年末商戦は大型のフルHDに焦点、ワンランク上を狙う薄型テレビの売れ筋は?

特集

2006/12/21 03:15

 12月1日、全都道府県の県庁所在地で地上デジタル放送がスタート。さらに話題の次世代DVD機器も店頭に姿を現し始めた。薄型テレビ市場にはこのところ追い風が吹いている。活況が続く06年、薄型テレビ年末商戦のキーワードは液晶テレビもプラズマテレビも40V、50Vといった「大型化」、それにフルハイビジョン(フルHD)による「高画質化」だ。そこで、「大型・高画質」の薄型テレビに的を絞り、市場動向と直近の売れ筋を「BCNランキング」でまとめた。

 12月1日、全都道府県の県庁所在地で地上デジタル放送がスタート。さらに話題の次世代DVD機器も店頭に姿を現し始めた。薄型テレビ市場にはこのところ追い風が吹いている。活況が続く06年、薄型テレビ年末商戦のキーワードは液晶テレビもプラズマテレビも40V、50Vといった「大型化」、それにフルハイビジョン(フルHD)による「高画質化」だ。そこで、「大型・高画質」の薄型テレビに的を絞り、市場動向と直近の売れ筋を「BCNランキング」でまとめた。



●液晶も40V型へのシフト徐々に、フルHDの浸透で高画質ニーズも

 現在薄型テレビ市場の中心は液晶テレビだ。11月の「BCNランキング」では、薄型テレビ全体のうち液晶テレビの販売台数が89%、プラズマテレビは11%で、市場の約9割が液晶だった。32V型以上のサイズでも液晶が83%、プラズマは17%と液晶のシェアの高さは変わらない。さらに、40V型以上の大型機種でも得意領域と言われているプラズマを38%に抑え、液晶テレビは62%のシェアを獲得。液晶テレビの大型化は着実に進んでいる。

 一因として、シャープ、ソニーといった液晶テレビの主要メーカーが年末商戦に向けて40V型以上の大型モデルを投入したことが挙げられる。そのため量販店では大型機種がかなりのスペースを占めるようになった。サッカーワールドカップが開催された6月から秋口にかけては32V、37V型といった売れ筋サイズで価格下落が激しく、それ以上の大型製品へのシフトは限られていた。しかし、秋口以降徐々にサイズシフトが始まり、店頭でも「今は32Vではなく、37V型が販売のメイン」(ビックカメラ有楽町店の矢島純一主任)になっているようだ。

 実際、11月の「BCNランキング」で液晶テレビの画面サイズ別販売台数シェアを見ると、年末商戦機種の一部が先行して店頭に並び始めた9月以降、32V型はシェアを下げており、11月には35%を割り込んだ。反対に37V型は9月以降は販売台数が増加。7月の10%から徐々に右肩上がりでシェアを伸ばしている。


 一方、メーカー各社が年末商戦で力を入れている40V型台の機種は、32、37V型のシェアには及ばないものの、11月では台数シェアで9.5%。37V型の背中が見える程度まで拡大している。緩やかではあるが、40V型クラスの市場が立ち上ってきたようだ。

 40V型クラスでは店頭で「46V型を選ぶ人が多い」(同)という。データで46V型の動向を見ると、7月は0.76%だったものが11月は3%と、母数は少ないながらもシェアが3倍に増えている。46V型ではシャープ、ソニーが年末商戦で中心機種を投入したことも手伝って、人気のサイズになってきた。


 「画質」については、やはり「フルHD」かどうかがもっとも大きなポイントになる。解像度が水平1920×垂直1080画素のパネルを搭載したフルHDは、メーカーの広告や、販売店の店頭活動でアピールしていることもあり、消費者にも認知度が高まってきた。フルHDはハイビジョンの映像情報をすべて表示できるため画質が高いが、標準ハイビジョン(標準HD、解像度が水平1366×垂直768画素)の機種よりも価格は割高。しかし、店頭では画面サイズと同じくらい画質を重視する人が増えており、「高くても『フルHD』の機種を購入したいという人が多い」(同)という。

●年末商戦の注目機種は「40V型フルHD」と「46V型標準HD」か

 大型とフルHDに人気が集まる液晶テレビだが、購入で最も気になるのはやはり価格。「BCNランキング」で40V型台の機種に絞り、「サイズ別」「画質別」の項目で平均単価を調べてみた。なお、平均単価は消費税抜きで、フルHDと標準HDの機種のみを対象にした。


 フルHD機種は7月以降、全体的に価格を下げている。中でも40V型のフルHD機種は7月の約35万円から、11月には26万円程度にまで価格が下落。11月の段階では46V型の標準HD機種の価格と1万円程度の差しかなくなった。

 42V型の標準HD機種も40V型フルHD、46V型標準HDと同程度にまで価格が下がったが、値段から見た場合には、画面は小さいが高画質の「40V型フルHD」、画素数は少ないが画面が大きい「46V型標準HD」が選択のポイントとなりそうだ。

