<ITジュニアの群像 高専プロコンへの道>第27回 熱闘!第6回高校生ものづくりコンテンスト
全国の工業高校生が一堂に会して、技術・技能を競い合う第6回「高校生ものづくりコンテスト全国大会」が11月11?12日の2日間、埼玉県行田市の「ものつくり大学」で開催された。今回は、「第16回全国産業教育フェア埼玉大会」の一環として行われ、旋盤作業、自動車整備、電気工事、電子回路組立、科学分析、木材加工、橋梁模型製作の7部門で競技が行われた。なお、電子回路組立部門で優秀な成績を収めた生徒は、BCNが主催する「BCN ITジュニア賞」の有力候補としてノミネートされる。
工業高校生が7部門で競う
全国の工業高校生が一堂に会して、技術・技能を競い合う第6回「高校生ものづくりコンテスト全国大会」が11月11?12日の2日間、埼玉県行田市の「ものつくり大学」で開催された。今回は、「第16回全国産業教育フェア埼玉大会」の一環として行われ、旋盤作業、自動車整備、電気工事、電子回路組立、科学分析、木材加工、橋梁模型製作の7部門で競技が行われた。なお、電子回路組立部門で優秀な成績を収めた生徒は、BCNが主催する「BCN ITジュニア賞」の有力候補としてノミネートされる。(國井雅子●取材/文)
今回で6回目を迎えた「高校生ものづくりコンテスト全国大会」。全国9ブロックと開催地埼玉県を合わせた10ブロックの地区予選大会を勝ち抜いた7部門81人の若き技術者たちが熱い戦いを繰り広げた。
開会式の席上、主催する社団法人全国工業高等学校長協会の能智功理事長は、「日本の将来をどうすればいいかと問われるなか、日本をここまで築き上げた『ものづくり』という原点が再度見直されている。ここに参加している選手をはじめ、工業高校の生徒にはものづくりの先進的な役割を担ってもらいたい」と生徒たちにメッセージを送った。
●電子回路組立部門はプログラム制作も課題に
7部門の競技のうち、ITに関連する電子回路組立部門は、ハードウェアの組み立て技術だけでなく、回路設計、ソフトウェアの組み込み技術を総合的に競うのが特徴。前々回までは、ハンダ付けといった組み立て技術のみであったが、前回からプログラム制作を課題に取り入れ、実社会で役立つ組み込み技術の習得を目指している。
競技を2日間にわたって行うのは電子回路組立部門のみ。張り詰めた空気が会場を満たすなか、各ブロックの予選大会を勝ち抜いた精鋭10人が、優勝を目指してこれまで学んできた技術や技能を競い合った。
1日目は、支給された部品を用いて、制御対象回路図と規格を参考にコンピュータ出力回路を1時間30分の競技時間内に製作する。回路には、2つの7セグメントLEDの点灯回路やステッピングモーターの駆動回路などが含まれている。
2日目は、入力回路を設計・製作し持参したコンピュータと組み合わせて、1つの動作するプログラムを完成させる。競技時間は2時間30分。プログラム言語は自由で、開発環境は選手がそれぞれ用意している。プログラムは、スイッチを1回押して離すとステッピングモーターが反時計回りに回転し、もう一度押すと初期状態に戻るといったものから、7セグメントLEDの表示とステッピングモーターの動作を組み合わせた課題など、計7問が出題された。
工業高校での制御実習で多く使われているPICやH8の参加が多いが、今回から入出力ポートを入力3ビット、出力10ビットの計13ビットとしたことでPIC 16 F 84クラスのマイコンでもコンテストに参加できるようになった。
●プログラミングに高い配点で審査
審査は100点満点の採点方式で行われ、そのうちプログラミング技術が40点を占め、最も比重が大きい。プログラミング技術では、動作、プログラムの完成度・構造などが審査された。組み立て技術は30点で、動作、ハンダ付けの状態、部品の損傷などが審査のポイント。そのほか、設計力や作業態度などが採点項目となっている。
優勝したのは、長野県松本工業高等学校電子工業科2年生の小口宏之さん。緊張のせいか、実力を出し切れなかった選手もいたなかで、2日目のプログラム課題7問すべてに正解し、2年生ながら他の選手を圧倒した。
