誰が止めた? シマンテックの連続首位記録、潮目変わるセキュリティソフト
更新料無料ソフトの登場やジャストシステムの参入など、このところ話題が尽きないセキュリティソフト市場。ランキングも大きく変動している。ずっと首位を走ってきたシマンテックが9月第4週、トレンドマイクロにその座を明け渡したのだ。これで160週以上にわたって維持してきた連続首位記録が途絶えた。さらに、「ウイルスバスター2007」の立ち上がりが好調で、パッケージ別のランキングでもトレンドマイクロが首位を獲得している。「BCNランキング」で、変わりつつあるセキュリティソフト市場の現状をまとめた。
更新料無料ソフトの登場やジャストシステムの参入など、このところ話題が尽きないセキュリティソフト市場。ランキングも大きく変動している。ずっと首位を走ってきたシマンテックが9月第4週、トレンドマイクロにその座を明け渡したのだ。これで160週以上にわたって維持してきた連続首位記録が途絶えた。さらに、「ウイルスバスター2007」の立ち上がりが好調で、パッケージ別のランキングでもトレンドマイクロが首位を獲得している。「BCNランキング」で、変わりつつあるセキュリティソフト市場の現状をまとめた。
●集計期間と発売タイミングのマジック? ほかにも要因
トレンドマイクロが9月22日に発売した「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ」は、9月最終週(06年9月25日-10月1日)のBCNランキングで販売本数シェア1位を獲得した。6月から16週連続で1位だった「ノートン」シリーズにとって代わった背景には、新バージョン発売のタイミングがある。9月最終週は、22日発売の「ウイルスバスター2007」の立ち上がり時期。一方、シマンテックの「Symantec Norton Internet Security 2007(ノートン 2007)」などは9月30日発売で集計対象は土日の2日間のみ。この発売日のズレが、わずか1.8ポイントの僅差での逆転劇につながったようだ。
しかし、逆転の要因はそれだけではない。「ウイルスバスター2007」は、ライセンス体系の改訂、リーズナブルな優待パッケージの追加、Web経由のオンラインセキュリティサービス「トレンド フレックス セキュリティ」との連動など、単なるバージョンアップにとどまらない、数々の抜本的な機能強化が行われた。製品名も、従来の「?インターネットセキュリティ」から、新サービスの名称を取り入れた「?トレンド フレックス セキュリティ」に変更するなど、力の入れようも見て取れる。こういったことも逆転劇の原動力といえそうだ。
1位を獲得したパッケージ「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ 優待版」は、同社製ウイルスソフトの期間限定版や他社製ウイルスソフトの利用者向けの製品。通常版より安い「乗り換え版」は珍しくないが、トレンドマイクロでは、今回が初めて。この戦略がいきなり当たり、同シリーズの通常版を押さえ、前週4位からトップに躍り出た。直販価格は5355円で、通常版より1200円ほど安い。
ライセンス体系の改訂により、1つのシリアルナンバーで最大3台まで利用できるようにしたのも「ウイルスバスター2007」の新しいポイント。「複数台のPCを持っているユーザーが増えている現状に合わせて変更した」(同社広報)と説明するが、3台のPCを持っているユーザーにとっては、実質的な値下げ。今回1位の優待版を購入すると、PC1台当たりの価格は2000円を切る。
トレンドマイクロでは、都心の主要量販店を中心に、大々的な店頭キャンペーンを実施したという。ソフト自体の機能強化に加え、値ごろ感も高まり、さらに販促活動の相乗効果で、見事スタートダッシュに成功したようだ。
●たった1週だが、「メーカー別シェア」でもトップを獲得
セキュリティソフトの場合、通常版、優待版、複数ライセンス版と、同一製品のバリエーションが複雑。パッケージごとのランキングだけでは全体像はなかなか見えてこない。そこで、メーカー別シェアを見ると、勢力図はよりわかりやすくなる。
