エプソン対キヤノン「複合プリンタ」頂上決戦、大接戦を制したのは?
1台でプリント、コピー、スキャンと3つの用途に使える「複合プリンタ」の人気が高まっている。実際、現時点の販売台数で勝っているのは単機能プリンタより複合プリンタのほうだ。そして、日本でプリンタといえばエプソンとキヤノン。この冬両社は、火花散る大接戦を繰り広げている。そこで、「BCNランキング」12月第3週時点での「複合プリンタ頂上決戦」の模様をお伝えしよう。
1台でプリント、コピー、スキャンと3つの用途に使える「複合プリンタ」の人気が高まっている。実際、現時点の販売台数で勝っているのは単機能プリンタより複合プリンタのほうだ。そして、日本でプリンタといえばエプソンとキヤノン。この冬両社は、火花散る大接戦を繰り広げている。そこで、「BCNランキング」12月第3週時点での「複合プリンタ頂上決戦」の模様をお伝えしよう。
●コンシューマ向けの1台3役・A4インクジェットプリンタが売れ筋
「複合機」「オールインワンプリンタ」などとも呼ばれる複合プリンタ。印字方式の違いによって、インクジェット方式とレーザー方式の2タイプがある。個人向けモデルでは写真印刷の美しさでインクジェット、企業向けモデルはドキュメント印刷の速さからレーザーが主流となっている。12月第4週(12月19日?25日)の「BCNランキング」では、上位20位まですべてインクジェット方式の複合プリンタが並んだ。用紙サイズはいずれもA4だ。機能で見ると、プリント、コピー、スキャナの3つの機能を兼ね備えた「1台3役」タイプが総販売台数の9割以上を占める。しかし、企業向けモデルや、FAX付き電話機から進化したブラザー工業「MFC-425CN」のように、FAX機能を備えた「1台4役」モデルもある。FAXを使う機会が多いなら、このタイプも選択肢に入れたい。
●機種別ではキヤノン「PIXUS MP500」に軍配、省スペース性と安さで人気
それでは機種別ランキングを見てみよう。勝利を収めたのは10月発売のキヤノン「PIXUS MP500」だ。高密度プリントヘッド技術「FINE」の採用で、最小1pl(ピコリットル)の極小インク滴の吐出を可能とし、最高解像度9600×2400dpiという高画質印刷を実現したモデル。インクは、黒を含む4色の染料インクと顔料ブラックインクの5色の独立タイプ。写真から文字まで、美しく印刷できる。
プリンタ本体には、2.5型液晶モニタを装備。画面表示を見ながら操作パネルを使って簡単に操作できる。このほか、デジタルカメラとプリンタを直接接続して印刷するダイレクトプリントの標準規格「PictBridge」、ふちなしプリント/コピーなど、多くの機能を備えている。
キヤノンは、05年秋・冬モデルの共通の特徴として、小さな設置スペースでも印刷できる「前面給紙カセット」や、年賀状などの両面印刷などに対応した「自動両面ユニット」を標準搭載した。リビングや机の周りなどに常設して気軽に使ってこそ、コピーやスキャナといった付加機能を活用できる複合プリンタ。本体の小型化に加え、印刷時も省スペースを維持する工夫が施され、より置きやすく使いやすくなっている。
こうしたユーザー目線の工夫や充実した機能、実売2万円台前半のコストパフォーマンスの高さから、右肩上がりに売り上げを伸ばした。当初秋・冬モデルでトップの売れ行きを示していたエプソンの「PM-A890」に代わって、11月第3週(11月14日?21日)に1位に浮上。そのままポジションをキープしている。
●2位は自動補正と携帯電話との連携がウリのエプソン「PM-A890」
2位のエプソン「PM-A890」も、10月に発売された秋・冬モデルのひとつ。新コンセプト「Epson Color」に対応し、逆光や色かぶりなどの人物撮影、露光ミスなどでうまく撮れなかった場合でも、人物の顔を自動判別し、好ましい肌の色に自動補正してプリントする頼もしい機能「オートフォトファイン!EX」を搭載する。
「PM-A890」は、赤外線通信機能を使って携帯電話から文字を送信し、同じく携帯電話から送信した写真やデジカメ写真に文字を入れ、ポストカードなどを印刷できる「ケータイで文字入力」機能を備えているのがウリ。このほかのスペック面については、1位の「PIXUS MP500」と重なる部分が多い。インクはエプソン独自の「つよインク」を採用、染料インク6色の独立インクタイプとなっている。
実売価格は、「PIXUS MP500」より数千円高い2万円台後半から3万円程前後。このわずかな価格の違いが、11月に入って「PIXUS MP500」の逆転を許してしまった要因のひとつと思われる。12月第3週では、1位に1.2ポイント差まで迫ったが、12月第4週では再び4.2ポイントまで差が拡大している。
●9位までが2社の二人舞台