 「40V型フルHD」「46V型標準HD」の売れ行きはどうだろうか? 今度は、それぞれの機種について「BCNランキング」の11月月次から販売台数シェアを見てみた。


 11月では40V型フルHDが32.4%でシェアトップ。2位は29.6%で46V型のフルHDとなった。46V型標準HDは6.2%で、42V型標準HDではわずか1.5%だった。つまり、同程度の価格であれば、店頭では画面サイズは小さくても高画質のフルHD機種を選ぶ人が多いと考えられる。

●40V型台での売れ筋トップはやはり40V型フルHD

 それでは40V型台ではどんな機種が売れているのか、12月第3週(12月11-17日)の40V型クラスを対象にした販売台数シェアで売れ筋を見ていこう。トップ10にはフルHDタイプが9機種も登場。また、フルHDのニーズが高いことがあらためて浮き彫りになった。


 1位はシェア28.7%でソニーの「KDL-40V2500」。40V型のフルHD機種で10月に発売された年末商戦モデルがトップになった。高画質の画像処理回路「ブラビアエンジン」や鮮やかな色合いを再現するバックライトシステム「ライブカラークリエーション」などを搭載する。

 シェア10.7%で2位は、シャープの「LC-46GX1W」。46V型モデルでこちらも10月に発売された年末商戦モデルだ。フルHD対応の亀山第2工場製「ブラックASV液晶」を搭載し、コントラスト比が暗所で2000:1と世界最高を実現した。3位はソニーの「KDL-40X2500」で9.8%。同社の液晶テレビでは最上位シリーズに位置する機種で、フルHDパネルを採用し、映像のノイズを抑え現行のテレビ放送の画質をハイビジョン並みの高精細に引き上げて表示する新型の映像処理回路「ブラビアエンジンプロ」などを搭載する。

●販売台数シェア獲得に動くソニー、利益率を高めるシャープ

 最後に40V型以上の液晶テレビのメーカー別販売台数・金額シェアも確認しておこう。40V型以上ではソニーとシャープの戦いだ。販売台数で見るとトップは52.7%でソニー。だが、販売は下降傾向で、7月の64.5%から10%以上もシェアを落としている。反対にシャープは年末商戦モデルで、これまで手薄だった40V型機種を拡充。8月の30.9%から11月には40.8%までシェアを大きく伸ばした。


 金額で見ても勢いがあるのはシャープで、10月にはソニーを抜きトップを獲得した。年末商戦ではソニーが価格戦略でシェアを確保する一方、大型の機種でフルHD化を進めるシャープは「高画質」という付加価値で一台あたりの利益を高い水準で確保していると考えられる。

●液晶の大型化を受けプラズマでも大画面サイズの人気が高まる

 プラズマテレビも液晶の大型化に引っ張られる格好で販売の中心が従来の37V型から42V型へと移行してきた。量販店などでは大型の液晶テレビと並べて展示されることも多く、そのため、より大型の機種を求める人たちが多くなっているという。


 「BCNランキング」でプラズマテレビの画面サイズ別販売台数シェアを見ても、42V型は7月には30%台前半だったが、11月には40%近くまでシェアを伸ばしている。42V型は7月には約30万円だった価格が11月には20万円台半ばまで下落。こうした点も販売台数の伸びを後押ししているようだ。



 プラズマテレビで注目されるのは、液晶テレビの大型モデルの影響で42V型よりもさらに大きなサイズを求める人たちが増えていることだ。特に「50V台が売れ始めている」(同)という。

 販売台数シェアで見ると50V型クラスのシェアは全体で10%台半ばと数はまだ少ないが、プラズマテレビの購入者の多くが「映画のDVDソフトなどを色味や臨場感にこだわって視聴したい人」(同)ということから、より大きな画面で映像を楽しみたいという需要が鮮明になっているようだ。また、プラズマでは現在、50V型以上の機種がフルHDに対応しており、こうした点も50V台の人気を呼んでいると見られる。

●50V以上のプラズマでトップはフルHDモデル

 それでは、プラズマテレビの画面サイズが50V以上を対象にした売れ筋モデルを「BCNランキング」の12月第3週データで確認してみよう。


 トップはシェア39.6%で松下電器産業の「TH-50PZ600」。フルHDパネルを採用した50V型だ。新開発のフルHD用システム「フルハイビジョンPEAKS(ピークス)」を搭載する。

 松下電器産業は50V型をはじめ、2位で11.9%の50V型標準HD「TH-50PX600」が、3位で9.9%の65V型のフルHD機種などトップ5までを独占。そのほかのメーカーでは5位にシェア6.9%でパイオニアの「PDP-507HX」がようやくランクインした。

 「大画面」「高画質」という付加価値で利益を高めるというメーカーの戦略で薄型テレビの年末商戦は大型化やフルHDが進んだ。また、ブラウン管テレビからの買い替えユーザーをはじめ、2台目購入者からも大型機種を求める声が高まったことで、売り上げも伸びている。

 テレビは一度購入すれば10年程度は使い続けるもの。価格も決して安くはない。ただ、購入後「もっと大きなサイズにしておけばよかった」「画質にこだわればよかった」と後悔する人も少なくないという。テレビを置く部屋の広さや環境、視聴する番組やソフトなどを考慮することはもちろん大事だが、数年先でも十分に活躍できる、ふさわしい機種を選ぶことも重要だ。


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販など22社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。