再編進むデジカメ業界、何がコニカミノルタを撤退に追い込んだのか?
コニカミノルタが1月19日、カメラ事業全般からの撤退を発表した。ほんの1週間前の12日にはニコンがデジカメへの大きな「舵切り」を発表したばかり。デジタル化の急速な進展で、カメラ市場の再編がデジカメを中心に始まったようだ。何がコニカミノルタを全面撤退に追い込んだのか? 05年デジカメ市場の構造を「BCNランキング」で整理しながら、撤退の背景を探る。
コニカミノルタの前身となった「コニカ」と「ミノルタ」は、いずれも戦前から続いてきたカメラの「老舗」。コニカといえば、68年に大ヒットを飛ばした「C35 ジャーニーコニカ」や88年のヘビーデューティーカメラ「現場監督」、92年の写りにこだわったレンジファインダーカメラ「HEXAR」などで知られる一流のブランド。一方ミノルタは62年、宇宙飛行用カメラとしてNASAが採用した「ハイマチック」や73年ドイツのライツ社との技術相互協力で完成した「ライツミノルタCL」、そして85年世界初のオートフォーカス一眼レフ「αー7000」が思い浮かぶ、同じく一流ブランドだ。この2社が03年10月、経営統合を果たして誕生したのがコニカミノルタ。このカメラの老舗に、一体何が起きたのか?
●激しいシェア争いから弾き飛ばされたコンパクトデジカメ
「BCNランキング」06年1月第2週のデジタルカメラ販売台数シェア上位10モデルを見てみる。キヤノンやカシオ、ソニー、松下といった、デジカメではおなじみのメーカーが顔をそろえる。しかし、ここにコニカミノルタの名前はない。トップ10圏外、29位のDiMAGE X60でやっと登場する。販売台数シェアはわずか1%。往年の勢いはまったくといっていいほど感じられない。
昨年1年間の販売台数シェア推移を見てみよう。まず、カメラ本体とレンズが一体となっているデジカメ。コンパクトタイプが中心のカテゴリだ。05年12月現在での上位10社について、05年1月からの推移をグラフ化した。市場が激しく動いているためグラフも入り乱れているが、ご勘弁願いたい。ここで太く赤で表示したコニカミノルタは、年間を通じてPENTAXとの8位争いに終始しているだけだ。
コンパクトタイプのデジカメはメーカーの順位変動が激しく、競争が熾烈なカテゴリだ。05年秋以降の動きに注目すると、大きくうねりながらも着実に上昇トレンドを維持しているのが、高感度によるブレ軽減機能搭載の「F11」を投入した富士フイルム。また夏から秋にかけて落ち込んだものの、ブレ補正を取り入れた「T9」を投入したソニーの持ち直しが目立つ。しかし、トップのキヤノンはやや足踏み状態で、秋口にトップグループを形成していた松下、カシオはここにきてトップトリオから脱落。ニコンは緩やかなダウントレンドに入っている。平穏無事なメーカーは1社も存在しない。こうした激しい争いのなかで、コニカミノルタ蚊帳の外に弾き飛ばされてしまったのではないだろうか?
●「αSweet DIGITAL」で見えたのは「遅すぎた光明」だったのか?
次に、レンズ交換式一眼レフの販売台数シェア推移を見てみよう。直近では、ニコンの激しい追撃にあって、キヤノン独占の時代が終わりを告げたという状況だ。12月度ではほぼ1年ぶりにニコンがメーカーシェアでキヤノンを抜いた。こうした抜きつ抜かれつの争いの一方、それ以外のメーカーは別世界で大きな隔たりがある。しかし夏以降は、PENTAXが投入した「*ist」や、コニカミノルタの「αSweet DIGITAL」がそれぞれのシェアアップに貢献。いずれのカメラも、初心者をターゲットとした新しいタイプのデジタル一眼レフで、この2社に限らず各社ともこのカテゴリで大きく売り上げを伸ばしている。なかでも長らく続いていたデジタル一眼の低迷から脱するほどの勢いが感じられたのはコニカミノルタだ。
特に「αSweet DIGITAL」の投入はかなり「効いて」おり、コニカミノルタのデジタル一眼でのプレゼンスを確実に押し上げたと見られる。今後の展開も期待できる状況だっただけに、今回の撤退は残念だ。もっとも、レンズ交換式のデジタル一眼レフの市場規模は、05年12月の台数ベースではデジカメ全体の4.4%、金額ベースでも12.1%に過ぎず、よほどの大ヒットとならない限りデジカメ事業全体を支えるのは難しいという事情もあったのだろう。コニカミノルタでは「α資産」をソニーに譲渡して継承していく方針で、夏ごろにはこのチャートにαマウントを引っさげたソニーが登場することになりそうだ。ソニーによるαの再生が成るのか、見守りたい。
06年に入って早々、ニコンとコニカミノルタは大きな経営判断を下した。しかしこれで終わりとはなりそうもない。急激にデジタル化が進むカメラ業界の再編劇は今年、まだまだ続きそうだ。(WebBCNランキング編集長・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
コニカミノルタの前身となった「コニカ」と「ミノルタ」は、いずれも戦前から続いてきたカメラの「老舗」。コニカといえば、68年に大ヒットを飛ばした「C35 ジャーニーコニカ」や88年のヘビーデューティーカメラ「現場監督」、92年の写りにこだわったレンジファインダーカメラ「HEXAR」などで知られる一流のブランド。一方ミノルタは62年、宇宙飛行用カメラとしてNASAが採用した「ハイマチック」や73年ドイツのライツ社との技術相互協力で完成した「ライツミノルタCL」、そして85年世界初のオートフォーカス一眼レフ「αー7000」が思い浮かぶ、同じく一流ブランドだ。この2社が03年10月、経営統合を果たして誕生したのがコニカミノルタ。このカメラの老舗に、一体何が起きたのか?