3位以下9位まではキヤノン対エプソンのまさに二人舞台。この2社で熾烈なデッドヒートが繰り広げられている。上位にきているのは、6位の「PM-A700」を除き、いずれも05年10月発売の新しいモデルだが、キヤノン・エプソンともに、一番手頃なエントリーモデル「PIXUS MP170」(8位)、「PPX-A650」(9位)より、価格の高い上位モデルが売れているのが興味深い。複合プリンタでは価格もさることながら、それなりの高機能、高画質が求められているようだ。また、買い替えのユーザーが年々増加し、要求されるスペックが上がってきている、という背景も無視できない。
10位・11位には、日本HP(ヒューレット・パッカード)の2モデルがランクインした。どちらも、6色独立インクタンクや2.5型液晶など、1位・2位とスペック的には遜色のないものの下位にとどまっている。世界的に高いシェアをもつ同社だが、国内では存在感が薄い。しかし、11月に移転オープンしたある家電量販店では、移転前より展示コーナーを拡大し、パンフレットを手配りしたり、店舗限定プレゼントキャンペーンを実施するなど、強力なプロモーションを展開していた。こうした知名度アップの試みが成功するか、今後の動向に注目したい。
●メーカー別シェアではエプソンに軍配、しかしキヤノンとの差はわずか
メーカー別シェアではエプソンが48.6%で1位、続くキヤノンが45.1%という結果になった。9月以降のメーカー別シェア推移を見ると、それまで圧倒的大差でリードしてたエプソンだったが、10月の新モデル発売でキヤノンがジャンプアップ。以降、両社の差はどんどん接近している。現段階では僅差で軍配はエプソン。しかし、機種別ランキング1位のキヤノン「PIXUS MP500」が着々とシェアを伸ばし、ここにきてさらに加速がついていることを考えると微妙な状況だ。このままエプソンが首位を死守できるか、キヤノンにその座を明け渡すことになるのか、06年1月、年末年始商戦の最終結果で明らかになるだろう。
●今プリンタは「複合プリンタ」が主流、もはや特別な存在ではない
複合プリンタと単機能のインクジェットプリンタの販売台数を比較すると、例えば直近の12月第4週のデータでは複合プリンタのほうが2割以上も多く売れている。主流はもはや複合プリンタのほうなのだ。
ある程度の設置スペースを必要とするプリンタだが、いくら設置が面倒だとはいっても、1年に1回、年賀状印刷のためにしか使わないのはもったいない。それなりのお金を払って買うものだからと、コピー機やスキャナとしても活躍する複合プリンタを選ぶというのは、自然な流れだろう。コピーやスキャナを使う機会があって、プリンタの新調を考えているなら、複合プリンタもぜひ検討してみてほしい。「年賀状専用出力機」に比べれば活躍の機会が格段に広がることは請け合いだ。
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・ 2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで113品目を対象としています。
1台でプリント、コピー、スキャンと3つの用途に使える「複合プリンタ」の人気が高まっている。実際、現時点の販売台数で勝っているのは単機能プリンタより複合プリンタのほうだ。そして、日本でプリンタといえばエプソンとキヤノン。この冬両社は、火花散る大接戦を繰り広げている。そこで、「BCNランキング」12月第3週時点での「複合プリンタ頂上決戦」の模様をお伝えしよう。
●コンシューマ向けの1台3役・A4インクジェットプリンタが売れ筋
「複合機」「オールインワンプリンタ」などとも呼ばれる複合プリンタ。印字方式の違いによって、インクジェット方式とレーザー方式の2タイプがある。個人向けモデルでは写真印刷の美しさでインクジェット、企業向けモデルはドキュメント印刷の速さからレーザーが主流となっている。12月第4週(12月19日?25日)の「BCNランキング」では、上位20位まですべてインクジェット方式の複合プリンタが並んだ。用紙サイズはいずれもA4だ。機能で見ると、プリント、コピー、スキャナの3つの機能を兼ね備えた「1台3役」タイプが総販売台数の9割以上を占める。しかし、企業向けモデルや、FAX付き電話機から進化したブラザー工業「MFC-425CN」のように、FAX機能を備えた「1台4役」モデルもある。FAXを使う機会が多いなら、このタイプも選択肢に入れたい。
●機種別ではキヤノン「PIXUS MP500」に軍配、省スペース性と安さで人気
それでは機種別ランキングを見てみよう。勝利を収めたのは10月発売のキヤノン「PIXUS MP500」だ。高密度プリントヘッド技術「FINE」の採用で、最小1pl(ピコリットル)の極小インク滴の吐出を可能とし、最高解像度9600×2400dpiという高画質印刷を実現したモデル。インクは、黒を含む4色の染料インクと顔料ブラックインクの5色の独立タイプ。写真から文字まで、美しく印刷できる。
プリンタ本体には、2.5型液晶モニタを装備。画面表示を見ながら操作パネルを使って簡単に操作できる。このほか、デジタルカメラとプリンタを直接接続して印刷するダイレクトプリントの標準規格「PictBridge」、ふちなしプリント/コピーなど、多くの機能を備えている。
