1年で3割安の薄型テレビ、激しかったW杯直後の値下げ攻勢でインチ4800円に
今や、デジタルチューナー搭載のハイビジョン薄型テレビが20万円を切る価格で買える時代。液晶・プラズマに代表される薄型テレビのなかでも人気の高い32V型以上の大型モデルは、この1、2年で大きく値下がりしている。「BCNランキング」で1年あまりの価格推移を集計し、タイプ別・大きさ別に実際どれくらい安くなったのかを検証した。
今や、デジタルチューナー搭載のハイビジョン薄型テレビが20万円を切る価格で買える時代。液晶・プラズマに代表される薄型テレビのなかでも人気の高い32V型以上の大型モデルは、この1、2年で大きく値下がりしている。「BCNランキング」で1年あまりの価格推移を集計し、タイプ別・大きさ別に実際どれくらい安くなったのかを検証した。
●値下がり続く薄型大画面テレビ W杯商戦以降にさらに下落
液晶とプラズマそれぞれで、代表的なサイズ別に「BCNランキング」で平均価格の推移を集計した。05年7月第1週を1として直近の06年8月第4週(06年8月21日-8月27日)と比較すると、液晶テレビの「32V型」の下落率は30.6%。「37V型」では24.8%となった。やはり売れ筋の32V型は激戦区だ。また「40V型台」では、40インチ台前半の機種が増えたことが影響してか、32V型を超える33.3%の下落率となった。
実売価格では、05年は20万円台前半で推移していた32V型だが、今年に入ってその大台を割り込み、5月には17万円台に突入。8月の直近週では、15万円台前半。平均単価を画面サイズで割った1インチあたりの単価は約4800円と、5000円を切るレベルにまで下がってきた。
とくに今年のワールドカップ(W杯)商戦以降の下落が大きい。05年では10%以内に収まっていた下落率だったが、06年、夏のボーナス商戦を迎えた7月半ばの2週間で一気に9000円近く下がった。その反動からか、8月以降は微減にとどまっている。
37V型も同様の傾向で、30万円台から20万台後半、さらに前半へと、平均単価が大きく下がっている。37V型の場合、単価の高いフルハイビジョン(フルHD)対応モデルも含まれるため、価格の下落は32V型にくらべ緩やか。しかしフルHDに対応しないモデルの価格下落は32V型より激しく、33.5%まで下落している。今年の年末商戦で大型テレビの本命と目される40V型台は、集計の過程で複数のサイズを1つにまとめた影響もあるが、平均40万円台から20万円台後半にまでダウン。この価格は、05年冬頃の32V型の水準だ。
一方、プラズマテレビは、37V型・40V台とも、下落率は20%弱。サイズよる違いは見られなかった。50V以上は10.7%と、大型化が価格下落を押しとどめているようだ。プラズマテレビで売れ筋の37V型の平均単価は、20万円台後半から7月には20万円台前半に下がった。この傾向は液晶テレビ同じだ。ただし、実売20万円を切る価格で売られている廉価モデルも登場しており、安くなったという印象は強い。
●液晶テレビが40V台で躍進 プラズマの販売台数を逆転
薄型テレビといえば、やはり気になるのは液晶とプラズマの違い。とくに、液晶とプラズマが競り合っている37V型と40V型台のサイズでは、どちらがよいのか違いがわからず、売り場で悩む人をよく見かける。液晶とプラズマ、どちらが売れているかを「BCNランキング」で見ると、37V型では液晶テレビの圧勝。週によって若干の変動はあるが、おおむね液晶テレビが6-7割、プラズマテレビが残りの3割程度だ。両者の価格差がほとんどなくなってきたことによるものだろう。
もうワンランク上の40V型台ではどうだろう。かつてはプラズマが約6割を占め優位に立っていものの、05年10月を境に形勢が逆転。液晶テレビが5割を超え、週によっては7割を占める状況となっている。直近の8月第4週では、液晶が63.8%、プラズマが36.2%と、37V型とほぼ同じ構図になってきた。
液晶テレビでも、40V以上の市場が昨年末から本格的に立ち上がってきたことに加え、平均単価が下がり、プラズマに対する価格競争力が増したことが要因だろう。他方、50V型以上では、現状でプラズマテレビが9割を超えており、液晶テレビはまだ1桁にとどまっている。これぐらい大きくなると、大型に強いといわれるプラズマの独壇場といってよさそうだ。
