携帯オーディオで日本企業躍進、対するアップル、次の一手は?
携帯オーディオ市場で日本企業が元気だ。相変わらず1位アップル、2位ソニーという図式は不変だが、1年前に比べると、日本企業のシェアが倍増している。孤軍奮闘のソニーにようやく援軍が現れたという状況だ。一方、全体の販売台数を見ると対前年比で、このところ前年割れが続いている。携帯オーディオ市場に大きな構造変化が訪れているようだ。「BCNランキング」で、その動向をまとめた。
携帯オーディオ市場で日本企業が元気だ。相変わらず1位アップル、2位ソニーという図式は不変だが、1年前に比べると、日本企業のシェアが倍増している。孤軍奮闘のソニーにようやく援軍が現れたという状況だ。一方、全体の販売台数を見ると対前年比で、このところ前年割れが続いている。携帯オーディオ市場に大きな構造変化が訪れているようだ。「BCNランキング」で、その動向をまとめた。
●シェア倍増させた日本企業
8月最終週(8月28日-9月3日)の、カラーバリエーションを合算した携帯オーディオ機種別ランキングトップ15を算出した。1位から4位までをアップルが占め、絶好調の「iPod nano」が1、2、3フィニッシュを決めた。5、6位にはAAC対応で話題を集めたソニーの「ウォークマンEシリーズ」。7位に再び「iPod shuffle 512MB」……。このところ見慣れた順位だが、よく見ると、以前なら登場していたはずのアップル以外の海外勢がめっきり影を潜めてしまっているのに気付く。撤退したRioが消えたのは当然としても、iRiverやクリエイティブメディアといった以前は常連だったメーカーまでもが上位に登場しなくなってきているのだ。
メーカー別販売台数シェアを1年前と比較してみると、この傾向ははっきりする。05年8月時点では、トップのアップルと3、4、5位のRio、iRiver、クリエイティブメディアが2位のソニーを挟み込むような形になっていた。しかし、今年の8月では、3、4、5位はいずれも日本企業が占めている。3位の松下は、SDカードを使う「D-snap Audio」シリーズが好調。この1年でシェアを倍増させた。またminiSDカード対応の「MP-B200/300」が好調のシャープも、1年前に比べ3倍以上の伸びを示している。また、gigabeat Pシリーズの「NANA」バージョンが人気の東芝もシェアをほぼ3倍に伸ばしてきた。一方iRiverはシェアを4分の1に減らしたほか、クリエイティブメディアも1年前の半分にシェアを落としている。
●海外勢はアップルに収斂し、日本勢はソニーのほかにも拡大
携帯オーディオのメーカー別販売台数シェアトップ10に登場する企業を、日本勢と海外勢に分け、推移を見てみよう。05年8月から10月ごろにかけては、アップルを筆頭に海外勢のシェアが7割前後だったのに比べ日本勢は2割強。海外勢が圧倒的優位に立っていた。しかし、月を追うごとに海外勢のシェアは落ち、この8月には51.2%の水準にまで下がっている。逆に日本勢は42.8%と今にも逆転しそうな勢いだ。
このグラフに、海外勢代表としてアップル、日本勢代表としてソニーのシェア推移を点線で重ね合わせると、その構造がよくわかる。05年8月ごろの段階では、海外勢全体のシェアと、アップル単独のシェアにはまだ開きがあった。つまりアップルに加え、それ以外の海外勢の力も強かったということだ。しかし徐々にその差は縮まり、海外勢はアップル1社に収斂する傾向になっている。逆に日本勢は、当初ソニーの占める割合が高かったが、徐々に日本勢全体とソニー単独のシェアは開く傾向にあり、ソニー以外にも健闘する日本企業が多くなってきたことがわかる。
ここで集計しているのは上位10社のみだが、これで携帯オーディオ全体の9割以上の販売台数シェアを占める。上位企業にシェアが集中する傾向は徐々に高まっており、05年8月では89.9%とかろうじて9割を割っていたが、直近の今年8月では94.0%に達している。
●実は前年割れ続く携帯オーディオ市場、活性化はiPod頼みか?