小口さんは、「プログラム自体は難しくなかった。ステッピングモーターの駆動は事前に練習していた。トラブルはあったが、プログラムがきちんと動いてよかった」と安堵の表情で感想を語った。なお、優勝した小口さんには厚生労働大臣賞が授与された。
また、2位には北海道帯広工業高等学校電気科3年生の松木将大さん、3位には鳥取県立米子工業高等学校コンピュータテクノロジー科3年生の岩田貴志さんがそれぞれ入賞した。
審査委員長である東海大学情報理工学部ソフトウェア開発工学科の大原茂之教授は、昨年よりも参加者のレベルが大幅に高まっているという。また、「まずは工程が守られているかということが大切。自分の頭のなかに入っているだけでは、他の人に引き継いだりすることができない。工程が守られているなかで自分の技術を発揮することが重要」と講評し、若き技術者たちを激励した。
●実社会で必要な技術を習得 新井誠 実行委員長(埼玉県立久喜工業高等学校長)
第6回目を迎えた「高校生ものづくりコンテスト全国大会」は、「高校生技能五輪」「ものづくりの甲子園」と評され、工業高校生のものづくりへの情熱と高い技術を披露する絶好の機会となっている。
電子回路組立部門では、1日目に制御する回路を組み立て、2日目に7セグメントLEDをカウントアップ表示をする、ステッピングモーターを回転させるといった、当日の課題に即したプログラムを作成する。
新井誠実行委員長は、「電子回路組立部門は、実社会に出て必要とされる組み込み技術全般を習得できるコンテスト。大学も含めてこういったコンテストはほかにはないと思う」と語る。
以前は電子回路・ロジック回路の組み立てのみを行っていたが、前回の大会から今後の日本のものづくりを支える「組み込み技術」に重点をおいた課題とした。また、昨年と比べ、入力ポート数を増やして課題を広げるなどの改善を加えている。
全国大会では、県大会やブロック大会を勝ち抜いた全国9ブロックと開催地である埼玉県の代表10人が競う。精鋭が揃うため、競技ではちょっとしたミスが命取りになる。
「落ち着いて、今まで勉強した成果を十分発揮し、全国の代表としてすばらしい組み込み技術を披露してもらいたい」とエールを送る。
※本記事「<技術立国の夢を担う ITジュニアの群像 高専プロコンへの道>第27回 熱闘!第6回高校生ものづくりコンテンストは、週刊BCN 2006年12月4日発行 vol.1165に掲載した記事を転載したものです。
工業高校生が7部門で競う
電子回路組立では2年生が優勝
全国の工業高校生が一堂に会して、技術・技能を競い合う第6回「高校生ものづくりコンテスト全国大会」が11月11?12日の2日間、埼玉県行田市の「ものつくり大学」で開催された。今回は、「第16回全国産業教育フェア埼玉大会」の一環として行われ、旋盤作業、自動車整備、電気工事、電子回路組立、科学分析、木材加工、橋梁模型製作の7部門で競技が行われた。なお、電子回路組立部門で優秀な成績を収めた生徒は、BCNが主催する「BCN ITジュニア賞」の有力候補としてノミネートされる。(國井雅子●取材/文)
今回で6回目を迎えた「高校生ものづくりコンテスト全国大会」。全国9ブロックと開催地埼玉県を合わせた10ブロックの地区予選大会を勝ち抜いた7部門81人の若き技術者たちが熱い戦いを繰り広げた。
開会式の席上、主催する社団法人全国工業高等学校長協会の能智功理事長は、「日本の将来をどうすればいいかと問われるなか、日本をここまで築き上げた『ものづくり』という原点が再度見直されている。ここに参加している選手をはじめ、工業高校の生徒にはものづくりの先進的な役割を担ってもらいたい」と生徒たちにメッセージを送った。
●電子回路組立部門はプログラム制作も課題に
7部門の競技のうち、ITに関連する電子回路組立部門は、ハードウェアの組み立て技術だけでなく、回路設計、ソフトウェアの組み込み技術を総合的に競うのが特徴。前々回までは、ハンダ付けといった組み立て技術のみであったが、前回からプログラム制作を課題に取り入れ、実社会で役立つ組み込み技術の習得を目指している。
競技を2日間にわたって行うのは電子回路組立部門のみ。張り詰めた空気が会場を満たすなか、各ブロックの予選大会を勝ち抜いた精鋭10人が、優勝を目指してこれまで学んできた技術や技能を競い合った。