ちなみに、8月第4週の液晶テレビ機種別ランキング1位は、シャープの32V型「LC-32BD1」。プラズマテレビは、松下電器産業の37V型「TH-37PX60」がここ数週間、トップに立っている。どちらも薄型大画面テレビでは、低価格帯の部類に入る。
●これからは価格以外の「付加価値」で選ぶ
8月末、国内主要メーカーから年末商戦を狙った新モデルが相次いで発表された。その一部は、早くも9月から店頭に並び始める。各社共通するキーワードは、40インチ超の「大型化」と、松下の「VIERALink(ビエラリンク)」や、シャープの「AQUOSファミリンク」などに代表される、操作性の改善と他のデジタル家電などとの連携。そのほか、フルHD、デジタルダブルチューナー、HDD内蔵と、メーカーによって強みは異なるが、プラスアルファの付加価値をつけることで、各社とも価格競争に早く終止符を打ちたいようだ。
液晶テレビの大型化をけん引してきたシャープは、8月に行った製品発表会で、価格下落が進む32V型、37V型について、「価格の下げ幅は縮まっている。年末までには下落は止まる」と見込んでいるようだが、思惑通りに市場が動くかどうかはまだわからない。
しかし薄型テレビは、「受信機」という本来の機能に加え「デジタル情報機器」の性格が年々強くなっている。もう従来のように「買ってきてアンテナをつないでコンセントにプラグ差し込んで終わり」では済まない。複数のアンテナを接続し、LANで結んでHDD-DVDレコーダーと接続したかと思えばCATVの端末とつないだりと、複雑極まりない配線や接続をクリアしなければならない。こんな状況では価格だけで選ぶと失敗することにもなりかねない。使い勝手や他のデジタル機器との連携など買う前にしっかりと調べ上げて、価格以外の視点も持つことが、これからの薄型テレビ選びのポイントになりそうだ。
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など22社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
*本記事での「平均単価」や「価格」はすべて税抜きです。店頭での表示価格は、通常、消費税を含めた総額表示制が取られています。
今や、デジタルチューナー搭載のハイビジョン薄型テレビが20万円を切る価格で買える時代。液晶・プラズマに代表される薄型テレビのなかでも人気の高い32V型以上の大型モデルは、この1、2年で大きく値下がりしている。「BCNランキング」で1年あまりの価格推移を集計し、タイプ別・大きさ別に実際どれくらい安くなったのかを検証した。
●値下がり続く薄型大画面テレビ W杯商戦以降にさらに下落
液晶とプラズマそれぞれで、代表的なサイズ別に「BCNランキング」で平均価格の推移を集計した。05年7月第1週を1として直近の06年8月第4週(06年8月21日-8月27日)と比較すると、液晶テレビの「32V型」の下落率は30.6%。「37V型」では24.8%となった。やはり売れ筋の32V型は激戦区だ。また「40V型台」では、40インチ台前半の機種が増えたことが影響してか、32V型を超える33.3%の下落率となった。
実売価格では、05年は20万円台前半で推移していた32V型だが、今年に入ってその大台を割り込み、5月には17万円台に突入。8月の直近週では、15万円台前半。平均単価を画面サイズで割った1インチあたりの単価は約4800円と、5000円を切るレベルにまで下がってきた。
とくに今年のワールドカップ(W杯)商戦以降の下落が大きい。05年では10%以内に収まっていた下落率だったが、06年、夏のボーナス商戦を迎えた7月半ばの2週間で一気に9000円近く下がった。その反動からか、8月以降は微減にとどまっている。
37V型も同様の傾向で、30万円台から20万台後半、さらに前半へと、平均単価が大きく下がっている。37V型の場合、単価の高いフルハイビジョン(フルHD)対応モデルも含まれるため、価格の下落は32V型にくらべ緩やか。しかしフルHDに対応しないモデルの価格下落は32V型より激しく、33.5%まで下落している。今年の年末商戦で大型テレビの本命と目される40V型台は、集計の過程で複数のサイズを1つにまとめた影響もあるが、平均40万円台から20万円台後半にまでダウン。この価格は、05年冬頃の32V型の水準だ。
