まだ隠し玉がある? ジョブズCEOが去り際に繰り返した言葉の真意は?
<strong>――アップル、カラフル「nano」やクリップ「shuffle」など新iPod発表</strong><br /> 米Appleは、現地時間9月12日、マスコミ関係者を集めてプレスイベントを開催した。その模様は日本でも、翌13日の午前10時から、ビデオ上映のかたちでメディア各社に披露された。イベントではiPodファミリーのリニューアルを発表。さらに「iTunes 7」の登場で、オンラインコンテンツショップの名称が「iTunes Music Store」(iTMS)から「iTunes Sto
――アップル、カラフル「nano」やクリップ「shuffle」など新iPod発表
米Appleは、現地時間9月12日、マスコミ関係者を集めてプレスイベントを開催した。その模様は日本でも、翌13日の午前10時から、ビデオ上映のかたちでメディア各社に披露された。イベントではiPodファミリーのリニューアルを発表。さらに「iTunes 7」の登場で、オンラインコンテンツショップの名称が「iTunes Music Store」(iTMS)から「iTunes Store」(iTS)に変更され、映画のダウンロード販売の開始も発表された。そこで、この模様と新モデルのインプレッションなどをお伝えしよう。
●iPodには80GBモデル登場したが、第5世代のままのマイナーチェンジ
いつものようにラフないでたちでステージに登場したアップルのスティーブ・ジョブズCEO。まず、iPodとiTSによる音楽ダウンロード販売は依然として好調で、米国内で発売された「Nike+iPod」のスポーツキットは、90日間で45万個を売上げたことや、米国内で販売される07年モデルの新車のうち、70%がiPodに対応していることなどを紹介した。
そして、いよいよiPodのリニューアルへと話は移る。まず、旗艦となる「iPod」だが、これはサイズ・デザインとも変更はなし。上位モデルのHDD容量は60GBから80GBに引き上げられた。液晶画面の輝度が従来モデルより60%明るくなっており、実機を見た印象としては、プレイリストや楽曲名など、たしかに見やすくなっている。メニューには、新たに検索機能が備わったが、対応しているのはアルファベットのみで、日本語の検索はできないのは残念だ。また、「iTS」から9種類のゲームをダウンロード購入して遊べるようになった。「テトリス」や「パックマン」など日本でもおなじみのゲームは、ナムコなどが提供している。
iPodとiPod nanoには、iPod内の曲を探せる検索機能が新たに備わった
●「ぱっと見」miniの小型版、カラーバリエーションが増えた新「nano」
携帯オーディオ市場で、年末商戦の目玉となりそうなのが、第2世代の新しい「iPod nano」だ。ボディサイズは従来よりもさらに薄くなって、これまでの表面ポリカーボネート+裏面ステンレス鏡面仕上げから、全面アルミ蒸着仕上げに変更された。そしてカラーバリエーションを一挙に拡大。ブルー・ピンク・グリーン・シルバー・ブラックの5色で展開する。アルミ金属ボディで5色のラインアップということで、ぱっと見た印象は、まさしく「iPod mini」のnanoバージョンといった感じ。米国のイベント会場では、ジョブズCEOがカラーバリエーションを発表したとたん、大きな喝采が起きていた。カラフルな「iPod mini」には根強い人気があったが、どうやら「iPod nano」でも、カラフルな色使いが待ち望まれていたということらしい。バッテリ駆動時間が従来の14時間から、24時間へと倍近くに伸びたことも注目だ。
iPod mini(第1世代)と新iPod nano比べてみた。
わずか2年ほどで大きく進化したことがわかる
●クリップshuffleをジーンズにつけて「便利だろう?」と、ジョブズCEO
続いて、こちらも第2世代となる新「iPod shuffle」が登場。ボディはこれまでのプラスチック製からアルミ製に変更され、サイズも一気に小型化した。ジョブズCEOによれば、「私たちが把握してる製品の中では、世界で一番小さいMP3プレーヤーだ」だという。ボディ裏面がクリップになっていて、シャツの袖などにそのまま装着することができる。「どうだい? 便利だろう」と、ジョブズCEOは自分のジーンズのポケットにこの新しい「iPod shuffle」をつけてみせていた。
従来の「shuffle」は、キャップを外すとUSBメモリとして使うことができたが、今度の「shuffle」は付属の専用のドックを経由してUSBに接続する仕様となったため、USBメモリとしては使用できなくなってしまった。少々残念な気もするが、このサイズで1万円を切る価格設定という特徴から推測すると、スポーツやちょっとした外出時に邪魔にならずに使える2台目という位置づけのようだ。