好調な日本企業を尻目に、携帯オーディオ市場全体では元気がない。前年の同じ月と販売台数を比べてみた。昨年の9月・10月はアップルがiPod nanoと動画対応の位iPodを発売したことで、前年と比べた販売台数は大きく拡大。ピークは12月の年末商戦で、246%と対前年比で実に2.4倍も携帯オーディオが売れていった。しかし、ここがピーク。以後、対前年比は落ち始め、4月にはついに前年割れ。7月には-13%と大きな落ち込みを示した。8月に入って、若干持ち直しているものの、まだ前年割れの水準が続いている。
理由としては、需要がある程度一巡したことや、音楽機能つき携帯電話という競合の存在も少なからず影響していると考えられる。一方で、海外勢が大きく落ち込む中、国内企業が逆に伸びている状況を見ると、主役交代時の一時的な落ち込みと考えることもできる。
とはいえ、携帯オーディオの流れを決めるのはやはりアップル。これまでも彼らが新製品を投入することで市場は大いに活性化してきた。そろそろ次に期待したいところだ。現在日本で最も売れている「iPod nano」は、「ポケットに1000曲」という、iPodの最初のコンセプトを薄く小さなきょう体で実現した、いわば完成形。この「nano」で、製品として大きな区切りがついたように思える。続いてリリースした第5世代iPodで、動画対応という新たなジャンルに足を踏み入れた。しかし「動画はあくまでもオマケ」という位置づけ。まだまだ進歩の余地は大きそうだ。
東芝は新しい携帯オーディオについて、gigabeat「V30T」で「ワンセグ」という1つの方向性を示した。そして、マイクロソフトが年内にも発売するという「Zune」。無線LANを使った仕掛けでiPodに挑もうとしている。舞台には新進気鋭の役者が次々と登場し始めている。近く「次の一手を」発表するのではないかと噂されるアップル。一体どんな役者を舞台に送り込んでくるのだろうか?(WebBCNランキング編集長・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など22社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
携帯オーディオ市場で日本企業が元気だ。相変わらず1位アップル、2位ソニーという図式は不変だが、1年前に比べると、日本企業のシェアが倍増している。孤軍奮闘のソニーにようやく援軍が現れたという状況だ。一方、全体の販売台数を見ると対前年比で、このところ前年割れが続いている。携帯オーディオ市場に大きな構造変化が訪れているようだ。「BCNランキング」で、その動向をまとめた。
●シェア倍増させた日本企業
8月最終週(8月28日-9月3日)の、カラーバリエーションを合算した携帯オーディオ機種別ランキングトップ15を算出した。1位から4位までをアップルが占め、絶好調の「iPod nano」が1、2、3フィニッシュを決めた。5、6位にはAAC対応で話題を集めたソニーの「ウォークマンEシリーズ」。7位に再び「iPod shuffle 512MB」……。このところ見慣れた順位だが、よく見ると、以前なら登場していたはずのアップル以外の海外勢がめっきり影を潜めてしまっているのに気付く。撤退したRioが消えたのは当然としても、iRiverやクリエイティブメディアといった以前は常連だったメーカーまでもが上位に登場しなくなってきているのだ。
メーカー別販売台数シェアを1年前と比較してみると、この傾向ははっきりする。05年8月時点では、トップのアップルと3、4、5位のRio、iRiver、クリエイティブメディアが2位のソニーを挟み込むような形になっていた。しかし、今年の8月では、3、4、5位はいずれも日本企業が占めている。3位の松下は、SDカードを使う「D-snap Audio」シリーズが好調。この1年でシェアを倍増させた。またminiSDカード対応の「MP-B200/300」が好調のシャープも、1年前に比べ3倍以上の伸びを示している。また、gigabeat Pシリーズの「NANA」バージョンが人気の東芝もシェアをほぼ3倍に伸ばしてきた。一方iRiverはシェアを4分の1に減らしたほか、クリエイティブメディアも1年前の半分にシェアを落としている。
