<ITジュニアの群像 高専プロコンへの道>第14回 石川工業高等専門学校
石川工業高等専門学校(石川高専)は、昨年の第16回プログラミングコンテスト課題部門で審査員特別賞を、また第14回の課題部門では敢闘賞を受賞するなど、過去にも受賞歴を残している。今回の17回プロコンでは、自由、課題、競技すべての部門で予選を通過。各部門とも優勝に向けて強い意欲をみせる。メンバーは、「電子情報研究部」(通称I研・アイケン)の部員たち。これまで、プロコンに興味を持ちながらも、一歩踏み出せずにいた女子の学生もメンバーに加わるなど、同校のプロコンへのチャレンジ精神は、ますます熱を帯びている。
新入部員も積極参加
石川工業高等専門学校(石川高専)は、昨年の第16回プログラミングコンテスト課題部門で審査員特別賞を、また第14回の課題部門では敢闘賞を受賞するなど、過去にも受賞歴を残している。今回の17回プロコンでは、自由、課題、競技すべての部門で予選を通過。各部門とも優勝に向けて強い意欲をみせる。メンバーは、「電子情報研究部」(通称I研・アイケン)の部員たち。これまで、プロコンに興味を持ちながらも、一歩踏み出せずにいた女子の学生もメンバーに加わるなど、同校のプロコンへのチャレンジ精神は、ますます熱を帯びている。(田沢理恵●取材/文)
●「出場してみたかった」と、女子学生もプロコンに挑戦
石川高専は昨年、課題部門で審査員特別賞を受賞した。今年は、「あそぽーと」で優勝を狙う。 「あそぽーと」は、室内で遊ぶ子供たちが増えるなか、外で元気に子供たちが遊べるように支援するシステムだ。リーダーで電子機械工学専攻1年生の大谷隆浩さんが立案し、具体的な内容はメンバーと相談して決めた。「実現性を重視して、チャットやGPSを盛り込んでいる斬新なシステム」(大谷さん)で、「もちろん優勝を狙う」と、自信満々だ。
作品の出来だけでなく、プレゼンテーションでもレベルが高く、昨年プロコンに出場した電子情報工学科3年生の三吉建尊さんが、滑らかなプレゼンテーションを披露。三吉さんは、「昨年の出場経験から、本戦の雰囲気がわかるので、優位に立てるはず」と、堂々とした振る舞いを見せてくれた。
石川高専のプロコン参加メンバーは、I研の部員が中心となっている。しかし、課題部門の指導教官の河村泰之・電子情報工学科講師は、「昨年あたりから、I研の部員以外でも、もっと参加者を増やしたいと考えてきた」ことから、プロコンへの参加を授業で呼びかけた。こうした取り組みにより、「プロコンの活動を見て面白そうと思った」という電子情報工学科4年生の上江まり子さんや、「前からプロコンに出てみたかった」とする荒谷かほりさん(同学科4年生)など、女子の学生もプロコン出場を目指してI研に入部した。
河村先生は、過去に同好会以外でチームを結成してプロコン競技部門に出場した学生を指導したことがあり、その当時のエピソードを授業中に学生に話す。そのなかでプロコンの楽しさを知ってもらい、自分も参加したいと興味を示すようなきっかけを与えているのだ。「上江さんや荒谷さんは、放っておいたら参加しなかったかもしれない」。彼女たちは、これまでプロコンに興味を持ちながらも一歩踏み出せずにいた。しかし、今回チャレンジしてみることで、「わからないことばかりだけど、やってみたら楽しい」と、新たな経験に目を輝かせている。
●先輩の智恵を生かしながら、地道に問題解決の道を探る
自由部門で予選を通過した作品は、「良好旅行」。旅先で迷って疲れてしまう、情報を探し回るのが面倒、予定通りに観光できないなど、ストレス解消のための旅行で逆に疲れてしまうという問題を解決するためのシステムだ。観光情報サイトとナビゲーションシステムを統合して旅行の計画作成から旅先の道案内などをサポートする。今回、OBで金沢大学大学院生の村田裕章さんがアドバイザーを担当。村田さんは、石川高専在学中に、自由部門で敢闘賞の受賞歴をもち、プロコン経験が豊富で、メンバーには心強い存在だ。リーダーの岡・啓さん(電子情報工学科3年生)は、「1日1日を大事にして、全員で協力して細かい問題点をクリアしていけば優勝できる」と、確固たる自信を示している。