ボディ裏面がクリップになっている、新iPod shuffle
●アルバムジャケットが無料提供されるようになった「iTunes 7」
これら「iPod」ファミリーを統括するソフトとして、「iTunes」の新バージョン「iTunes 7」が発表され、Mac版、Windows版とも、同社のサイトから即日ダウンロード可能となった。「iTunes 7」は、これまでで一番大きなインターフェイスの変更が施され、ライブラリがメディアの種類ごとに区分けされるようになった。
アルバムジャケットの表示が立体的になり、ビデオの画面サイズは640×480ピクセルに拡大された。これまで、「iTS」も「iPod」も、音楽もビデオも、すべて同じようにライブラリの中で表示されていたが、これでずいぶん見やすくなった。目的のコンテンツに、以前よりもすばやくたどり着けるようになっている。
立体表示のアルバムジャケットで探せる新モード「Cover Flow ビュー」
また、これまでアルバムのジャケットは、「iTS」で楽曲を購入する際には自動的にダウンロードされていたが、自分でCDからリッピングした楽曲の場合は、あとから自分でジャケット画像を貼り付けなければならなかった。それが「iTunes 7」では、楽曲を購入しなくても、ジャケットだけを「iTS」から無償でダウンロードして表示できるようになった。ただし、提供されるのは「iTS」で取り扱っているものだけなので、「iTS」に参加していないレーベルやアーティストについては、従来どおり自分でアルバムジャケットの画像を用意する必要がある。
●そして、映画配信の開始に「iTunes 7」ももちろん対応
「iTunes 7」における最大の変更点が、映画のダウンロードに対応したこと。「iTS」からは、ディズニー系列の4つの映画レーベル「Walt Disney」「Pixar」「Touchstone」「Miramax」の作品75タイトルが提供開始される。ジョブズCEOの説明では、「5MB/秒程度のブロードバンド環境で、映画1本を約30分でダウンロード可能」としている。また、その画質はDVDに匹敵し、ドルビーサラウンドもサポートしているという。
ここでジョブズCEOは、「iTS」からダウンロードした「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「カーズ」などの作品を鑑賞するデモを行ってみせた。そして、その「iTS」と「iTunes 7」の組み合わせによって実現できた画質の良さ、ネット経由でダウンロードした作品でも十分見応えのある画質であることを強調してみせた。
映画のダウンロードは米国のみ。国内での早期のサービス開始を期待したい
「iTS」に作品を提供する映画会社は、当初はディズニーだけだが、ジョブズCEOは「今後ますます増えていく」と自信を見せていた。その裏付けとして、「iTS」でのテレビ番組のダウンロード販売を例に挙げていた。当初はごくわずかだった番組提供が、短期間に急速に増えていった経過をグラフでアピールしていた。
●アップルでは異例の製品の事前紹介、登場したのは「iTV」
「Appleは、将来の製品について事前に紹介することはないのだが……」と断りながら、ジョブズCEOは、07年第1四半期の発売を予定している「iTV(仮称)」を紹介した。「Mac mini」を薄型にしたような「iTV」は、テレビに接続するためのセットトップボックス。ワイヤレスLANを内蔵しており、無線で「iTunes」と連動して、MacやWindowsの中にある映画や写真、音楽をテレビで見たり聞いたりできるようにする装置だ。
異例ともいえる製品プレビューを行ったことについて、「デジタル・エンターテインメントに対するAppleの考え方・将来への方向性を知ってほしかったため」だという。そこには、「iTunes」をコアに、MacやPC、iPod、AirMac経由でオーディオが、そしてiTV経由でテレビがつながり、1つのコンテンツを、机の上でも、外出先でも、リビングでも、好きなときに好きなスタイルで、自由に楽しめるという姿を想像することができそうだ。
「iTV」は07年第1四半期(1月-3月)に発売予定
最後に、グラミー賞8部門ノミネート(3部門受賞)のジョン・レジェンド氏が登場。ソロでピアノ弾き語りによるライブ・パフォーマンスを披露して、今回のイベントは幕引きとなった。ジョブズCEOは最後に、「また近いうちに、みなさんと再会できることを楽しみにしている」と意味深な言葉を何度か繰り返して、ステージ袖に消えていった。
●ジョブズCEOが繰り返した「また近いうちに」が意味するものは?