キヤノンは、05年秋・冬モデルの共通の特徴として、小さな設置スペースでも印刷できる「前面給紙カセット」や、年賀状などの両面印刷などに対応した「自動両面ユニット」を標準搭載した。リビングや机の周りなどに常設して気軽に使ってこそ、コピーやスキャナといった付加機能を活用できる複合プリンタ。本体の小型化に加え、印刷時も省スペースを維持する工夫が施され、より置きやすく使いやすくなっている。
こうしたユーザー目線の工夫や充実した機能、実売2万円台前半のコストパフォーマンスの高さから、右肩上がりに売り上げを伸ばした。当初秋・冬モデルでトップの売れ行きを示していたエプソンの「PM-A890」に代わって、11月第3週(11月14日?21日)に1位に浮上。そのままポジションをキープしている。
●2位は自動補正と携帯電話との連携がウリのエプソン「PM-A890」
2位のエプソン「PM-A890」も、10月に発売された秋・冬モデルのひとつ。新コンセプト「Epson Color」に対応し、逆光や色かぶりなどの人物撮影、露光ミスなどでうまく撮れなかった場合でも、人物の顔を自動判別し、好ましい肌の色に自動補正してプリントする頼もしい機能「オートフォトファイン!EX」を搭載する。
「PM-A890」は、赤外線通信機能を使って携帯電話から文字を送信し、同じく携帯電話から送信した写真やデジカメ写真に文字を入れ、ポストカードなどを印刷できる「ケータイで文字入力」機能を備えているのがウリ。このほかのスペック面については、1位の「PIXUS MP500」と重なる部分が多い。インクはエプソン独自の「つよインク」を採用、染料インク6色の独立インクタイプとなっている。
実売価格は、「PIXUS MP500」より数千円高い2万円台後半から3万円程前後。このわずかな価格の違いが、11月に入って「PIXUS MP500」の逆転を許してしまった要因のひとつと思われる。12月第3週では、1位に1.2ポイント差まで迫ったが、12月第4週では再び4.2ポイントまで差が拡大している。
●9位までが2社の二人舞台
3位以下9位まではキヤノン対エプソンのまさに二人舞台。この2社で熾烈なデッドヒートが繰り広げられている。上位にきているのは、6位の「PM-A700」を除き、いずれも05年10月発売の新しいモデルだが、キヤノン・エプソンともに、一番手頃なエントリーモデル「PIXUS MP170」(8位)、「PPX-A650」(9位)より、価格の高い上位モデルが売れているのが興味深い。複合プリンタでは価格もさることながら、それなりの高機能、高画質が求められているようだ。また、買い替えのユーザーが年々増加し、要求されるスペックが上がってきている、という背景も無視できない。
10位・11位には、日本HP(ヒューレット・パッカード)の2モデルがランクインした。どちらも、6色独立インクタンクや2.5型液晶など、1位・2位とスペック的には遜色のないものの下位にとどまっている。世界的に高いシェアをもつ同社だが、国内では存在感が薄い。しかし、11月に移転オープンしたある家電量販店では、移転前より展示コーナーを拡大し、パンフレットを手配りしたり、店舗限定プレゼントキャンペーンを実施するなど、強力なプロモーションを展開していた。こうした知名度アップの試みが成功するか、今後の動向に注目したい。
●メーカー別シェアではエプソンに軍配、しかしキヤノンとの差はわずか
メーカー別シェアではエプソンが48.6%で1位、続くキヤノンが45.1%という結果になった。9月以降のメーカー別シェア推移を見ると、それまで圧倒的大差でリードしてたエプソンだったが、10月の新モデル発売でキヤノンがジャンプアップ。以降、両社の差はどんどん接近している。現段階では僅差で軍配はエプソン。しかし、機種別ランキング1位のキヤノン「PIXUS MP500」が着々とシェアを伸ばし、ここにきてさらに加速がついていることを考えると微妙な状況だ。このままエプソンが首位を死守できるか、キヤノンにその座を明け渡すことになるのか、06年1月、年末年始商戦の最終結果で明らかになるだろう。
●今プリンタは「複合プリンタ」が主流、もはや特別な存在ではない
複合プリンタと単機能のインクジェットプリンタの販売台数を比較すると、例えば直近の12月第4週のデータでは複合プリンタのほうが2割以上も多く売れている。主流はもはや複合プリンタのほうなのだ。
ある程度の設置スペースを必要とするプリンタだが、いくら設置が面倒だとはいっても、1年に1回、年賀状印刷のためにしか使わないのはもったいない。それなりのお金を払って買うものだからと、コピー機やスキャナとしても活躍する複合プリンタを選ぶというのは、自然な流れだろう。コピーやスキャナを使う機会があって、プリンタの新調を考えているなら、複合プリンタもぜひ検討してみてほしい。「年賀状専用出力機」に比べれば活躍の機会が格段に広がることは請け合いだ。
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・ 2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで113品目を対象としています。