売上高トップは1万円超の高級機、マウス市場に高機能化の新たな流れ

特集

2006/10/03 23:58

 1万円を超える高級マウスが売れている。高速スクロールが特徴のロジクール「MX-R(MX Revolution)」がそれだ。販売数量シェアではランキング7位。しかし販売金額シェアでは、実売1000円台の売れ筋モデルを尻目に、ぶっちぎり1位を記録する人気商品だ。これまで安さがポイントだったマウスだが、それなりの機能が認められれば高くても売れる、そんな流れが見えてきた。「BCNランキング」でマウスの新しいトレンドを探る。

 1万円を超える高級マウスが売れている。高速スクロールが特徴のロジクール「MX-R(MX Revolution)」がそれだ。販売数量シェアではランキング7位。しかし販売金額シェアでは、実売1000円台の売れ筋モデルを尻目に、ぶっちぎり1位を記録する人気商品だ。これまで安さがポイントだったマウスだが、それなりの機能が認められれば高くても売れる、そんな流れが見えてきた。「BCNランキング」でマウスの新しいトレンドを探る。

●売れ筋は3000円未満の光学式有線マウス

 デザインや色、大きさ、機能などの違いで、多種多様な製品が出回るマウス。最も売れている製品でも販売数量シェアは1桁台と激戦区だ。「BCNランキング」06年9月第4週(06年9月18日-9月24日)で、カラーバリエーションを合算した値では、エレコムの「M-M1UP2R」が5.2%で1位を獲得した。2位も同じくエレコムの「M-M2UP2R」で2.8%。これらはサイズ違いの兄弟マウスで、「M-M1UP2R」は小型のノートPC向け、「M-M2UP2R」はデスクトップPC向けの大型サイズ。どちらも、USBとPS/2に対応する光学式のごく一般的な有線マウスだ。続く3位はサンワサプライの「MA-IH」、4位はバッファローの「BOMU-S」だった。

 トップ10のうち、過半数の6モデルは実売1000円台。1000円未満のものが1つ、2000円台のモデルが2つといった価格構成だ。いずれも「有線タイプの光学式」という基本性能は変わらない。しかし、この中に1万円を超える飛びぬけて高価なマウスが1つだけランクインしている。


●超高速スクロールの高機能マウス「MX-R」がランキング上位に食い込む

 それが7位のロジクール「MX-R」だ。9月15日に発売されたばかりの多機能ワイヤレスレーザーマウスで、発売とともに上位に登場。発売第1週目の9月第3週には、シェア2.4%で5位、翌週の9月第4週も7位につけた。

 革新、革命的を意味する「Revolution(レボリューション)」を謳うだけに、「MX-R」には独自の機能がてんこ盛り。なかでも最大のウリは、超高速でスクロールし、長い文書をすばやく閲覧できる「フリースピンモード」。縦に長いデザインのWebサイトを閲覧する場合や、広大なエクセルの集計表と格闘する際にも快適に操作できそうだ。利用するソフトウェアごとに通常のスクロールモードと自動的に切り替えることもできる。

 そのほか、水平スクロール機能や、開いているウィンドウやソフトをサイドのボタンを押して簡単に切り替えられる「ドキュメントクイックフリップ」、文字を選択した状態でワンタッチ検索ボタンを押すとその語句や文章を検索できる機能なども備える。長時間操作する入力装置だけに、これだけ機能が充実していれば、作業効率もかなり上がりそうだ。

 ちなみに、同じ超高速スクロール機能を搭載した「Revolution」シリーズのノートPC向けモデル「VX-R(VX Revolution)」は22位だった。発売日は1週間遅い9月22日。「MX-R」のミニサイズ版ではなく、本体に収納可能なUSBレシーバーや、画面の文字をズームイン・ズームアウトできるスライダーを採用するなど、ノートPC向けに機能を特化したもの。そのほか、電池タイプなど一部仕様が異なっている。価格は「VX-R」の方が2000円ほど安い。


●販売金額ではがらっと変わる顔ぶれ、隠れたトレンドが見えてくる

 ここまで見てきたランキングは販売数量のシェアによるものだが、販売金額のシェアで見ると、顔ぶれはがらっと変わる。8.0%のシェアで1位を獲得したのが、先ほど販売数量7位で紹介したロジクールの多機能マウス「MX-R」。販売数量的にはそこそこの順位ながら、実は一番稼いでいたのはこのマウスだったのだ。2位には、販売数量では22位の「VX-R」が入った。3位にようやく、販売数量1位の「M-M1UP2R」がランクインする。



 さらに4位には、アップルの純正マウス「Mighty Mouse(マイティマウス)」のワイヤレス版「MA272J/A」がランクイン。昨年、人気を博した有線タイプの「Mighty Mouse」に比べて高価なためか、販売数量ではかなり地味な存在だが、販売金額では上位に位置している。

 全体的に、販売金額ランキングでは、ワイヤレスタイプが目立つ。仕様を詳細に見ていくと、レーザー式マウスや、ホイール操作で左右に画面を動かせる水平(横)スクロール機能、解像度(分解能)の切り替え機能など、「プラスα」の機能を備えるマウスが多い。それぞれ多数派ではないが、着実にこうした付加機能が受け入れられているようだ。

●マウスに何を求めるか?

 かつて主流だった「機械式」は今や1割足らず。現在の主流はマウスパッドがなくても使える「光学式」だ。一方、接続方式では、有線マウスが販売数量全体の7割強を占め、ワイヤレスマウスはまだ少数派。しかし、6000円以上のマウスに限ると、ここ3か月間でワイヤレスマウスが占める割合が70%台から80%後半に上昇。好調のロジクールの「MX-R」や「VX-R」、アップルの「ワイヤレスMighty Mouse」の影響がここにも出ている。

 これまでマウス選択の基準といえば、「機械式か光学式」かの読み取り方法の違いと、「有線か無線か」という接続方法の違いに加え、デザインや大きさといった要素が加わるだけだった。機能的にあまり差がなければ、値段が安いものに人気が集まるのも無理はない。しかし、かなり高価でも高機能ゆえに売れるマウスが登場しはじめたのもまた事実だ。

 それに、マウスは毎日使うもの。クリック時の感覚や操作性など「フィーリングや使い心地の良さ」も重要だ。実機を触って確かめられるよう、専用コーナーを設けた店舗も多い。価格だけでなく、そろそろ機能や使い心地にもこだわってマウスを選んでみてはどうだろう。もしかすると日々の作業が驚くほど効率化してしまうかもしれない。


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など22社・ 2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。