競技部門は、電子情報工学科5年生の安田隆洋さん、同学科4年生の木下剛志さん、電気工学科3年生の坂口寛典さんの3人で出場する。3人とも過去になんらかの部門に出場経験がある。安田さんは、来年は専攻科へ進学するため、専攻科生は出場できない競技部門に、今回最後のチャレンジをする。安田さんにとってプロコンは、「学校では自分を試す機会がなかなかないから、魅力を感じる」と、来年も自由部門か課題部門にチャレンジする考えだ。
指導教官の越野亮講師は、「学生が、メンバーそれぞれの役割を考えることも勉強になる。そのうえ、協調性も身につくことがプロコンならではの利点」と、学生の成長を評価する。木下さんと坂口さんは、「みんなで取り組めばコミュニケーションも身につくし、先輩からも学べることも多い」と、プロコンへのチャレンジが楽しみながら学べる場であることを声を揃えて語った。
●インターンシップで実地教育 金岡 千嘉男校長
金岡千嘉男校長は、「石川県には、19の高等教育機関があり、人口比率でみると、全国で一番多いだろう」という。そのなかで、「少人数で小回りが利く懇切丁寧な教育」を行っている高専の存在意義は非常に大きいと自負している。
「学生に足りない思考力や応用力を高めるために、実地体験で解析力をつける」ことを重視、企業へのインターンシップに力を入れている。従来、専攻科の学生は、10日間のインターンシップを行っていたが、今年9月に3か月間に拡充。「企業と一緒になって学生を教育する」ことを強化している。
現在、本科の卒業生の約5割が大学へ編入している。しかし、「石川高専卒業生として世の中で活躍してもらいたい」と、“高専ブランド”をもっとアピールしたい思いもある。そのため、少なくとも、在学中に高専の特質をしっかりと身につけてもらい、専攻科へ進む学生を増やすことにも力を入れている。北陸先端科学技術大学院大学、金沢大学、福井大学の大学院と推薦入学協定を結び、専攻科から大学院に進学することを推進し、専攻科への進学率が高まるように取り組んでいる。
金岡校長は、「いろいろな意味で実力が評価される時代」のなかで、「高専は若いときから、モノ作りなどの一芸に秀た能力をつける教育をしている」ため、高専卒業生の活躍のチャンスは増えていくと確信している。
※本記事「<技術立国の夢を担う ITジュニアの群像 高専プロコンへの道>第14回 石川工業高等専門学校は、週刊BCN 2006年9月4日発行 vol.1152に掲載した記事を転載したものです。
新入部員も積極参加
全部門で優勝狙う
石川工業高等専門学校(石川高専)は、昨年の第16回プログラミングコンテスト課題部門で審査員特別賞を、また第14回の課題部門では敢闘賞を受賞するなど、過去にも受賞歴を残している。今回の17回プロコンでは、自由、課題、競技すべての部門で予選を通過。各部門とも優勝に向けて強い意欲をみせる。メンバーは、「電子情報研究部」(通称I研・アイケン)の部員たち。これまで、プロコンに興味を持ちながらも、一歩踏み出せずにいた女子の学生もメンバーに加わるなど、同校のプロコンへのチャレンジ精神は、ますます熱を帯びている。(田沢理恵●取材/文)
●「出場してみたかった」と、女子学生もプロコンに挑戦
石川高専は昨年、課題部門で審査員特別賞を受賞した。今年は、「あそぽーと」で優勝を狙う。 「あそぽーと」は、室内で遊ぶ子供たちが増えるなか、外で元気に子供たちが遊べるように支援するシステムだ。リーダーで電子機械工学専攻1年生の大谷隆浩さんが立案し、具体的な内容はメンバーと相談して決めた。「実現性を重視して、チャットやGPSを盛り込んでいる斬新なシステム」(大谷さん)で、「もちろん優勝を狙う」と、自信満々だ。
作品の出来だけでなく、プレゼンテーションでもレベルが高く、昨年プロコンに出場した電子情報工学科3年生の三吉建尊さんが、滑らかなプレゼンテーションを披露。三吉さんは、「昨年の出場経験から、本戦の雰囲気がわかるので、優位に立てるはず」と、堂々とした振る舞いを見せてくれた。
石川高専のプロコン参加メンバーは、I研の部員が中心となっている。しかし、課題部門の指導教官の河村泰之・電子情報工学科講師は、「昨年あたりから、I研の部員以外でも、もっと参加者を増やしたいと考えてきた」ことから、プロコンへの参加を授業で呼びかけた。こうした取り組みにより、「プロコンの活動を見て面白そうと思った」という電子情報工学科4年生の上江まり子さんや、「前からプロコンに出てみたかった」とする荒谷かほりさん(同学科4年生)など、女子の学生もプロコン出場を目指してI研に入部した。
