デジタル一眼市場に異変、ニコン「D200」がキヤノンの牙城を崩す
ニコンの新しいデジタル一眼レフ「D200」が売れている。12月16日に発売されたばかりのハイエンドカメラだが、「BCNランキング」12月のデジタル一眼レフカメラ部門の速報集計で一気にトップに躍り出た。これまでトップを独走していたEOS Kiss デジタルNをかわしての首位獲得だけに、デジタル一眼レフ市場の流れを変えることにもなりそうだ。こうした動きを中心に、まさに今、リアルタイムで売れているデジタル一眼レフの動向を探ってみた。
ニコンの新しいデジタル一眼レフ「D200」が売れている。12月16日に発売されたばかりのハイエンドカメラだが、「BCNランキング」12月のデジタル一眼レフカメラ部門の速報集計で一気にトップに躍り出た。これまでトップを独走していたEOS Kiss デジタルNをかわしての首位獲得だけに、デジタル一眼レフ市場の流れを変えることにもなりそうだ。こうした動きを中心に、まさに今、リアルタイムで売れているデジタル一眼レフの動向を探ってみた。
●本命が「お気楽」市場に殴り込み、いよいよ写真マニアの移住始まる?
05年、デジタル一眼レフといえば、コンパクトデジタルカメラの延長線上にある「お気楽デジタル一眼」が大きな市場を形成してきた。その代表がキヤノンの「EOS Kiss デジタルN」であり、ニコンの「D50」「D70s」であり、ペンタックスの「*ist 」シリーズ、オリンパスの「E」シリーズなどであったわけだ。
しかしここにきて、本格派デジタル一眼の大本命ともいえる2台のカメラが発売されたのをきっかけに「潮目」が少し変わってきたように見える。先鞭をつけたのは10月にキヤノンが発売した「EOS 5D」。1280万画素で35mmフルサイズの自社製CMOSセンサーを搭載した、マニア「待望」のカメラだ。これまでの銀塩一眼レフと同じように20mmのレンズを20mmの画角で使え、85mmのレンズのボケ味を銀塩カメラと同じように楽しむことができる。35mmフルサイズセンサーのこうしたメリットは大いに魅力的だ。ボディーのみで30万円台という高価なカメラだが、これまでのデジカメに物足りなさを感じていた銀塩派でも心が揺らぐだろう。
とはいえその値段といい、普通の人が聞いてもよくわからない35mmフルサイズという呪文のような言葉といい、一般ウケという点ではやや疑問だった。ところがこれが売れている。直近の速報ランキングでは7位と堂々のトップ10入り。レンズ付きで10万円を切る「お気楽」路線の一眼レフと肩を並べる売れ行きだ。おそらく買っているのは写真マニアたちだろう。そのうえ銀塩文化圏で育ってきたカメラマニアたちも、これを機にデジタル文化圏に「移住」し始めた、と見ることもできそうだ。
●もう一つの「待望」それが「D200」だった
一方、ニコン派にとってはハイアマチュアの定番のデジタル一眼レフカメラ「D100」の後継が長らく「待望」されていた。「D50」も「D70s」も基本的には今売れ筋の「お気楽」路線。確かにそこそこきれいな絵が撮れるものの、「写真を極めたい」と思う層にとっては物足りないカメラだ。そこに登場したのが正真正銘の「D100」後継となる「D200」。登場まで実に3年半を要したことになる。マニアが痺れを切らすには十分すぎる年月だ。
1020万画素のCCDセンサーを搭載する「D200」だが、残念ながら35mmフルサイズではない。しかし、このクラスのデジタル一眼レフでボディーのみながら20万円を切る価格帯は、ある種驚きだ。あるフリーカメラマンは「まだ画質などの評価は定まっていないようだが、こまごまとした使い勝手は、D100、D50、D70sに比べ格段に進化している。11点測距AFシステムのオートフォーカス機能や世界最速の0.15秒の起動時間などなど、魅力的な点も多い。今ニコンのデジタル一眼レフを買うなら迷わずD200にするだろう」と現段階での感想を聞かせてくれた。
そしてこの「D200」が、12月1日から18日までの速報値で15.6%と販売シェアトップを獲得した。発売前の体験イベントでは3時間待ちの行列ができたほどのカメラなだけに、予約分もかなり積み上がっていたことが予想される。この時点でのランキングは一時的なものかもしれない。しかし発売は12月16日。発売3日間の売り上げで1位を獲得する勢いはかなりのものだ。これが中長期的に持続していくものなのかどうかはまだわからないが、少なくとも短期的にはこの勢いが続きそうだ。
●依然として全体の売れ筋は「お気楽」路線