「iPod」ファミリーのリニューアルと、「iTS」での映画ダウンロード販売の開始は、実は、Mac関連の情報サイトでは、以前から秒読み段階のようにいわれ続けていた。そういう意味では、ほぼ予想どおりの発表となったわけだ。
「iPod nano」のカラーバリエーション化は予想外で、「iPod mini」に先祖返りしたようなデザインと素材の変更を速報で知ったとき、正直、筆者は「いよいよ手が尽きたか」と思ったりしたのだが、実機を手にしてみると、これが安易な思い込みを裏切るくらいに魅力的な製品に仕上がっていて驚いた。なかなか所有欲をくすぐられる「iPod nano」という印象だ。「iPod mini」では、シルバーの人気が高かったのだが、新しい「iPod nano」では、さて何色が人気になるだろうか? 市場動向が楽しみである。
パッケージも一新、店頭で目立ちそうだ
また、「iTS」での映画のダウンロード販売は、年内に米国内限定でスタートし、07年に世界展開される予定となっている。日本ではまだテレビ番組のダウンロード販売さえ始まっていないが、ジョブズCEOが取締役に名を連ね、権利関係も一極集中で強固なディズニー映画の場合は、米本社がGoサインを出せば、案外日本でも早くダウンロード販売が可能になるかもしれない。ただし、その他の映画会社の作品については、米国内であっても、そもそも「iTS」への参加から難航しそうだ。今後、どのくらいのペースで提供作品が増えていくのか、見守りたい。
ところで、今回発表された旗艦の「iPod」は、いわば第5世代のマイナーバージョンアップ版で、いわゆる第6世代ではない。Mac関連の噂サイトでは、映画の視聴に適した全面大型液晶画面を搭載し、タッチスクリーンに表示されたクリックホイールを操作する第6世代の「iPod」が発表されるのではないか、という期待が高まっていたが、今回のイベントでは、そうした発表は行われなかった。
「iTV」を使うことで薄型テレビでもiPod+iTunesが楽しめると、
異例の事前紹介を行うジョブズCEO
しかし、ジョブズCEOが去り際に、「また近いうちに」と繰り返していたのが気にかかる。年末商戦に向けて、年内にAppleからもう1つ、ビッグサプライズが飛び出してくるかもしれない。驚くような何かを発表するときに、ジョブス氏が決まって使うお得意のセリフ「one more thing(最後にもう1つ)」は、まだ終わっていないのかもしれない。(フリーライター・中村光宏)
――アップル、カラフル「nano」やクリップ「shuffle」など新iPod発表
米Appleは、現地時間9月12日、マスコミ関係者を集めてプレスイベントを開催した。その模様は日本でも、翌13日の午前10時から、ビデオ上映のかたちでメディア各社に披露された。イベントではiPodファミリーのリニューアルを発表。さらに「iTunes 7」の登場で、オンラインコンテンツショップの名称が「iTunes Music Store」(iTMS)から「iTunes Store」(iTS)に変更され、映画のダウンロード販売の開始も発表された。そこで、この模様と新モデルのインプレッションなどをお伝えしよう。
●iPodには80GBモデル登場したが、第5世代のままのマイナーチェンジ
いつものようにラフないでたちでステージに登場したアップルのスティーブ・ジョブズCEO。まず、iPodとiTSによる音楽ダウンロード販売は依然として好調で、米国内で発売された「Nike+iPod」のスポーツキットは、90日間で45万個を売上げたことや、米国内で販売される07年モデルの新車のうち、70%がiPodに対応していることなどを紹介した。
そして、いよいよiPodのリニューアルへと話は移る。まず、旗艦となる「iPod」だが、これはサイズ・デザインとも変更はなし。上位モデルのHDD容量は60GBから80GBに引き上げられた。液晶画面の輝度が従来モデルより60%明るくなっており、実機を見た印象としては、プレイリストや楽曲名など、たしかに見やすくなっている。メニューには、新たに検索機能が備わったが、対応しているのはアルファベットのみで、日本語の検索はできないのは残念だ。また、「iTS」から9種類のゲームをダウンロード購入して遊べるようになった。「テトリス」や「パックマン」など日本でもおなじみのゲームは、ナムコなどが提供している。
iPodとiPod nanoには、iPod内の曲を探せる検索機能が新たに備わった
●「ぱっと見」miniの小型版、カラーバリエーションが増えた新「nano」