河村先生は、過去に同好会以外でチームを結成してプロコン競技部門に出場した学生を指導したことがあり、その当時のエピソードを授業中に学生に話す。そのなかでプロコンの楽しさを知ってもらい、自分も参加したいと興味を示すようなきっかけを与えているのだ。「上江さんや荒谷さんは、放っておいたら参加しなかったかもしれない」。彼女たちは、これまでプロコンに興味を持ちながらも一歩踏み出せずにいた。しかし、今回チャレンジしてみることで、「わからないことばかりだけど、やってみたら楽しい」と、新たな経験に目を輝かせている。
●先輩の智恵を生かしながら、地道に問題解決の道を探る
自由部門で予選を通過した作品は、「良好旅行」。旅先で迷って疲れてしまう、情報を探し回るのが面倒、予定通りに観光できないなど、ストレス解消のための旅行で逆に疲れてしまうという問題を解決するためのシステムだ。観光情報サイトとナビゲーションシステムを統合して旅行の計画作成から旅先の道案内などをサポートする。今回、OBで金沢大学大学院生の村田裕章さんがアドバイザーを担当。村田さんは、石川高専在学中に、自由部門で敢闘賞の受賞歴をもち、プロコン経験が豊富で、メンバーには心強い存在だ。リーダーの岡・啓さん(電子情報工学科3年生)は、「1日1日を大事にして、全員で協力して細かい問題点をクリアしていけば優勝できる」と、確固たる自信を示している。
競技部門は、電子情報工学科5年生の安田隆洋さん、同学科4年生の木下剛志さん、電気工学科3年生の坂口寛典さんの3人で出場する。3人とも過去になんらかの部門に出場経験がある。安田さんは、来年は専攻科へ進学するため、専攻科生は出場できない競技部門に、今回最後のチャレンジをする。安田さんにとってプロコンは、「学校では自分を試す機会がなかなかないから、魅力を感じる」と、来年も自由部門か課題部門にチャレンジする考えだ。
指導教官の越野亮講師は、「学生が、メンバーそれぞれの役割を考えることも勉強になる。そのうえ、協調性も身につくことがプロコンならではの利点」と、学生の成長を評価する。木下さんと坂口さんは、「みんなで取り組めばコミュニケーションも身につくし、先輩からも学べることも多い」と、プロコンへのチャレンジが楽しみながら学べる場であることを声を揃えて語った。
●インターンシップで実地教育 金岡 千嘉男校長
金岡千嘉男校長は、「石川県には、19の高等教育機関があり、人口比率でみると、全国で一番多いだろう」という。そのなかで、「少人数で小回りが利く懇切丁寧な教育」を行っている高専の存在意義は非常に大きいと自負している。
「学生に足りない思考力や応用力を高めるために、実地体験で解析力をつける」ことを重視、企業へのインターンシップに力を入れている。従来、専攻科の学生は、10日間のインターンシップを行っていたが、今年9月に3か月間に拡充。「企業と一緒になって学生を教育する」ことを強化している。
現在、本科の卒業生の約5割が大学へ編入している。しかし、「石川高専卒業生として世の中で活躍してもらいたい」と、“高専ブランド”をもっとアピールしたい思いもある。そのため、少なくとも、在学中に高専の特質をしっかりと身につけてもらい、専攻科へ進む学生を増やすことにも力を入れている。北陸先端科学技術大学院大学、金沢大学、福井大学の大学院と推薦入学協定を結び、専攻科から大学院に進学することを推進し、専攻科への進学率が高まるように取り組んでいる。
金岡校長は、「いろいろな意味で実力が評価される時代」のなかで、「高専は若いときから、モノ作りなどの一芸に秀た能力をつける教育をしている」ため、高専卒業生の活躍のチャンスは増えていくと確信している。
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※本記事「<技術立国の夢を担う ITジュニアの群像 高専プロコンへの道>第14回 石川工業高等専門学校は、週刊BCN 2006年9月4日発行 vol.1152に掲載した記事を転載したものです。