実は、ここでも首位逆転があった。新バージョンの発売1週目に当たる9月第4週(9月18日-9月24日)、トレンドマイクロがメーカー別販売本数シェアで1位を獲得した。翌週にはシマンテックに首位を奪還されたため、たった1週限りだったが、これはきわめて珍しいことだ。可能な限り過去にさかのぼってデータを検証したところ、少なくとも04年10月第3週(04年10月11日-17日)以降160週にわたり、メーカー別の販売本数シェアはすべての週にわたってシマンテックが首位を独占してきた。その快進撃を161週目にして止めたのは、トレンドマイクロだった。
セキュリティソフトのメーカー別販売本数シェアは、シマンテック、トレンドマイクロ、ソースネクスト、マカフィーの上位4社で9割以上を占め、そのほか数社が5位以下にひしめき合う状況。9月以降の直近4週間のシェア推移を見ると、トレンドマイクロは「ウイルスバスター2007」の発売と同時に20%台後半から30%にアップ。わずか1%の差でシマンテックを追い抜き、トップに立った。追い落とされたシマンテックも、「ノートン 2007」が発売になった9月最終週には、再び1位を奪還。ソースネクストは微減、マカフィーは同程度で推移していることから、しわ寄せは、5位以下のメーカーに波及していると見られる。
●ジャストシステムの新規参入や更新料無料の動きなど、市場の変化は激しい
07年向け新バージョンで、各社の最大の特徴として、シマンテックは、動作の軽さや使い方の簡単さを強調。マカフィーも使い勝手を高めると同時に、ネット検索の安全性を確保するツールなど新しい技術を盛り込んだと訴える。しかし、一番大きく「舵きり」を行ったのはやはりトレンドマイクロだろう。名称ともども、生まれ変わった「ウイルスバスター」の今後の動きに注目したい。
一方、「ATOK」や「一太郎」などで有名なジャストシステムが、セキュリティソフト市場に参入してきた。ロシアのカスペルスキー研究所と提携し、同社が開発したセキュリティソフトを販売するもので、製品の発売は11月。シェアの目標は5%だ。また、ソースネクストの「ウイルスセキュリティZERO」で、更新料無料というカテゴリーの製品も登場。そのほか、各社とも複数ライセンス版を積極的に導入し始めている、といった具合に動きが激しい。セキュリティソフト市場に訪れている変化の波はしばらく続くことになりそうだ。
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など22社・2200を超える店舗・オンラインショップからPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
更新料無料ソフトの登場やジャストシステムの参入など、このところ話題が尽きないセキュリティソフト市場。ランキングも大きく変動している。ずっと首位を走ってきたシマンテックが9月第4週、トレンドマイクロにその座を明け渡したのだ。これで160週以上にわたって維持してきた連続首位記録が途絶えた。さらに、「ウイルスバスター2007」の立ち上がりが好調で、パッケージ別のランキングでもトレンドマイクロが首位を獲得している。「BCNランキング」で、変わりつつあるセキュリティソフト市場の現状をまとめた。
●集計期間と発売タイミングのマジック? ほかにも要因
トレンドマイクロが9月22日に発売した「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ」は、9月最終週(06年9月25日-10月1日)のBCNランキングで販売本数シェア1位を獲得した。6月から16週連続で1位だった「ノートン」シリーズにとって代わった背景には、新バージョン発売のタイミングがある。9月最終週は、22日発売の「ウイルスバスター2007」の立ち上がり時期。一方、シマンテックの「Symantec Norton Internet Security 2007(ノートン 2007)」などは9月30日発売で集計対象は土日の2日間のみ。この発売日のズレが、わずか1.8ポイントの僅差での逆転劇につながったようだ。
しかし、逆転の要因はそれだけではない。「ウイルスバスター2007」は、ライセンス体系の改訂、リーズナブルな優待パッケージの追加、Web経由のオンラインセキュリティサービス「トレンド フレックス セキュリティ」との連動など、単なるバージョンアップにとどまらない、数々の抜本的な機能強化が行われた。製品名も、従来の「?インターネットセキュリティ」から、新サービスの名称を取り入れた「?トレンド フレックス セキュリティ」に変更するなど、力の入れようも見て取れる。こういったことも逆転劇の原動力といえそうだ。