携帯オーディオ市場で、年末商戦の目玉となりそうなのが、第2世代の新しい「iPod nano」だ。ボディサイズは従来よりもさらに薄くなって、これまでの表面ポリカーボネート+裏面ステンレス鏡面仕上げから、全面アルミ蒸着仕上げに変更された。そしてカラーバリエーションを一挙に拡大。ブルー・ピンク・グリーン・シルバー・ブラックの5色で展開する。アルミ金属ボディで5色のラインアップということで、ぱっと見た印象は、まさしく「iPod mini」のnanoバージョンといった感じ。米国のイベント会場では、ジョブズCEOがカラーバリエーションを発表したとたん、大きな喝采が起きていた。カラフルな「iPod mini」には根強い人気があったが、どうやら「iPod nano」でも、カラフルな色使いが待ち望まれていたということらしい。バッテリ駆動時間が従来の14時間から、24時間へと倍近くに伸びたことも注目だ。
iPod mini(第1世代)と新iPod nano比べてみた。
わずか2年ほどで大きく進化したことがわかる
●クリップshuffleをジーンズにつけて「便利だろう?」と、ジョブズCEO
続いて、こちらも第2世代となる新「iPod shuffle」が登場。ボディはこれまでのプラスチック製からアルミ製に変更され、サイズも一気に小型化した。ジョブズCEOによれば、「私たちが把握してる製品の中では、世界で一番小さいMP3プレーヤーだ」だという。ボディ裏面がクリップになっていて、シャツの袖などにそのまま装着することができる。「どうだい? 便利だろう」と、ジョブズCEOは自分のジーンズのポケットにこの新しい「iPod shuffle」をつけてみせていた。
従来の「shuffle」は、キャップを外すとUSBメモリとして使うことができたが、今度の「shuffle」は付属の専用のドックを経由してUSBに接続する仕様となったため、USBメモリとしては使用できなくなってしまった。少々残念な気もするが、このサイズで1万円を切る価格設定という特徴から推測すると、スポーツやちょっとした外出時に邪魔にならずに使える2台目という位置づけのようだ。
ボディ裏面がクリップになっている、新iPod shuffle
●アルバムジャケットが無料提供されるようになった「iTunes 7」
これら「iPod」ファミリーを統括するソフトとして、「iTunes」の新バージョン「iTunes 7」が発表され、Mac版、Windows版とも、同社のサイトから即日ダウンロード可能となった。「iTunes 7」は、これまでで一番大きなインターフェイスの変更が施され、ライブラリがメディアの種類ごとに区分けされるようになった。
アルバムジャケットの表示が立体的になり、ビデオの画面サイズは640×480ピクセルに拡大された。これまで、「iTS」も「iPod」も、音楽もビデオも、すべて同じようにライブラリの中で表示されていたが、これでずいぶん見やすくなった。目的のコンテンツに、以前よりもすばやくたどり着けるようになっている。
立体表示のアルバムジャケットで探せる新モード「Cover Flow ビュー」
また、これまでアルバムのジャケットは、「iTS」で楽曲を購入する際には自動的にダウンロードされていたが、自分でCDからリッピングした楽曲の場合は、あとから自分でジャケット画像を貼り付けなければならなかった。それが「iTunes 7」では、楽曲を購入しなくても、ジャケットだけを「iTS」から無償でダウンロードして表示できるようになった。ただし、提供されるのは「iTS」で取り扱っているものだけなので、「iTS」に参加していないレーベルやアーティストについては、従来どおり自分でアルバムジャケットの画像を用意する必要がある。
●そして、映画配信の開始に「iTunes 7」ももちろん対応
「iTunes 7」における最大の変更点が、映画のダウンロードに対応したこと。「iTS」からは、ディズニー系列の4つの映画レーベル「Walt Disney」「Pixar」「Touchstone」「Miramax」の作品75タイトルが提供開始される。ジョブズCEOの説明では、「5MB/秒程度のブロードバンド環境で、映画1本を約30分でダウンロード可能」としている。また、その画質はDVDに匹敵し、ドルビーサラウンドもサポートしているという。
ここでジョブズCEOは、「iTS」からダウンロードした「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「カーズ」などの作品を鑑賞するデモを行ってみせた。そして、その「iTS」と「iTunes 7」の組み合わせによって実現できた画質の良さ、ネット経由でダウンロードした作品でも十分見応えのある画質であることを強調してみせた。
