デジ一眼の頂上決戦、キヤノンに軍配、根強い「Kiss」人気ともう1つの理由

特集

2006/04/27 01:15

 キヤノン、ニコンの2大メーカーが相次いで新製品を発売したことで、このところデジタル一眼レフカメラがにぎやかだ。しかしその裏では、抜きつ抜かれつの熾烈なシェア争いが繰り広げられていた。戦いを制したのはキヤノン。3月に入り、大きくシェアを伸ばしたことで、当面の決着がついた。そこで「BCNランキング」を見ながらその背景を探る。

 キヤノン、ニコンの2大メーカーが相次いで新製品を発売したことで、このところデジタル一眼レフカメラがにぎやかだ。しかしその裏では、抜きつ抜かれつの熾烈なシェア争いが繰り広げられていた。戦いを制したのはキヤノン。3月に入り、大きくシェアを伸ばしたことで、当面の決着がついた。そこで「BCNランキング」を見ながらその背景を探る。

●キヤノン、ニコンでランキングは寡占状態

 まず「BCNランキング」でデジタル一眼レフの機種別動向をチェックしてみよう。なおここでは、集計対象をレンズが交換できるタイプのデジタル一眼レフカメラに絞った。最新の4月第4週(4月17日-4月23日)では、1位がキヤノンの「EOS KissデジタルN」、2位はニコンの「D50」、以下「EOS 30D」、「D200」と続いている。トップ10の機種は「EOS 30D」「D200」「EOS5D」といったハイエンドモデルと、「EOS KissデジタルN」「D50」「D70s」「*ist DL2」「*ist DS2」といった初心者向けモデルに人気が二分している。


 そのうちトップ5まではキヤノンとニコンが独占。さらに、シェア2桁以上の上位4機種で、全販売台数のほぼ7割を占めている。ペンタックスなどもランクインしているものの1ケタ台のシェアに甘んじており、上位4機種の争いが当面の主戦場となりそうだ。

●ハイエンドモデルは先行するニコンをキヤノンが追撃

 次にハイエンドモデルの動向を見てみよう。去年12月に「D100」の後継「D200」を発売したニコンが、このカテゴリーでまず先行した。「D200」は1020万画素のCCDセンサーと素速い操作性が特徴。旧機種の「D100」以後、登場まで3年半も「待たされた」こともあり、発売直後は「ニコンファンを中心に予約待ちが出るほどの人気だった」(都内の大手量販店店員)。このため昨年末に一時突出して売れ、機種別トップに踊り出た。しかし、年明け以降は、そうした層の購入も一巡、動きはやや落ち着いている。


 「D200」から遅れること3か月、キヤノンも対抗機種となる「EOS 30D」を3月に発売した。「EOS 30D」は「EOS 20D」の後継機種。撮像素子に有効820万画素CMOSセンサーを採用。「スタンダード」「ポートレート」「風景」などをボタンにアイコンで表示した撮影用プログラム「ピクチャースタイル」機能で撮影状況や目的に最適なモードを簡単に選んで撮影できることが特徴だ。

 「30D」は「20D」の発売から約1年半後と製品投入スパンは短かったが、発売直後は「D200」同様好調に推移。当初キヤノンファンや新しいもの好きのユーザーが買いに走ったが、こうした動きも落ち着き、これからが本番といったところだろう。

 ニコン「D200」とキヤノン「30D」のハイエンドモデルの対決では、果たしてどちらに軍配が上がるのか。大きなポイントとなるのは価格だが「D200」はボディのみの実売価格が都内の大手量販店で20万円前後、一方「30D」は16万円前後。都内の量販店では「画素数が多いという理由で『D200』を買う人がいる一方、『D200』より画素数は落ちるが、価格が安い『30D』を選ぶ人も多く、2機種とも同じくらい売れている」(同)。ここではまだしばらく接戦が続きそうだ。

●依然圧倒的な強さを維持する「EOS KissデジタルN」、人気の秘密は?