1日目は、支給された部品を用いて、制御対象回路図と規格を参考にコンピュータ出力回路を1時間30分の競技時間内に製作する。回路には、2つの7セグメントLEDの点灯回路やステッピングモーターの駆動回路などが含まれている。
2日目は、入力回路を設計・製作し持参したコンピュータと組み合わせて、1つの動作するプログラムを完成させる。競技時間は2時間30分。プログラム言語は自由で、開発環境は選手がそれぞれ用意している。プログラムは、スイッチを1回押して離すとステッピングモーターが反時計回りに回転し、もう一度押すと初期状態に戻るといったものから、7セグメントLEDの表示とステッピングモーターの動作を組み合わせた課題など、計7問が出題された。
工業高校での制御実習で多く使われているPICやH8の参加が多いが、今回から入出力ポートを入力3ビット、出力10ビットの計13ビットとしたことでPIC 16 F 84クラスのマイコンでもコンテストに参加できるようになった。
●プログラミングに高い配点で審査
審査は100点満点の採点方式で行われ、そのうちプログラミング技術が40点を占め、最も比重が大きい。プログラミング技術では、動作、プログラムの完成度・構造などが審査された。組み立て技術は30点で、動作、ハンダ付けの状態、部品の損傷などが審査のポイント。そのほか、設計力や作業態度などが採点項目となっている。
優勝したのは、長野県松本工業高等学校電子工業科2年生の小口宏之さん。緊張のせいか、実力を出し切れなかった選手もいたなかで、2日目のプログラム課題7問すべてに正解し、2年生ながら他の選手を圧倒した。
小口さんは、「プログラム自体は難しくなかった。ステッピングモーターの駆動は事前に練習していた。トラブルはあったが、プログラムがきちんと動いてよかった」と安堵の表情で感想を語った。なお、優勝した小口さんには厚生労働大臣賞が授与された。
また、2位には北海道帯広工業高等学校電気科3年生の松木将大さん、3位には鳥取県立米子工業高等学校コンピュータテクノロジー科3年生の岩田貴志さんがそれぞれ入賞した。
審査委員長である東海大学情報理工学部ソフトウェア開発工学科の大原茂之教授は、昨年よりも参加者のレベルが大幅に高まっているという。また、「まずは工程が守られているかということが大切。自分の頭のなかに入っているだけでは、他の人に引き継いだりすることができない。工程が守られているなかで自分の技術を発揮することが重要」と講評し、若き技術者たちを激励した。
●実社会で必要な技術を習得 新井誠 実行委員長(埼玉県立久喜工業高等学校長)
第6回目を迎えた「高校生ものづくりコンテスト全国大会」は、「高校生技能五輪」「ものづくりの甲子園」と評され、工業高校生のものづくりへの情熱と高い技術を披露する絶好の機会となっている。
電子回路組立部門では、1日目に制御する回路を組み立て、2日目に7セグメントLEDをカウントアップ表示をする、ステッピングモーターを回転させるといった、当日の課題に即したプログラムを作成する。
新井誠実行委員長は、「電子回路組立部門は、実社会に出て必要とされる組み込み技術全般を習得できるコンテスト。大学も含めてこういったコンテストはほかにはないと思う」と語る。
以前は電子回路・ロジック回路の組み立てのみを行っていたが、前回の大会から今後の日本のものづくりを支える「組み込み技術」に重点をおいた課題とした。また、昨年と比べ、入力ポート数を増やして課題を広げるなどの改善を加えている。
全国大会では、県大会やブロック大会を勝ち抜いた全国9ブロックと開催地である埼玉県の代表10人が競う。精鋭が揃うため、競技ではちょっとしたミスが命取りになる。
「落ち着いて、今まで勉強した成果を十分発揮し、全国の代表としてすばらしい組み込み技術を披露してもらいたい」とエールを送る。
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※本記事「<技術立国の夢を担う ITジュニアの群像 高専プロコンへの道>第27回 熱闘!第6回高校生ものづくりコンテンストは、週刊BCN 2006年12月4日発行 vol.1165に掲載した記事を転載したものです。