一方、プラズマテレビは、37V型・40V台とも、下落率は20%弱。サイズよる違いは見られなかった。50V以上は10.7%と、大型化が価格下落を押しとどめているようだ。プラズマテレビで売れ筋の37V型の平均単価は、20万円台後半から7月には20万円台前半に下がった。この傾向は液晶テレビ同じだ。ただし、実売20万円を切る価格で売られている廉価モデルも登場しており、安くなったという印象は強い。
●液晶テレビが40V台で躍進 プラズマの販売台数を逆転
薄型テレビといえば、やはり気になるのは液晶とプラズマの違い。とくに、液晶とプラズマが競り合っている37V型と40V型台のサイズでは、どちらがよいのか違いがわからず、売り場で悩む人をよく見かける。液晶とプラズマ、どちらが売れているかを「BCNランキング」で見ると、37V型では液晶テレビの圧勝。週によって若干の変動はあるが、おおむね液晶テレビが6-7割、プラズマテレビが残りの3割程度だ。両者の価格差がほとんどなくなってきたことによるものだろう。
もうワンランク上の40V型台ではどうだろう。かつてはプラズマが約6割を占め優位に立っていものの、05年10月を境に形勢が逆転。液晶テレビが5割を超え、週によっては7割を占める状況となっている。直近の8月第4週では、液晶が63.8%、プラズマが36.2%と、37V型とほぼ同じ構図になってきた。
液晶テレビでも、40V以上の市場が昨年末から本格的に立ち上がってきたことに加え、平均単価が下がり、プラズマに対する価格競争力が増したことが要因だろう。他方、50V型以上では、現状でプラズマテレビが9割を超えており、液晶テレビはまだ1桁にとどまっている。これぐらい大きくなると、大型に強いといわれるプラズマの独壇場といってよさそうだ。
ちなみに、8月第4週の液晶テレビ機種別ランキング1位は、シャープの32V型「LC-32BD1」。プラズマテレビは、松下電器産業の37V型「TH-37PX60」がここ数週間、トップに立っている。どちらも薄型大画面テレビでは、低価格帯の部類に入る。
●これからは価格以外の「付加価値」で選ぶ
8月末、国内主要メーカーから年末商戦を狙った新モデルが相次いで発表された。その一部は、早くも9月から店頭に並び始める。各社共通するキーワードは、40インチ超の「大型化」と、松下の「VIERALink(ビエラリンク)」や、シャープの「AQUOSファミリンク」などに代表される、操作性の改善と他のデジタル家電などとの連携。そのほか、フルHD、デジタルダブルチューナー、HDD内蔵と、メーカーによって強みは異なるが、プラスアルファの付加価値をつけることで、各社とも価格競争に早く終止符を打ちたいようだ。
液晶テレビの大型化をけん引してきたシャープは、8月に行った製品発表会で、価格下落が進む32V型、37V型について、「価格の下げ幅は縮まっている。年末までには下落は止まる」と見込んでいるようだが、思惑通りに市場が動くかどうかはまだわからない。
しかし薄型テレビは、「受信機」という本来の機能に加え「デジタル情報機器」の性格が年々強くなっている。もう従来のように「買ってきてアンテナをつないでコンセントにプラグ差し込んで終わり」では済まない。複数のアンテナを接続し、LANで結んでHDD-DVDレコーダーと接続したかと思えばCATVの端末とつないだりと、複雑極まりない配線や接続をクリアしなければならない。こんな状況では価格だけで選ぶと失敗することにもなりかねない。使い勝手や他のデジタル機器との連携など買う前にしっかりと調べ上げて、価格以外の視点も持つことが、これからの薄型テレビ選びのポイントになりそうだ。
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など22社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
*本記事での「平均単価」や「価格」はすべて税抜きです。店頭での表示価格は、通常、消費税を含めた総額表示制が取られています。
*グラフデータ一部修正のお知らせ*
初出時、各グラフの日付部分の一部に誤りがあったため、正しい日付に修正いたしました。数字に誤りはありません。訂正してお詫びいたします。(2006/11/15)
初出時、各グラフの日付部分の一部に誤りがあったため、正しい日付に修正いたしました。数字に誤りはありません。訂正してお詫びいたします。(2006/11/15)