●激しいシェア争いから弾き飛ばされたコンパクトデジカメ
「BCNランキング」06年1月第2週のデジタルカメラ販売台数シェア上位10モデルを見てみる。キヤノンやカシオ、ソニー、松下といった、デジカメではおなじみのメーカーが顔をそろえる。しかし、ここにコニカミノルタの名前はない。トップ10圏外、29位のDiMAGE X60でやっと登場する。販売台数シェアはわずか1%。往年の勢いはまったくといっていいほど感じられない。
昨年1年間の販売台数シェア推移を見てみよう。まず、カメラ本体とレンズが一体となっているデジカメ。コンパクトタイプが中心のカテゴリだ。05年12月現在での上位10社について、05年1月からの推移をグラフ化した。市場が激しく動いているためグラフも入り乱れているが、ご勘弁願いたい。ここで太く赤で表示したコニカミノルタは、年間を通じてPENTAXとの8位争いに終始しているだけだ。
コンパクトタイプのデジカメはメーカーの順位変動が激しく、競争が熾烈なカテゴリだ。05年秋以降の動きに注目すると、大きくうねりながらも着実に上昇トレンドを維持しているのが、高感度によるブレ軽減機能搭載の「F11」を投入した富士フイルム。また夏から秋にかけて落ち込んだものの、ブレ補正を取り入れた「T9」を投入したソニーの持ち直しが目立つ。しかし、トップのキヤノンはやや足踏み状態で、秋口にトップグループを形成していた松下、カシオはここにきてトップトリオから脱落。ニコンは緩やかなダウントレンドに入っている。平穏無事なメーカーは1社も存在しない。こうした激しい争いのなかで、コニカミノルタ蚊帳の外に弾き飛ばされてしまったのではないだろうか?
●「αSweet DIGITAL」で見えたのは「遅すぎた光明」だったのか?
次に、レンズ交換式一眼レフの販売台数シェア推移を見てみよう。直近では、ニコンの激しい追撃にあって、キヤノン独占の時代が終わりを告げたという状況だ。12月度ではほぼ1年ぶりにニコンがメーカーシェアでキヤノンを抜いた。こうした抜きつ抜かれつの争いの一方、それ以外のメーカーは別世界で大きな隔たりがある。しかし夏以降は、PENTAXが投入した「*ist」や、コニカミノルタの「αSweet DIGITAL」がそれぞれのシェアアップに貢献。いずれのカメラも、初心者をターゲットとした新しいタイプのデジタル一眼レフで、この2社に限らず各社ともこのカテゴリで大きく売り上げを伸ばしている。なかでも長らく続いていたデジタル一眼の低迷から脱するほどの勢いが感じられたのはコニカミノルタだ。
特に「αSweet DIGITAL」の投入はかなり「効いて」おり、コニカミノルタのデジタル一眼でのプレゼンスを確実に押し上げたと見られる。今後の展開も期待できる状況だっただけに、今回の撤退は残念だ。もっとも、レンズ交換式のデジタル一眼レフの市場規模は、05年12月の台数ベースではデジカメ全体の4.4%、金額ベースでも12.1%に過ぎず、よほどの大ヒットとならない限りデジカメ事業全体を支えるのは難しいという事情もあったのだろう。コニカミノルタでは「α資産」をソニーに譲渡して継承していく方針で、夏ごろにはこのチャートにαマウントを引っさげたソニーが登場することになりそうだ。ソニーによるαの再生が成るのか、見守りたい。
06年に入って早々、ニコンとコニカミノルタは大きな経営判断を下した。しかしこれで終わりとはなりそうもない。急激にデジタル化が進むカメラ業界の再編劇は今年、まだまだ続きそうだ。(WebBCNランキング編集長・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。