踊り場の携帯オーディオ市場、nanoと動画iPodが年末商戦の起爆剤となるか?
8月のiTunes Music Store(iTMS)の日本上陸、9月のiPod nano(nano)、そして10月には動画対応の第5世代iPod(動画iPod)と、矢継ぎ早に戦略投下を続けてきたアップル。その効果は絶大で、4月から7月まで続いたソニーの攻勢を見事にかわし、王者の地位が揺らぐことはなかった。そして市場では再び、アップルが1人勝ちの状況だ。一方、携帯オーディオ市場全体はどうなっているのか? 「BCNランキング」で分析すると、意外な結果が見えてきた。
8月のiTunes Music Store(iTMS)の日本上陸、9月のiPod nano(nano)、そして10月には動画対応の第5世代iPod(動画iPod)と、矢継ぎ早に戦略投下を続けてきたアップル。その効果は絶大で、4月から7月まで続いたソニーの攻勢を見事にかわし、王者の地位が揺らぐことはなかった。そして市場では再び、アップルが1人勝ちの状況だ。一方、携帯オーディオ市場全体はどうなっているのか? 「BCNランキング」で分析すると、意外な結果が見えてきた。
●2年弱で約15倍に成長、アップル1人勝ちの構図
約2年にわたる時系列での販売台数推移を見るため、「BCNランキング」の「標準パネル」と呼ばれる時系列用データセットを使って分析を試みた。まず、直近の05年9月現在での販売台数シェアベスト5社をピックアップ。次に、04年1月のアップルの販売台数を1として04年1月時点での各社の販売台数指数を算出した。これをスタートとして05年9月までの各社の販売台数を指数化し折れ線グラフで表現した。
やはり最も目立つのはアップルの伸びだ。順調に台数を伸ばし、特に今年に入って発売されたiPod Shuffle(Shuffle)以降さらに大きな伸びを示している。販売台数は、わずか2年足らずの間に実に約15倍にも拡大している。そしてアップル以外の各社も、今年の3月まではこれに引っ張られるようにして、ゆるやかながら台数を伸ばしてきた。
そこへ長期間低迷していたソニーが4月、新しいネットウォークマンで市場に「再参入」。ひとまず販売台数を大きく伸ばすことに成功した。しかし、8月以降勢いが止まり、9月に入ると落ち込みに加速がついた格好になっている。その他、iRiverやクリエイティブメディアなども、ソニーほどではないにしろ8月と9月のアップルの攻勢の前にそれぞれ販売台数を減らす結果となった。まさにアップル1人勝ちだ。
●市場全体は踊り場、需要はとりあえず一巡か?
一方この間、携帯オーディオ市場全体での販売台数はどう推移したのか。先ほどのグラフに携帯オーディオ市場全体の動きを加えてみると、意外な結果が見えてきた。
まず、04年1月の携帯オーディオ市場全体の販売台数を1とし、05年9月までの販売台数を指数化。この折れ線を先ほどのグラフに重ねてみた。今年の3月までは、アップルの伸びに主導される形で市場全体も大きく伸びてきた。しかしそれ以降全体の伸びは鈍化、脚踏み状態になっている。最も大きな要因は、第2の選択肢として名乗りをあげたはすのソニーの不調だ。特に8月9月の落ち込みが大きく響き、頭打ちの状況を作り出している。また、市場から撤退する企業が出始めたことも影響していると思われる。
9月の時点で、全体のトレンドはかろうじて上昇傾向を維持してはいる。しかし以前のような力強さはない。nanoの立ち上がりで、特に4GBモデルの供給が不足していた。製造中止のiPod mini(mini)は買いにくいが、nanoは商品がないという状態は、直近の全体の伸び悩みに影響していると考えられる。さらに、Shuffle以降、携帯オーディオ市場の需要はある程度一巡し、今後は買い替え需要や、より広いターゲット層を狙う時期に来ているということも要因のひとつといえそうだ。この数ヶ月のアップルの舵きりは、こうした状況を打開しようとする試みだとも言える。
●早くもトップ10入りの動画iPodとnano、どこまで市場を引っ張るのか?