 「初心者向けモデル」ではどうだろう。圧倒的に強いのが、キヤノンの「EOS KissデジタルN」だ。常にシェア20%以上で推移して、他を寄せ付けない安定した強さ。販売台数シェアの動きを見ると、昨年末に発売されて人気が沸騰した「D200」の影響もあってシェアを落とした時期もあるが、年明け以降徐々に回復。4月第4週では36%と4割に迫る勢いで、まさにダントツ。一方、ライバル機のニコン「D70s」はやや右肩下がり。「D50」はここに来てシェアが若干上向いてきたものの、動きはまだおとなしい。


 「D50」は都内量販店ではボディの実売価格が7万円を切る水準。そのため、「EOS KissデジタルN」のボディ実売価格、9万円前後に比べ「値段が訴求力となっている」(都内大手量販店店員)ことから持ち直し傾向にあるようだ。しかし、実売価格が約10万円の「D70s」は位置づけが難しく、厳しい戦いを強いられている。シェアも5%を切るところまで下がってきた。

 ダントツの「EOS KissデジタルN」だが、人気の秘密はどこにあるのか? 量販店の店員によれば、「コンパクトデジカメからデジタル一眼に乗り換える初心者のユーザーが最近増えてきているが、店頭で本格的なハイエンド機種を手に取ると、その重さだけで『上手く扱えるだろうか』としり込みしてしまう人も少なくない」。ところが、「『EOS Kissデジタル』はブランド力があり操作性も良いうえ、ボディがプラスチックで軽く扱いやすい印象を受ける。それが初心者にとってコンパクトデジカメに似た感覚で使えるという安心感につながっている」という。コンパクトデジカメのユーザーにも気軽に買えるデジタル一眼レフ、という位置づけが受け入れられている理由のようだ。

●メーカー別シェア争いで躍進したキヤノン、そのもう1つの理由

 メーカー別の販売台数シェアはどうだろう。トップはやはりキヤノンだ。年末から2月ごろまではニコンと抜き抜かれつの接戦を繰り広げてきたが、3月に入って大幅にシェアを伸ばした。直近では54.6%と市場の半分以上を握っている。その理由としては、「EOS KissデジタルN」の持ち直しや「EOS 30D」の押し上げ効果が挙げられるが、グラフからは別の要因も読み取れる。それは、2月以降、キヤノンが数字を伸ばす一方で正反対に動いたコニカミノルタの存在だ。


 コニカミノルタは1月にデジタルカメラ事業から撤退することを発表、業界に激震が走った。その直後、駆け込み的な需要が生まれ一時的にシェアが急上昇。しかしそれ以降は徐々にシェアが落ちはじめ、3月末の最後の日を迎えた。コニカミノルタのデジタル一眼レフ「αSweet DIGITAL」は、手ぶれ補正機能なども備え、初心者層に一定の支持を得ていた。撤退により、その潜在購入者層がキヤノンに流れた、と考えることもできそうだ。

 一方、ニコンは「D200」を発売した去年12月にはキヤノンを抜き、一時トップに踊り出た。しかし、年明け以降はその効果も落ち着き、3月以降、キヤノンに大きく引き離されている。そのほか、ペンタックスやオリンパスはシェアは1ケタ台とキヤノン、ニコンの2強に完全に押されてしまっている状態だ。

●今後の注目は「αマウントシステム」を使ったソニーのデジタル一眼

 今後注目されるのは、コニカミノルタの「αマウント」を引き継いだソニーの動向だ。ソニーは、その名も「α」という新ブランドを立ち上げ、夏にもデジタル一眼レフ発売する。



 もし「αSweet DIGITAL」を引き継ぐ、初心者市場をターゲットとした魅力的な製品を投入してくれば、コンパクトデジタルカメラ市場で持つブランド力と相まって、キヤノン、ニコンが中心のデジタル一眼レフ市場に割って入ってくる可能性も十分ある。ソニーの「α」が登場してくる夏のボーナス商戦ではまた新たな戦いが繰り広げられることになりそうだ。


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・約2200の店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。