●海外勢はアップルに収斂し、日本勢はソニーのほかにも拡大
携帯オーディオのメーカー別販売台数シェアトップ10に登場する企業を、日本勢と海外勢に分け、推移を見てみよう。05年8月から10月ごろにかけては、アップルを筆頭に海外勢のシェアが7割前後だったのに比べ日本勢は2割強。海外勢が圧倒的優位に立っていた。しかし、月を追うごとに海外勢のシェアは落ち、この8月には51.2%の水準にまで下がっている。逆に日本勢は42.8%と今にも逆転しそうな勢いだ。
このグラフに、海外勢代表としてアップル、日本勢代表としてソニーのシェア推移を点線で重ね合わせると、その構造がよくわかる。05年8月ごろの段階では、海外勢全体のシェアと、アップル単独のシェアにはまだ開きがあった。つまりアップルに加え、それ以外の海外勢の力も強かったということだ。しかし徐々にその差は縮まり、海外勢はアップル1社に収斂する傾向になっている。逆に日本勢は、当初ソニーの占める割合が高かったが、徐々に日本勢全体とソニー単独のシェアは開く傾向にあり、ソニー以外にも健闘する日本企業が多くなってきたことがわかる。
ここで集計しているのは上位10社のみだが、これで携帯オーディオ全体の9割以上の販売台数シェアを占める。上位企業にシェアが集中する傾向は徐々に高まっており、05年8月では89.9%とかろうじて9割を割っていたが、直近の今年8月では94.0%に達している。
●実は前年割れ続く携帯オーディオ市場、活性化はiPod頼みか?
好調な日本企業を尻目に、携帯オーディオ市場全体では元気がない。前年の同じ月と販売台数を比べてみた。昨年の9月・10月はアップルがiPod nanoと動画対応の位iPodを発売したことで、前年と比べた販売台数は大きく拡大。ピークは12月の年末商戦で、246%と対前年比で実に2.4倍も携帯オーディオが売れていった。しかし、ここがピーク。以後、対前年比は落ち始め、4月にはついに前年割れ。7月には-13%と大きな落ち込みを示した。8月に入って、若干持ち直しているものの、まだ前年割れの水準が続いている。
理由としては、需要がある程度一巡したことや、音楽機能つき携帯電話という競合の存在も少なからず影響していると考えられる。一方で、海外勢が大きく落ち込む中、国内企業が逆に伸びている状況を見ると、主役交代時の一時的な落ち込みと考えることもできる。
とはいえ、携帯オーディオの流れを決めるのはやはりアップル。これまでも彼らが新製品を投入することで市場は大いに活性化してきた。そろそろ次に期待したいところだ。現在日本で最も売れている「iPod nano」は、「ポケットに1000曲」という、iPodの最初のコンセプトを薄く小さなきょう体で実現した、いわば完成形。この「nano」で、製品として大きな区切りがついたように思える。続いてリリースした第5世代iPodで、動画対応という新たなジャンルに足を踏み入れた。しかし「動画はあくまでもオマケ」という位置づけ。まだまだ進歩の余地は大きそうだ。
東芝は新しい携帯オーディオについて、gigabeat「V30T」で「ワンセグ」という1つの方向性を示した。そして、マイクロソフトが年内にも発売するという「Zune」。無線LANを使った仕掛けでiPodに挑もうとしている。舞台には新進気鋭の役者が次々と登場し始めている。近く「次の一手を」発表するのではないかと噂されるアップル。一体どんな役者を舞台に送り込んでくるのだろうか?(WebBCNランキング編集長・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など22社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。