映画のダウンロードは米国のみ。国内での早期のサービス開始を期待したい
「iTS」に作品を提供する映画会社は、当初はディズニーだけだが、ジョブズCEOは「今後ますます増えていく」と自信を見せていた。その裏付けとして、「iTS」でのテレビ番組のダウンロード販売を例に挙げていた。当初はごくわずかだった番組提供が、短期間に急速に増えていった経過をグラフでアピールしていた。
●アップルでは異例の製品の事前紹介、登場したのは「iTV」
「Appleは、将来の製品について事前に紹介することはないのだが……」と断りながら、ジョブズCEOは、07年第1四半期の発売を予定している「iTV(仮称)」を紹介した。「Mac mini」を薄型にしたような「iTV」は、テレビに接続するためのセットトップボックス。ワイヤレスLANを内蔵しており、無線で「iTunes」と連動して、MacやWindowsの中にある映画や写真、音楽をテレビで見たり聞いたりできるようにする装置だ。
異例ともいえる製品プレビューを行ったことについて、「デジタル・エンターテインメントに対するAppleの考え方・将来への方向性を知ってほしかったため」だという。そこには、「iTunes」をコアに、MacやPC、iPod、AirMac経由でオーディオが、そしてiTV経由でテレビがつながり、1つのコンテンツを、机の上でも、外出先でも、リビングでも、好きなときに好きなスタイルで、自由に楽しめるという姿を想像することができそうだ。
「iTV」は07年第1四半期(1月-3月)に発売予定
最後に、グラミー賞8部門ノミネート(3部門受賞)のジョン・レジェンド氏が登場。ソロでピアノ弾き語りによるライブ・パフォーマンスを披露して、今回のイベントは幕引きとなった。ジョブズCEOは最後に、「また近いうちに、みなさんと再会できることを楽しみにしている」と意味深な言葉を何度か繰り返して、ステージ袖に消えていった。
●ジョブズCEOが繰り返した「また近いうちに」が意味するものは?
「iPod」ファミリーのリニューアルと、「iTS」での映画ダウンロード販売の開始は、実は、Mac関連の情報サイトでは、以前から秒読み段階のようにいわれ続けていた。そういう意味では、ほぼ予想どおりの発表となったわけだ。
「iPod nano」のカラーバリエーション化は予想外で、「iPod mini」に先祖返りしたようなデザインと素材の変更を速報で知ったとき、正直、筆者は「いよいよ手が尽きたか」と思ったりしたのだが、実機を手にしてみると、これが安易な思い込みを裏切るくらいに魅力的な製品に仕上がっていて驚いた。なかなか所有欲をくすぐられる「iPod nano」という印象だ。「iPod mini」では、シルバーの人気が高かったのだが、新しい「iPod nano」では、さて何色が人気になるだろうか? 市場動向が楽しみである。
パッケージも一新、店頭で目立ちそうだ
また、「iTS」での映画のダウンロード販売は、年内に米国内限定でスタートし、07年に世界展開される予定となっている。日本ではまだテレビ番組のダウンロード販売さえ始まっていないが、ジョブズCEOが取締役に名を連ね、権利関係も一極集中で強固なディズニー映画の場合は、米本社がGoサインを出せば、案外日本でも早くダウンロード販売が可能になるかもしれない。ただし、その他の映画会社の作品については、米国内であっても、そもそも「iTS」への参加から難航しそうだ。今後、どのくらいのペースで提供作品が増えていくのか、見守りたい。
ところで、今回発表された旗艦の「iPod」は、いわば第5世代のマイナーバージョンアップ版で、いわゆる第6世代ではない。Mac関連の噂サイトでは、映画の視聴に適した全面大型液晶画面を搭載し、タッチスクリーンに表示されたクリックホイールを操作する第6世代の「iPod」が発表されるのではないか、という期待が高まっていたが、今回のイベントでは、そうした発表は行われなかった。
「iTV」を使うことで薄型テレビでもiPod+iTunesが楽しめると、
異例の事前紹介を行うジョブズCEO
しかし、ジョブズCEOが去り際に、「また近いうちに」と繰り返していたのが気にかかる。年末商戦に向けて、年内にAppleからもう1つ、ビッグサプライズが飛び出してくるかもしれない。驚くような何かを発表するときに、ジョブス氏が決まって使うお得意のセリフ「one more thing(最後にもう1つ)」は、まだ終わっていないのかもしれない。(フリーライター・中村光宏)