と、デザイン面で新鮮な「薄さ」の2つに集約されそうだ。(WebBCNランキング編集部・嵯峨野芙美)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販など22社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。