そのほかの売れ筋デジタル一眼を見てみよう。全般的にはレンズ付きで実売10万円前後の「お気楽」路線が主流であることには変わりない。画素数としては800万画素クラスが中心。しかしトップ10に登場するのはキヤノンとニコンばかり。6位に唯一オリンパスの「E-500」がランクインしているだけだ。トップ20まで範囲を広げてやっとコニカミノルタやペンタックスが顔を出すという状況。
14.4%のシェアで2位となったのはキヤノンの「EOS KissデジタルN レンズキット」。2位に後退したとはいえ強さは相変わらず。ファミリー層をターゲットにした485gと軽量コンパクトなボディー。さらにEFレンズ18-55mm、F3.5-5.6がセットになっているため、購入してすぐに撮影を楽しめるといった点が支持されているようだ。3位も同じボディーでセットされたレンズが違うキットだ。4位と5位で「D70s」「D50」、6位にオリンパス「E-500」をはさみ、7位にキヤノンの「EOS 5D」という具合だ。
●メーカーシェアでもニコンが逆転しトップへ
メーカー別のシェア推移に目を転じると、やはりD200の好調が影響して異変が生じている。今年の6月時点では販売台数シェアで6割以上を握っていたキヤノンだが、ここにきて形勢が逆転、ニコンが抜き去る勢いだ。現時点では僅差ながらキヤノンがリードしているものの、ニコンがトップシェアを獲得するのは時間の問題と思われる。
この流れは夏ごろから顕著になっていた。メーカー別の販売台数シェア推移を見ると、右肩下がりのキヤノンに対し、ニコンは秋口から伸び始めており対照的な動きを見せている。もともと3割前後と安定して推移していたニコンが、「D50」「D70s」路線でベースを固め、ハイエンドながら低価格の「D200」で一気に勝負に出た様子が、形になって表れている。
その一方で見逃せないのがオリンパスだ。10月では5%しかなかったシェアが11月には12.6%と倍以上に急成長。ニコンの攻勢でやや勢いをそがれた感はあるが、確かに「E-500」の価格は魅力だ。800万画素のレンズ付きセットで実勢価格が10万円前後。同価格帯のニコン「D50」よりも高画素であることも選択のポイントになっているようだ。一眼レフデジカメ市場の「伏兵」として注目される。
そして、最大の注目ポイントは、なんといってもキヤノンの次の一手。いったいどんな製品でシェア奪還に挑んでくるのか。デジタル一眼レフ市場の06年は、例年にもましてにぎやかな年になりそうだ。
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。
ニコンの新しいデジタル一眼レフ「D200」が売れている。12月16日に発売されたばかりのハイエンドカメラだが、「BCNランキング」12月のデジタル一眼レフカメラ部門の速報集計で一気にトップに躍り出た。これまでトップを独走していたEOS Kiss デジタルNをかわしての首位獲得だけに、デジタル一眼レフ市場の流れを変えることにもなりそうだ。こうした動きを中心に、まさに今、リアルタイムで売れているデジタル一眼レフの動向を探ってみた。
●本命が「お気楽」市場に殴り込み、いよいよ写真マニアの移住始まる?
05年、デジタル一眼レフといえば、コンパクトデジタルカメラの延長線上にある「お気楽デジタル一眼」が大きな市場を形成してきた。その代表がキヤノンの「EOS Kiss デジタルN」であり、ニコンの「D50」「D70s」であり、ペンタックスの「*ist 」シリーズ、オリンパスの「E」シリーズなどであったわけだ。
しかしここにきて、本格派デジタル一眼の大本命ともいえる2台のカメラが発売されたのをきっかけに「潮目」が少し変わってきたように見える。先鞭をつけたのは10月にキヤノンが発売した「EOS 5D」。1280万画素で35mmフルサイズの自社製CMOSセンサーを搭載した、マニア「待望」のカメラだ。これまでの銀塩一眼レフと同じように20mmのレンズを20mmの画角で使え、85mmのレンズのボケ味を銀塩カメラと同じように楽しむことができる。35mmフルサイズセンサーのこうしたメリットは大いに魅力的だ。ボディーのみで30万円台という高価なカメラだが、これまでのデジカメに物足りなさを感じていた銀塩派でも心が揺らぐだろう。
とはいえその値段といい、普通の人が聞いてもよくわからない35mmフルサイズという呪文のような言葉といい、一般ウケという点ではやや疑問だった。ところがこれが売れている。直近の速報ランキングでは7位と堂々のトップ10入り。レンズ付きで10万円を切る「お気楽」路線の一眼レフと肩を並べる売れ行きだ。おそらく買っているのは写真マニアたちだろう。そのうえ銀塩文化圏で育ってきたカメラマニアたちも、これを機にデジタル文化圏に「移住」し始めた、と見ることもできそうだ。