ここで直近の「BCNランキング」を見てみよう。10月第4週(10月17日-23日)の集計では、トップ10がすべてアップルの製品で埋めつくされた。そして1位から4位まではすべてnanoだ。容量では4GB、2GBの順、色では黒、白の順できれいに並んでいる。また先週発売されたばかりの動画iPodもすでにトップ10入り。HDDタイプに限ると、他社を押しのけて自社の旧iPodに続く堂々の2位と4位、全体でも8位と10位にランクインした。まだまだ供給が不安定であることも考えられるため、動画対応効果がどの程度あったのかの判断はできない。ただ、これからの年末商戦に向け、nanoとともに動画iPodが中心的な存在感を示すことになるのは間違いないなさそうだ。
こうして積極的な製品とサービスの投入で日本市場での地位を強固にしたアップルだが、市場全体の更なる拡大を考えると、わずか1社だけに頼るのは心もとない。ユーザーとしても、寡占状態では選択肢も限られ選ぶ楽しさが半減する。やはりここらでアップルに伍するライバルに登場願いたいところだ。
原点に帰って「ウォークマン」ブランドを復活させるソニーは、「ウォークマンAシリーズ」5機種を11月に発売。検索やシャッフル機能を充実させアップルを追撃する。iRiverは売れ筋のメモリタイプiFP-790シリーズを筆頭に動画対応のU10、ユニークなデザインのTシリーズに、ネックストラップタイプのNシリーズなど追加投入。クリエイティブメディアは11月にZen Microシリーズにフォトビューアーを備えたカラーディスプレイモデルを発売するなど、年末商戦に向け各社それぞれに戦いを挑んでいる。
中には個性的なモデルもあるものの、アップルの牙城を崩す迫力が感じられる製品は、残念ながらいまのところは見当たらない。脚踏み状態の携帯オーディオ市場をさらに拡大させ活性化するには、アップルだけでなく、その他の「プレーヤー」の更なる健闘がより重要になってくるのではないだろうか。(WebBCNランキング編集長・道越一郎)
■動画再生に対応した第5世代iPodの製品カテゴリーについて■
「BCNランキング」では、携帯AVプレーヤー(CD・MD再生プレーヤーなどを除く)を「携帯オーディオプレーヤー」と「携帯ビジュアルプレーヤー」に分け、それぞれ集計しています。今回アップルより発売された動画iPodをそのどちらに分類するかについて、BCNで協議した結果、従来どおり「携帯オーディオプレーヤー」のカテゴリーで集計を継続することに決定しました。以下の3点がその理由です。
(1)製品仕様を客観的に判断すると、主な機能は音楽演奏機能であり、動画機能は付加的なものであること、(2)いわゆる第4世代iPodの後継として発売された製品であるため、旧モデルとの販売データの連続性を維持する必要があること、(3)アップル自身も「あくまでも音楽プレーヤーである」と主張していること。
またこれにともなって、「携帯オーディオプレーヤー」の定義を変更し、現在「携帯ビジュアルプレーヤー」に分類されている製品についても、(1)記憶媒体としてメモリカードを含むフラッシュメモリやハードディスクを使用していること、(2)MP3形式の音楽データ再生機能があること、(3)ポータブルであること、の3点に合致する製品については「携帯オーディオプレーヤー」に分類することとしました。なおこの変更は、11月の月次集計より反映させる予定です。
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで113品目を対象としています。
8月のiTunes Music Store(iTMS)の日本上陸、9月のiPod nano(nano)、そして10月には動画対応の第5世代iPod(動画iPod)と、矢継ぎ早に戦略投下を続けてきたアップル。その効果は絶大で、4月から7月まで続いたソニーの攻勢を見事にかわし、王者の地位が揺らぐことはなかった。そして市場では再び、アップルが1人勝ちの状況だ。一方、携帯オーディオ市場全体はどうなっているのか? 「BCNランキング」で分析すると、意外な結果が見えてきた。
●2年弱で約15倍に成長、アップル1人勝ちの構図
約2年にわたる時系列での販売台数推移を見るため、「BCNランキング」の「標準パネル」と呼ばれる時系列用データセットを使って分析を試みた。まず、直近の05年9月現在での販売台数シェアベスト5社をピックアップ。次に、04年1月のアップルの販売台数を1として04年1月時点での各社の販売台数指数を算出した。これをスタートとして05年9月までの各社の販売台数を指数化し折れ線グラフで表現した。
やはり最も目立つのはアップルの伸びだ。順調に台数を伸ばし、特に今年に入って発売されたiPod Shuffle(Shuffle)以降さらに大きな伸びを示している。販売台数は、わずか2年足らずの間に実に約15倍にも拡大している。そしてアップル以外の各社も、今年の3月まではこれに引っ張られるようにして、ゆるやかながら台数を伸ばしてきた。
そこへ長期間低迷していたソニーが4月、新しいネットウォークマンで市場に「再参入」。ひとまず販売台数を大きく伸ばすことに成功した。しかし、8月以降勢いが止まり、9月に入ると落ち込みに加速がついた格好になっている。その他、iRiverやクリエイティブメディアなども、ソニーほどではないにしろ8月と9月のアップルの攻勢の前にそれぞれ販売台数を減らす結果となった。まさにアップル1人勝ちだ。
●市場全体は踊り場、需要はとりあえず一巡か?
