DNPなど、大規模災害時に傷病者を迅速に救う傷病者管理・追跡の新システム
大日本印刷(DNP、北島義俊社長)はカテナ(小宮善継社長)、富士常葉大学環境防災学部の小村隆史助助教授と共同で、大規模災害時の「傷病者トレーサビリティシステム」を開発したと発表した。
大規模災害時には、被災地周辺の医療機関に多数の傷病者が集中するため、傷病者情報の管理や治療の優先順位付け(トリアージ)、被災地域外からの医療チームの投入、傷病者の被災地域外への搬送などが必要となる。
通常、各傷病者には氏名・年齢・性別・受傷部位・受傷程度・連絡先などを記した「トリアージタグ」を付けて活動にあたる。広域での効率的な医療活動を行うためには、これらのタグの情報を集めて管理し、傷病者の人数や受傷程度、収容先医療機関などの傷病者情報を各所に伝達して適切な手を打っていかなければならない。そのためにはタグ情報をデジタル化して一元管理・集積し、これに基づく総合的な判断が必要となってくる。
しかし、手書きされたタグを速やかにデジタルデータ化・一元管理するのは、被災地での混乱や応急処置の必要性の中にあっては困難を極める。さらに傷病者の搬送手段、搬送拠点(中継点)、搬送先の医療施設などが多岐にわたるほか、通信インフラが混乱する可能性もあり、医療機関間での傷病者情報の共有と、傷病者の現在位置の正確な把握も大きな課題となっている。
こうした課題を解決するために開発されたのが「傷病者トレーサビリティシステム」。「専用タグ」を「デジタルペン」で読み込んでデジタル化、入力作業をなくした。専用タグには、負傷者の治療優先順位付けと氏名、年齢、性別、負傷部位や程度、連絡先などの情報を記入するようになっている。専用タグにデジタルペンで情報を記入すると、ペンに内蔵された小型カメラが軌跡を読み取り内蔵メモリにデータとして蓄積。軌跡データはPCでサーバーに伝送、傷病者情報として登録されていく。また、タグにはあらかじめ識別用の個別番号と、傷病者情報用サーバーのアドレス情報を埋め込んだ2次元コード(QRコード)が印刷されており、コードをカメラ付け携帯電話で読み取り、サーバーにアクセスすれば登録された傷病者情報を入手できる、という仕組みだ。
搬送拠点や搬送先の医療施設、傷病者の状態に合わせた優先順位の変化などを選択し、サーバーに送信すれば、傷病者の位置や状態を正確な把握も可能。また、携帯電話のカメラで傷病者の顔写真を撮影、登録することで本人確認にも行える。
登録した傷病者情報は、ID、パスワードを使ってセキュリティを確保した上で、医者が専用サイトで検索、閲覧が可能で情報を共有できるようにする。医療機関同士がお互いの情報を交換する態勢を構築することで問い合わせなどに迅速な対応を支援する。
システムを使った救急医療実証実験を12月15日に国立病院機構災害医療センター(東京都立川市)で実施。50-100枚程の専用タグを使用し、システムの有効性などを検証する。実験結果は小村助教授が06年2月に開催する日本集団災害医学会で発表する。また、06年4月には、防災医療関係者と共同で実際の災害での導入を想定した試験も予定している。