1位を獲得したパッケージ「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ 優待版」は、同社製ウイルスソフトの期間限定版や他社製ウイルスソフトの利用者向けの製品。通常版より安い「乗り換え版」は珍しくないが、トレンドマイクロでは、今回が初めて。この戦略がいきなり当たり、同シリーズの通常版を押さえ、前週4位からトップに躍り出た。直販価格は5355円で、通常版より1200円ほど安い。
ライセンス体系の改訂により、1つのシリアルナンバーで最大3台まで利用できるようにしたのも「ウイルスバスター2007」の新しいポイント。「複数台のPCを持っているユーザーが増えている現状に合わせて変更した」(同社広報)と説明するが、3台のPCを持っているユーザーにとっては、実質的な値下げ。今回1位の優待版を購入すると、PC1台当たりの価格は2000円を切る。
トレンドマイクロでは、都心の主要量販店を中心に、大々的な店頭キャンペーンを実施したという。ソフト自体の機能強化に加え、値ごろ感も高まり、さらに販促活動の相乗効果で、見事スタートダッシュに成功したようだ。
●たった1週だが、「メーカー別シェア」でもトップを獲得
セキュリティソフトの場合、通常版、優待版、複数ライセンス版と、同一製品のバリエーションが複雑。パッケージごとのランキングだけでは全体像はなかなか見えてこない。そこで、メーカー別シェアを見ると、勢力図はよりわかりやすくなる。
実は、ここでも首位逆転があった。新バージョンの発売1週目に当たる9月第4週(9月18日-9月24日)、トレンドマイクロがメーカー別販売本数シェアで1位を獲得した。翌週にはシマンテックに首位を奪還されたため、たった1週限りだったが、これはきわめて珍しいことだ。可能な限り過去にさかのぼってデータを検証したところ、少なくとも04年10月第3週(04年10月11日-17日)以降160週にわたり、メーカー別の販売本数シェアはすべての週にわたってシマンテックが首位を独占してきた。その快進撃を161週目にして止めたのは、トレンドマイクロだった。
セキュリティソフトのメーカー別販売本数シェアは、シマンテック、トレンドマイクロ、ソースネクスト、マカフィーの上位4社で9割以上を占め、そのほか数社が5位以下にひしめき合う状況。9月以降の直近4週間のシェア推移を見ると、トレンドマイクロは「ウイルスバスター2007」の発売と同時に20%台後半から30%にアップ。わずか1%の差でシマンテックを追い抜き、トップに立った。追い落とされたシマンテックも、「ノートン 2007」が発売になった9月最終週には、再び1位を奪還。ソースネクストは微減、マカフィーは同程度で推移していることから、しわ寄せは、5位以下のメーカーに波及していると見られる。
●ジャストシステムの新規参入や更新料無料の動きなど、市場の変化は激しい
07年向け新バージョンで、各社の最大の特徴として、シマンテックは、動作の軽さや使い方の簡単さを強調。マカフィーも使い勝手を高めると同時に、ネット検索の安全性を確保するツールなど新しい技術を盛り込んだと訴える。しかし、一番大きく「舵きり」を行ったのはやはりトレンドマイクロだろう。名称ともども、生まれ変わった「ウイルスバスター」の今後の動きに注目したい。
一方、「ATOK」や「一太郎」などで有名なジャストシステムが、セキュリティソフト市場に参入してきた。ロシアのカスペルスキー研究所と提携し、同社が開発したセキュリティソフトを販売するもので、製品の発売は11月。シェアの目標は5%だ。また、ソースネクストの「ウイルスセキュリティZERO」で、更新料無料というカテゴリーの製品も登場。そのほか、各社とも複数ライセンス版を積極的に導入し始めている、といった具合に動きが激しい。セキュリティソフト市場に訪れている変化の波はしばらく続くことになりそうだ。
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など22社・2200を超える店舗・オンラインショップからPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。