一方この間、携帯オーディオ市場全体での販売台数はどう推移したのか。先ほどのグラフに携帯オーディオ市場全体の動きを加えてみると、意外な結果が見えてきた。
まず、04年1月の携帯オーディオ市場全体の販売台数を1とし、05年9月までの販売台数を指数化。この折れ線を先ほどのグラフに重ねてみた。今年の3月までは、アップルの伸びに主導される形で市場全体も大きく伸びてきた。しかしそれ以降全体の伸びは鈍化、脚踏み状態になっている。最も大きな要因は、第2の選択肢として名乗りをあげたはすのソニーの不調だ。特に8月9月の落ち込みが大きく響き、頭打ちの状況を作り出している。また、市場から撤退する企業が出始めたことも影響していると思われる。
9月の時点で、全体のトレンドはかろうじて上昇傾向を維持してはいる。しかし以前のような力強さはない。nanoの立ち上がりで、特に4GBモデルの供給が不足していた。製造中止のiPod mini(mini)は買いにくいが、nanoは商品がないという状態は、直近の全体の伸び悩みに影響していると考えられる。さらに、Shuffle以降、携帯オーディオ市場の需要はある程度一巡し、今後は買い替え需要や、より広いターゲット層を狙う時期に来ているということも要因のひとつといえそうだ。この数ヶ月のアップルの舵きりは、こうした状況を打開しようとする試みだとも言える。
●早くもトップ10入りの動画iPodとnano、どこまで市場を引っ張るのか?
ここで直近の「BCNランキング」を見てみよう。10月第4週(10月17日-23日)の集計では、トップ10がすべてアップルの製品で埋めつくされた。そして1位から4位まではすべてnanoだ。容量では4GB、2GBの順、色では黒、白の順できれいに並んでいる。また先週発売されたばかりの動画iPodもすでにトップ10入り。HDDタイプに限ると、他社を押しのけて自社の旧iPodに続く堂々の2位と4位、全体でも8位と10位にランクインした。まだまだ供給が不安定であることも考えられるため、動画対応効果がどの程度あったのかの判断はできない。ただ、これからの年末商戦に向け、nanoとともに動画iPodが中心的な存在感を示すことになるのは間違いないなさそうだ。
こうして積極的な製品とサービスの投入で日本市場での地位を強固にしたアップルだが、市場全体の更なる拡大を考えると、わずか1社だけに頼るのは心もとない。ユーザーとしても、寡占状態では選択肢も限られ選ぶ楽しさが半減する。やはりここらでアップルに伍するライバルに登場願いたいところだ。
原点に帰って「ウォークマン」ブランドを復活させるソニーは、「ウォークマンAシリーズ」5機種を11月に発売。検索やシャッフル機能を充実させアップルを追撃する。iRiverは売れ筋のメモリタイプiFP-790シリーズを筆頭に動画対応のU10、ユニークなデザインのTシリーズに、ネックストラップタイプのNシリーズなど追加投入。クリエイティブメディアは11月にZen Microシリーズにフォトビューアーを備えたカラーディスプレイモデルを発売するなど、年末商戦に向け各社それぞれに戦いを挑んでいる。
中には個性的なモデルもあるものの、アップルの牙城を崩す迫力が感じられる製品は、残念ながらいまのところは見当たらない。脚踏み状態の携帯オーディオ市場をさらに拡大させ活性化するには、アップルだけでなく、その他の「プレーヤー」の更なる健闘がより重要になってくるのではないだろうか。(WebBCNランキング編集長・道越一郎)
■動画再生に対応した第5世代iPodの製品カテゴリーについて■
「BCNランキング」では、携帯AVプレーヤー(CD・MD再生プレーヤーなどを除く)を「携帯オーディオプレーヤー」と「携帯ビジュアルプレーヤー」に分け、それぞれ集計しています。今回アップルより発売された動画iPodをそのどちらに分類するかについて、BCNで協議した結果、従来どおり「携帯オーディオプレーヤー」のカテゴリーで集計を継続することに決定しました。以下の3点がその理由です。
(1)製品仕様を客観的に判断すると、主な機能は音楽演奏機能であり、動画機能は付加的なものであること、(2)いわゆる第4世代iPodの後継として発売された製品であるため、旧モデルとの販売データの連続性を維持する必要があること、(3)アップル自身も「あくまでも音楽プレーヤーである」と主張していること。
またこれにともなって、「携帯オーディオプレーヤー」の定義を変更し、現在「携帯ビジュアルプレーヤー」に分類されている製品についても、(1)記憶媒体としてメモリカードを含むフラッシュメモリやハードディスクを使用していること、(2)MP3形式の音楽データ再生機能があること、(3)ポータブルであること、の3点に合致する製品については「携帯オーディオプレーヤー」に分類することとしました。なおこの変更は、11月の月次集計より反映させる予定です。
*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで113品目を対象としています。