●もう一つの「待望」それが「D200」だった
一方、ニコン派にとってはハイアマチュアの定番のデジタル一眼レフカメラ「D100」の後継が長らく「待望」されていた。「D50」も「D70s」も基本的には今売れ筋の「お気楽」路線。確かにそこそこきれいな絵が撮れるものの、「写真を極めたい」と思う層にとっては物足りないカメラだ。そこに登場したのが正真正銘の「D100」後継となる「D200」。登場まで実に3年半を要したことになる。マニアが痺れを切らすには十分すぎる年月だ。
1020万画素のCCDセンサーを搭載する「D200」だが、残念ながら35mmフルサイズではない。しかし、このクラスのデジタル一眼レフでボディーのみながら20万円を切る価格帯は、ある種驚きだ。あるフリーカメラマンは「まだ画質などの評価は定まっていないようだが、こまごまとした使い勝手は、D100、D50、D70sに比べ格段に進化している。11点測距AFシステムのオートフォーカス機能や世界最速の0.15秒の起動時間などなど、魅力的な点も多い。今ニコンのデジタル一眼レフを買うなら迷わずD200にするだろう」と現段階での感想を聞かせてくれた。
そしてこの「D200」が、12月1日から18日までの速報値で15.6%と販売シェアトップを獲得した。発売前の体験イベントでは3時間待ちの行列ができたほどのカメラなだけに、予約分もかなり積み上がっていたことが予想される。この時点でのランキングは一時的なものかもしれない。しかし発売は12月16日。発売3日間の売り上げで1位を獲得する勢いはかなりのものだ。これが中長期的に持続していくものなのかどうかはまだわからないが、少なくとも短期的にはこの勢いが続きそうだ。
●依然として全体の売れ筋は「お気楽」路線
そのほかの売れ筋デジタル一眼を見てみよう。全般的にはレンズ付きで実売10万円前後の「お気楽」路線が主流であることには変わりない。画素数としては800万画素クラスが中心。しかしトップ10に登場するのはキヤノンとニコンばかり。6位に唯一オリンパスの「E-500」がランクインしているだけだ。トップ20まで範囲を広げてやっとコニカミノルタやペンタックスが顔を出すという状況。
14.4%のシェアで2位となったのはキヤノンの「EOS KissデジタルN レンズキット」。2位に後退したとはいえ強さは相変わらず。ファミリー層をターゲットにした485gと軽量コンパクトなボディー。さらにEFレンズ18-55mm、F3.5-5.6がセットになっているため、購入してすぐに撮影を楽しめるといった点が支持されているようだ。3位も同じボディーでセットされたレンズが違うキットだ。4位と5位で「D70s」「D50」、6位にオリンパス「E-500」をはさみ、7位にキヤノンの「EOS 5D」という具合だ。
●メーカーシェアでもニコンが逆転しトップへ
メーカー別のシェア推移に目を転じると、やはりD200の好調が影響して異変が生じている。今年の6月時点では販売台数シェアで6割以上を握っていたキヤノンだが、ここにきて形勢が逆転、ニコンが抜き去る勢いだ。現時点では僅差ながらキヤノンがリードしているものの、ニコンがトップシェアを獲得するのは時間の問題と思われる。
この流れは夏ごろから顕著になっていた。メーカー別の販売台数シェア推移を見ると、右肩下がりのキヤノンに対し、ニコンは秋口から伸び始めており対照的な動きを見せている。もともと3割前後と安定して推移していたニコンが、「D50」「D70s」路線でベースを固め、ハイエンドながら低価格の「D200」で一気に勝負に出た様子が、形になって表れている。
その一方で見逃せないのがオリンパスだ。10月では5%しかなかったシェアが11月には12.6%と倍以上に急成長。ニコンの攻勢でやや勢いをそがれた感はあるが、確かに「E-500」の価格は魅力だ。800万画素のレンズ付きセットで実勢価格が10万円前後。同価格帯のニコン「D50」よりも高画素であることも選択のポイントになっているようだ。一眼レフデジカメ市場の「伏兵」として注目される。
そして、最大の注目ポイントは、なんといってもキヤノンの次の一手。いったいどんな製品でシェア奪還に挑んでくるのか。デジタル一眼レフ市場の06年は、例年にもましてにぎやかな年になりそうだ。
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。