産総研、脂肪の厚さ見てダイエット? 家庭でも使える携帯型超音波エコー
独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研、吉川弘之理事長) 実環境計測・診断研究ラボの福田 修研究員らと広島工業大学の佐藤広徳助教授(産総研客員研究員)は共同で、健康・美容施設や家庭などで使用できる携帯型の超音波エコー装置「ユビキタスエコー」を開発した。
体組成の基本構成要素である皮下脂肪、筋、骨などを、使用者に分かりやすく画像で表示し、肥満や筋肉量の判定などを行う装置。パソコンに接続して使用するのが特徴で、使用目的に応じたソフトウェアで機能を拡張することができる。データをパソコンのハードディスクに蓄積し、インターネットを利用して遠隔地に転送することも可能。さらに、特許出願中の技術を利用し、従来の医療用の装置に比べて格段の小型化、軽量化、低コスト化を実現した。
これまで、超音波エコー装置は、医療診断用の高価で大型のものしか製品化されていなかった。しかし、開発した同装置は、低価格で家庭でも手軽に購入することができ、また、軽量・小型なため、ノートパソコンなどと一緒にカバンに入れて持ち運ぶこともできる。
脂肪、筋、骨など体組成のバランスは、もっとも基本的な健康指標の一つ。対応する体重計でその割合をはかることも可能だが、その精度には不十分な点もあり、腕、お腹、足などと部位毎に精確な計測することができない。運動生理学分野、スポーツ科学分野などの体組成計測では、医療用の超音波装置を使って「皮下脂肪」や「筋」の厚みを計測していたが、高価な医療用の超音波診断装置を使用するため、研究室外には普及できなかった。
産総研と広島工業大学は、2002年頃からヘルスケアへの利用を目的とした携帯型の超音波画像計測装置の研究開発を開始。その後、この技術に興味を抱いたヘルシーステップ(田中寿志代表取締役)とともに、2004年、中小企業支援型研究開発制度(産総研)を利用して製品開発に成功した。3社は、開発装置をベンチャー事業として展開するため、昨年度、新会社「グローバルヘルス」(田中寿志社長)を創業、2005年4月から販売を開始した。
今後は、2005年4月にスタートした「実環境人間生活計測プロジェクト」において、より幅広い用途に対応するための個別ソフトウェアの開発を進める予定。また、九州、中国地方などの中高年齢者の超音波画像と健康情報との関係についてフィールド調査を進めるとともに、その成果を地域住民にフィードバックしていく。